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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科44巻8号

1990年07月発行

雑誌目次

カラーアトラス

爪甲下Amelanotic Melanoma

著者: 石河亜紀子 ,   黒田有彦 ,   栗原誠一

ページ範囲:P.762 - P.763

患 者 72歳,男
初 診 昭和63年6月11日

原著

短趾症における爪変形—末節骨と爪を中心として

著者: 前田健 ,   姉小路公久

ページ範囲:P.765 - P.770

 11歳と66歳のparrot heak形の爪変形の2症例を報告した.爪は平滑で白濁も肥厚もなく,正常であるが,爪先端が趾腹側へ湾曲しているため爪が伸びると,圧迫して疼痛を生じる.このような爪変形疾患は文献的にも見当たらない.X線にて末節骨が短縮しており,整形外科,形成外科において多く見られる短趾症の範疇の疾患であることが判明した.しかし短趾症における爪変形でもparrot beak deformityの報告はない.この爪変形が生ずるのは外傷性指先部欠損の時であり,その他類似の爪変形も,その障害の程度に応じて出現する.これは爪と末節骨が常に関連を持っているためであり,爪床が重要な役割をしている.先天性の爪疾患でも同様であり,その関連性について,文献的考察を試みた.

播種状汗孔角化症の臨床分類—播種状表在性斑状汗孔角化症の提唱

著者: 三橋善比古 ,   橋本功 ,   今泉孝

ページ範囲:P.771 - P.777

 6例の播種状汗孔角化症を報告した.すべて表在型で,組織学的にcornoidlamellaあるいはその初期像がみられた.1例は皮疹が露光部に限局しており,Cher-noskyらのdisseminated superficial actinic porokeratosis(DSAP)と考えられたが,残りの5例は手掌,足底以外のほぼ全身に皮疹がみられ,露光部への偏在傾向は示さなかった.完成した皮疹の形態はDSAPに似ているが,初発疹はDSAPでは毛孔性苔癬に似た角化性丘疹であるのに対し,これらの症例では環状の色素斑であった.このように,これら5例はDSAPとは異なるので,これまでに記載された他の播種状に生じる表在性汗孔角化症との異同を考察したところ,いずれにも合致しなかった.そこでこのような型を,播種状表在性斑状汗孔角化症(disseminated superficial macularporokeratosis)と呼んで,分けて記載しておくことを提唱した.

研究ノート・7

Our Speciality

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.777 - P.777

 外科医と内科医が狩りに出かけて,鴨が飛来したとき,外科医は,“鴨だ!”と叫んで即座に撃ち落としたが,結局鴨だったかどうかを確認しないで帰ったのに対し,内科医は“鴨だと思うが,キジかもしれないし,ウズラも鑑別する必要がある”と思案しているうちに,鴨は飛び去ってしまった,という素直に笑えない笑い話がある.皮膚科医はどちらかというと内科医に近い面がふだんからあると思われる.よく,形成外科の先生と腫瘍切除の手術に入ったりすると,形成外科の先生が,腫瘍切除後,皮膚の再建をあれこれ考えている傍で,皮膚科医は,切り出した標本の病理の話に一生懸命で,両者の思惑がかみ合わない場面に遭遇することがある.熱傷や急性発疹症,薬疹などのようにemer-gencyに属する皮膚疾患もあるし,当然,皮膚の外科も担当するわけであるから,外科医のような決断力と手技も要求される.内科に比べれば,病変はそのまま見れるし生検も可能なので診断の手段ははるかに強力なはずである.だから,皮膚科医には,鴨を即座に射止める力量と,獲った鴨を丹念に確認する緻密な作業が求められる.それをback upするのが研究であるべきだと思う.したがって臨床研究は,たとえばリンパ腫におけるサザンプロッティングのように,診断と鑑別を可能にするものであるべきだし,免疫組織化学のように病変の検証をより正確にするものでなくてはならない.ただ,「皮膚という他の科の人たちがあまり扱わない臓器を専門とするからour specialityである」というのは研究においても臨床においてもこれからは通用しなくなると思う.そのレベルで皮膚科医を標傍していると,他科のカモにされるのは必定である.

