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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科43巻4号

1989年04月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Pseudocyst of the Auricleの2例

著者: 塩野正博 ,   清水良輔 ,   村川洋三 ,   谷昌寛 ,   藤田隆

ページ範囲:P.318 - P.319

〔症例1〕
患 者 38歳,男性
 家族歴・既往歴 特記すべきことなし.

原著

Urticarial Vasculitis様皮疹を伴った慢性蕁麻疹—血清脂質および血清脂肪酸の検討

著者: 小林寿美子 ,   牛腸広樹 ,   山本紀章

ページ範囲:P.321 - P.326

 44歳,主婦.約3年間経過観察しえた症例で臨床像はurticarial vasculitis (UV)をみたしているが,病理組織学的にleukocytoclastic vasculitisの所見がなく,また低補体血症を伴わない慢性蕁麻疹を慢性蕁麻疹とUVとの中間型と考えた.対照として,健常者群11例(男:6,女:5),慢性蕁麻疹群9例(男:2,女:7)を用い,血清脂質および脂肪酸と皮疹の変化を検討した.血清脂質のT-cho (総コレステロール),FFA (遊離脂肪酸),PL (燐脂質),LP (過酸化脂質),脂肪酸のC18:2,C18:3,C20:4,C22:6は皮疹の改善とともに下降の傾向を認めた.C18:2,C18:3はPGE1,PGE3の前駆体であることよりメディエーターとしてPGE1とα—トコフェロール(ビタミンE)の有効からアラキドン酸カスケードのC20:4→リポキシゲナーゼ→5-HPETE→LTA4→LTC4→LTD4→LTE4(SRS-A)のメディエーターが示唆された.

症例報告

メタゾラミドによるToxic Epidermal Necrolysisの1例

著者: 田中勝 ,   渡辺匡子 ,   山崎雄一郎 ,   籏野倫

ページ範囲:P.327 - P.330

 炭酸脱水素酵素阻害剤であるメタゾラミド(ネプタザン®)によると考えられた64歳女性のtoxic epidermal necrolysisの1例を報告し,既報告例と比較検討した.メタゾラミドはtoxic epidermal necrolysisを生じる頻度の高い薬剤と思われた.この疾患の治療には,従来ステロイドが必須とされていたが,諸外国の近年の報告をみると,使用すべきでないとする報告が多い.しかし,自験例のような亜急性の経過や,その病因としての遅延型過敏症を考慮するとやはり有用ではないかと思われた.

DDSによる皮膚筋炎皮膚症状治療の試み

著者: 栗原誠一 ,   浦亜紀子 ,   天野佳子 ,   生冨公明 ,   宮本伸子 ,   小林都江 ,   多島新吾

ページ範囲:P.331 - P.336

1)37,27,74歳女性の皮膚筋炎症例に見られた皮膚症状(前2者はステロイド減量中再燃,後者はステロイド剤内服前)に対しDDSを投与し,十分な臨床効果を得た.紅斑・潮紅が著明に軽快したが,浮腫には無効のようであった.また,筋症状にも有効である印象を受けた.2)本症に対するDDSの効果発現は,皮膚筋炎皮疹部組織には,液状変性と浮腫,細胞浸潤に加えて出血と血管変化が観察されることから,血管病変に対する作用を推論した.

滲出性紅斑を生じ一過性に発熱,耳下腺腫脹を呈した亜急性皮膚エリテマトーデスの1例

著者: 川久保洋 ,   小林孝志 ,   山田晴義 ,   仲弥 ,   西川武二

ページ範囲:P.339 - P.343

 39歳,男.亜急性皮膚エリテマトーデス(subacute cutaneous lupus erythema-tosus,以下SCLEと略す)の経過中,前胸部の滲出性紅斑および発熱,耳下腺部の発赤腫脹,口腔内の乾燥症状が出現し検査所見上抗核抗体陽性,抗SS-Aおよび抗SS-B抗体陽性,口唇唾液腺生検組織,唾液腺管造影像からシェーグレン症候群(SjS)の合併が考えられた症例を報告した.滲出性紅斑の病理組織学的検査にて,ごく軽度の表皮基底細胞層の変化と真皮上,中層に血管,付属器(汗腺も含む)周囲性のリンパ組織球の浸潤を認めた.Lupus band testは陰性.自験例はSCLEとSjSの関連性を強く示唆する症例と思われた.また,抗SS-B抗体が乾燥症候群や滲出性紅斑の出現と関連している可能性について述べた.

