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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科45巻6号

1991年05月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Clear Cell Acanthoma

著者: 渡辺真理子 ,   薄場泰子 ,   只木行啓 ,   加藤泰三 ,   田上八朗

ページ範囲:P.362 - P.363

患者 51歳,男性
 初診 昭和63年5月14日
 既往歴 高脂血症
 現病歴 初診2年前から上胸部右側に痒い紅色の結節が出現し,徐々に拡大してきた.
 現症 上胸部右側に5×5×2mm,鱗屑を付着する弾性軟な紅色結節(図1)があり,血管拡張が目立つ.
 病理組織学的所見 HE染色では,健常部表皮との境界が極めて明確な,エオジンに不染性の,胞体のきわめて明るい細胞の集団が表皮肥厚を伴い認められる(図2).角層には軽度の不全角化が認められ,頼粒層は減少している.表皮の一部にはリンパ球が侵入し,基底層の液状変性が認められる.真皮上層に血管周囲性に単核球の浸潤がみられた.腫瘍細胞はPAS染色陽性で(図3),ジアスターゼに消化された(図4).

原著

毛孔性丘疹を欠く毛孔性紅色粃糠疹の1例とその考察

著者: 中島澄乃 ,   吉池高志 ,   三浦優子 ,   関紀子 ,   小川秀興

ページ範囲:P.365 - P.371

 75歳,女性.親族に類症なし.平成1年4月末頃より掌蹠・顔面・頭部に潮紅角化性皮疹が出現し,徐々に拡大・進行した.約5カ月後には四肢に対称性の紅斑角化性局面を完成した.躯幹に皮疹はなく,毛孔性の丘疹も認めなかった.病理組織学的には角栓形成と液状変性が認められたが,毛孔性の変化は認められなかった.その後約1年で皮疹は自然消失した.毛孔性丘疹を欠く以外は定型的な毛孔性紅色粃糠疹と考えたが,進行性対側性紅斑性角化症(旭・井尻病)やその類症との異同が問題となった.旭・井尻病の定義や独立性については曖昧な点も多いため,本邦における本症およびその類症の報告例をまとめ,それらに関する若干の考察を加えた.

アロプリノールによる薬疹—急性Graft-versus-Host病との組織学的類似性について

著者: 橋爪秀夫 ,   加茂直子 ,   岩月啓氏 ,   滝川雅浩 ,   山田瑞穂

ページ範囲:P.373 - P.378

 アロプリノールによる薬疹4例を経験した.これらの皮疹が臨床的および組織学的に急性graft-versus-host-disease(GVHD)の皮疹に類似していることに注目し,3例で免疫組織学的検討を加えた.表皮内および真皮の浸潤細胞のほとんどはCD5陽性細胞であり,CD8,CD4陽性細胞が混在し,一定の傾向は認められなかった.内服試験による誘発皮疹部では,表皮内にCD8陽性細胞の浸潤が優位であった.また,全例で表皮間DR抗原が強く発現され,表皮内CD1陽性細胞は,減少または消失していた.これらの結果は,急性GVHDの免疫組織学的所見と一致しており,自験例の皮疹の発生機序に,GVHDとよく似た反応が関与していると考えられた.

帯状疱疹患者における水痘抗原皮内反応とツベルクリン反応

著者: 酉抜和喜夫

ページ範囲:P.381 - P.384

 帯状疱疹発症時における細胞性免疫の役割を明らかにするため,皮疹出現後7日目までの本症患者23名に対し,水痘皮内抗原の皮内反応(水痘皮内反応)とツベルクリン反応(ツ反)を施行した.その結果,水痘皮内反応は陽性6例(26%),陰性17例(74%)であり,ツ反は陽性14例(60%),陰性9例(40%)であった.また水痘皮内反応とツ反とに相関は認められなかった.したがって水痘・帯状疱疹ウイルスに対する特異的細胞性免疫が低下していると,帯状疱疹が発症しやすい傾向にあると推察された.