今月の症例

膀胱癌に伴った皮膚サルコイド反応の1例

著者: 石河亜紀子 ,   栗原誠一

ページ範囲:P.779 - P.783

 82歳,男.膀胱癌に伴った皮膚サルコイド反応の1例を報告した.膀胱癌を摘出し化学療法を行うも,皮疹の新生は続き,心不全にて死亡した.剖検にて膀胱癌の多臓器転移が認められたが,皮膚,リンパ節以外にサルコイド反応は認められなかった.悪性腫瘍の腫瘍内および所属リンパ節,脾臓にサルコイド反応を認める報告は多いが遠隔部位の皮膚に広範に認められたという報告はみられない.

症例報告

サルコイドーシスの1例

著者: 上村雅子 ,   刀称毅 ,   斎藤隆三

ページ範囲:P.785 - P.789

 29歳,女性の皮下型・結節型および瘢痕浸潤を伴ったサルコイドーシスの1例を報告した.20年前の外傷部位に周囲にリンパ球浸潤を伴う皮下結節が出現し,瘢痕浸潤のサルコイドーシスと診断,その後下肢にも丘疹,皮下結節が出現,それぞれ結節型,皮下型と診断した.異なった臨床型の合併した症例はあまり多くはないため,過去の報告例を集計し,考察した.

顔面神経麻痺を伴ったサルコイドーシスの1例

著者: 中元倫世 ,   井家久雄

ページ範囲:P.791 - P.797

 27歳,女性.眼前霧視症状と右顔面神経麻痺と舌のしびれ感,舌右前2/3の味覚障害を伴い,両側下腿に小指頭大〜拇指頭大の浸潤を伴う紅斑を主訴として来院.組織学的には真皮中層から皮下脂肪織にかけて非乾酪性の類上皮細胞の結節が多数散在して認めた.ブドウ膜炎,BHLがあり,ツ反陰性,血清アンギオテンシン転換酵素と血清リゾチーム上昇を認め,縦隔鏡による右傍気管リンパ節生検像でも多数の類上皮細胞肉芽腫が得られた.以上より,右顔面神経麻痺を伴ったサルコイドーシスと診断した1例を報告した.顔面神経麻痺に皮疹を伴った本症の最近12年間の本邦報告例を集計し,若干の文献的考察を加えた.

高Ca尿症を伴う結節性紅斑様サルコイドーシスの1例

著者: 後藤裕美 ,   小野真理子 ,   吉田寛子 ,   檜山清美 ,   大城守男 ,   小林伸子

ページ範囲:P.799 - P.802

 多彩な症状を呈したサルコイドーシスを経験したので報告した.症例は19歳,男性.結節性紅斑を主訴として来院した.両側肺門リンパ節腫脹,熱発があり,眼科的には眼底の静脈怒張,蛇行,虹彩炎,角膜びらんを認めた.高Ca尿症,ACE,血中β2マイクログロブリン,血中リゾチームの上昇があり,病理組織とあわせてサルコイドーシスと診断した.経過中,末梢神経麻痺,魚鱗癬様皮疹も呈した.サルコイドーシスに高Ca尿症を伴う症例は本邦では比較的稀であると思われるので,サルコイドーシスと高Ca尿症および高Ca血症について若干の考察を加えた.

染毛剤によるアナフィラキシーショック

著者: 河合敬一 ,   河合享三 ,   安野洋一 ,   芝崎克美

ページ範囲:P.803 - P.807

 62歳,女性.美容院で毛染めを行っている最中に意識消失,ショック状態となった.救急車にて久野病院に運ばれ,まもなく回復した.スクラッチテストにて,染毛剤I液強陽性,paraphenylenediamine(PPD),Ⅰ液成分のnitroPPD,meta-phenylenediamine(mPD)にも陽性を認めた.また,Ⅳ型アレルギー性接触皮膚炎にて,交差性が報告されている種々の薬剤にてスクラッチテストを行ったところ,sul-famethizole,sulfalnethoxazoleにも陽性反応を認めた.Ⅰ型アレルギーにおいても,Ⅳ型アレルギーの接触皮膚炎と同様に交差反応を示すことが示唆された.

低線量PUVA療法が奏効した小児膿疱性乾癬

著者: 能川昭夫 ,   坂井秀彰 ,   久保映子 ,   藤平圭子 ,   川島愛雄

ページ範囲:P.809 - P.812

 1歳2カ月,女児の膿疱性乾癬を報告した.生後7カ月ごろより体幹,四肢に湿疹様病変がありステロイド外用剤を使用していた.感染症を契機に全身に紅斑,膿疱が出現し,高熱が続いた.急性期より低線量PUVA療法を行い約6週間で完全寛解に至った.その後,再燃時にも低線量PUVA療法が奏効した.

