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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科43巻3号

1989年03月発行

雑誌目次

カラーアトラス

臍部子宮内膜症

著者: 四宮茂 ,   生野重明 ,   戸田浄

ページ範囲:P.214 - P.215

患 者 36歳,女性
初 診 昭和62年4月27日

総説

中間径フィラメントの基礎と腫瘍診断—市販モノクローナル抗体の応用

著者: 北島康雄

ページ範囲:P.217 - P.225

1.はじめに
 中間径フィラメント(intermediate-sized filament,IF)は,直径24nmの微小管(microtubule, MT),6nmの微細線維(ミクロフィラメント,microfilament,MF)とともに細胞骨格を形成している太さ8〜10nmの線維である.これらの細胞骨格は広く有核細胞に分布し,互いに,あるいは別個に細胞の構造と機能を制御している1,2).MTとMFはそれぞれ,α,βチュブリンとα,β,γアクチンというような比較的単純な蛋白質から成るが,IFはその構成蛋白質がきわめて多様性に富み,生化学的,免疫学的に5種類に分類される3,4).それらは,上皮系細胞のIFであるケラチン(keratin,ケラチンはさらにヒトでは19種類に分けられる〈表15)〉),筋細胞系IFのデスミン(desmin),間葉系細胞IFのビメンチン(vimentin),神経膠質細胞系IFのグリア線維酸性蛋白質(glial fibrillary acidic protein, GFAP),神経細胞系IFの神経線維蛋白質(neurofilament protein,NF)である3,4).これら各IF蛋白質は組織や細胞によってその発現に特異性が高く腫瘍診断や細胞の分化の研究などに応用される6,7)
 一般的に,任意の組織や細胞に発現したIFのタイプの同定に関する検索には生化学的方法8,9)と,免疫組織学による方法との2種類が用いられてきている6,7).最近ではcRNAプローブを用いたin situハイブリダイゼーションによるケラチンmRNAの検出による方法も用いられはじめている10).生化学的には二次元電気泳動法とインミュノブロットが用いられ,免疫組織学ではモノクロ—ナル抗体による蛍光抗体法や酵素抗体法が用いられている.後者においては近年非常に多数のモノクローナル抗体が開発され,とくに抗ケラチン抗体だけでも20種類以上も市販されている(表2).したがって,抗IF抗体を用いた腫瘍診断の臨床応用も利用範囲が広くなってきている,しかし,これらの多数の抗体を効率よく誤診のないように用いるためには,IFの生化学的,細胞生物学的性状とともに,これらの抗体の特性について正しく理解する必要がある.現在市販されている抗ケラチン抗体に関する総説的ガイドがないために時々誤用されている例もあるので,本編では,IFの基礎とともに市販されている抗体の特性とその免疫組織学での意義についてまとめることにする.

原著

鉄キレート剤が有効であった晩発性皮膚ポルフィリン症—ポルフィリン異常との関連

著者: 秋元幸子 ,   石川治 ,   石川英一

ページ範囲:P.227 - P.233

 鉄キレート剤による治療が著効した晩発性皮膚ポルフィリン症の1例を報告した.尿,糞便中のポルフィリンを,高速液体クロマトグラフィーを用い定量分析した結果,尿中ではuroporphyrin, heptacarboxylic porphyrinの著明な増加を認めた,Co-proporphyrinは,総量としては正常範囲内であったが,Ⅰ型異性体が増加していた.便においては,総ポルフィリンの排泄増加があり,特にcoproporphyrinⅢ型異性体が増量していた.これらのポルフィリンは,血清鉄の低下,症状の軽快とともに減少した.本例では赤血球中uroporphyrinogen decarboxylase活性の減少はなかった.モノクロメーターを用いた光線検査では,治療前に400nmでMEDの低下が認められたが,治療後は改善した.

転移性皮膚腫瘍—統計的ならびに免疫組織化学的観察

著者: 安斎真一 ,   穂積豊 ,   麻生和雄

ページ範囲:P.235 - P.240

 昭和51年10月から昭和62年9月まで山形大学皮膚科学教室で経験した転移性皮膚腫瘍18例について臨床的および病理組織学的に検討した.原発巣は,肺癌5例,乳癌4例,耳下腺癌と胃癌各2例,膣癌と上顎癌各1例,不明3例であった.初診時年齢は平均65.8歳と今迄の報告のなかでも最も高かった.これらの症例に対して通常の病理組織学的検索のほかに,免疫組織化学的検索を行い,原発巣と皮膚転移巣の間の関係を検索したので報告した.

