文献詳細
特集 最近のトピックス Clinical Dermatology 1990
III 治療のトピックス
文献概要
悪性黒色腫の熱中性子捕捉療法における理論および臨床応用に至るまでの基礎研究について概説した.熱中性子は10B(ボロン10)などの限られた元素によく吸収され,高LET線を飛程14μm,ちょうど腫瘍細胞の直径ぐらいで放出する.したがって,10Bを黒色腫細胞だけに集積させ熱中性子を照射すれば正常組織に損傷を与えることなく癌組織を選択的に殺傷できる.我々は,黒色腫細胞のメラニン生成活性を利用し,10B結合ドーバーanalog(10B-BPA)を合成し本法に応用した.10B-BPAは特異的に黒色腫細胞に取り込まれ熱中性子照射で致死は増大したが,正常線維芽細胞には取り込まれなかった.黒色腫担癌小動物で腫瘍縮小消失が10B-BPA投与後の中性子照射で得られた.また,治療前に10BBPAを投与し,即発γ線法で黒色腫および周辺正常組織内の10B量を測定できるため,安全かつ有効な照射が可能となった.
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