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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科45巻7号

1991年06月発行

雑誌目次

カラーアトラス

皮膚平滑筋腫の1例

著者: 中久木ゆかり ,   米澤郁雄

ページ範囲:P.454 - P.455

症例 67歳,女性,無職
 初診 平成1年6月27日
 既往歴 32歳,子宮筋腫
 家族歴 特記すべきことなし.
 現病歴 約10年前より背部,前胸部に隆起性の小結節を認めるようになったが,特に自覚症状がないため放置していた.徐々に数が増加したため当科を受診した.
 現症 左背部に皮膚割線方向に配列する,小結節の集簇を認める(図1).個々の皮疹は表面茶褐色,小豆大で弾性硬,圧痛自発痛などの自覚症状はない(図2).また右前胸部にも同様の皮疹の集簇を認めた.

原著

アトピー性皮膚炎患者の乾燥皮膚の表層角層の機能的解析

著者: 渡辺真理子 ,   田上八朗 ,   高橋元次 ,   堀井和泉

ページ範囲:P.457 - P.461

 アトピー性皮膚炎患者の肉眼的病変部以外にみられる乾燥皮膚(atopic xe—rosis:AX)の角層機能の特殊性を明らかにするため,前腕屈側に肉眼的病変を持たないアトピー性皮膚炎患者と正常人の前腕屈側を使用し,角層の表層を剥離(ストリッピング)する前後の経表皮水分喪失量(TEWL)と角層水分含有量の測定,簡便ストリッピング法で採取した角層細胞の形態と角層細胞間の固着性,表層角層中の水溶性アミノ酸含有量,表層の角層細胞の錯角化細胞の割合,表層角層面積の測定,角層turnover時間,角層層数算定および病理組織学的な検索を行い比較検討した.その結果からAXの角層は構成する細胞のほとんどが核を持たず小さく,その層数は多いにもかかわらず,機能的に正常のそれに劣り,しかも角層細胞間の固着性が高いため,角層細胞はある程度の塊り(小さな鱗屑)をなして表面から剥離する傾向があることを見い出した.すなわち錯角化を起こさない程度の軽い炎症があり,角層のturnover時間が短縮していると考えた.

抗セントロメア抗体(ACA)陽性の全身性エリテマトーデス—自験膠原病患者における抗セントロメア抗体の出現頻度

著者: 石川治 ,   石川英一

ページ範囲:P.463 - P.467

 28歳,女性.全身性エリテマトーデス発症9年後に抗セントロメア抗体が検出された1例を報告した.群馬大学皮膚科の過去3年間の検索では,抗セントロメア抗体は強皮症(計171例)では,CREST症候群またはタイプ1で49例中12例(24%),タイプ2で83例中11例(13%)に陽性であった.しかし,PSS以外の膠原病(計68例)では今回の報告例を除き,すべて陰性であった.今回の報告例では強皮症症状は臨床的に認められず,抗セントロメア抗体出現の意義についてはなお不明である.

日光角化症に生じたTrichilemmomal Carcinoma

著者: 高田育子 ,   岸本三郎 ,   池田佳弘 ,   小林和夫 ,   安野洋一

ページ範囲:P.469 - P.472

 80歳,女性の右外眼角外方に24×18mmの赤褐色斑上に14×12mmの疣贅状腫瘤がみられ,この腫瘤は急速に隆起した.組織学的に腫瘤部では表皮と連続性に外方へ分葉状増殖を示した.腫瘍の外層では基底細胞様細胞が棚状配列を示し,中心部ではエオジン淡染性の有棘細胞様細胞またはclear cellがみられPAS染色陽性であった.明らかな角化はみられなかった.Pigment-blockade melanocyteが比較的多くみられたがsquamous eddiesはごく少数認めた.腫瘍基部では腫瘍細胞が真皮へ浸潤傾向を示し,細胞の配列の乱れや異型性も強く,細胞分裂像も散見された.以上より三島・堀の毛包腫瘍分類の内のtrichilemmomal carcinomaに相当すると思われた.一方,色素斑部は日光角化症と考えられ,pigmented型が主でその他苔癬型の組織像を認めたが,腫瘤との境界部も含め全体に異型性は軽度であった.顔面の日光角化症にtrichilemmomal carcinomaを生じた1例を報告した.

