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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科45巻2号

1991年02月発行

雑誌目次

カラーアトラス

女児の外陰部に生じた若年性黄色肉芽腫

著者: ,   勝俣道夫

ページ範囲:P.94 - P.95

患者 1歳6カ月,女児
 初診 昭和63年6月10日
 家族歴・既往歴 特記すべきことはない.
 現病歴 3カ月前に左大陰唇に半米粒大の皮疹が出現し,以後徐々に増大した.
 現症 左大陰唇に4.5×4mm大の半球状に隆起し,弾性軟,やや黄色調の紅色丘疹が認められる(図1).他部位に同様の皮疹や色素斑はなく,自覚症状もない.

原著

結節性黄色腫,腱黄色腫を伴つたIV型高脂血症

著者: 川名誠司 ,   長谷川延広 ,   西山茂夫

ページ範囲:P.97 - P.100

 50歳,男性.20年前より手背,肘に黄褐色結節,アキレス腱の肥大を認めるようになった.3年前より前胸部痛がときどき出現していたが放置していたところ,今回激しい前胸部痛が出現し内科に緊急入院した.冠動脈造影検査で左,右冠動脈各所のmicroinfarctionが確認された.血漿脂質はトリグリセライド,コレステロールが高く,分画でVLDL,Preβリポ蛋白が高値を示し,IV型高リポ蛋白血症であった.手背黄色結節は組織学的にコレステロールエステルを多量に含む泡沫細胞の集簇に基づくものであった.したがってIV型高リポ蛋白血症に伴った結節性黄色腫,腱黄色腫と診断した.

黄色腫を伴った原発性胆汁性肝硬変—プロブコールによる治療効果

著者: 三原昌子 ,   稲垣安紀 ,   幸田衞 ,   小玉肇 ,   植木宏明

ページ範囲:P.101 - P.105

 多彩な黄色腫を呈した原発性胆汁性肝硬変の1例を報告した.症例は39歳女性.昭和59年4月,全身倦怠感,黄疸が出現し,昭和60年7月,肝生検等により原発性胆汁性肝硬変と診断された.昭和60年2月より手掌の掌紋にそった黄色線条,上眼瞼内角部に扁平隆起性の黄色斑,大腿と上肢に黄色丘疹が出現.皮膚生検により,黄色腫と診断.検査では,遊離脂肪酸,トリグリセリド,燐脂質,β—リポ蛋白,コレステロールの上昇を認めた.初期には電気泳動上broad—βリポ蛋白の存在が疑われたがリポプロテインXは検出されなかった.プロブコール750mg/日内服で治療を開始し,手掌線状黄色腫,大腿,上腕,前腕の黄色腫は内服開始2週間後よりしだいに消褪傾向を認め,約3カ月でほぼ消失した.しかし,眼瞼黄色腫の改善は軽度であった.また,血中脂質では,トリグリセリド,燐脂質,コレステロール値の低下が認められ,経過中にリポプロテインXが検出された.

今月の症例

左室粘液腫を合併したMultiple Cutaneous Focal Mucinosesの1例

著者: 脇田久史 ,   佐山重敏 ,   上野陽一郎

ページ範囲:P.107 - P.110

 左室粘液腫を合併したmultiple cutaneous focal mucinosesの1例を報告した.症例は32歳男性.初診の2年前に左鼻前庭部腫瘤,左大腿部腫瘤,顔面の散在性丘疹に気づき,前二者は近医にて切除された.当院へは腹痛と失神発作で入院し,心エコー検査にて左室粘液腫と診断され,切除手術を受けた.術後,顔面の丘疹を生検したところ,真皮内に被膜を欠く粘液様変化を認め,その中に線維芽細胞様細胞が散在し,cutaneous focal mucinosisと診断した.上記以外に目立った皮膚変化はなく,NAME症候群1),LAMB症候群2)のクライテリアは満たさないものの,いわゆるcom—plex型心臓粘液腫3)に含まれるものと考えた.

臨床統計

らい療養所における真菌検査

著者: 石井則久 ,   高橋泰英 ,   金秀澤 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.113 - P.118

 国立療養所多磨全生園(入園者数704名)において手・足白癬の集団検診を行った.受診者は590名(83.8%)で,白癬が疑われた者は376名(53.4%)で,その直接鏡検陽性率は58.2%,真菌培養陽性率は34.6%であった.らい患者における白癬の合併率は一般社会の対象がないので不明であるが,集団社会としては著しく高いものとも思われず,また重症型が多いとも限らず,さらにL型とT型との間にも著しい差は認められなかった.