遺伝性良性血管拡張症の家族例

著者: 渡辺真理子 ,   富田靖 ,   小幡正明 ,   田上八朗 ,   林富

ページ範囲:P.345 - P.348

 2歳と5カ月の姉妹と29歳の父親にみられた遺伝性良性血管拡張症(hereditarybenign telangiectasia,以下HBTと略す)を報告した.本症は1971年,Ryan&Wellsにより提唱された.家族性に良性の血管拡張性の紅斑を認める疾患である.彼らのいずれの症例も紅斑は出生1年以降に出現しているが,私たちの3症例は出生時にすでに発疹を認めているので,HBTの先天型であると考えた.私たちの症例は,HBTの本邦における最初の報告例である.また,血管拡張を示す類似疾患との鑑別について考察を加えた.

帯状疱疹に合併したDIC症候群の1例

著者: 矢村宗久 ,   浜中和子

ページ範囲:P.349 - P.352

 72歳,男性.特に基礎疾患は有さない.右三叉神経第一枝領域の帯状疱疹の経過中にDIC症候群を合併.初発症状として血尿・紫斑・歯肉出血などの出血症状のほか,意識レベルの低下,乏尿を認めた.極期の凝血学的検査は血小板1,000/mm3,フィブリノーゲン310 mg/dl,血中FDP40〜80μg/ml,出血時間30分,凝固時間10分以上,血沈1時間値4mm・2時間値13mmで,DICscoreは4であった.メシル酸ガベキサート(商品名FOY)2,000mg/日とヘパリン2万単位/日の持続点滴にて治療を開始したが,出血症状の増悪あり,ヘパリンは投与2日目に中止した.結局FOYと血小板製剤の大量投与にて救命することができた.経過中,AT—Ⅲは正常範囲内で,抗血小板抗体は陰性であった.

皮下結節,皮下膿瘍を多発したMycobacterium marinum感染症

著者: 伊藤篤 ,   小幡秀一

ページ範囲:P.353 - P.357

 皮下結節,皮下膿瘍を多発したMycobacterium marinum感染症の1例を報告した.自験例は約9カ月の間に左手指から始まり,左肘,右膝,右下腿へと次々に病変が生じ,生検組織からの分離菌は37℃で発育可能なものであった.治療は抗結核剤およびミノサイクリン投与,皮下結節の切除を行った.過去の報告例と自験例の比較において皮疹の形態,検査所見,感染様式について興味ある共通性が見出され,これに加え自験例のもつ特徴について考察した.

頭部に生じたNevus Lipomatosus Cutaneus Superficialis

著者: 菅本育子 ,   茶之木美也子 ,   鈴木伸典

ページ範囲:P.359 - P.361

 12歳,男性.9歳頃より後頭部の自覚症状のない弾性軟の丘疹の集簇融合した病変に気づいた.組織学的所見で真皮内に成熟脂肪細胞よりなる胞巣が散在性にみられ,nevus lipomatosus cutaneus superficialisのmultinodular plaque formと診断した.好発部位である腰臀大腿部以外の報告例は少なく,頭部に発症した稀な症例と考えられる.本疾患の概念と従来の報告例について文献的考察を加えた.

