icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科44巻4号

1990年04月発行

雑誌目次

カラーアトラス

エクリン汗嚢腫

著者: 出俊郎

ページ範囲:P.264 - P.265

症 例 67歳,女性,農業
初 診 昭和63年8月23日

総説

皮膚の三次元的理解

著者: 今山修平

ページ範囲:P.267 - P.274

 主に走査電子顕微鏡の技術を用いて,一般には埋没していて観察できない,皮膚の様々の細胞や間質を露出させ,それらを三次元的に観察して概説した.表皮では,基底細胞から顆粒層を経て角層に至るまでの角化細胞の変化を,同時に,表皮内に介在するランゲルハンス細胞や色素産生細胞の立体的な形態を示した.真皮では,結合組織内の膠原線維と弾力線維と共に,線維芽細胞の三次元分布を,また血管については,あまり知られていない動静脈吻合と,典型的な真皮乳頭層の毛細血管ループを示した.

原著

偽腺性有棘細胞癌—電顕的,免疫組織化学的検討

著者: 吉田伸江 ,   風間隆 ,   伊藤雅章 ,   坂本ふみ子 ,   小黒啓子 ,   手塚匡哉 ,   田沢敏男 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.275 - P.280

 77歳,女性.初診の約2カ月前から右足底内側に小結節が生じ,その1カ月後に右鼠径部リンパ節腫脹が出現.組織学的に足底の原発巣,リンパ節転移巣とも角化性腫瘍巣で,多数の1〜数層の細胞壁をもつ腺腔様構造を有し,その中にacantho-lytic cellが存在.偽腺性有棘細胞癌と診断.免疫組織化学的に腫瘍細胞はcarcino-embryonic antigen染色陰性,各種抗ケラチン単クローン抗体染色で通常のsquamouscell carcinomaと同様な所見を呈し,ラミニン等の基底膜成分に対する抗体による染色ではacantholytic cellの周囲をとり囲むような像が得られた.電顕的には腫瘍細胞間のデスモゾームが少数で不均一に分布し,細胞質内のトノフィラメントも未発達であった.ここにリンパ節転移をきたした自験例を報告し,本邦報告例61例について,若干の統計的ならびに文献的考察を加えた.

皮膚のB Cell Lymphoma—単発腫瘤について

著者: 妹尾明美 ,   西原修美 ,   能勢総一郎

ページ範囲:P.283 - P.288

 症例1:66歳,女性.右上背の直径5cmの単発腫瘤.ピシバニール局所注入計70KEにて縮小扁平化後,切除術施行した.症例2:60歳,男性.右上背に41×61mm板状硬結とさらにその上に28×22mmの腫瘤を生じ,デルモパン15,000rad照射にて,潰瘍形成後,瘢痕治癒した.両者とも所属リンパ節触知せず,組織学的にはgrenz zoneが存在し,真皮全層に大型リンパ球様細胞の浸潤をみ,免疫組織学的検索により,2例ともB cell lymphomaと診断した.化学療法は行わなかったが,症例1は初診の2年後,症例2は13年後の現在も健在である.皮膚B cell lymphomaのなかには,病理組織学的には未分化な悪性像を呈するにもかかわらず比較的予後のよいものがあるのではないかと推察され,経過観察中である.

IgA結合性クレアチンキナーゼを認めた皮膚筋炎

著者: 小野雅史 ,   稲垣安紀 ,   河内山明 ,   植木宏明

ページ範囲:P.289 - P.293

 Creatine kinase(CK)isoenzyme異常を伴った皮膚筋炎の2例を経験した.いずれも急性期にCK活性が著明に上昇し,同時にisoenzyme検索にてIgA結合性のextrabandを認め,症状の軽快と共に消失した.CK isoenzyme異常は悪性腫瘍や筋ジストロフィーに伴いやすいが皮膚筋炎,多発性筋炎での報告は少ない.自験例は2例とも悪性腫瘍などの重篤な合併症はみられなく,治療にも反応したが,もとより皮膚筋炎に悪性腫瘍が合併しやすいことからも今後十分に経過観察し,また症例を重ねてこの酵素異常の持つ臨床的意義を明らかにすべきと考え,報告した.

研究ノート・4

Skin Care

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.288 - P.288

 化粧とか美容とかいうものには,皮膚科医になってから一度も興味を持ったことがなかった.必要な教育を受けたことがなかったし,何よりもscienceとは別の世界だと思っていた.数年前に,東北大学の田上先生から角層の水分の話を伺ったあと,「こういう領域にも関心を持たなくてはいけない」と言われたがピンと来なかった.
 10年ほど前からマウスを用いてphotobiologyの実験を続け,その後,活性酸素・過酸化脂質とのからみから,皮膚の老化に興味を移したが,その過程で,sun-screenがいかにpracticalでかつeffectiveであるかということを十分に認識させられた.昨今たまたまskin careのカセットブックを出す話があったのを機会に,10冊ほどの本と約100篇の論文を読んで,一気にこの領域を勉強した.いま,化粧品によるskin careとして紫外線からの防御と乾燥からの防御の二つが可能であることを知った.外来で,患者さんたちは,skincareについて実にさまざまな質問を皮膚科医に浴びせているのに,自分の無知のために今までは,答えられていなかったこと,自分たちの基礎的な研究の方が価値が高いとするのは思いあがりであったことを反省した.