症例報告

Angiolymphoid Hyperplasia with Eosinophiliaの1例—本邦例48例の統計的考察を含めて

著者: 山本律子 ,   山田裕道 ,   内藤勝一 ,   高森建二

ページ範囲:P.121 - P.125

 45歳,女性のangiolymphoid hyperplasia with eosinophilia(AHE)の1例を報告した.本症例は7年前より後頭部に硬い結節があり,漸次拡大したため当科を受診した.初診時,当該部に一部は不整形,一部は半球状に隆起する直径1〜3cmまでの表面平滑な紅色調の硬い腫瘤を認めた.自覚症状はなかった.所属リンパ節の腫脹はなく,末梢血中の好酸球数,IgE値も正常であった.病理組織像では真皮上層から皮下脂肪織にかけて血管の増殖と血管内皮細胞の腫大を認め,血管周囲にはリンパ球,好酸球を主体とする稠密な細胞浸潤が認められた.本邦では1974年以来47例の報告があり,自験例を含めた48例につき統計的考察を行った.

蛇行性穿孔性弾力線維症の1例

著者: 軽部幸子 ,   井上靖 ,   田嶋公子 ,   池田重雄 ,   井上久

ページ範囲:P.127 - P.131

 33歳,女.頸部のほぼ全周にわたり赤褐色の角化性丘疹が密に配列し堤防状に隆起し,中央は萎縮性瘢痕状を呈する蛇行性穿孔性弾力線維症の1例を報告した.弾力線維性仮性黄色腫の合併はなく,ペニシラミン投与の既往もなかったが,組織学的にはペニシラミンによるものに特徴的な肥厚した弾力線維の側方に発芽するごとく突起が出ている所見が認められた.

治療に苦慮した汎発性膿疱性乾癬の1例—エトレチネートの初期刺激反応に関連して

著者: 生冨公明 ,   石河晃 ,   木花いづみ

ページ範囲:P.133 - P.136

 41歳,女性の,環状紅斑を呈するZumbush型の汎発性膿疱性乾癬を経験した.本例は17歳時尋常性乾癬として初発し,メソトレキセート,副腎皮質ホルモン剤の内服投与を受けたことがあり,Baker&RyanのグループIに属する.本例は,膿疱発作時,数回エトレチネートの投薬を受けるも,比較的短期間の経過観察で反応不良と判断され,難治性の膿疱性乾癬として治療を受けていた.しかし,今回発想の転換を行い,プレドニゾロン30mgに対しエトレチネートを中途より追加併用することにより,すみやかにプレドニゾロンを減量中止し,エトレチネート単独維持療法に変更できた.エトレチネート投与開始早期には,一見副作用と思われるがごとく乾癬皮疹が増悪する時期があり,エトレチネートの評価を下すには,少なくとも4週間ぐらいの時間を要すると痛感した.

水痘後の瘢痕に一致して皮疹が生じたサルコイドーシスの幼児例

著者: 樋口由美子 ,   西山千秋 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.137 - P.141

 確定診断が遅れたためか盲学校に入学した昭和56年4月生まれのサルコイドーシス幼児例を報告した.自験例は2歳4カ月時、水痘に罹患し、皮疹は瘢痕を残して治癒していたが,4カ月を過ぎた頃よりその部位が隆起するとともに赤味をおび,同時に熱発と手足の有痛性腫脹をきたした.3歳6カ月時,眼症状より虹彩毛様体炎,虹彩後癒着と診断され,3歳7カ月時,皮疹の生検にて原疾患がサルコイドーシスと確定した.幼児の本症の特徴は,1)発生頻度は極めて低い,2)成人や年長児と異なり皮膚病変,眼病変,関節病変を有することが特徴で,肺病変はむしろ稀である,3)生命の予後は良いが,眼病変は最も注意すべき病変で,見過ごされて失明にいたることもある,4)皮膚病型に関しては苔癬様型が半数以上を占める,と要約できる.

シアナミドによる固定薬疹の1例

著者: 斎藤すみ ,   宮本秀明 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.143 - P.146

 50歳,男.アルコール性肝障害のため,患者に内密でシアナミドが投与され,時々妻が内服させていた.昭和63年1月より両手背,両足背,下腿,大腿に瘙痒を伴う紫褐色斑,水疱の出没を繰り返し,回数を重ねるごとに皮疹の拡大,軽快後の色素沈着が見られるようになった.シアナミドの固定薬疹を疑い,色素沈着部,背部に貼布試験を行うも陰性.内服試験では色素沈着部にflare upを見た.組織浸潤細胞の同定を行い,Leu 4,HLA-DRの細胞が多く見られ,活性化型T細胞と考えられた.本邦におけるシアナミドによる薬疹11例についても,若干の考察を加えた.