Nerve Sheath Myxoma

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.385 - P.388

 40歳女子,右前胸部に3年来認めた9×8mmの扁平隆起性淡紅色腫瘤が組織学的にnerve sheath myxomaの典型像を示した.すなわち真皮上・中層に周囲結合織によって境され,それより明るくみえる類円形の胞巣が全体として帯状に配列する.胞巣中心部はエオジン淡染性の比較的豊富な胞体を持つ類上皮様の細胞が集合し,辺縁部では細長な紡錘形細胞が同心円状に配列する.類上皮様の細胞のみや紡錘形細胞のみから成る胞巣も存在する.また中心部に神経の横断像をみる胞巣もある.核に多少の大小不同はみられるものの,異型性はほとんどない.これらの胞巣はムチンに富み,マスト細胞も軽度増加する.S−100蛋白染色は陰性であったが,その構築から神経外套細胞とシュワン細胞の両方から由来している可能性が考えられた.

研究ノート・17

Aging研究

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.384 - P.384

 教室の動物飼育室には,使わないまま古くなったモルモットが猫のようにまるまる太って残っていることがよくある.私は思いつきのideaが多いので,prelimi—naryな動物実験によくこういう老齢モルモットを使っていた.以前,何とか簡便に皮膚に紅斑を作る方法はないものかと考えて,酵素的な活性酸素産生系であるhypoxanthineとxanthine oxidaseの局注を思いついた.早速,老齢モルモットを使って試してみると見事な紅斑を惹起することができた.喜んで新しいモルモットを購入し,追試してみると全く紅斑はできない.いろいろな原因を考えて,薬剤のdoseを変えたり,タイミングを変えたりしてみたが再現性がない.落胆しながら考えていたときに、ふと「加齢」という要因に気がついた.老齢モルモットは,抗酸化防御能が減弱しているために紅斑を生じやすいのではないかと考え,若いモルモットと老齢モルモットを購入し,実験をくり返してみると,果して老齢モルモットでは鮮やかな紅斑がみられた.そこで,皮膚のSOD活性を測定してみたが,残念ながら,とくに加齢による差異はみられなかった.おそらく,みかけ上の皮膚抗酸化能は老化によっても変わらないが,ひとたび酸素ストレスが加わると,その対応能に加齢による差がみられ,紅斑の差となって出るのだろうと思う.
 この実験を機会に,皮膚の老化というものに興味をもつようになった.皮膚のように不断に酸素ストレスを受ける臓器では,今までやってきた急性炎症だけではなく,老化や発癌といった長期的な現象も捉えなくてはいけないと考えたからである.紫外線については以前より関心をもち,ある程度実験もしていたので,当面,光老化をtargetに勉強しようと思った.そうすると必然的にサンスクリーンにも行きあたることになる.現時点では,サンスクリーンが最もすぐれた抗光老化剤と思われるが,抗酸化剤の側面からサンスクリーンをしのぐ抗光老化剤を作るのが目下の夢である.

今月の症例

Metastatic Crohn病の1例

著者: 水川良子 ,   長島正治 ,   八木田旭邦

ページ範囲:P.389 - P.393

 22歳,男性.下腿に生じたmetastatic Crohn病の1例を告した.患者は2年来,Crohn病で当院外科にて加療中,腹部症状の悪化に伴い右下腿に圧痛のある発赤・腫脹を再発性に生じ,真皮皮下脂肪織境界部に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めた.Metastatic Crohn病は消化管病変と非連続性に皮膚に病変を生じ,組織学的に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めるものである.本症につき文献的に考察し報告した.

