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特集 最近のトピックス Clinical Dermatology 1990 I 最近話題の疾患とその病態
汗孔角化症と発癌
著者: 大塚藤男1
所属機関: 1東京大学医学部附属病院分院皮膚科
ページ範囲:P.471 - P.476
文献購入ページに移動 汗孔角化症はcornoid laniellaと呼ばれる異常角化を組織学的特徴とする,常染色体優性の遺伝性皮膚疾患である.本症皮疹部に悪性腫瘍の続発が知られ,近年,その高発癌性が認識されてきた.顕微蛍光測光法を用いて本症病変部表皮細胞核DNA量を測定すると,種々の異常値が見いだされ,表皮内に腫瘍性異常クローンの存在が示唆された.患者の皮膚由来の培養線維芽細胞について紫外線あるいはX線照射後の生存率をみると同細胞はX線に対し過敏性を示した.患者皮膚由来培養線維芽細胞は有意に高頻度の染色体異常を示したが、皮疹部培養表皮細胞はより高度の異常を呈した.これら所見は汗孔角化症細胞がDNAレベルで不安定であり,それが染色体の不安定性をもたらし,癌化につながる可能性を示唆した.我々の得たこれらの知見から,汗孔角化症の病態の一端が明らかになったと考えた.さらに悪性化した汗孔角化症皮疹の特徴についても述べた.
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