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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科45巻3号

1991年03月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Eosinophilic Cellulitisの1例

著者: 高橋千恵

ページ範囲:P.186 - P.187

患者 54歳,女性
初診 平成元年10月12日
家族歴 息子に下肢血管炎
既往歴 特記することはない.
現病歴 平成元年10月3日,突然右手首から前腕全体に及ぶ腫脹が生じ2日間続いた.10月5日夕方,今度は右上腕から前腕にかけて腫脹し始め2日間続いた.さらに10月11日,再度右手首から腫脹が始まり前腕に及んだため初診となった.
初診時現症 右手背から前腕全体が緊満性に発赤腫脹し,熱感と自発痛があった(白血球数は13100,好中球82%,好酸球2.5%).

原著

全身性形質細胞増多症—本邦報告例29例のまとめを中心として

著者: 木花いづみ ,   石河晃 ,   生冨公明 ,   松岡康夫 ,   加茂紘一郎

ページ範囲:P.189 - P.195

 躯幹を中心に多発する暗赤褐色斑,表在リンパ節腫脹および多クローン性高γグロブリン血症を伴う40歳男性例を報告した.本症については病因,経過,予後について不明な点が多い.自験例について免疫組織学的検索,各種感染症に対する検査を行い,その病因について若干の考察を行った.また過去の報告例について主にその後の経過に関してアンケート調査を行い,臨床的特徴についてまとめた.

優性遺伝を示したメレダ型掌蹠角化症

著者: 大草康弘 ,   長島正治

ページ範囲:P.197 - P.201

 常染色体性優性遺伝を示したメレダ型掌蹠角化症の母子例を報告した.いずれも生来両手掌,足底に潮紅,多汗症を伴うびまん性の軽度の角質増生がみられ,同様の病変は手関節掌側,指背,手背,趾背,足背,アキレス腱下部に及んでいた.組織学的にはorthohyperkeratosisを示し,電顕的には基底細胞に太くかつ長いトノフィブリルが,顆粒層では大型の円形ないし楕円形のケラトヒアリン顆粒が数多くみられた.メレダ型掌蹠角化症の皮膚症状,遺伝型式,電顕所見,鑑別診断について考察し,メレダ型掌蹠角化症は遺伝性掌蹠角化症の独立した一型として分類し,その遺伝型式をさらに明らかにすべきことを述べた.

研究ノート・15

レジデント

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.195 - P.195

 大学を卒業して直ちに,いま奉職している病院の内科ジュニアレジデントとなった.皮膚科医になるにしても,general medicineやprimary careを修得すべきだと考えたし,何よりも,アメリカスタイルのレジデント生活に憧れた.院内では,汚れてもいいように白衣のズボンをはき,夜,廊下を走っても音がたたないように専用のシューズを揃えた.かなり多忙だったことは,1年間に,主治医として10数枚の死亡診断書を書いたことからもうかがわれる.麻酔科もローテートし,何でもできる自信がついていた.しかし,あるときふと自分がマニュアル医者になりつつあることに戦慄を覚えた.血圧が低下すれば何をし,呼吸が停止したら何をするという具合に,すべてマニュアルをたたき込んであったが,自分で創造的に考えるということがなくなっていた.そこで思い切って大学へ戻ったが,レジデントとして修得した技術は,重宝がられはしたが評価はされなかった.それから数年の実験生活ののち,アメリカで皮膚科のレジデントと接する機会があったが,彼らは,教科書を全部暗記しているほど知識があった.カンファレンスで臨床写真が1枚出れば,山ほど鑑別疾患を挙げ,ホワイトボードにぎっしり鑑別点を列挙するほどの力量があり,日本の研修医とは比べものにならないほど勉強していた.しかし,実験のアイディアなどには乏しかった.こういうレジデントの中から,どうやって優秀な研究者が輩出されるのか今もって判らないが,彼らもどこかで努力しているはずだと思う.
 今になって考えてみると,自分の,臨床から離れられない研究というのは,レジデント時代に培われたのかもしれないと思う.general physicianたろうとしたことは,他臓器から皮膚をみつめようという発想につながったし,しかも,内科とは識別されるべき皮膚科学を常に念頭におくようになった.そう思うと,あのレジデント生活は決して無駄ではなかった.むしろ,臨床と研究の両輪を橋渡しする素地となってきた気もする.病棟医長になったとき,もうレジデント時代の技量は衰えていたはずなのに妙な自信だけが残っている自分に苦笑してしまったことがある.今の,第一線の皮膚科の臨床で学んでいることも,いつか自分の研究にうまく反映されたらいいなと思う.

