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研究ノート・7
Our Speciality
著者: 宮地良樹1
所属機関: 1京都大学
ページ範囲:P.777 - P.777
文献購入ページに移動 外科医と内科医が狩りに出かけて,鴨が飛来したとき,外科医は,“鴨だ!”と叫んで即座に撃ち落としたが,結局鴨だったかどうかを確認しないで帰ったのに対し,内科医は“鴨だと思うが,キジかもしれないし,ウズラも鑑別する必要がある”と思案しているうちに,鴨は飛び去ってしまった,という素直に笑えない笑い話がある.皮膚科医はどちらかというと内科医に近い面がふだんからあると思われる.よく,形成外科の先生と腫瘍切除の手術に入ったりすると,形成外科の先生が,腫瘍切除後,皮膚の再建をあれこれ考えている傍で,皮膚科医は,切り出した標本の病理の話に一生懸命で,両者の思惑がかみ合わない場面に遭遇することがある.熱傷や急性発疹症,薬疹などのようにemer-gencyに属する皮膚疾患もあるし,当然,皮膚の外科も担当するわけであるから,外科医のような決断力と手技も要求される.内科に比べれば,病変はそのまま見れるし生検も可能なので診断の手段ははるかに強力なはずである.だから,皮膚科医には,鴨を即座に射止める力量と,獲った鴨を丹念に確認する緻密な作業が求められる.それをback upするのが研究であるべきだと思う.したがって臨床研究は,たとえばリンパ腫におけるサザンプロッティングのように,診断と鑑別を可能にするものであるべきだし,免疫組織化学のように病変の検証をより正確にするものでなくてはならない.ただ,「皮膚という他の科の人たちがあまり扱わない臓器を専門とするからour specialityである」というのは研究においても臨床においてもこれからは通用しなくなると思う.そのレベルで皮膚科医を標傍していると,他科のカモにされるのは必定である.
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