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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科44巻1号

1990年01月発行

雑誌目次

カラーアトラス

環状扁平苔癬

著者: 谷昌寛 ,   澄川康祐

ページ範囲:P.6 - P.7

患 者 45歳,女性
初 診 昭和62年8月12日

原著

粘液腫様の組織像を呈した神経線維腫

著者: 勝俣道夫 ,   佐藤貴浩 ,   江副和彦 ,   堀江直茂 ,   野崎清恵

ページ範囲:P.9 - P.13

 57歳,女子の右耳介上方に生じた7×6×3mmの弾性硬,淡紅色調,表面顆粒状で圧痛を伴う小結節につき報告した.組織学的に腫瘍は真皮上層の結合織性被膜により多数の小葉に分けられた病変で,病変中にはアルシャンブルー染色で陽性を示す淡青色の無定型物質が充満していた.腫瘍細胞は紡錘形または星芒状の核を有する細胞で,細胞間には相互を連絡するゆるやかに渦状に配列する網状物が認められた.免疫組織化学的に大多数の腫瘍細胞はS−100蛋自陽性を示し,また同蛋自のα鎖は強陽性を,β鎖は弱陽性を呈した.電顕的に腫瘍細胞は切れ込みのある核を有し,細胞質内には細線維が豊富で,ミトコンドリアや粗面小胞体,小空胞も認められ,細胞周囲には明瞭なbasal laminaが存在していた.本症例を粘液腫様の組織像を呈した神経線維腫と診断し,腫瘍細胞間の網状物がゆるやかに渦状に配列することがその最大の組織学的特徴であると考えられた.

Sebaceous Folliculoma

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.15 - P.19

 やや深部における限局性の成熟脂腺増生とその周囲の層状結合織増生とを主徴とした2例を報告した.症例1:37歳,家婦.8年前に右頬に痤瘡様皮疹が生じて漸次増大し,豌豆大腫瘤となる.症例2:24歳,男.2カ月来頭頂の脱毛斑に気づくが、皮下に小指頭大の腫瘤あり.組織像:2例とも開大したsebaceous follicleがあり、二次性導管を経て成熟脂腺増生がかなり深部に限局性にみられ、周囲に層状結合織増生と一部に炎症性細胞浸潤をみる.毛分化の所見は全くない.結合織増生部は弾力線維染色陰性である.これらの所見はsebaceous hyperplasiaの種々の病型やsebaceoustrichofolliculomaの原著例とは合致しない.自験2例はその臨床的・組織学的特徴からsebaceous folliculomaないしsebofolliculomaと呼称するのが適切な,一つの新しい疾患と考えられた.

透析患者と皮膚病変について

著者: 服部瑛 ,   神谷哲朗 ,   石田耕一 ,   土屋秀一 ,   原健次 ,   岡本暉公彦

ページ範囲:P.21 - P.24

 透析患者における皮膚病変について検討した.その結果,多くの多彩な皮膚病変の合併を認めた.その中で,乾燥性皮膚が最も頻度が高く,瘙痒症が最も患者に苦痛を与えている症状であった.乾燥性皮膚に関して,透析患者では,角層水分量および経皮水分喪失量の著しい低下を認めた.さらに皮膚レプリカ像で皮野の面積の拡大と乱れを認めた.透析患者皮膚のpHは健常人に比べ高値であった.瘙痒との関連を推定し,酸性クリームを作製,瘙痒の強い透析患者に塗布したところかなり有効な成績を得ることができた.

研究ノート・1

究極の臨床研究

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.13 - P.13

 1985年5月,シドニーのオペラハウスで,私は忘れ難い光景に遭遇した.第16回国際リウマチ学会総会で,国際リウマチ学会賞の表彰式が行われ,ライム病を発見したSteereらのグループが,数千の参加者たちから惜しみない拍手を浴びていたのである.受賞の理由として,「ライム病を発見し,その原因を究明し,治療法を確立した」ことが挙げられ,一つのグループが病気の発見から治療まで一貫して研究を完遂したのは「コッホ以来の快挙」として賞讃された.
 おそらく,ライム病は以前から地球上に存在し,今までに何人もの臨床医が同じ病気を何気なく診てきたものと思われる.集団発生という疫学的背景があったとしても,臨床医の鋭い洞察力がなければ,ライム病も埋もれてしまっていたかもしれない.さらに大切なことは,同一の研究グループが原因スピロヘータを同定し,したがって有効な治療法にまでたどりついた点である.臨床研究が基礎研究にfeed backされ,再び臨床に還元されたわけである.同様のことは,ATLを発見し,ウイルスを同定したわが国の研究グループにもあてはまるものと思われる.