尋常性狼瘡の高齢期初発例

著者: 斎藤学 ,   倉持政男 ,   五味博子 ,   堀川悦朗 ,   斎藤明 ,   三浦隆

ページ範囲:P.147 - P.150

 高齢期に初発した尋常性狼瘡の1例を報告した.1980年以降最近10年間における本症本邦報告例を集計し,特に初発年齢の面から検討した.自験例は61歳女性で,約1年前左上腕に大豆大の紅斑局面が発生,以後自覚症状ないまましだいに拡大.病理組織像は典型的.培養にて人型結核菌を検出.従来より本症はほとんどの症例が30歳代までに初発する1)とされていたが,1965年を境として症例数が急減する2)につれ高齢者症例の報告が散見されるようになった.今回検索し得た全報告85例を,発症年により1965年前,後および最近の10年という3群に分け,初発年齢について検討した結果,1965年以前の群では94%が30歳代までに初発し,1965年以降では逆に40歳以上の中高齢者が74%を占め,とくに最近10年間群においては14例中11例が40歳代以上,特に6例が50歳代であった.すなわち,近年とくに初発年齢の高齢化が認められ,今後さらに高齢化が進むものと思われる.

Pigmented Fungiform and Filiform Papillae of the Tongueの1例

著者: 加藤直子

ページ範囲:P.151 - P.154

 27歳の女性の,舌茸状乳頭および糸状乳頭に一致してメラニン沈着を示した1例を経験した.舌両側縁および舌尖に15歳時から無症候性に散在する点状の黒褐色性皮疹を生じ,組織学的に舌茸状乳頭および糸状乳頭の両者にメラニン色素が観察された.舌茸状乳頭にメラニン沈着を示すpigmented fungiform papillae of the tongueは,口腔内および舌の色素沈着症の中で,顔面皮膚の黒さの程度に比例して多く観察されるcommon variantとされているが,本邦での報告は極めて稀である.自験例は舌糸状乳頭にもメラニン沈着を示したため,pigmented fungiform and filiform papil—lae of the tongueと診断した.

Bourneville-Pringle母斑症の1例

著者: 岡部直美 ,   村田哲 ,   狩野俊幸 ,   鈴木正之 ,   片山洋 ,   矢尾板英夫 ,   赤羽伸夫

ページ範囲:P.155 - P.158

 35歳,女性.顔面の血管線維腫,てんかん発作と知能低下を認めた典型的Bourneville-Pringle母斑症で,本症に比較的稀な肝臓病変を伴った1例を報告した.皮疹は顔面の血管線維腫のほか葉状白斑,粒起革様皮膚,Koenen腫瘍,頭部結合織母斑,白髪,口腔内病変と多彩であった.内臓病変では,大脳の萎縮,側脳室の拡大および脳室壁の石灰化が認められ,腎臓には血管筋脂肪腫が認められた.また,今まで本症に比較的稀とされていた肝臓内病変も,CTおよびエコーで確認された.自験例について報告し,若干の文献的考察を加えて卑見を述べた.

巨大腫瘤を呈した皮膚悪性リンパ腫の1例

著者: 小松平 ,   高田裕 ,   宮川淳子 ,   加藤安彦 ,   長谷哲男

ページ範囲:P.159 - P.162

 皮膚病変を主病変とし,巨大腫瘤を呈し,末期には白血化が認められた皮膚悪性リンパ腫の1例を報告した.症例は65歳の女,約3カ月で12×8×3.5cmを呈した腰背部の巨大腫瘤と約6カ月で12×8cmに及ぶ紅色局面を主訴として来院した.腋窩リンパ節腫脹.皮膚生検にて表皮向性を伴わない中型腫瘍細胞のびまん性浸潤が認められた.腫瘍細胞の表面マーカー検索の結果は,CD2+,CD3−,CD4−,CD5−,CD10+,CD19−,CD22−,MT−1+,SL−26−で,皮膚悪性リンパ腫に多いmatureなhelper T細胞型ではなく,やや幼若なpre thymic T細胞性に相当するものであった.皮膚腫瘤・紅色局面および腋窩リンパ節切除後化学療法を施行したが白血化をきたし死亡した.皮膚におけるpre T細胞性リンパ腫は比較的まれと思われるので文献的に若干の考察を加えた.