Acne Fulminansの1例

著者: 北島拓弥 ,   加藤隆文 ,   保坂暁子 ,   宮田章子 ,   横路征太郎

ページ範囲:P.395 - P.399

 Acne fulminansは比較的新しく,種々の名称をもつ稀な皮膚疾患で,若い男子に好発する.自験例は13歳,男子で顔面・胸背部に痤瘡様皮疹が多発し発熱,胸内苦悶,右関節痛などの全身症状を伴い,白血球増多,CRP陽性,正球性正色素性貧血,軽度の肝障害などの異常所見を認めた.血液培養は陰性.細菌培養は表皮ブドウ球菌のみであった.皮疹は初診より5カ月で瘢痕を残し軽快し,全身症状や検査値の異常も,1カ月後には,CRP陽性,貧血を残して著明な改善をみた.治療としては,局所に抗生物質含有軟膏外用,全身的には抗生物質の内服および抗貧血剤投与,対症療法を施行した.

症例報告

朱色刺青によるAllergic Dermatitisの1例

著者: 岩本麻奈 ,   秋山真志 ,   西川武二

ページ範囲:P.401 - P.404

 刺青を行って10年後に,背部の朱色刺青部に一致して,瘙痒を伴う発赤,腫脹,小水疱などの皮膚炎症状を発症し,同時に顔面,項部および股部に漿液性丘疹の集簇と結節性病変をきたした1例を報告する.刺青部の病理組織所見では色素とみられる微細顆粒を貪食した多数の異物巨細胞を混じる稠密な炎症性細胞浸潤と浮腫を真皮に認めた.電顕所見では,真皮内の貪食細胞の細胞質内に電子密度の高い微細顆粒が集簇してphagosome内に存在していた.貼布試験にて塩化第2水銀が陽性を示したことから,朱色色素に含まれる水銀によるアレルギー性皮膚炎と診断した.副腎皮質ホルモン剤外用と抗アレルギー剤内服による治療を行ったところ,4週間後に朱色刺青部に軽度の浸潤を残し刺青部以外の皮疹は消褪した.

クロミプラミンによる光線過敏型薬疹の1例

著者: 長谷川優子 ,   上出良一

ページ範囲:P.405 - P.409

 塩酸クロミプラミン(アナフラニール®)による光線過敏型薬疹の1例を報告した.同剤内服開始40日後(総投与量約1,000mg),日光暴露により顔面,前頸部,項部,前腕伸側,手背に粟粒大紅色丘疹が多発,集簇,融合して生じ,前腕伸側,手背は浮腫状を呈した.組織像は真皮乳頭の毛細血管内皮細胞の腫大,破壊,消失と著明な浮腫.UVB(SE蛍光灯)ならびにガラスフィルターなしのUVA(BL蛍光灯)にて測定した最小紅斑量は48時間後で低下.光パッチテストでクロミプラミンとクロルプロマジンが陽性.患者はクロルプロマジンの内服歴はなく,分子構造が類似することよりクロミプラミンとの交差反応と思われた.発症機序として光アレルギー性が考えられた.

アンレキサノクス点眼液による接触皮膚炎の2例

著者: 山下浩子 ,   小坂眞紀 ,   神久美 ,   檜垣祐子 ,   川島真

ページ範囲:P.411 - P.415

 症例1は38歳男性.症例2は54歳女性.アレルギー性結膜炎に対して,アンレキサノクス(エリックス®)点眼液を使用したところ,眼瞼に瘙痒を伴う皮疹が出現した.パッチテストの結果,症例1はアンレキサノクスによる接触皮膚炎,症例2はアンレキサノクスとパラベンによる,あるいはポリビニルピロリドンK30も含めた3者によるcompoud allergyが疑われた.アンレキサノクスは比較的高い感作能を有している可能性が示唆された.

バセドウ病患者にみられたSweet症候群

著者: 浅倉廣行 ,   中山恵二 ,   今井俊哉 ,   大崎邦子 ,   立原利江子 ,   中村進一

ページ範囲:P.417 - P.419

 バセドウ病患者にみられたSweet症候群の1例を報告した.患者には高熱と疼痛を伴った浸潤性紅斑が,顔面,躯幹,四肢にみられたがSjögren症候群にみられる臨床症状や検査上の異常値は認められなかった.入院加療後,約4年間経過観察したが,現在までのところ病状の再発はみられない.なお,バセドウ病とSweet症候群の関連性について若干の考察を加えた.