今月の症例

Phialophora repensによる皮下肉芽腫の1例

著者: 中野和子 ,   横山一郎 ,   北島淳一 ,   広永正紀

ページ範囲:P.25 - P.28

 Phialophora(以下P.)repensによる真菌性肉芽腫の1例を報告し,かつ,P.repensをとりまく菌学的な諸問題と近縁種による真菌症についても考察した.自験例は,63歳の男性の左手背に生じた表面淡紅色で隆起した皮下腫瘤で,組織学的には皮下組織内に巣状に形成された限局性の肉芽腫としてみられ,強い反応性の結合線維の増殖によって取り囲まれていた.個々の肉芽腫は,多核白血球からなる微小膿瘍を取り囲み,しばしばその中央には「顆粒」に類似の大小の菌糸塊が認められた.また,これらの微小膿瘍中には,遊離の短い菌糸も少数,あるいは場所によっては多数認められた.これらの菌要素は,HE標本では,大部分がほぼ無色であったが,なかには部分的に淡褐色を示すものも認められた.培養によりP.repensを得た.今日までに,本菌種によるヒトの感染例は海外で1例報告されているのみである.

症例報告

大阪府下に発生した小児の新型恙虫病

著者: 加藤晴久 ,   辻卓夫 ,   高橋邦明 ,   金友仁成

ページ範囲:P.29 - P.32

 大阪府下に発生した恙虫病につき報告した.患者は11歳,男子.1988年11月12,13日,大阪府下生駒山麓へキャンプに出かけた.11月21日,38度台の発熱,頭痛,全身倦怠が出現し,28日には全身に軽度の浸潤を触れる紅斑が出現した.29日の初診時,左腋窩部に虫の刺し口が認められたため,恙虫病を疑い,テトラサイクリン内服にて治療開始したところ,著効が得られた.経過中Weil-Felix反応は陰性.間接免疫ペルオキシダーゼ反応および間接蛍光抗体法の結果より病原恙虫病リケッチアの型はギリアム(Gilliam)株と診断した.寒い季節の発生より,フトゲツツガムシかタテツツガムシによる新型恙虫病と思われる.大阪府下の恙虫病発生はきわめて稀であり,これを報告するとともに,本症の疫学を含めて検討を加えた.

Yersinia pseudotuberculosis感染症の1例

著者: 熊谷正彦 ,   石井紀孝

ページ範囲:P.33 - P.36

 多形紅斑様皮疹を呈したYersinia pseudotuberculosis感染症の1例を報告する.症例は69歳女性で,発熱・右下腹部痛・軟便をもって発症し,やや遅れて手掌・両前腕・項部・足底などに圧痛を有する浮腫性紅斑性局面を散在性に生じた.糞便からのエルシニア菌の培養は不成功であったが,血清抗体価の測定によりYersiniapseudotuberculosis Type Ⅳ B感染症と診断しえた.

妊婦梅毒の1例

著者: 長尾洋 ,   森下佳子 ,   赤木芳文

ページ範囲:P.37 - P.41

 39歳,妊婦(妊娠15週).梅毒性乾癬,梅毒性アンギーナ,丘疹性および結節性梅毒疹を呈したⅡ期顕症梅毒を報告した.初診時,緒方法抗体価320倍以上,TPHA法5120倍以上であったが,AMPC 1.0g/日,合計19週間の内服治療により無事正常健康児を出産した.妊婦梅毒における治療開始時期,治療薬剤および治療期間について文献的に考察し,私見を述べた.

落ちない化粧法で局所サルコイド反応を呈した1例

著者: 谷垣武彦 ,   市田哲一 ,   太田順子

ページ範囲:P.43 - P.45

 落ちない化粧法を受けた部位に一致して肉芽腫が発生した28歳女性を経験した.その組織像は典型的なサルコイド反応で,異物,抗酸菌は認めなかった.この反応は,パッチテストで水銀,ニッケル,コバルト,クロムは陰性の所見から,サルコイドーシスにおける瘢痕浸潤に起因したいわゆる局所サルコイド反応とした.なお,同様の症例があった場合,追跡,検索が必要と考えた.

多彩な皮膚症状を呈した第二期顕症梅毒の1例

著者: 中島宏 ,   山田晴義 ,   増田光喜 ,   西川武二

ページ範囲:P.47 - P.50

 28歳,女性.多彩な皮膚症状を呈した第二期顕症梅毒の1例を報告した.初診時,手掌足蹠の丘疹性梅毒疹,頭部の梅毒性脱毛症,口腔粘膜の乳白斑,肛囲の扁平コンジローマに加えて左手背・両側踵部では色素性梅毒疹を,口唇では陳旧性の陰部外下疳を認めた.Bicillin内服により皮疹はいずれも消褪した.