今月の症例

小児に発症した尋常性天疱瘡の1例

著者: 佐々木道子 ,   斉藤幸雄 ,   山本一哉 ,   早川和人 ,   橋本隆 ,   西川武二

ページ範囲:P.203 - P.206

 非常に稀と思われる尋常性天疱瘡の小児例を報告した.患者は12歳4カ月,女児.頭部および口腔内病変より発症し,全身に水疱・びらんを認めた.組織学的に表皮基底層直上に棘融解性水疱が見られ,病変皮膚表皮細胞間にIgG,C3の沈着を認めた.血中抗表皮細胞間抗体は960倍陽性で,免疫ブロット法による検索で,尋常性天疱瘡特異抗原を検出した.これらの臨床症状・検査結果は,通常の成人発症の尋常性天疱瘡と全く同様であった.今後,小児尋常性天疱瘡発症の機序につき,さらに種々の検討が必要と思われる.

臨床統計

中高年の薬疹

著者: 大沢純子 ,   相原道子 ,   北村和子 ,   池澤善郎 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.207 - P.210

 1983-1988年の横浜市立大学皮膚科における40歳以上の中高年層の薬疹に着目し検討した.40歳以上の占める割合は6年間で著変はなかったが,60歳以上の層の増加が認められた.臨床型では若年層と比べ苔癬型と光線過敏型が目立って多く,原因薬剤では高血圧治療薬,循環器用剤が多いのが特徴的であった.同一薬剤において臨床型の発現のしかたを各年代毎に比較してみると,抗生剤では紅皮症型の増加傾向が,消炎剤で光線過敏型が増え固定疹型が減少する傾向がみられた.これらの特徴は中高年層に投与頻度の高い高血圧治療薬や循環器用剤が苔癬型や光線過敏型をきたしやすいためだけではなく,加齢による要因も存在すると思われた.

症例報告

疱疹状膿痂疹の1例—本邦報告例の集計

著者: 児島孝行 ,   藤田優

ページ範囲:P.213 - P.216

 26歳,女性の疱疹状膿痂疹の1例を報告した.あわせて本邦報告例を集計した.1988年までの報告例は98例であったが,詳細不明な例,膿疱性乾癬例を除くと88例であった.女性例は72例(82%)で,うち妊産婦は47例(54%)であった.多くの例が発熱,白血球増多を伴って発症していた.初発部位は躯幹が最も多く,皮疹は多くの報告で,潮紅上に膿疱を有し,一部環状を呈していた.血清Ca値は正常,低下例が相半ばしていた.妊娠例では妊娠5・6カ月の発症が最も多かった.治療はステロイド剤は有効例もみられたが,一方で無効例,減量で増悪する報告も多かった.メソトレキセート,PUVA有効例も散見されるが,近年はレチノイドが有効との報告が多かった.本症とGPPとの異同について文献的に考察を行った.

稽留性肢端皮膚炎の1例

著者: 安藤浩一

ページ範囲:P.217 - P.219

 38歳,女.平成元年11月頃より特に誘因なく右第3指未節部の発赤,腫脹を生じた.同時に爪甲下および爪甲に隣接する皮膚に小膿疱が出現し,爪甲の脱落,破壊を認めるようになった.近医にて治療を受けたが改善しないため,平成2年2月16日当科を受診した.病変部より細菌,真菌を検出せず,さらに膿疱部の生検標本でKogojの海綿状膿疱を認めたため稽留性肢端皮膚炎の1例と診断した.メチルプレドニゾロン4mg/日の内服およびプロピオン酸クロベタゾール軟膏外用にて軽快し,以後経過を観察中である.