今月の症例

メトロニダゾールが奏効した成人発症Still病の1例

著者: 阿部能子 ,   藤原愉高 ,   小原淳伸 ,   荒田次郎

ページ範囲:P.295 - P.298

 37歳女性.感冒様症状のあと,高熱および,全身に爪甲大までの浮腫性,淡紅色斑が出現し,手,膝関節の腫脹,リンパ節腫脹,肝脾腫,胸水貯留を認めた.成人発症Still病を疑い,アスピリン,ステロイド剤にて治療したが,効果はなかった.メトロニダゾールを併用したところ,症状は速やかに消褪した.近年メトロニダゾールは,活性酸素を抑制する作用をもつことが知られ,酒皶などの皮膚疾患の治療に利用されている.今回我々は,成人発症Still病に本剤を用い有効であった症例を経験したので報告する.

症例報告

von Recklinghausen病に伴つた後腹膜神経鞘腫の1例

著者: 四釜俊夫 ,   佐藤康満 ,   当真秀夫 ,   堀内隆 ,   石田博

ページ範囲:P.299 - P.302

 症例は29歳,女性.生下時より躯幹を中心に散在性の色素斑を認める.出産直後の1984年10月より皮膚小結節が出現し,生検の結果,神経線維腫でありvonRecklinghausen病と診断される.某医にて右上腹部腫瘤の指摘を受け,1988年5月17日当科入院となる.精査の結果後腹膜腫瘍と診断され1988年5月26日摘出術を施行した.組織学的には後腹膜神経鞘腫であった.今回我々が渉猟しえたかぎりでは,本邦報告例は18例にすぎず,比較的稀な疾患と思われた.しかし,その予後は一般に極めて不良であり早期発見・早期切除が重要と思われた.一方,本疾患は妊娠・分娩を契機として増悪することが多く,本症例においても同様であった.従って,本疾患を有する女性においては,特に妊娠・分娩に注意を要するものと思われた.

包皮縫線嚢胞の2例

著者: 窪田泰夫 ,   大竹直人 ,   吉村浩太郎 ,   島田眞路

ページ範囲:P.303 - P.306

 21歳,10歳男子の包皮縫線部に生じた2例について報告した.本症について概略するとともに,嚢胞壁細胞を電顕的に検索した.その結果,嚢胞に面して微絨毛様構造の発達を認め,さらにデスモゾームの存在も確認し,上皮系しかも尿道の多列円柱上皮由来ではないかと考えられた.

薬剤性急性痘瘡状苔癬状粃糠疹の1例

著者: 田中勝 ,   渡辺匡子 ,   山崎雄一郎 ,   籏野倫

ページ範囲:P.307 - P.310

 漢方薬である加味逍遙散によると考えられた68歳男性の急性痘瘡状苔癬状粃糠疹の1例を報告した.通常の急性痘瘡状苔癬状粃糠疹よりも高齢の発症であり,慢性苔癬状粃糠疹様の皮疹は混ぜず,組織学的に不全角化を欠いているものの,その他の特徴は臨床,組織ともによく一致していた.その発症病理において免疫学的な機序による表皮細胞の変性壊死過程の関与が示唆された.同様の症例は,海外において,経口避妊薬で生じた1例がみられるのみである.漢方薬による薬疹の報告例は少ないが,今後その使用頻度が増すにつれて,増加してくるものと考えられる.

Hypertrophic Lupus Erythematosusの1例

著者: 宮本秀明 ,   斎藤すみ ,   馬場直子 ,   中嶋弘 ,   中野政男

ページ範囲:P.311 - P.314

 56歳,女性.5年前から両手背に瘙痒が出現し,掻破をくりかえしているうちに,固い角化性隆起性局面となった.同様の局面は,両手指背側にも数個認められた.抗核抗体20倍陽性,血清補体価(CH50)は,12.0U/mlと低下を示した.隆起性局面の組織所見では,表皮の著明な角質増殖を伴う乳頭腫状変化があり,偽癌性増殖も顕著で,真皮の乳頭層を中心に著明な単核細胞の浸潤が認められた.ホルマリン固定,パラフィン包埋標本からの薄切切片にperoxidase-antiperoxidase method(PAP法)を施行したところ,表皮真皮境界部にIgGの沈着が認められた.