皮下に石灰沈着を伴った小児皮膚筋炎の1例—石灰成分分析結果並びに生成機序についての若干の考察

著者: 堀内義仁 ,   石井則久 ,   石井晴美 ,   高橋泰英 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.421 - P.424

 3歳時に皮膚筋炎と診断され,8歳時より非ステロイド系消炎剤で加療されていた13歳の女性患者の石灰化を伴う皮下硬結に対して二次感染の予防,運動制限の解除を目的として切除手術を施行した.その成分分析を行ったところ主成分はリン酸カルシウムであった.本例の皮下硬結は,肘,膝,臀部などの大関節周囲に存在していることから,その発生機序の一つとして,筋力や外圧などの物理的刺激も関与している可能性が推察された.

ノルウェー疥癬の1例

著者: 石川博康 ,   高木順之 ,   高橋正明

ページ範囲:P.425 - P.428

 71歳,男性.初診約3年前より難治性の湿疹様病変を繰り返す.約3カ月前よりほぼ全身に紅皮症様症状出現.初診時,角質増殖部の直接鏡検にて疥癬虫の虫体・虫卵を多数確認し,ノルウェー疥癬と診断した.10%クロタミトン軟膏外用および硫黄浴にて約3週間で略治.過去の報告例について文献的に考察を加えたところ,本症はそれほど稀なものではないが,戦前を合わせて本例で98例にすぎない,自験例は,現在のところ全身状態は良好だが,抗ATLA抗体陽性であり,今後の綿密な経過観察が必要と考えられた.

潰瘍型尋常性狼瘡—興味ある臨床および組織所見を示した1例

著者: 染田幸子 ,   加藤晴久 ,   濱田稔夫 ,   飯岡成泰

ページ範囲:P.429 - P.433

 70歳,女性.1年前より左下腿に潰瘍を伴う黄褐色不整形局面が出現した.組織学的に類結核性肉芽腫の形成および真皮下層での広範囲の壊死領域を認めた.ツベルクリン反応7×5mm,潰瘍部滲出液の塗抹標本にて抗酸菌を検出するも,培養(組織培養を含めて)は陰性に終った.INH,RFP,EBの三者併用療法にて一旦潰瘍は拡大したが,治療3カ月後には上皮化した.その後,徐々に病変の中心部より瘢痕化がみられるようになったが,1年9カ月後の現在,未だ完治に至らず,INH,RFP,ミノサイクリン投与にて経過観察中である.皮疹の形態は潰瘍型の尋常性狼瘡にほぼ典型と考えられたが,いくつかの特異なあるいは非典型的な所見について検討を加えた.

腋窩に生じた基底細胞上皮腫の1例

著者: 石倉多美子

ページ範囲:P.435 - P.437

 52歳の女性の左腋窩に生じた基底細胞上皮腫について述べた.組織学的には本腫瘍の表在型であった.基底細胞上皮腫の腋窩発生例について本邦報告例を集計し,若干の考察を加えた.

特異な経過を取っている皮膚のT細胞性リンパ腫

著者: 中川俊文 ,   沼原利彦 ,   稲井優 ,   高岩堯

ページ範囲:P.439 - P.443

菌状息肉症(MF),Sézary症候群(SS)とは異なる皮膚のT細胞性リンパ腫の1例を報告した.患者は43歳の男性で,躯幹・四肢の多発性の結節で発症し,経過中左腋窩リンパ節浸潤も見られたが,UVB照射とIFN—γ腫瘍内局注で完全寛解の状態となった.その後,無治療で経過を観察していたところ,22カ月後と48カ月後に単発性皮疹のみの再発を見た.それらも全摘後は良好に経過し,発症後約60カ月を経過した現在も完全寛解の状態にある.組織学的には,初発時および2回の再発時の皮疹に共通して著明な表皮向性が認められた.自験例は特異な経過を取っており,MF,SS以外の皮膚のT細胞性リンパ腫は多様である

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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