症例報告

尋常性乾癬と水疱性類天疱瘡の合併例

著者: 中野一郎 ,   清島真理子 ,   桑原まゆみ ,   柳原誠 ,   森俊二

ページ範囲:P.241 - P.244

 患者は,10年来尋常性乾癬に罹患している39歳女性で,PUVA,UVB照射後に類天疱瘡が発症した.蛍光抗体法により,基底膜部にIgG・C3の沈着を認めた.乾癬と類天疱瘡が合併した報告例は41例あり,病因的な共通性,あるいは乾癬の治療によって誘発されたとも考えられ,若干の考察を加えて報告した.

シクロスポリンによる難治性乾癬の治療

著者: 竹松英明 ,   小山純 ,   田中利治 ,   田上八朗

ページ範囲:P.245 - P.247

 ステロイド剤外用あるいはPUVA療法に抵抗性の紅皮症性乾癬および膿疱性乾癬の2症例にシクロスポリンを5〜6mg/kg/日投与し,著明な効果を認めた.その投与量を減少すると再発傾向をみたが,皮疹の再発はPUVA療法により抑えられた.腎毒性は認められなかったが,1例で軽度の肝機能の異常がみられた.本剤は通常の治療には反応しにくい乾癬あるいはエトレチネートが使いにくい症例に対して良い適応となりうる.また寛解の維持のためには,PUVA療法等の併用が必要である.本剤の強力な細胞性免疫機能抑制効果から,乾癬の皮疹形成に細胞性免疫反応が重要な役割を果たしていることを示すものと考えた.

結節性紅斑と瘢痕浸潤を伴った皮下型サルコイドーシスの1例

著者: 村田恵美 ,   林宗伸 ,   新田悠紀子

ページ範囲:P.249 - P.254

 52歳,女性.初診3週間前より左上腕に大豆大から拇指頭大の圧痛のある皮下結節が出現した.さらに初診の4〜5日前より両下肢に有痛性で爪甲大の紅斑を伴う皮下硬結が出現した.また初診の頃より両膝部の擦過傷瘢痕に隆起浸潤傾向がみられるようになった.検査では,BHL (+),ツ反の陰転化,血清ACE値の亢進があり,CRP・ASO・ASK等の炎症反応はみられなかった,組織像では,上腕は真皮深層から皮下脂肪織にかけてほとんど壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫がみられ,鍍銀染色で好銀線維が肉芽腫をとりまいている像が得られた.下肢は真皮深層および皮下脂肪織の中隔結合織に小円形細胞浸潤がみられ,septal panniculitisの像が得られた.膝部は偏光顕微鏡にて重屈折性を示した硝子様結晶状異物を含んだ壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫の像が得られた.日本では,サルコイドーシスのEN合併例はきわめて稀であり,文献的考察を加えて報告した.

Lichen Aureus—2例の報告と免疫組織学的検索

著者: 渡辺真理子 ,   相場節也 ,   田中利治 ,   相沢晴美 ,   田上八朗

ページ範囲:P.255 - P.258

 59歳の女性と50歳の男性にみられたlichen aureusの2例を報告する.2例とも皮疹は下腿に存在する貨幣大の浸潤をふれる紫斑性局面からなり,組織学的には,真皮上層の帯状の密な単核細胞浸潤と表皮に若干の単核細胞からなるexocytosisを認め,lichen aureusと診断した.男性例ではlichen aureusとSchamberg病が合併しており,両者間の関連が示唆された.また,この例では,酵素抗体法によりhelper T細胞優位の細胞浸潤とkeratinocyteのHLA-DR抗原発現を認めたことより,その発症に細胞性免疫の関与を考えた.

広範に発生した皮下型サルコイドーシスの1例—糖尿病との関係について

著者: 寺木祐一 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.259 - P.262

 糖尿病の既往を有する53歳女性で,四肢伸側に広範に生じた皮下型サルコイドーシスの1例を報告した.自験例のごとく四肢に索状,板状,地図状といった形をとり,広範に発生した例の報告は自験例も含め8例あり,糖尿病の有無の記載がある5例のうち4例に糖尿病が合併している.このようなタイプの皮下型サルコイドーシスと糖尿病との関係を,汎発型環状肉芽腫と糖尿病との関係の類似性にも着目し,皮下型サルコイドの皮疹を広範に発生せしめた因子として糖尿病が強く考えられ,おそらくmicroangiopathyが何らかの役割を果たしているのではないかと推察した.

