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原著
悪性黒色腫初期病変の臨床所見—スナップ写真による検索
著者: 斎田俊明1
所属機関: 1信州大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.807 - P.811
文献購入ページに移動 悪性黒色腫原発巣部が撮影されている過去のスナップ写真を患者に持参させ,これをもとにして先行病変の臨床所見を検討した,手掌原発の結節型悪性黒色腫症例では,初診の4年前に,大きさ約7×14mmの不整三角形状の濃褐色斑が存在していたことが確認された.顔面の悪性黒子症例では,初診の14年前に,直径約5mmの淡褐色斑が存在していた.2症例とも病歴上,先行病変は約30年前より存在していたと推定された.悪性黒色腫に先行して,しばしば認められる色素性病変について文献的考察を加えた上で,これらの先行病変の多くはdysplastic nevusなどの色素細胞母斑ではなくて,悪性黒色腫の初期病変そのもの,すなわちmalignant melanoma in situであろうとのわれわれの考え方を提示した.もし多くの悪性黒色腫がmelanoma in situの状態でかなり長期にわたり存在しているものとすれば,この段階での早期発見が不可能ではないことになる.悪性黒色腫の先行病変の本熊の解明が待たれる.
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