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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科45巻13号

1991年12月発行

雑誌目次

カラーアトラス

下肢に生じた基底細胞上皮腫

著者: 山本俊幸

ページ範囲:P.1026 - P.1027

患者 70歳,女性
 初診 昭和62年7月29日
 家族歴・既往歴 特記すべきことはない.
 現病歴 初診の約7年前より大腿に皮疹が出現し漸次増大してきた.2週間ほど前からびらんが生じたため当科を受診した.
 現症 左大腿伸側に15×18mmの暗紫紅色結節が存在する.広基有茎性に皮表より饅頭状に隆起し,弾性硬,ろう様光沢を有し表面の大部分は潰瘍化している(図1).所属リンパ節は触知しない.治療をかねて全摘した.

原著

著明な皮膚弛緩をきたした弾性線維性仮性黄色腫の姉弟例

著者: 福嶋信夫 ,   柳原誠 ,   森俊二 ,   斎藤敏明 ,   矢野好弘 ,   島田武 ,   横山和俊 ,   宮下剛彦

ページ範囲:P.1029 - P.1033

 躯幹を中心に著しい皮膚の弛緩をきたした弾性線維性仮性黄色腫の姉弟例を報告した.姉ではangioid streakを含め弾性線維の異常による内臓病変を認めなかった.弟には頭蓋内出血の他,両側外および内腸骨動脈に高度にカルシウムの沈着を認めた.この家系の弾性線維性仮性黄色腫を常染色体性劣性遺伝Ⅰ型と考えた.姉の皮膚組織像では変性弾性線維は皮下脂肪組織の葉間結合組織まで及んでいた.また,真皮中層にわずかの異常弾性線維を含んだ類円形塊状物質が存在し,この物質内にカルシウムの沈着を認めた.

Linear IgA Bullous Dermatosis—症例報告と吸引水疱による免疫組織学的検討

著者: 長江哲夫 ,   竹内紀文 ,   桑原章

ページ範囲:P.1035 - P.1039

 38歳,男性.米粒大の小水疱を伴う瘙痒の激しい浸潤性紅斑が汎発したlin—ear IgA bullous dermatosisの1例を報告した.組織学的には,真皮乳頭部の微小膿瘍と表皮下の裂隙形成を認めた.蛍光抗体直接法でIgAが基底膜部に線状に沈着し,治療8カ月後の無疹部にも同様の所見を得た.3年後に作製したsuction blisterでは,水疱は表皮下に生じIgAは水疱底である真皮上縁にのみ沈着していた.HLAはA24, Bw 54, Cw 1, DR 4であった.DDSが著効した.

疥癬の院内集団発生—免疫学的検索

著者: 赤坂俊英 ,   今村優子

ページ範囲:P.1041 - P.1044

 1例のノルウェー疥癬患者を媒介にして生じた疥癬の院内集団発生を報告し,免疫学的検索を施行した.患者のほとんどは基礎疾患を有する寝たきり老人であり,疥癬の診断と治療に苦慮した.10例の免疫学的検索で,遅延型皮膚反応の著明な低下とPHAあるいはCon A刺激T細胞幼若化反応の減弱,ADCCおよびNK活性の低下が認められた.しかし,T細胞比はむしろ増加を示し,また液性免疫ではIgAの増加がみられたことから,T細胞の増殖能と機能低下による免疫能低下が疥癬の集団発生の誘因であることが示唆された.