Clofazimineが奏効した壊疽性膿皮症の1例

著者: 廣瀬るみ ,   堀越貴志 ,   前田香折 ,   小野寺英夫 ,   前田和男 ,   高橋誠 ,   伝法玲子

ページ範囲:P.263 - P.268

 Clofazimineが著効を示した,難治性の壊疽性膿皮症(以下PGと略す)の1例を報告した.併せてPGに対するclofazimineの作用機序および副作用につき文献的考察を行った.症例は23歳女性.昭和58年9月,顔面に座瘡様発疹が出現し,その後窄掘性潰瘍を形成した.皮疹はsteroid剤内服にのみ反応したが,減量(prednisolone acetate12.5mg/日以下)と共に潰瘍は増悪した.Salazosulfapyridine内服,cromoglycatedisodium液外用を併用したが無効であった.皮疹はclofazimine 1日400mg内服開始直後より急速に改善し,prednisolone acetateを増量することなく約1カ月で瘢痕治癒した.Clofazimine中止後,1年半経過しているが潰瘍の再発を認めていない.Clofazimineはsteroid剤にて治癒困難な症例に対し,試みるべき有用な薬剤と考えられた.

歯科用パラジウム合金によると思われる扁平苔癬の1例

著者: 禾紀子 ,   中山秀夫

ページ範囲:P.269 - P.273

 歯科用パラジウム合金のアレルギーによると思われる扁平苔癬の1例を報告した.70歳,男性で両頬粘膜・口唇・手掌・背部に皮疹は分布組織は扁平苔癬に一致.全顎にパラジウム合金を装着しており,Pd貼布試験は強陽性であった.口内電流測定の結果,1日のPdの電気化学的溶出量の理論値は138μg/日と高く,Pdを含まない金属に全換装した結果,1カ月後には著明な疹の改善をみ,その後全治して再発をみない.

免疫組織学的検討を加えた薬剤性Toxic Epidermal Necrolysisの1例

著者: 飯沢理 ,   相場節也 ,   加藤敦 ,   吉田洋一

ページ範囲:P.275 - P.279

 症例は56歳,男性.エヴァンス症候群の治療の目的でプレドニゾロンを使用し,さらに消化性潰瘍予防のためにラニチジンが投与された.ラニチジン内服10日後に発熱と全身の皮疹が生じ,ラニチジンの中止後も40℃台の発熱と全身の浮腫性紅斑が持続し,さらに大小の水疱,糜爛面が出現した.病理組織学的には基底層で諸処に液状変性がみられ,一部は真皮から表皮が分離して小水疱を形成し,さらにエオジンに濃染する変性細胞の周囲にリンパ球が集まっている像が散見された.臨床検査所見では,末梢血で白血球の減少がみられた.また免疫組織学的解析を試み,その結果Leu−2a陽性suppressor/cytotoxic-T細胞が,真皮内のみならず,表皮真皮境界部,および表皮内にも存在している所見を得た.このことから,toxic epidermal necrolysisの病因に細胞性免疫が関与していると考えた.

両側腋窩Paget病

著者: 大草康弘 ,   長島正治

ページ範囲:P.281 - P.284

 85歳,男性の両側腋窩Paget病の1例を報告した.左腋窩では周囲に色素沈着を伴う紅斑性局面内に糜爛が,右腋窩では淡い紅斑と色素脱失がそれぞれ認められた.組織学的にはいずれにもPaget細胞が確認され,それらはCEA染色,レクチンDBA,LFA染色で陽性反応を示した.電顕的には分泌型と非分泌型の両細胞が混在して認められた.腋窩Paget病の内外報告例を総括するとともに,片側腋窩Paget病では他側の病変に十分留意し積極的な生検を施行すべきことを述べた.