悪性血管内皮細胞腫の1例

著者: 小野寺有子 ,   野田淳子 ,   桜岡浩一 ,   増田光喜 ,   清水宏 ,   仲弥 ,   西川武二

ページ範囲:P.363 - P.368

 56歳,女性の悪性血管内皮細胞腫の1例を報告した.皮疹は左側頭部全体に瀰漫性に軽度隆起する板状硬,暗紅色の局面で,腫瘤形成は認めなかった.組織学的に腫瘍細胞は真皮全層に亘り,索状,胞巣状に増殖し,一部には管腔形成を認めた.腫瘍細胞は第VIII因子関連抗原陽性,電顕的にWeibel-Palade顆粒を有し,血管内皮細胞に由来した腫瘍であることが確認された,治療としてLinac 6,000 rad照射,CYVADIC療法およびadriamycin動注を施行したところ,病変部の硬結および紅斑は徐々に消退し,治療後の皮膚生検組織像では腫瘍細胞の減少を認め,治療開始後1年3カ月を経た現在,再発をみない.本症の組織学的診断には,通常のHE染色の他,免疫組織化学的ならびに電顕的検索が必要であると考えた.

多発性グロムス腫瘍における交感神経の分布について

著者: 岸本三郎 ,   岡史子 ,   秋月みわ子 ,   小林和夫 ,   真崎晴雄

ページ範囲:P.369 - P.374

 14歳,女性の全身に生じた有痛性,一部無痛性の多発性グロムス腫瘍の1例を報告した.組織学的には病巣の大部分は数層のグロムス細胞より成る典型的な多発性グロムス腫瘍であったが,一部には血管平滑筋腫構築部もみられ,Enzinger&Weissの分類に従うとglomangiomyomaであり,電顕的には未分化な腫瘍であった.腫瘍間質には交感神経の密な分布を認めたが実質には少なかった.すでに報告した分化型および未分化型の単発性グロムス腫瘍の交感神経の分布と比較すると,間質にみられた密な分布はいずれのグロムス腫瘍にも共通した所見であった.単発性・未分化型では腫瘍実質内にも交感神経の密な分布がみられたが,本例では未分化型であるにもかかわらず交感神経は少なかった.この差異は腫瘍細胞の増殖程度を反映しているものと考えられた.

Malignant Fibrous Histiocytoma(Angiomatoid Type)の幼児例

著者: 荻野篤彦 ,   遠藤顕子

ページ範囲:P.375 - P.379

 1歳7カ月男児.4カ月前に前胸部の中央に打ち身様の青色斑が生じ,月に1回程度,突発的に痛みを伴って血腫状に膨隆する発作をみた.初診時,同部位に局面性に鶏卵大の浸潤性硬結を触れ,その後も同様な発作が数回繰り返され,1年後には75×61mm大と増大したので,全麻下に摘出した.病理組織所見は真皮中層より下方および皮下脂肪織に広範囲にstoriform patternを示す密な線維性増生部分と粘液変性を示す部分があり,一部にはクロマチンの濃い核を有する異型性の強い大型の細胞が浸潤し,管腔を形成するように配列するところもある.両領域を引き裂くように大きな裂隙形成があり,赤血球を容れているが壁に内皮細胞はみられない.術後5年しても再発および転移はない.本例はmalignant fibrous histiocytomaのうちで,とくに若年者に多く見られる"angiomatoidtype"に属すると思われる.

十二指腸球部癌臍転移の1例—経上皮性排除現象のみられた症例

著者: 大草隆代 ,   甲原資秀 ,   長島正治

ページ範囲:P.381 - P.384

 65歳,男性の十二指腸球部癌臍転移の1例を報告した.内科にて転移性肝癌と診断され,原発巣の検索中,2カ月前より臍部に腫瘤が出現し当科を受診した.臍部腫瘤は組織学的に腺癌の臍転移であり,経上皮性排除現象を伴っていた,臍腫瘤出現約5カ月後,肝性脳症また腎障害にて死亡した.剖検の結果,生前発見された前立腺癌の他に十二指腸球部癌が発見された.原発巣決定のため前立腺特異抗原を用い免疫組織学的に検討した結果,臍転移巣は陰性を示し十二指腸球部癌が原発巣と考えられた.十二指腸球部癌の臍転移の報告は内外とも認められず,極めて稀な症例と考えられたので文献的考察を加えて報告した.