研究ノート・24

Life begins at 40

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.1039 - P.1039

 2年間にわたって連載させていただいた研究ノートも,今回が最終回である.編集部の意向は,もっとアカデミック志向であったようだが,毎月,軽い話ばかりで誌面を埋めたことをまずお詫びしなくてはならない.私事で恐縮だが,私もこの12月で40歳を迎えることになる.30歳になったとき畏友(といっても7年も先輩だが)滝川先生から“Thirty over the hill”のカードを戴いたお返しに彼の40歳の誕生日に“Lifebegins at 40”のカードを送ったのがつい昨日のようだが,とうとう自分がその歳になってしまった.カードを開くと,“……it's about time you show some signsof life!”と印刷されている.そのsignというのはしみ,しわなどの老徴ではなく,自らの立脚するpolicyに支えられた人生なり仕事なりの証しでなくてはなるまい.日本でも「不惑」とか「分別盛り」とかいわれるが,確かに医師としても中堅の仲間入りをしたし,体型もすでに立派に中年と化している.20代のときと変わったことといえば,夜,実験のアイディアが沸いて眠れないとか,夜中に起きて実験ノートに書き留めるとかいうことはすっかりなくなり,ぐっすり眠れ,むしろ朝早く目が醒めがちである.30代のときと比べると実験結果に淡白になった.「じゃあ,まあいいか」で済ませてしまうことがふえた気がする(こういうのを「ジャマイカおじさん」と言うそうである).そのくせ,自分の研究領域にひどく執着する悪い癖が染みついてきた.しかし考えてみれば,卒業してまだ15年,医師としては,折り返し点にも達していない.人生と同様に,研究も臨床もやっと輪郭をつかみかけてきたころで,変革できないことは受容し,変革すべきことは勇気をもって実行することができる年代でもある.その意味では,まさにLife begins at 40なのかもしれない.こういうふうに自らを鼓舞しないといけないところが歳をとった証拠かもしれないという病識はあるが,また新たなdecade,21世紀に向けて頑張りたいと思う.
 最後に,つたないコラムをご愛読いただいた先生方に誌面をお借りしてお礼を申し上げます.ありがとうございました.

今月の症例

L—トリプトファン内服により生じた好酸球増多・筋肉痛症候群(Eosino Philia-Myalgia Syndrome)と思われる1例

著者: 森川玲子 ,   根本治 ,   泉山滋

ページ範囲:P.1045 - P.1049

 57歳男性.L—トリプトファン(アミファンR)による好酸球増多・筋肉痛症候群と思われる1例を報告した.約1カ月前から出現したほぼ全身の自覚症状のない紅斑,下肢の浮腫,体重減少を主訴に受診した.薬疹を疑い経過観察していたところ突然,四肢の皮膚の硬化が出現した.臨床,組織学的には好酸球性筋膜炎に酷似するが,四肢の硬化が出現する以前に全身の紅斑を伴っていたこと,L—トリプトファン内服歴があることから好酸球増多・筋肉痛症候群と考えた.

1家系3世代にみられた色素失調症

著者: 加藤恵子 ,   樋口満成 ,   津田眞五 ,   笹井陽一郎

ページ範囲:P.1053 - P.1057

 1家系3世代に発生した色素失調症(IP)を報告した.自験例(生後13日,女児)は,生下時より四肢,躯幹に列序性配列の紅斑,小水疱,膿疱を認め,末梢血好酸球増多,好酸球の表皮および真皮への浸潤と表皮内のeosinophilic spongiosisの形成などよりIPと診断した.自験例の母親と祖母もかつてIPと診断されている.IPは家族内発生が多く,種々の先天異常を伴うことから,遺伝性疾患と考えられている.母娘,姉妹などでの発生例の報告は散見されるが,数世代にわたり家族内に発生した症例の報告は少ない.

症例報告

Turner症候群と膿疱性乾癬の合併例

著者: 野村慶子 ,   児浦純義

ページ範囲:P.1059 - P.1062

 26歳女性.6年前Turner症候群の診断を受けている.低身長,翼状頸,無月経,恥毛欠如がみられた.染色体は45,X,46,X,i(Xq)のモザイクを示した.典型的な膿疱性乾癬の症状を示し,チガソンにて経過良好であった.合併例はまれと思われるので報告した.

月経前の周期的悪化を示す疱疹状膿痂疹の2例

著者: 桑原まゆみ ,   柳原誠 ,   森俊二 ,   後藤裕子

ページ範囲:P.1063 - P.1066

 妊娠中に典型的な疱疹状膿痂疹の症状を示し,いったん軽快したにもかかわらずその後に月経周期に伴って変動する皮疹を生じた2例を報告した.症例1:40歳女性.26歳,28歳,31歳の妊娠中に全身に膿疱を伴う紅斑を生じ,疱疹状膿痂疹と診断されたが,出産後に皮疹は軽快した.40歳になって月経前に悪化する皮疹を生じた.プレドニゾロン,エトレチナート,酢酸プセレリンで治療.症例2:40歳女性.21歳時,汎発性膿疱性乾癬を発症し,メソトレキセート等による治療でいったん軽快.26歳で第1子妊娠中に全身に膿疱を生じ,出産後に軽快.40歳になって月経前に悪化する皮疹を生じた.エトレチナート投与にて軽快.

