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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科44巻2号

1990年02月発行

雑誌目次

カラーアトラス

外歯瘻

著者: 森下佳子 ,   長尾洋 ,   柳治夫

ページ範囲:P.88 - P.89

患 者 31歳,男性
初 診 昭和62年5月20日

原著

エックリン分泌部への分化を示す汗器官癌(Eccrine Spircarcinoma)—組織学的,酵素および免疫組織化学的,電顕的検討

著者: 勝海薫 ,   赤井昭 ,   藤原浩 ,   清水直也 ,   中村雄彦

ページ範囲:P.91 - P.96

 81歳,女性の右頬部に生じた汗器官癌の1例を,組織学的,酵素および免疫組織化学的,電顕的に検索した.組織学的に腫瘍細胞は円柱状ないし立方形の異型細胞で,腺様・管腔構造の形成が顕著である.しかし,明らかなクチクラや断頭分泌像は認められない.組織化学的に,酵素活性はフォスフォリラーゼとコハク酸脱水素酵素が陽性.また抗S−100蛋白抗体,汗器官分泌部細胞特異性抗ケラチン抗体RGE−53で大部分の腫瘍細胞が反応陽性,抗セクレタリーコンポーネント抗体で一部の腫瘍細胞が反応陽性であった.電顕的に,腫瘍細胞は分泌顆粒を有し,細胞間分泌小管を認めた.以上の所見より本腫瘍をエックリン分泌部への分化を示す汗器官癌(eccrinespircarcinoma)と診断した.

慢性関節リウマチに伴う血管炎—その皮膚病変を中心として

著者: 木花いづみ ,   石河晃 ,   生冨公明 ,   安達正則 ,   松岡康夫 ,   加茂紘一郎

ページ範囲:P.97 - P.102

 慢性関節リウマチ患者にみられた血管炎の4例を報告した.肘,手掌,指の血疱,丘疹,臀部の結節,潰瘍,下腿の紫斑,潰瘍,足顆部の巨大な血疱など多彩な臨床像を呈し,組織学的にはleucocytoclastic vasculitisの所見を認めた.Rheumatoid vasculitisおよびそれに伴う皮膚病変につき,若干の文献的考察を行なった.

角層下膿疱性皮膚症—とくにIgA天疱瘡との関係について

著者: 水元俊裕 ,   広川政己 ,   橋本喜夫

ページ範囲:P.103 - P.107

 Subcorneal pustular dermatosis(SPD,Sneddon-Wilkinson)様の皮疹を呈しつつ,組織学的には角層下好中球性膿疱のなかに棘融解状表皮細胞の集塊をみるものの,治療上,DDSに非常に良好な反応を示した46歳,女性の1例を報告した.検査上,IgA paraproteinは陰性,免疫組織学的検討はできなかったが,SPDの一亜型と考えた.近年の報告によると,SPD様皮疹を示すもののなかにはさまざまの病態を異にするものが含まれるという.Beutnerら15)の報告をもとに,筆者らはこれを便宜上,subcorneal pustular dermatosis群とIgA pemphigus群に分け,前者をさらにSneddon-Wilkinson型,Wallach型,後者をfoliaceus型とintraepidermal neutro-philic型に分けて,これら相互の鑑別点を臨床病態学的および免疫組織学的所見の面から述べた.

研究ノート・2

フリーラジカル研究

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.96 - P.96

 最近のフリーラジカル研究の隆盛には眼を見張るものがある.さまざまな雑誌が特集を組み,研究会には500人以上の人々が集まる.1980年ころ,「活性酸素」という演題を出すと,必ずといっていいほど座長の先生に「活性酵素」といわれたことを思い出すと隔世の感がある.自分の研究領域がブームになるのは,何か認知されたようでとても嬉しいが,単なるブームに終わってしまうのではないかという危惧もある.
 ここ10年ほどの医学におけるフリーラジカル研究は,主にscavengerを用いた,いわばinhibitor studyであったために,ありとあらゆる病気が,きわめてeasyに,フリーラジカルが関与すると発表されてきた.今後10年の間に,フリーラジカルのフィーバーは去り,冷静な研究者によって,いくつかの病態が淘汰され,フリーラジカル研究の成熟をみる時が来るものと思われる.

症例報告

ナフトールASによる接触皮膚炎

著者: 大津晃 ,   小嶋茂雄

ページ範囲:P.109 - P.112

 76歳,男.ネル寝間着を着用後,色素沈着型接触皮膚炎を生じた例を報告した.臨床所見で角層下膿疱を認め急性炎症所見も強かった.貼布試験:寝間着片(asis)(++),ナフトールAS(0.1,1%)(++),2-ヒドロキシ−3-ナフトエ酸(0.1,1%)(−),2-ナフトール(0.1,1%)(−),ナフタレン(0.1,1%)(−),ネル片のナフトールAS:3450ppm.若干の文献的考察を行った.