Acral Lentiginous Melanoma in Situの2例

著者: 内田玲 ,   塚本克彦 ,   白玉基次 ,   宇野明彦 ,   高山修身 ,   島田眞路 ,   堀嘉昭

ページ範囲:P.385 - P.389

 Acral lentiginous melanoma in situ (ALM in situ)の2症例を報告した.症例1は径10×13mmの不規則な辺縁を有する足底色素斑で,色調は黒色から黒褐色,辺縁には淡褐色の滲み出しもみられ,悪性黒色腫を疑わせた.症例2は径5×4mmの類円形の境界やや不明瞭な黒褐色の足底色素斑で,母斑細胞母斑が考えられた.病理組織学的には双方とも表皮基底層および一部有棘層内に異型メラノサイトの不規則な増殖が見られ,表皮下層には同様の細胞が集団をなして,あるいは胞巣を形成している部位も認められた.真皮内への異型メラノサイトの浸潤は認められなかったため,ALM in situと診断した.特に症例2は母斑細胞母斑と臨床的にほとんど鑑別不能であり,足底の色素斑の詳細な臨床的観察および切除は診断治療上非常に重要と思われる.

特異なリンパ管侵襲("in-transit"転移)をみた足底の結節型黒色腫—スタンプ蛍光法ならびに穿刺吸引蛍光法の観察所見

著者: 兼松秀一 ,   森嶋隆文 ,   鮫島俊朗 ,   鈴木公明 ,   柴田明彦 ,   花輪滋

ページ範囲:P.391 - P.395

 右足底に原発した結節型黒色腫の広範囲切除術と所属リンパ節郭清術6カ月後に特異な"in-transit"転移をみた48歳,女性例を報告した.自験例で興味あることは以下の通りである.(1)病巣表面からのスタンプ蛍光法が黒色腫原発巣の術前診断法として.病巣割面からのそれは術中迅速診断法として有用であること,(2)穿刺吸引蛍光法が皮下転移巣の術前診断法として有用であること,(3)穿刺吸引法による所見は19Gより細い27G注射針による方法が優れていたこと,(4)"in-transit"転移が臨床的に黒色索状構造物として観察され,病理組織学的にはリンパ管であり,蛍光法的には黒色腫細胞は顕著なメラニン産生能を有すること,(5)特異なリンパ管侵襲の発症機序は,原発巣切除時,すでに流域リンパ管内に黒色腫細胞が移行しており,所属リンパ節が郭清されたため,行き場を失った黒色腫細胞がリンパ管内で増殖したものと考えられたことなどである.

多彩な日和見感染症を併発したATLの1剖検例

著者: 児浦純義 ,   森下玲子 ,   徳永正義 ,   徳留一博 ,   松本正

ページ範囲:P.397 - P.400

 7種類の重複感染(HBV,CMVの各ウイルス感染,体部白癬,カンジダ症,アスペルギールス症,クリプトコッカス症,疥癬)という多彩な日和見感染症を併発し,病悩期間8カ月で死亡したATLの1症例を報告した.皮膚腫瘤とリンパ節の組織像はdiffuse large cell typeであった.リンパ腫細胞の免疫組織染色:皮膚腫瘤;OKT3,OKT11,OKT4が陽性.介在する小型リンパ球は大部分OKT8陽性,リンパ節;OKT3,OKT11,OKT8,OKT4が陽性.OKT8>OKT4.皮膚とリンパ節以外に心臓,骨,脾臓にリンパ腫細胞の浸潤を認めた.本症例を含めて5例のATL剖検例を経験しているが,4例に心臓への浸潤を認めた.重篤な感染症の併発はこの症例のみである.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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