頸部リンパ節結核治療中に増悪をみた皮膚筋炎の1例

著者: 杉田泰之 ,   小野秀貴 ,   杉山朝美 ,   相原道子 ,   佐々木哲雄 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.1067 - P.1070

 53歳,女性.昭和62年に臨床症状,検査所見ともに典型的な皮膚筋炎に罹患.当科入院となりプレドニゾロン内服により軽快,退院となった.退院して1年8カ月後,プレドニゾロン1日10mgと5mgの隔日投与中に右頸部に皮下腫瘤が出現し,生検にて結核性リンパ節炎と診断された.リファンピシン1日450mg,イソニアジド1日300mg内服を開始したところ,約1カ月後に全身倦怠感,筋痛などの皮膚筋炎症状が急速に再発し,筋原性酵素値も再上昇した.プレドニゾロンの内服量を1日60mgに増量しても効果はなく,リファンピシン内服を中止してプレドニゾロン内服量を1日90mgに増量したところ急速に軽快した.本症例はリファンピシンの内服と皮膚筋炎の症状悪化が密接に関係していると思われ,リファンピシンによるプレドニゾロンの効果減弱の結果と考えられた.

皮疹消退部位でパッチテスト陽性を示した塩酸メキシレチンによる紅斑丘疹型薬疹の1例

著者: 菊地克子 ,   角田孝彦

ページ範囲:P.1071 - P.1073

 77歳,男性.心室性頻拍の診断で塩酸メキシレチン内服後45日で頭頸部を除くほぼ全身に丘疹と紅斑が出現した.内服を中止し塩酸アプリニンジンに変更する一方,プレドニゾロンの内服などにより皮疹は約1カ月で消退した.塩酸メキシレチンのパッチテストを皮疹消退後の色素沈着部位と正常皮膚で行ったところ,色素沈着部位で強く陽性反応が現れた.内服誘発テストを施行しにくい薬疹の症例では,皮疹消退部位でパッチテストを行うことは薬疹の診断に有用であると考えられた.

著明な黄色腫のみられた家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体

著者: 宇津木浩一 ,   藤田優 ,   田代淳 ,   白井厚治 ,   齊藤康 ,   竹田賢

ページ範囲:P.1075 - P.1078

 38歳,男.20歳頃より,両側膝蓋部に始まり,全身に黄色腫瘤が出現.初診時,眼瞼黄色腫,手指関節,肘頭部,膝蓋部,足趾に鳩卵大ないし鶏卵大の結節性黄色腫を多数認め,両側アキレス腱は著明に肥厚していた.血清総コレステロール値368mg/dl,トリグリセライド値162mg/dl,HDLコレステロール値23mg/dlとIIb型の高脂血症を呈した.家族内にも結節性黄色腫および高コレステロール血症がみられた.患者の皮膚培養線維芽細胞を用いたLDLレセプター活性は50%の低下が認められ,家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体と診断された.高コレステロール血症に対して,薬物療法およびLDLアフェレーシスを施行したが,4カ月の経過中には明らかな黄色腫の退縮は認められなかった.

Erythema Nodosum Migransの1例

著者: 八木宏明 ,   龍神綾子 ,   吉沢直人 ,   白浜茂穂

ページ範囲:P.1079 - P.1082

 40歳,女性の両下腿に生じたerythema nodosum migransの1例について報告した.初診約10カ月前に両下腿に軽度圧痛を伴う隆起性紅斑が出現した.放置にて,しだいに皮疹は遠心性に拡大するとともに中央が退色し環状に配列する結節性の紅斑となった.全身症状は伴わなかった.紅斑部の病理組織像では,脂肪層の中隔の肥厚と線維化,多核巨細胞の出現,肉芽腫様に著しい血管の新生が認められた.蛍光抗体直接法では,免疫グロブリンおよび補体の沈着を認めなかった.ヨウ化カリウムの内服にて皮疹は消失した.本邦では極めて稀な疾患であり,過去の報告について文献的考察を行った.

脂腺母斑上に乳頭状汗管嚢胞腺腫と基底細胞上皮腫を生じた1例

著者: 持田耕己 ,   坪井良治 ,   今井龍介 ,   高森建二

ページ範囲:P.1083 - P.1086

 57歳,女性.生下時より左側頭部に脱毛局面があり,約10年前から局面の一部に新たに腫瘤が生じてきた.初診時,黄褐色疣状局面上に鮮紅色,表面びらん面をを呈する腫瘤と黒褐色の小結節を認めた.組織学的にそれぞれ,脂腺母斑,乳頭状汗管嚢胞腺腫,基底細胞上皮腫と診断した.本邦における3者共存の報告は自験例を含め20例であり,中高年齢者に多い.成人の脂腺母斑上には種々の二次的腫瘍が生じることが知られており,診断,治療にあたっては注意深い対応が必要と考えられた.