妊娠性疱疹の1例

著者: 安江厚子 ,   三田哲郎 ,   山田有紀

ページ範囲:P.221 - P.223

 定型的な臨床像を呈した妊娠性疱疹の36歳女性例を報告した.今回の妊娠(5回目)の34週目にあたる8月末,臍囲に瘙痒性紅斑が出現し,9月中旬頃より四肢にも同様の多形滲出性紅斑様の紅斑,水疱を生じた.皮疹部の組織検査では,水疱は表皮下で,蛍光抗体直接法では,表皮基底膜部に線状のC3の沈着が認められ,蛍光抗体間接法にて,患者血清中にHG因子の存在が証明された.患者は,39週で2,620gの女児を無事出産した.新生児に異常はなく,その血清中にHG因子は証明されなかった.出産後も皮疹が持続したため,プレドニソロンによる治療を1日30mg内服より開始し約1カ月で軽快した.満期正常分娩児の胎盤を基質とした蛍光抗体間接法にて,本患者血清中に,羊膜の基底膜と反応するC3結合因子(おそらくはHG因子)の存在が確認された.

放射線照射部位に発症した悪性脈管内皮細胞腫の1例

著者: 井出瑛子 ,   桜岡浩一 ,   清水宏 ,   仲弥 ,   西川武二

ページ範囲:P.225 - P.229

 88歳,女性.子宮頸癌根治術および放射線治療を受け,17年後に,下腹部の放射線治療部に一致して紅色結節が多発した.皮疹は病理組織学的には典型的な悪性脈管内皮細胞腫の像を呈していた.放射線治療にて一時的に寛解をみたが,7カ月後に再発,全経過14カ月にて死亡した.本症に対する放射線治療の有効性につき,文献的に検討した結果,皮膚病変には一時的な改善が認められるものの,腫瘍の浸潤および転移を完全に阻止することは難しく,また再発時の再照射はほとんどの例で無効であった.

蝶形紅斑様皮疹を呈した小児の非白血性皮膚白血病の1例—Biphenotypic Leukemiaと考えられた1例

著者: 坂井博之 ,   松本光博 ,   飯塚一 ,   鈴木豊 ,   岡敏明 ,   大熊憲崇

ページ範囲:P.231 - P.235

 5歳,男児.昭和62年11月11日初診.両頬に紫紅色の蝶形紅斑様皮疹を認める.組織学的に血管および付属器周囲性に異型細胞の浸潤を認め,皮膚白血病,悪性リンパ腫などを疑ったが,末梢血液中に異常細胞は認めなかった.皮疹出現2カ月後の血液検査で末梢血液中に白血病細胞が出現し,骨髄検査により急性白血病と診断された.よって,本症例は非白血性皮膚白血病と考えられた.また,白血病細胞の検索においては,リンパ系と骨髄系の形質を共に発現しており,biphenotypic leukemiaと診断した.

血小板減少を伴った血管肉腫の1例

著者: 菅野優子 ,   金森正志 ,   市川澄子 ,   中村保夫 ,   清水正之

ページ範囲:P.237 - P.240

 60歳男性の頭部に明らかな誘因なく発症した血管肉腫の1例を報告した.本例では,電子線照射と抗癌剤動注の併用療法により一時的に腫瘍が縮小したが,リンパ節転移が発生し,IL−2の投与も効果なく全身臓器への転移をきたしDICを合併して死亡した.また,初診時末梢血の血小板数が1.8万/mm3と著明に低下していたが,腫瘍の縮小に伴い,血小板数は正常値にまで改善し,腫瘍の大きさと末梢血の血小板数に明らかな相関関係が認められたことより,自験例の血小板減少はKasabach—Merritt症候群と同様の機序により発生したと考えられた.

Pilar Sheath Acanthomaの1例

著者: 原田玲子 ,   川久保洋

ページ範囲:P.241 - P.244

 48歳,男の頬部に認められた嚢腫状病変において,嚢腫壁に腫瘍細胞の指状,索状,塊状,島嶼状の増殖が認められた.一部では,トリコヒアリン顆粒を伴う毛包への分化を思わせる所見があり,検討の結果,pilar sheath acanthomaの範疇に属する腫瘍と考えた.Dilated pore等,他の毛包腫瘍との鑑別を中心に考察を加えた.

