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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科45巻4号

1991年04月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Multiple Piloleiomyoma

著者: 藤原愉高

ページ範囲:P.274 - P.275

患者 52歳,男性
 初診 平成元年11月14日
 家族歴・既往歴 特記すべきことなし.
 現病歴 約30年前,左前腕伸側に赤褐色,小豆大の丘疹が出現し徐々に増数.25年前に丘疹を数個切除したところ,切除部に一致してケロイド状に腫瘤を形成してきた.
 現症 左前腕伸側に計12個のドーム状に隆起する赤褐色の丘疹ないし,腫瘤を認める.大きさは径5〜25mm,瘢痕に一致するものは大型で,表面に毛細血管拡張を伴う.寒冷,圧迫にて疹痛を生じる.2個の円形の浅い潰瘍は,パンチバイオプシーによるものである(図1).

原著

経皮ガス分圧モニタの皮膚科における臨床応用

著者: 滝脇弘嗣 ,   神野義行 ,   大浦一 ,   荒瀬誠治 ,   重見文雄

ページ範囲:P.277 - P.282

 新生児の全身管理用モニタとして繁用されている経皮酸素分圧(tcPo2),経皮炭酸ガス分圧(tcPco2)モニタの皮膚科領域における臨床応用について検討した.tcPo2は特定の疾患に限らず,病態の異なる各種皮疹部で低下した.すなわち,皮疹部にみられる病理学的変化の多くはtcPo2を低下させる方向に働くと考えた.低下の原因はさておき,tcPo2値は臨床経過に並行して変動するので,病変の程度や経過の検討にあたり非特異的なパラメータとして利用できよう.しかし,顔面・掌蹠では健常成人でも著しく低値なので注意を要する.またtcPco2の変動は概して小さいが,壊死性筋膜炎や類天疱瘡水疱部で著しく上昇した.tcPco2の異常高値は局所の循環不全を示唆し,表皮や皮膚全層の壊死に先立つ指標として有用と思われた.

乳頭状エックリン腺腫

著者: 松井誠一郎 ,   池谷敏彦 ,   新田悠紀子 ,   原一夫 ,   青山久

ページ範囲:P.283 - P.287

 32歳男性.右下腹部に生じた13年の経過を持つ乳頭状エックリン腺腫の1例を報告した.腫瘍は3×2.5cmの赤褐色,表面平滑,弾性硬で臨床的には一見隆起性線維肉腫を思わせたが下床との癒着は認めなかった.真皮浅層から筋膜直上にかけて境界明瞭な腫瘍があり,組織学的に大小の管腔構造および,管腔壁が内腔に向かって乳頭状に突出する特徴的な所見が認められた.本症はきわめてまれなエックリン汗器官の良性腫瘍である.

Multicentric Extraabdominal Desmoid(Aggressive Fibromatosis)

著者: 稲垣安紀 ,   浜崎洋一郎 ,   幸田衞 ,   植木宏明

ページ範囲:P.289 - P.293

 症例:11歳女性.8歳時に左足背の外傷治癒後に皮下小結節が出現し,切除されたが度々再発し増大したため来院.線維腫の診断にて放射線療法を施行し,同部は軽快したが,約2年後,同側下腿の手術瘢痕部に3個の皮下結節が出現し,しだいに拡大した.3年後にはふくらはぎ部にも皮下結節が出現し,1年間で小児手拳大となり,疼痛を伴ってきたため,皮下腫瘤摘除および腫瘍の浸潤した筋群と神経を切除した.組織学的には,腫瘍細胞に異形性はなく,束状に配列した紡錘形の細胞が主体で間質に豊富なコラーゲンがみられた.9年間経過を観察できたが,遠隔転移の所見はなく,multicentric extraabdominal desmoidと診断した.外科的切除を早期に十分に行い,放射線療法は補助的療法として有用と考えた.

研究ノート・16

イソジン・シュガー

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.293 - P.293

 昭和59年頃,外来で難治性下腿潰瘍の患者さんを何人か診ていて治療に苦渋していたとき,いわゆる「イソジン・シュガー」(ポビドンヨード・シュガー配合剤)のことを知り,実際に使ってみると,かなり有効であった.しかし,砂糖の顆粒がしみるとかボロボロ落ちるなど使用感に問題があり,また分離したり水あめ状になったりして安定性に欠けていた.そして何よりも自分で調合しなければならないのが煩雑だった.
 丁度そのころ,他の治験薬の件で来られていたK社開発部のT氏にその話をしたら,非常に興味をもたれ,次回までに山ほど文献を探して来て下さった.さらに,社内で医薬品としての開発のプロジェクトを組み,研究所に依頼して安定な製剤のための薬剤の研究に着手することに奔走して下さった.それから,足かけ5年の歳月をかけて,臨床試験や基礎実論のお手伝いをすることになったこの薬剤の開発の端緒は,ほんのささいな雑談からだった.基剤は,米国や日本などで特許がとれ,治験も順調にすすみ,やっと製品として日の目を見ることになった.いままでずいぶん開発治験に参加させていただいたが,これほど主体的に参画したのは,はじめての経験だった.