Atypical Melanocytic Hyperplasia—Superficial Soreading Melanoma in situの前駆病変

著者: 原弘之 ,   石井良典 ,   柴田明彦 ,   鮫島俊朗 ,   兼松秀一 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.163 - P.166

 病理組織学的にatypical melanocytic hyperplasia(AMH)と診断した2症例の病巣中5-S-cysteinyldopa(5-S-CD)値を測定した.症例1は49歳女,鼻背左側の径7mmの類円形,濃淡のある黒褐色色素斑で,症例2は58歳男,右頬部の12×8mm,濃淡のある不規則黒褐色色素斑であり,病理組織学的には,Sagebielの記載に従うと,症例1はAMH,症例2はAMH with host responseであった.病巣中5-S-CD値は症例1は176.0ng/mg,症例2では76.8ng/mgと悪性黒色腫を思わす高値であった.病巣中5-S-CD値の観点から,AMHはsuperficial spreading melanoma(SSM)in situそのものと思われるが,病理組織学的にはSSM in situの典型像とは異なっており,SSM in situへの段階的癌化過程の早期病変すなわち,SSM in situのprecursor Iesionとして位置づけるのが妥当のように思われた.

細胞診診断を試みたマイボーム腺癌の1例

著者: 飯島茂子 ,   飯野知足 ,   木村勝隆

ページ範囲:P.167 - P.170

 62歳,女性の右上眼瞼に発生したマイボーム腺癌の1例を報告した.初診4カ月前に霰粒腫として切開術を受け,その1週間後に再発.初診時,右上眼瞼縁に淡黄色調の硬い小結節を認めた.全摘時,腫瘍割面の捺印標本からパパニコロー染色を試み,悪性細胞を確認し得た.また,脂肪染色陽性の細胞質内空胞を認め診断を確定した.治療はswitch flap法に基づき,下眼瞼に有茎皮弁を作成し,上眼瞼の再建を行った.術後15カ月の現在再発は認めない.

皮角を呈した熱傷瘢痕癌の1例

著者: 和泉達也 ,   杉俊之 ,   早川和人 ,   原田敬之

ページ範囲:P.171 - P.174

 63歳,男.3歳時に頭部に熱傷を負い,瘢痕治癒した.受傷60年後,瘢痕部中央に落屑を伴う紅斑が出現してきた.10カ月後には著明な角質増殖を伴い,27×17mm,高さ9mmの切り株状に突出し,皮角を呈した.組織学的所見より,熱傷瘢痕より発生した有棘細胞癌と診断した.

研究ノート・14

沼先生

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.131 - P.131

 京大医化学の沼先生は,私が学生のとき,丁度,ドイツから帰られた新進の教授だった.あまり授業に出ていなかった私は,自治委員として試験日程を交渉に行ったとき,はじめて先生のお顔を拝見したが,その後,大学の近所の決まったレストランでいつも夕食をとられているのをときどきお見かけした.寸暇を惜しんで仕事をされているのが容易に想像できた.あの当時,先生は「脂質代謝の専門家」と聞いていたし,確か講義も試験問題も「脂質」に関するものだったと記憶している.
 約15年が経過して,私が病棟医長時代の研修医の先生と話していたら,「沼先生は,molecular biologyの権威ですよ」というのでびっくりした.少し文献を調べてみると確かにこの領域でめざましい業績をあげておられる.私が敬服したのは,その業績もさることながら,「脂質代謝の第一人者」としてすでに教授になられていた先生が,この15年の間に,新しい領域に目を向けられて,しかも,その分野でも,authorityになられたことである。私のしてきたようなささやかな臨床研究でさえ愛着はあるし,離れがたい安心感があるのでなかなか他の領域に踏み出すのには勇気がいる.しかし,1つの分野にいつまでも固執しているとどうしても頭が固くなるし研究も保守的になる.私の場合も,好中球から出発して,活性酸素,紫外線,接触過敏症,老化といろいろ徘徊したし,最近では,同僚の先生と血管内皮細胞や遺伝子のことまで首を突っ込んでいる.いかにも小人の研究態度ではあるが,いろいろな実験を並行して行うのが私には合っている気がする.私にとって実験に失敗を繰り返してもめげないコツはこのあたりにあるのかもしれない.「何でも見てやろう」という姿勢は,今後ますます分化と統合が必要とされる臨床研究において必須条件となろう.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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