尋常性乾癬のEtretinate療法中に生じた小丘疹,小紅斑—Retinoid-induced köbner Phenomenon

著者: 種井良二 ,   山本達雄

ページ範囲:P.113 - P.116

 74歳,女.1988年1月11日初診.尋常性乾癬のetretinate療法中,腰臀部・腹部に暗赤色小紅斑と淡紅色小丘疹が発生,治療継続によりいずれの皮疹も既存乾癬皮疹とともに軽快した.暗赤色小紅斑は滴状乾癬様であり,汎発性に発生した半米粒大までの大きさの淡紅色小丘疹は臨床的には乾癬とは言い難いものの組織学的には乾癬の初期の像を示した.従ってこれら小丘疹,小紅斑は乾癬の初発疹であり,etretinate内服をきっかけに生じたKöbner現象—Retinoid-induced Köbner Phenomenonと考えた.

線状扁平苔癬の3例

著者: 大竹直人 ,   八坂なみ ,   赤須玲子 ,   窪田泰夫 ,   宇野明彦 ,   島田眞路

ページ範囲:P.117 - P.121

 26歳女,72歳女,30歳女に認められた線状扁平苔癬の3例を報告した.3例はいずれも線状配列を示す紅色丘疹,または苔癬様皮疹を主訴としたことにより,線状扁平苔癬,線状苔癬,炎症型線状表皮母斑の鑑別診断が必要であった.臨床的所見と病理組織学的所見を合わせた総合的判断に基づき,3例とも線状扁平苔癬と診断した.

Amyloidosis Cutis Nodularis Atrophicansの1例

著者: 海老原全 ,   小粥雅明 ,   杉浦丹 ,   秋山真志

ページ範囲:P.123 - P.127

 74歳,女.左頸部に血疱様外観を呈する結節,背部に表面萎縮性の扁平ないし軽度隆起性脱色素斑を数個有するamyloidosis cutis nodularis atrophicans(Gottron)の1例を報告した.病理組織学的に,頸部の結節では,真皮全層,皮下組織にかけて塊状,結節状,血管付属器周囲性にエオジンに淡染する物質の沈着を認め,組織化学,電顕にて同物質をアミロイドと同定.さらにアミロイド沈着部に一致して抗AL(λ)抗体陽性の所見が得られ,本症はALアミロイドーシスに属するものと考えられた.また背部の脱色素斑では血管周囲のみにアミロイド沈着を認め,血管周囲よりアミロイド沈着が始まることが予想され,全身性アミロイドーシスを疑わせた.さらに本邦報告例を検討し,本例と同様の,類全身型ともいうべき症例が含まれると考えられた.

チオプロニン投与中にIgA単独欠損症を併発したGeneralized Morpheaの1例

著者: 佐々木哲雄 ,   斉藤胤曠

ページ範囲:P.129 - P.132

 11歳女性のgeneralized morphea患者でチオプロニン投与中にIgA単独欠損症を併発した症例を報告した.皮疹は顔面,両上肢,腰背部に多発する硬化萎縮斑で,組織学的にも真皮全層の膠原線維の増生を認めた.初診時には抗核抗体(FANA)弱陽性,抗DNA抗体陽性,血清IgA 80mg/dlであったが,プレドニゾロンにチオプロニン併用開始後,IgA単独欠損とFANA抗体価の上昇を認めた.プレドニゾロンは漸減し15歳時中止,チオプロニンは16歳時中止した.18歳時の検査で血清IgAは50mg/dlと一時的に回復をみたが,19歳の現在再び7〜8mg/dlと低下している.皮疹は前額の一部に軽度の萎縮硬化を残すが,他は色素沈着のみの状態となっている.これまでD-ペニシラミン,金製剤,カプトプリルなどのSH基を有する薬剤によるIgA単独欠損症の誘発が報告されており,自験例もSH化合物であるチオプロニンによって誘発されたものと考えられた.

皮下硬結を示す腋窩副乳の1例

著者: 陳科栄 ,   小松威彦 ,   西川武二

ページ範囲:P.133 - P.135

 思春期になり腋窩の皮下硬結に気づき,粉瘤の疑診にて全摘された乳頭,乳輪を有さない腋窩副乳の1例を報告した.組織学的には,真皮深層から皮下脂肪織に結合組織の増殖を伴った乳腺組織が巣状に散在し,一部に不規則に拡張した細長い管腔を認め,管腔内にはいわゆる断頭分泌様の所見を伴っていた.乳腺嚢胞内容液中の分子量15,000の蛋白(GCDFP−15)に対する抗体を用い,摘出結節を染色したところ,腺腔上皮細胞および腺腔内容物が強陽性に染色された.従って本症例の腋窩副乳組織はアポクリン化生を伴うものと考えられた.本症例のごとく,乳頭,乳輪を有さない腋窩副乳は鑑別診断が困難なことが多く,日常診療において,腋窩の皮下硬結をみた際には本症の可能性も考慮する必要があると思われた.