今月の症例

Sclerotic Fibroma of the Skinの1例

著者: 井上康子 ,   若新多汪

ページ範囲:P.295 - P.298

 78歳,女性の右手示指に発生したsclerotic fibroma of the skinの1例を報告した.右手示指末節拇指側に皮膚と癒着した大豆大の結節がみられた.組織学的には薄い結合織性の被膜で被われた腫瘍塊がみられ,腫瘍は束状配列を示す硝子化膠原線維より成っていた.Sclerotic fibroma of the skinについて概説するとともに,自験例と臨床および組織学的に鑑別を要するものについて略記した.

臨床統計

山形県立新庄病院皮膚科における帯状疱疹の臨床的観察—帯状疱疹と内臓悪性腫瘍の関係について

著者: 安斎真一 ,   山口千賀子 ,   佐藤紀嗣

ページ範囲:P.301 - P.305

 昭和61年1月から63年12月の間に山形県立新庄病院皮膚科を受診した新鮮例の帯状疱疹401例について臨床的観察を行った.その結果以下のような結論を得た。1)発症は夏〜秋に多かった.2)年齢別では50歳台に最も多く,10〜20歳台と50〜60歳台の2峰性分布を示した.性別では女性にやや多かった.3)発生部位は胸神経領域に多かったが,高齢者・入院加療を要した患者では三叉神経領域・頸神経領域・腰神経領域に多かった.4)帯状疱疹後神経痛は全体の3.9%にみられ,50歳以上または入院加療を要した患者,悪性腫瘍を合併した患者ではさらに高率であった.5)高齢者の無疼痛例・再発例では悪性腫瘍の合併が高率であった.6)おもに50歳以上の患者66例について内臓悪性腫瘍の検索を行ったが,3例(4.5%)に胃癌の合併がみられた.これは集団検診の発見率よりかなり高率であった.7)発生部位に関係なく顕微鏡的血尿の合併が22.7%と高率にみられた.

症例報告

特異な皮疹を呈した皮膚筋炎の2例

著者: 石河亜紀子 ,   栗原誠一

ページ範囲:P.307 - P.311

 症例1:60歳,男.肺癌を合併した皮膚筋炎.四肢の瘙痒性紅斑上に急速かつ広範に小水疱の形成が認められた.組織学的に基底層の液状変性,真皮上層の著明な浮腫,一部で表皮下水疱の形成がみられた.ステロイド剤が著効したが肺癌の術後,肺炎にて死亡した.症例2:76歳,女.2年前より皮膚筋炎にて加療中.約3年前より右下腹部に瘢痕様病変あり.皮下に石灰沈着を思わせる大きさ12×5cmの板状硬結を認めた.組織学的に皮下脂肪織に脂肪肉芽腫の像がみられ,脂肪細胞は崩壊して大小のoil cystsを形成し,嚢胞内には萎んだ唐草模様状の膜構造が出現しており,これはNasuのいう膜嚢胞性変化と思われた.

パッチテストにより全身の色素沈着部に再燃を見た中毒性表皮壊死症の1例

著者: 青山浩明 ,   薄場泰子 ,   富田靖

ページ範囲:P.313 - P.316

 症例は24歳,女性.出産直後にセフェム系抗生剤の投与を受けたあと,かぜ様症状,発熱とともに出現した紅斑が,再度のセフェム系抗生剤投与後に水泡化し,中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis;TEN)を生じた.皮疹は血漿交換,パルス療法,プレドニン投与で軽快した.皮疹の治癒後,無疹部で擦過貼布試験を行ったところ,発疹消退後の色素沈着部に一致して紅斑の再燃(flare-up)を見た.免疫組織学的解析を試み,T細胞を介した細胞性免疫の関与を示唆する所見を得た.TEN型の薬疹にパッチテストを行い,発疹消退後の色素沈着部にのみflare-upを見たことはきわめて珍しく,TEN型薬疹の発症機序を考えるうえで興味ある症例と考え報告した.

腹筋麻痺を伴った帯状疱疹の3例

著者: 岩瀬教子 ,   原喜久子 ,   村田恭子 ,   永島敬士

ページ範囲:P.317 - P.321

 腹筋麻痺を伴った帯状疱疹の3女性例(59歳Th11-12領域,73歳Th10—L1,58歳Th10-11)を報告した.共通の麻痺症状として広範囲の腹部膨隆,頑固な便秘,皮疹部皮膚の知覚消失が認められた.診断:前者は腹直筋の筋電図のneuro—genic patternから,後2例はCT像(内腹斜筋の膨化と腹直筋の萎縮)から下された.予後:アシクロビルを病初期に使用した後2例は約2カ月で軽快〜治癒したが,同薬を用いていない前者の腹部膨隆は9カ月後も不変であった.