イトラコナゾールが奏効した白癬性毛瘡の1例

著者: 山本俊幸 ,   佐野隆夫 ,   加藤卓朗 ,   香川三郎

ページ範囲:P.813 - P.815

 46歳,男性の上口唇に生じたTrichophyton(T.)rubrumによる白癬性毛瘡に,イトラコナゾールが奏効した1例を報告した.なお,患者には数年来足白癬の既往があり,足趾間の鱗屑からも,病毛とは形態の異なるT.rubrumを分離した.

動静脈奇形に合併したAngiolymphoid Hyperplasia with Eosinophiliaの1例

著者: 澤田俊一 ,   八木沼健利 ,   上出良一 ,   新村眞人 ,   三浦一浩

ページ範囲:P.817 - P.820

 16歳,女.前額部から前頭部に多発する皮下硬結および顔面に多発する痤瘡様丘疹について,動静脈奇形にangiolymphoid hyperplasia with eosinophilia(ALH)が合併したものと診断し,報告した.ALHの発症原因の一つに動静脈奇形などによる血管系の器質的異常の関与が考えられた.

Angiotrooic B Cell Lymphomaの1例—いわゆるNeoplastic Angioendotheliosis

著者: 高橋慎一 ,   稲本伸子 ,   中村絹代 ,   黒河輝久 ,   秋山真志

ページ範囲:P.821 - P.825

 94歳女,両側大腿に初発し,顔面を除く全身に急速に拡大する有痛性の紫紅色板状硬結を認め,38℃台の発熱,全身衰弱にて初診より約1カ月で死亡した.初診時皮膚病理組織像で真皮上曽から皮下脂肪織にかけて,中小血管内に核小体が明瞭で不正形の核を有する比較的大型の異型細胞とクロマチンに富む小型の細胞が増殖し,腫瘍細胞による塞栓形成も認められ,neoplastic angioendotheliosisと診断した.剖検にて皮膚の他,胸膜,空腸,脾門部の中小血管内に同様の腫瘍細胞の増殖を認めた.電顕所見では,腫瘍細胞は幼若な細胞で特定の分化傾向は認められなかった.PAP法にて腫瘍細胞はpan B抗原陽性,免疫グロブリンはIgMのみ陽性,第Ⅷ因子関連抗原,UEA—Ⅰは陰性より,B細胞リンパ腫の一型と考えられ,これまでの報告と合わせ,angiotropic B cell lymphomaと呼称し,かつ報告した.

セザリー症候群の1例

著者: 石河晃 ,   木花いづみ ,   生冨公明 ,   岸本宏志

ページ範囲:P.827 - P.831

 55歳,男.紅皮症,白血球増多症を主訴に来院.臨床像,末梢血液所見,組織学的所見,免疫組織学的所見からセザリー症候群と診断した1例を報告した.治療にrecombinant interferonα−2aを用いたところ,皮疹,白血球数,LDH値,リンパ節腫脹に対し効果がみられたが,投与40日ほどで再燃をみた.再燃時の皮疹は菌状息肉症を思わせる腫瘤が主体であったが,high-grade lymphomaに移行したとは考えられなかった.

くすぶり型成人T細胞白血病・リンパ腫—皮膚腫瘍を初発症状とした1例

著者: 兼子泰行 ,   田中正明 ,   増子倫樹 ,   山口茂光 ,   伊藤雅章 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.833 - P.837

 75歳,男.急速に増大する右下顎部腫瘍を主訴として来院.他に顔面,四肢などに大小の浸潤性紅斑を認めた.一般検査に異常なく,全身状態良好で,表在リンパ節を触知しなかった.病理組織学的にはLSG分類のびまん性リンパ腫混合細胞型に相当した.腫瘍細胞はCD 4陽性,CD 8陰性を示した,末梢血と皮膚腫瘍組織内にCD 25(IL−2 R)陽性細胞が認められた.ATLA抗体陽性で,Southern blot法でHTLV—Ⅰ proviral DNAのモノクローナルな組み込みが証明され,くすぶり型ATL(成人T細胞白血病・リンパ腫)皮膚腫瘍型と診断した.CHOP療法により皮膚腫瘍および浸潤性紅斑は急速に消失し,末梢血中のCD 25陽性細胞は減少し,約1年6カ月間寛解状態を維持しているが,経過中,重篤な薬剤性間質性肺炎と肺アスペルギルス症を合併した.経験例の報告とともにATLの治療と予後について考察を加えた.