両側性聴神経腫瘍を伴った神経鞘腫症の1例

著者: 高田実 ,   広根孝衞 ,   立花修 ,   山下純宏

ページ範囲:P.247 - P.250

 多発性皮膚神経鞘腫に両側性聴神経鞘腫および脊髄神経の多発性神経鞘腫を合併した27歳の女性例を報告した.腰にcafé-au-lait斑が1個みられたが神経線維腫は認められなかった.家系内に同症はなかった.神経鞘腫症と神経線維腫症2型との異同につき考察を加えた.

耳介に生じた有毛性の単発性Naevus Lipomatosus Cutaneous Superficialisの1例

著者: 小林孝志 ,   増田光喜 ,   早川和人 ,   西川武二

ページ範囲:P.251 - P.254

 25歳,女性.初診の5年前,左耳介後面に自覚症状を伴わない結節があるのに気づいた.臨床的に,1.6×1.6cm,軽度に降起し,黄色調,表面一部顆粒状で硬毛を有する結節であり,生検組織所見では真皮乳頭層直下までの脂肪組織の増生を認め,単発性のnaevus lipomatosus cutaneous superficialisと診断した.本症の発生部位の多くは腰臀部であり,耳介に発症したのは我々が調べ得た限りでは本邦で初めてであった.また,自験例では,臨床的に結節に硬毛を伴ったことが特徴的であった.

眼窩内浸潤をみた眼瞼苺状血管腫の1例

著者: 樋口道生 ,   高橋明子

ページ範囲:P.255 - P.258

 1カ月,女児.左眼瞼および眼窩に生じた苺状血管腫の1例を報告した.左上眼瞼からこめかみにかけて典型的な苺状血管腫があり,開眼が不十分で眼球の外転運動障害をみた.CT検査で血管腫の眼瞼から眼窩内への浸潤があり,腫瘍による眼球突出,視神経の圧迫,眼窩の拡大像を認めた.ステロイド内服療法で苺状血管腫の早期縮小をはかり,視機能異常の改善につとめた.4年経過後,両眼瞼の左右不対称と乱視を残したものの矯正視力1.0で弱視は認めていない.治療中に満月様顔貌が出現したが,その他の副作用はなかった.

Neurotic Excoriationの1例

著者: 竹之下秀雄 ,   春山秀城

ページ範囲:P.259 - P.263

 13歳,女.初診6カ月前より両側殿部および下肢に難治性痒疹様皮疹が存在.これらの皮疹は,①約6カ月間の伝染性膿痂疹としての治療に反応しなかったこと,②瘙痒感が全くなかったこと,③両側殿部と下肢に限局し,分布に一定の傾向が見られなかったこと,④新旧のものが見られたこと,⑤母子家庭であること,⑥掻破行為を認めたこと,これらのことにより,neurotic excoriationと診断,病因について説明したところ,納得が得られたので,補助的に精神神経用剤の内服と抗生物質加ステロイド軟膏中心の外用にて加療した.初診から6週目より新たな皮疹が見られなくなったため,12週目に内服薬,20週目には外用薬を中止したが,その後再発がなく,順調に経過している.また矢田部—ギルフォードテスト,親子関係テストを施行したところ,母親,患児双方に多少の精神的問題を見いだしたので,若干の考察を記述するとともに自傷性皮膚障害の分類についても整理を試みた.

印象記

第2回日本—中国合同皮膚科学術会議印象記

著者: 上出良一

ページ範囲:P.264 - P.266

 日本,中国両国の皮膚科学会相互の学術的発展,親善友好を目的として,1988年に初めて北京で第1回日本—中国合同皮膚科学術会議が開かれた.成功裡に終わった同大会を受けて,2年後の昨年11月19日,20日にかけて第2回大会が上海市の遠洋賓館で開催された.その間天安門事件のため一時は第2回の開催が危ぶまれたこともあったり,当初,南京で開催される予定が諸般の事情で急遽,上海に変更されたりなど多少の紆余曲折はあったものの,双方の組織委員会の熱意が実り,遂に開催にこぎつけることができた.日本側組織委員長(会長)は今村貞夫京都大学教授,中国側は名誉主席:王光超北京医科大学第一医院教授,大会主席:陳錫唐中日友好医院教授で,日本からは100名,中国からは150名が参加した.小生も第1回目に引き続き参加させて頂いたが,第1回と比べて人的交流の深まりと,中国皮膚科学の急速な進歩が強く印象に残った学会であった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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