原著
Naphthol ASによる色素沈着性接触皮膚炎
著者:
河内繁雄1
川島忠興1
山崎自子1
斎田俊明1
所属機関:
1信州大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.9 - P.15
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綿のカジュアル・シャツ着用により,頸部・上肢に色素沈着性接触皮膚炎を生じた1例を報告した.貼布試験では着用していたカジュアル・シャツと,1%および0.1% naphthol AS-OLに陽性反応を認めた.臨床症状はネル寝巻による色素沈着性接触皮膚炎に類似したが,頸部全周に色素沈着を認め,掻痒は冬期に限定されない点で異なっていた.頸部皮膚生検組織では苔癬型組織反応を認め,表皮細胞の孤立性好酸性壊死と,これにリンパ球が接する像が認められた.このような組織学的所見はgraft versus host diseaseや扁平苔癬,苔癬型薬疹などのそれに酷似する.したがって本症は通常のアレルギー性接触皮膚炎とは異なるものであって,苔癬型組織反応が関与している可能性が考えられる.このような観点から本症の発症機序につき細胞免疫学的な考察を試みた.なお,naphthol ASの感作能をハートレー系白色モルモットを用いて検討したが,感作性を認めることはできなかった.