表皮嚢腫より発生した有棘細胞癌の1例

著者: 福田知雄 ,   大畑恵之 ,   木花光

ページ範囲:P.839 - P.842

 83歳,男の表皮嚢腫より発生した有棘細胞癌の1例を報告した.初診の約60年前より臀部に皮下結節があり,2年前より急速に増大し,4カ月前には出血,排膿を見たという.組織学的に有棘細胞癌と連続性に表皮嚢腫の存在が確認された.自験例を含む粉瘤の悪性化の本邦報告34例の集計では,悪性化例は中高年の男に多く,部位としては躯幹,特に臀部に好発する.皮膚腫瘤に気づいてから悪性化の診断を受けるまでの期間が長く,その間に感染,炎症等の反復の既往がある場合が多く,慢性的な刺激が悪性化の誘因ではないかと推察された.粉瘤においても,経過の長いもの,特に感染,炎症等を繰り返す場合,ある時期より急速に増大傾向を示した場合などは,積極的な治療が必要と思われた.

食道癌の皮膚転移

著者: 須永知子 ,   柴山律子 ,   下田祥由

ページ範囲:P.843 - P.846

 食道癌からの皮膚転移2例を報告した.症例1は,75歳,女性,胃部不快感あり,外科にて食道癌と診断された.9カ月後顔面に小結節出現.生検したところ扁平上皮癌の像を認め,食道癌からの転移性皮膚癌と診断した.症例2は,79歳,男性,初診6カ月前より胸部不快感あり,当院外科にて食道癌と診断された.その4カ月後より左手第5指,左足第4趾,顔面,臀部に赤色〜暗赤色小結節を認め当科に紹介された.組織像は扁平上皮癌の像であり転移性皮膚癌と診断した.食道癌からの皮膚転移は比較的稀であり転移性皮膚癌の1〜2%内外と思われ,過去10年間の我々が調べ得た皮膚科領域における食道癌からの皮膚転移9例について簡単な統計的考察を試みた.

印象記

第6回日本皮膚悪性腫瘍学会総会

著者: 小林仁

ページ範囲:P.848 - P.850

 平成2年4月20日,21日,信濃川にかかる万代橋のたもと,ホテルオークラ新潟において,会長佐藤良夫新潟大学皮膚科教授のもと,『第6回日本皮膚悪性腫瘍学会総会』が開催されました.第1日目,新潟の空は見事に晴れ上がり,遠く白く雪を残した飯豊の山々もくっきりとその山容を現していました.恵まれた越後の地に発達した新潟の町並みは明るく,また新潟の人々のおもてなしは心から暖かいものでした.この環境の中に全国から338人の皮膚悪性腫瘍に携わる者が集い,それぞれに日頃の臨床,研究の成果を持ち寄り,活発にまた和気あいあいと発表,討論を2日間にわたり繰り広げました.その内容は,特別講演3席,ランチョンレクチャー1席,シンポジウム1席(6題),一般演題59題,展示演題22題と豊富なものでした.特別講演,ランチョンレクチャーシンポジウムは,現在の臨床研究,治療における最新の知見を中心とし,佐藤会長,伊藤雅章事務局長の意図が十分に伝わってくるものでした.以下にこれら発表の内容に触れながらこの学会の印象を紹介致します.
 第1日目は4月20日(金曜日)午前8時55分,佐藤会長の開会の挨拶で開幕,午前中に「Bowen病」,「基底細胞癌」の一般演題の報告,並びに濱田忠彌教授(新潟大学ウイルス学)の特別講演が行われました.濱田教授は「アデノウイルス誘発腫瘍の生物学と免疫学」と題し,アデノウイルスのタイプ別による発癌活性の違い,また同じタイプのウイルスから発生した腫瘍においても,その腫瘍免疫性に差があること,またマウスにおいてこの腫瘍免疫の獲得にLyt 1,2リンパ球,macrophageが必要であることが,濱田教授自身のデータから分かりやすく説明されました.何でも濱田先生は我々に分かりやすくするため,この日のため新たにスライドを作成されたそうです.敬服するばかりです.そのお人柄どおり優しく丁寧な講演でした.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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