1cm以上離しての切除を要した基底細胞上皮腫の1例

著者: 佐伯圭介 ,   沼原利彦 ,   西本正賢

ページ範囲:P.1087 - P.1089

 52歳男.左こめかみ部の痂皮を付す浅い潰瘍と辺縁の黒色の小結節から,典型的な基底細胞上皮腫(BCC)と診断し,皮疹最外側より1cm離して切除した.組織にて,中央の潰瘍部はBCCの充実型,肉眼的に正常に見えた周辺の真皮内には切除断端にまで斑状強皮症型の像を認めた.拡大再切除術を施行し,最終的には臨床的な皮疹外側端より2.5〜4cmの切除となった.なお,充実型に斑状強皮症型を合併していた報告例をもとに考察を試みた.

エクリン汗管腺腫の1例

著者: 宮下光男 ,   鈴木啓之

ページ範囲:P.1091 - P.1093

 エクリン汗管腺腫の1例を経験し,epithelial membrane antigen(EMA),carcino embryonic antigen(CEA),ビメンチンにっいて免疫組織学的に検討した.EMAとCEAはほとんどすべての内腔側細胞が陽性,ビメンチンは最外層の細胞が陽性を示した.自験例における管腔様構造は,形態学的にはエクリン汗管に類似の構造を呈するが,免疫組織学的には,エクリン汗管よりは,むしろエクリン汗腺分泌部への性状を示した.管腔様構造の外側の細胞は筋上皮細胞への分化を示していることを示唆した.

片側性に多発した皮膚血管腫の1例

著者: 星野弥生 ,   大西一徳 ,   石川英一

ページ範囲:P.1095 - P.1099

 31歳,男性の足に生じた片側性,一部列序性に多発する皮膚血管腫の1例を報告した.組織学的に一部では海綿状血管腫様であったが,多くの結節では小血管の網状増殖が特異的であった.文献的考察の結果より,自験例は臨床的にMaffucci症候群に見られる血管腫に類似していた.しかしながら,一方組織学的に血管増殖像は同症候群でも時に認められているが,自験例列ではこれがより顕著であり,intravascularpapillary endothelial hyperplasiaに近いとも言え,腫瘍性病変である可能性,さらに全身的疾患の一症状である可能性も否定できなかった.今後骨病変の発症を含め経過観察が必要と思われた.

治療

帯状疱疹後神経痛に対する液体窒素療法

著者: 小林孝志 ,   水元俊裕

ページ範囲:P.1101 - P.1104

 12例の難治性の帯状疱疹後神経痛の患者に対して液体窒素療法を試みた.方法は,痛みを訴える部位に,液体窒素を綿棒にて水疱,びらんを生じない程度に,直接数回圧抵する.原則的にはこれをある程度痛みが改善されるまで毎日施行した.結果は,著効6例,有効4例,やや有効1例,無効1例で,有効以上は12例中10例で満足のいくものであった.

印象記

第90回日本皮膚科学会総会・学術大会に参加して

著者: 中川秀己

ページ範囲:P.1106 - P.1108

 第90回日本皮膚科学会総会・学術大会は陽春の候,平成3年4月26日(金)より3日間,京都市の国立京都国際会館にて,多数の応募演題(症例報告195題,一般演題210題,臨床病理カンファランス10題)のもとに今村貞夫会頭(京都大学)により開催された.会場の国立京都国際会館は近くに宝ケ池を配し,落ち着いた場所であり会場も広かったため,演題すべてが口演となった.
 今回の学術大会では,現在のわが国の皮膚科が曲り角に来ているという認識の下に,これからの皮膚科の未来を如何に築き上げていくべきかというテーマを土肥記念講演,招待講演およびシンポジウムで取り上げたのが従来の学会になかったものであった.さらに本学会の大きな特色の一つにミニレヴューがあり,わが国の第一線で活躍する各分野の皮膚科医を中心に現在の皮膚科領域でのトピックス48題を取り上げ,臨床皮膚科医,若手皮膚科医に対して教育講演を行った.さらに他のシンポジウムも合わせ,基礎皮膚科学と臨床皮膚科学のバランスがうまくとれており,基礎と臨床の結びつきを深めようという会頭の方針が十分活かされた学会であった.

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臨床皮膚科 第45巻 事項索引

ページ範囲:P. - P.

臨床皮膚科 第45巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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