Sunburn部に生じた正脂血症性扁平黄色腫の1例

著者: 川浪耐子 ,   花輪滋 ,   花輪純子 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.137 - P.140

 3日間の登山で帽子やサングラスで覆われていなかった眉間や両頬部に著しい日焼けが生じ,日焼け1カ月後頃から同部位に一致して扁平黄色腫が出現した正脂血症性のdystrophic xanthomatosis(Rosen)あるいは続発性限局性扁平黄色腫(小玉)の29歳,女性例を報告した.正脂血症性のdystrophic xanthomatosisの発症要因として長期の慢性炎症反応に加え,長期にわたる光線の曝露が重視されている.自験例で特異なことは短期間の高度の日焼け後に続発して扁平黄色腫が出現したことである.

ステロイド全身投与が奏効した苺状血管腫の1例

著者: 西條忍 ,   只木行啓 ,   照井正 ,   加藤泰三 ,   菅野陳一郎 ,   原敏 ,   田上八朗

ページ範囲:P.141 - P.144

 左こめかみの皮下型苺状血管腫の1例を報告した.症例は1カ月女児で左こめかみの皮下腫瘤に加えて左頬部に苺状血管腫を伴っていた.皮下腫瘤は組織学的にcapillary hemangiomaであることを確かめた.CTでは,左側頭窩と左頬部との軟部組織陰影とともに左外眼筋肥厚様の眼窩内腫瘤陰影を認めた.眼窩内腫瘤による左眼球突出・兎眼のため視力障害を残すおそれがあったので,ステロイドを内服させた.生後2カ月の時初回量ベタメサゾン0.5mg/日で開始して漸減し,8カ月間投与した.治療によりCT上の陰影はすみやかに縮小し,眼球突出がなくなり,視力をそこなわずにすんだ.問題となるようなステロイドの副作用はおこらず,中止後も再増悪しなかった.

スキルス胃癌の臍転移—化学療法にて縮小をみた1例

著者: 坂本泰子 ,   戸倉新樹 ,   滝川雅浩 ,   山田瑞穂 ,   酒井英訓

ページ範囲:P.147 - P.150

 56歳,男性.腹部膨満感,腹水が出現した頃より謄に発赤,腫脹がみられ,皮下硬結を触れた.検査の結果,胃癌の膀転移と診断された.転移経路としては腹膜からの浸潤が考えられた.化学療法により腰の硬結は縮小した.

足背に生じた脈管肉腫の1例

著者: 福田知雄 ,   小林孝志 ,   秋山真志 ,   川久保洋 ,   杉俊之 ,   原田敬之

ページ範囲:P.151 - P.155

 右足背に原発し,同側下肢7カ所に転移の認められた脈管肉腫の54歳女子例を報告した.組織学的に,真皮全層にわたり多数の管腔を形成する腫瘍細胞の増殖が認められた.腫瘍細胞はUlex europaeus aggulutinin-I(UEA−1)染色で強陽性,免疫組織化学的には第Ⅷ因子関連抗原弱陽性であった.また,腫瘍間質には散在性一部集簇性に真皮メラノサイト様細胞が認められた.これらの細胞はS−100蛋白染色で陽性像を示した.さらに電顕的検索を施行,腫瘍細胞内にWeibel-Palade顆粒と細胞質内小腔隙を確認した.また,真皮メラノサイト様細胞は種々のステージのメラノゾームとexternal laminaを有することを確認した.以上の所見より,自験例を真皮メラノサイトの増殖を伴った脈管肉腫の1例と診断した.治療は,放射線療法に化学療法(DAV-C)を併用し,原発巣腫瘤の縮小傾向が認められた.

悪性皮膚髄膜腫の1例

著者: 中野和子 ,   原洋子 ,   藤谷裕子 ,   川津友子

ページ範囲:P.157 - P.161

 76歳,女性.昭和60年7月上旬,頭頂部に直径3cm大の腫瘤が2個出現.左側頭部にも新たに出現したため受診.生検により,皮下に悪性の腫瘍塊を認め,頭部CT上,頭頂部を中心に骨破壊を認めた.表在性の腫瘤を切除し,内皮腫型髄膜腫と診断.わずかではあるが核分裂像が散見された.頭蓋内に占拠性病変なく,神経学的には正常.その後,腫瘤は再切除するも増大するため,リニアック照射を施行し,わずかに縮小化.昭和62年4月,残存する腫瘤を切除したが,腫瘍細胞は悪性度を増し,核分裂像が多数存在.またリニアック照射による多巣性の壊死を認めた.同年11月には左坐骨に,12月には右上肺野にX線上転移を思わせる陰影が出現し,12月19日死亡.臨床的,病理組織学的に,悪性皮膚髄膜腫と考えた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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