結節性皮膚ループスムチン症の1例

著者: 佐藤千鶴 ,   田辺恵美子 ,   藤田優

ページ範囲:P.315 - P.318

 35歳,女性の結節性皮膚ループスムチン症の1例を報告した.左上腕伸側に15×17cm,右上腕伸側,背部にも同様の扁平に隆起した硬結性局面を認め,背部の皮疹の表面にはDLE様変化を伴う.組織学的には,真皮上層から皮下脂肪織に著明なムチン沈着を認め,螢光抗体直接法では背部,上腕ともに,表皮真皮境界部にIgG,Mの沈着を認めた.抗核抗体,抗DNA抗体,抗SS-A抗体陽性,口唇小唾液腺生検陽性.臨床症状からは深在性エリテマトーデスが疑われたが,組織学的所見より結節性皮膚ループスムチン症と診断した.深在性エリテマトーデスはムチン沈着を伴うものが少なからず報告されており,結節性皮膚ループスムチン症と臨床的,組織学的に共通点が多いため,両者の本邦報告例を集計し,その異同につき文献的に考察した.

再発性環状紅斑様乾癬の1例

著者: 片山洋 ,   遠藤千鶴子 ,   矢尾板英夫

ページ範囲:P.319 - P.322

 8年間にわたって経過観察した再発性環状紅斑様乾癬の1例について報告するとともに,本症に近縁の角層下膿疱症(SPD)の独立性についても考按した.患者は79歳の主婦で,56歳頃より腋窩,胸部,腹部,腎部,大腿部などに環状紅斑ないし孤立性小膿疱の出没を繰り返した.当初,SPDを疑い,DDSを投与したところ,かえって増悪した.この増悪に対してはステロイドの内服が奏功し,その後は7年間,ステロイド外用のみで少数の皮疹が散発する程度の良好な経過をたどっている.本症との鑑別が問題となるSPDについてはその定義を完全に満足する症例が少ないこともあり,近年Sanchezらによりその独立性が疑問視されている.われわれも彼らの意見に賛成で,特にSPDではその定義上,海線状膿疱がなく,またDDSに良好に反応することになっているが,この2つのcriteriaが問題であると論議した.

種痘様水疱症—自験1例と本邦例の集計

著者: 野田俊明 ,   川田暁 ,   比留間政太郎 ,   久木田淳

ページ範囲:P.323 - P.327

 種痘様水疱症の1例について報告した.症例は6歳男児で1歳半頃より顔面,四肢の露光部に小水疱出現し瘢痕治癒を繰り返した.デルマレイを用いて皮疹の誘発を試みた.UVAは1回照射量13.5J/cm2とし5日間反復照射,UVBは2MED量3日間反復照射したがいずれも皮疹の誘発はできなかった.自験例を含めた本邦報告例51例につき誘発試験を中心として文献的考察を行なった.

新生児にみられたMicrosporum canis感染症の1例

著者: 高橋泰英 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.329 - P.333

 新生児にみられたMicrosporum canis(M.canis)感染症の1例を報告した.症例:生後21日,男児.満期正常分娩.両親,兄弟に同様の皮疹があるという.また同居人の1人は本例の初診3週間前に当科を受診し,M.canisによる体部白癬と診断されていた.生後14日目頃より,顔面,頸部に紅色皮疹が出現し徐々に拡大.初診時,顔面,頸部に比較的小型の類円形紅斑が多数存在し,中心には鱗屑あるいは痂皮が付着し,辺縁には小丘疹を伴っていた.また前頭部には拇指頭大,類円形の鱗屑を伴う脱毛斑が数個認められた.鱗屑および毛髪のKOH鏡検で,多数の菌糸および胞子を認め,培養でM.canisを得た.ビフォナゾールクリーム単純塗布のみにて,4週間で治癒した.6匹の飼猫に皮疹はなかったが,ヘアーブラッシング法でM.canisが得られ,飼猫が感染源と考えられた.本邦,ならびに海外における新生児の白癬症例を集計し,簡単な考察を加えた.

Nodular Fasciitisの2例

著者: 成吉加代子 ,   仲田龍一 ,   石橋明 ,   久木田淳

ページ範囲:P.335 - P.338

 35歳男子.右大腿伸側の,軽度圧痛を伴う皮下結節の一部生検組織像にてmalignant fibrous histiocytoma(myxoid type)が疑われた.約1カ月後の全摘出標本では,個々の細胞の異型性が低下し,典型的なnodular fasciitisの像を呈した.他に,自験41歳女子例を加え,本邦報告例54例につき,臨床的考察を行った.

前腕に生じた皮膚結核の1例

著者: 荻山幸子 ,   安藤不二夫 ,   高野明美 ,   安江隆

ページ範囲:P.339 - P.342

 70歳,女性.右前腕の数個の無痛性硬結性紅斑として初発し,紅斑は出没をくり返しつつ増大融合し,右前腕屈側全体に及ぶびまん性浮腫性紅斑となり,打ち抜き状の多発性潰瘍を生じた.潰瘍辺縁部の組織検査にて乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫が認められた.壊死物質の塗抹検査にて抗酸菌が検出され,菌学的検査により人型結核菌と同定された.抗結核療法により潰瘍と紅斑は治癒したが,その後に肘頭から上腕に瘻孔を生じた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?