Acquired(Digital)Fibrokeratomaの2例

著者: 山本俊幸 ,   森田恭一 ,   古井良彦

ページ範囲:P.323 - P.325

 Acquired(digital)fibrokeratomaの2例を報告した.症例1は,27歳,男性の右第3指に生じた例で,臨床像が比較的稀と思われた.症例2は,69歳,男性の右第1指に生じた例で,組織学的に真皮上層の小血管周囲に層状の結合織増生がみられたこと,豊富な胞体をもった星形の線維芽細胞が増加し,そのなかに多核の細胞を混じていたことより,angiofibromaの組織所見を呈したacquired digital fibrokera—tomaと考えられた.

顆粒細胞腫の2例

著者: 永山三千代 ,   新本洋子 ,   秋元佳代子 ,   川島真 ,   肥田野信

ページ範囲:P.327 - P.330

 22歳女子の右上腕,43歳男子の右腋窩後方にそれぞれ1個ずつ生じた顆粒細胞腫を報告した.組織像はいずれも典型的で,真皮内にジアスターゼ抵抗性PAS染色陽性,酵素抗体法によるS−100蛋白陽性かつNSE陽性顆粒を豊富に有する顆粒細胞が増殖していた.電顕像では,顆粒細胞内に種々な大きさの顆粒,空胞を多数認め,またミエリン様構造物もみられた.Fibroblast様細胞の胞体内にいわゆるangulatebodyもみられた.これらのことから神経由来が示唆された.2症例とも切除後再発はない.

被包性脂肪壊死性小結節(菊池)の2例

著者: 卜部頼人 ,   望月隆 ,   渡辺昌平

ページ範囲:P.331 - P.335

 37歳と64歳の女性に生じた被包性脂肪壊死性小結節(菊池)の2例を報告した.臨床的には2例ともに若干の可動性を有する自覚症状のない単発性の皮下小結節で,切除した小結節は乳白色で骨様の硬度を有していた.組織学的には壊死に陥った脂肪組織が結合組織によって被包されていた.またこの脂肪組織内に膜嚢胞性病変を認めた.さらに本症の報告例を収集し,若干の考察を加えた.

若年者に生じた真皮内限局型エックリン汗管腫瘍(Dermal Duct Tumor)

著者: 高橋和宏 ,   田上八朗

ページ範囲:P.337 - P.338

 Dermal duct tumorの報告例のほとんどは中年ないし老年であるのに対し若年に生じた典型例を経験した.すなわち22歳,女性の手関節部伸側に単発した12年の臨床経過をもつ直径3mmの淡褐色で表面平滑の隆起性腫瘤で,病理組織所見より真皮内に限局するエックリン汗管腫瘍(dermal duct tumor)と診断した1例を報告した.

巨大単発型汗孔角化症の1例

著者: 綿枝耕二 ,   浜中和子 ,   森田健司

ページ範囲:P.341 - P.344

 76歳,男.約10年前より,右前腕伸側部に紅色環状皮疹が出現した.徐々に遠心性に拡大し,7.1×6.3cm大となった.皮疹外縁部に紅斑性局面を認め,辺縁は堤防状ないし線状に隆起し,落屑性角化性変化を示していた.組織学的に,辺縁部に一致してcornoid lamellaを認め,臨床像と合わせて,巨大単発型汗孔角化症と診断した.巨大単発型汗孔角化症はまれであり,他の病型の汗孔角化症と種々の相違点があり若干の考察を加え報告した.

臍部腫瘍を初発症状として,膵癌が発見された1例—免疫組織化学および電顕的検索

著者: 植木理恵 ,   矢口均 ,   中島澄乃 ,   池田志斈 ,   小川秀興 ,   鎌野俊紀

ページ範囲:P.345 - P.349

 臍部腫瘍を初発症状として来院し,膵癌が発見された女子例を報告する.本症では,診断をさらに確実にすべく原発巣近傍の腫瘍細胞および臍部の腫瘍細胞について免疫組織化学的あるいは電顕的に比較検討を行い,臍部の腫瘍は膵癌の転移であることを確認した.さらに,本邦における内臓癌の臍転移例について詳細に検討し考察を加えた.

著明なdesmoplasiaを伴った印環細胞型胃癌の顔面皮膚転移例

著者: 久米昭廣 ,   橋本公二 ,   吉川邦彦

ページ範囲:P.351 - P.354

 55歳,男性.53歳時,左下眼瞼部に小指頭大皮下硬結出現し摘出.その4カ月後に胃癌手術施行.その後左眼周囲に再び同様な硬結出現,徐々に増大し開眼不可能となる.その組織像では真皮内に著明な結合織の増生を認め,膠原線維間にPASおよびalcian-blue染色陽性を呈する印環細胞を散在性に認める.さらに胃癌手術時の病理組織標本でも同様な印環細胞の瀰漫性浸潤を認め,胃癌の顔面皮膚転移と診断.病歴からは,皮膚転移が原発巣の発見に先行した症例である.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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