結節性多発動脈炎—本症の診断における血管造影の有用性について

著者: 佐藤茂樹 ,   隅田さちえ ,   片岡和洋 ,   山本正治 ,   木村正二郎

ページ範囲:P.51 - P.54

 右膝下方の皮膚潰瘍を主訴として来院し,臨床症状および血管造影所見により結節性多発動脈炎(PN)と診断した65歳男性例を報告した.組織学的には定形的な血管炎の像は認めなかったが,臨床的には厚生省研究班による診断の手引主要15項目のうち9項目をみたし,血管造影所見と合わせてPNと診断した.本症の診断における血管造影の有用性について若干の文献的考察を行ったので合わせて報告する.

巨大なPilobezoarsによるイレウスを合併したTrichotillophagimaniaの1例

著者: 海新華 ,   王仁林

ページ範囲:P.55 - P.58

 13歳,女子.巨大なpilobezoarsによるイレウスを合併したtrichotillo—phagimaniaの1例を報告した.自験例は5歳より自分の頭髪を抜き食べていた.頭部に約50cm2の脱毛巣がみられた.排便時,12×3cmのpilobezoarが排出され,手術にて胃内から25×7cm大のpilobezoarを摘除した.術後3カ月目には脱毛は完治した.現在まで再発を認めない.また,trichotillophagimaniaという疾患の命名,定義および診断基準を述べると共に,本疾患の病因,臨床症状と治療について若干の文献的考察を試みた.

Solitary Piloleiomyoma—症例報告と本邦例の集計

著者: 菊池新 ,   秋山真志 ,   桜岡浩一 ,   早川和人 ,   仲弥

ページ範囲:P.59 - P.62

 66歳男性の右下腿全面に生じたsolitary piloleiomyomaの1例を報告した.大きさ13×13mm,表面褐色平滑,弾性硬の中央が半球状隆起する結節で自発痛を伴う.病理組織学的には真皮乳頭層直下より深層にかけ平滑筋線維束が密に増殖する像が認められた.この腫瘍塊には明らかな被膜や腫瘍内の血管増生は認められず,腫瘍の一部に正常立毛筋との連続を示唆する所見が認められた.また腫瘍直上の表皮には基底層の色素沈着,表皮突起の延長がみられた.自験例を含めたsolitary piloleiomyomaの本邦報告例15例につき若干の文献的検討を加えた結果,本腫瘍は中高年の四肢伸側に好発し,大きさ10mm程度,紅褐色調,弾性硬で疼痛を伴うものが多いことが示された.

両側性限局性神経線維腫

著者: 小林伸子 ,   大城守夫 ,   後藤裕美 ,   檜山清水 ,   吉田寛子 ,   小野真理子 ,   橋本謙

ページ範囲:P.63 - P.67

 51歳女性の前胸・腹部に正中線を越えて発生した両側性限局性神経線維腫の1症例を経験した.本症はRecklinghausen病の辺緑疾患の一つと考えられているが,両側性病変を認めたとする報告は調べ得た限りでは現在までに3例をみるにすぎず,本症例のようにcafe au lait斑をみないものは2例のみで,本邦人での報告はない.現在,限局性神経線維腫の分類には若干の混乱がみられるが,この発現機序を考える上で本症例は興味のあるものと考えられた.

病巣中にBowen病様組織像がみられた乳房外Paget病の1例

著者: 西浦清一 ,   阿曽三樹 ,   島雄周平

ページ範囲:P.69 - P.72

 外陰部Paget病の1例を報告した.症例は79歳男子.昭和62年6月頃に外陰部の紅斑に気付いた.昭和63年9月13日に当科を受診し,外陰部Paget病を疑って生検を行った.HE染色では,肥厚した表皮内に大型の細胞とクロマチンに富み胞体の乏しい細胞とが混在し,Bowen病様の組織像であった.辺縁部の生検では,胞体の大きな細胞が胞巣を形成しておりこの細胞は免疫組織学的にcarcinoembryonicantigen(CEA)が陽性であった.さらに,最初の生検部の大型の細胞もCEAが陽性であったことから,自験例を一部にBowen病様組織変化を伴った外陰部Paget病と診断した.また,サイトケラチンに対する単クローン抗体PKK1を使用して免疫組織染色を行い検討を加えた.

サルコイドーシスに悪性リンパ腫を併発した1例

著者: 小林孝志 ,   佐藤真理子 ,   橋本喜夫 ,   筒井真人 ,   松本光博 ,   飯塚一

ページ範囲:P.73 - P.77

 58歳,女性.四肢,前額,左耳介に赤色丘疹を認め,顔面には腫脹性紅斑を伴う.臨床所見,検査所見,組織所見よりサルコイドーシスと診断しステロイド内服により経過観察していたところ,初診の約1年半後より左腋窩に腫瘤が出現,リンパ節生検にてmalignant lymphoma(lgGλ型B cell lymphoma;LSG分類diffusemixed type)と診断した.Sarcoidosisとmalignant lymphomaの関係について文献的に考察した.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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