Spindle Cell Lipomaの2例

著者: 太田孝 ,   安部正瑞 ,   田中由比 ,   大原国章 ,   浦田裕次

ページ範囲:P.285 - P.288

 Spindle cell lipomaはEnzinger & Harveyによって提唱された脂肪腫の一亜型である.今回我々は,その2症例を経験したので報告した.症例1:21歳女性.右上腕外側の小豆大有痛性皮下結節.組織:成熟脂肪細胞と紡錘形細胞とが,粘液様基質,膠原線維の中で,種々の割合で存在.Mast cell (+).症例2:49歳男性.右側頸部の径15mmの無痛性皮下腫瘤.組織:症例1に比べ,成熟脂肪細胞の割合が少なく,膠原線維が多い.あわせて,若干の文献的考察も加えた.

成人型Xanthogranulomaの1例

著者: 望月隆 ,   卜部頼人 ,   杉浦久嗣 ,   渡辺昌平 ,   林進

ページ範囲:P.289 - P.292

 61歳,女性の下腿に単発した黄色肉芽腫につき報告した.初診の約半年前より左下腿伸側に丘疹が生じ,漸次増大した.初診時,直径約1cmで黄色の表面平滑な結節を認めた.組織学的検査では表皮は萎縮性で,表皮直下から真皮下層にかけてSudanⅢ染色陽性物質を含んだ,異型性のない組織球様細胞とTouton型巨細胞よりなる肉芽腫を認めた.鉄染色では一部の細胞に陽性所見を認めた.自験例に認められたTouton型巨細胞の立体モデルを画像解析装置を用いて作製した.これらの所見をもとに,本疾患とhistiocytomaとの異同につき,考察を加えた.

巨大単発型汗孔角化症—蛍光顕微測光法による表皮細胞核DNA量の検討

著者: 渡辺亮治 ,   大塚藤男 ,   下妻道郎 ,   土田哲也 ,   石橋康正

ページ範囲:P.295 - P.298

 66歳女性の左肘関節に生じた130×95mmの境界明瞭,落屑を伴った紅斑性局面を呈した汗孔角化症(PK)につき報告した.組織像ではcornoid lamellaを認める他に,局面内の表皮細胞にやや大きな核や空胞状の細胞がみられた.近年,PKに悪性腫瘍が続発する報告が多数みられるので,本症表皮の細胞学的性格を明らかにする目的で蛍光顕微測光法を用いて細胞核DNA量を測定した.対照正常表皮細胞は殆どが2倍体細胞で,G2/M期に相当する細胞は極く少数であった.一方,PK皮疹表皮にはSおよびG2/M期に相当するDNA量を有する細胞が比較的多数存在した.これら所見はPK表皮に増殖能の高い,あるいは異数倍体性のクローンが存在することを示唆し,巨大単発型PKは悪性化する頻度が高いといわれることとも関連すると推察された.

梅毒性天疱瘡の1例

著者: 岡昌宏 ,   玉置昭治

ページ範囲:P.299 - P.301

 梅毒の皮疹の中で先天性梅毒にのみ出現し,比較的稀な皮疹である梅毒性天疱瘡の1例を報告した.生直後の男児.生下時より両足蹠に発赤,膿疱が存在していた.梅毒血清反応は患児,両親とも強陽性を示していた.重症感染症兆候,肝機能異常等を示していたが,ペニシリン系抗生物質,交換輸血治療により全身症状は回復し,皮疹は生後3日目には軽度の発赤を残すのみとなった.梅毒性天疱瘡という名称の妥当性についてもふれた.

皮膚腺病の4例—高齢者と若年者症例

著者: 青木見佳子 ,   畑三恵子 ,   矢島純 ,   本田光芳 ,   伊藤博元 ,   惠畑欣一 ,   森園徹志 ,   柴原正明 ,   杉山千代志

ページ範囲:P.303 - P.307

 最近2年間に経験した69歳女性,69歳女性,26歳女性,22歳女性の4例の皮膚腺病を報告した.これら4例はいずれも家族歴・既往歴に結核発症のリスクファクターを有していた.又,最近23年間に報告された皮膚腺病61例を検討したところ,初診時年齢の高齢化とともにリスクファクターを有する若年者の発症が認められた.

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本誌新編集委員の御紹介 フリーアクセス

著者: 編集室

ページ範囲:P.310 - P.310

本年1月より新たに新村眞人先生(東京慈恵会医科大学教授)に本誌の編集委員として御参加いただきましたので御紹介いたします.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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