研究ノート・18

輸血後GVHD

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.461 - P.461

 4年ほど前の外来が終わったある日の昼下がり,心臓外科の同級生から電話があって,患者さんを診て欲しいという.ICUに行ってみると冠状動脈バイパス手術後17日目の患者さんが,体幹にパラパラと丘疹をきたして臥床していた.聞けば,前日は経口食を摂れるほどまでに順調に回復していたのに,急に発熱と発疹を生じたという.かなりの重症感を伴っていた.「薬疹ではないか」と考えたが,同級生の彼は,「今までにも手術は完璧だったのにこうして亡くなった患者さんが何人もいる.調べてほしい.」と頼まれた.生検をして結果待ちの間に文献を調べてみると,以前から術後紅皮症の中に薬疹ではない重篤なものが含まれていること(すでに,その卓見は1968年赤井により指摘されている.皮膚臨床10:745),それが最近どうも輸血によるGVHDではないかと推定されはじめていること(井野ら,外科48:706,1986)が判った.数日後に出来上がったHE標本も典型的なGVHDの所見を呈していたのでICUに報告に行ってみると患者さんは,汎血球減少と下痢ですでに危篤の状態だった.遅すぎたのである.それから約半年後,今度は腹部外科から連絡があって,同様の症状を呈した患者さんがいるという.今回は,直ちに凍結切片で診断をつけ,骨髄移植を手がけている同級生や輸血部の先生に依頼して集学的治療を試みたが,やはり患者さんは亡くなってしまった.剖検後,皆で話し合いながら,「やっぱり予防しなくては駄目だ」ということに落ちついた.しかし,その経過中にHLA phenotypeの変化を証明したり(Lancet 1:413,1988),学内で,血液製剤の放射線照射が始まるなど一定の成果があがり,最近,学内ではこういう症例は減ったようだ.輸血後GVHDは,日本人のHLAハプロタイプの特殊性によるところが大きいために,本邦できわめて多いが,昨年末,欧米からも報告が出た(Arch Dermatol 126:1324,1990.私も,「英文で発表を!」といいながら,邦文の報告にとどまったのをひどく後悔している.).しかし,今回の経験から学んだことは,疾患の解明には各ステップごとにkey roleを果たしている人々がいて(術後紅皮症の概念を1955年に提唱した外科医,1968年,その中に重症型があるとした皮膚科医,1985年にGVHDの可能性を指摘した心臓外科医,それを実証した血液学者など),着実に医学が進歩していること,皮膚科医には,その進歩に対してまだまだ貢献すべき分野が他科領域にもあることであった.われわれの前には,こうして解明の待たれる疾患が山積しているはずである.

今月の症例

一卵性双生児姉妹の妹に発生した全身性エリテマトーデスの1例—家族の抗核抗体およびHLA抗原の検索

著者: 田中美佐子 ,   細川倫子 ,   宮沢偵二

ページ範囲:P.473 - P.476

 一卵性双生児姉妹の妹に全身性エリテマトーデス(SLE)が発症し,患者の兄と双生児の姉が抗核抗体陽性であった1家族例について報告した.HLA抗原検査では,家族6人全員に日本人のSLE患者に比較的多いとされるDR9とDQw3を認めた.本邦における一卵性双生児に発症したSLE15例について検討し,SLEとHLA抗原の関連性について考察を加えた.

臨床統計

当科の難治性下腿潰瘍—症例の分類および予後を中心に

著者: 佐藤典子 ,   真家興隆 ,   高橋伸也

ページ範囲:P.477 - P.480

 当科開設以来17年間の難治性下腿潰瘍例49例を検討した.内訳は静脈性14例,糖尿病性(DM)13例,皮膚血管炎12例(リベド血管炎8例,アレルギー性血管炎2例,皮膚結節性動脈周囲炎2例),閉塞性動脈硬化症(ASO)4例,Buerger病3例,膠原病3例であった.静脈性は男性にやや多く平均発症年齢は47歳で最も若かった.DM,ASO,Buerger病は男性に圧倒的に多く,皮膚血管炎,膠原病は女性に多かった.部位は静脈性は左下腿前面〜内側に好発し,皮膚血管炎は両側性で下腿前面〜足趾背側に好発し多発性であった.これに対しDM,ASO,Buerger病では左右差はなく,足趾に好発しており,単発:多発は2:3であった.静脈性および血管炎は保存的療法で73%は一旦上皮化したがその63%で潰瘍が再発し,植皮した4例中2例で再発した.DM,ASO,Buerger病は保存療法で上皮化した例は30%で下腿切断術が必要となった例が3例あった.

症例報告

クラブラン酸・アモキシシリンによるTEN型薬疹の1例

著者: 槙坪康子 ,   福井良昌

ページ範囲:P.481 - P.484

 22歳,男性.潰瘍性大腸炎にてsulfasalazine(商品名:サラゾピリン)内服2週間後に感冒様症状にてクラブラン酸カリウム・アモキシシリン錠(商品名:オーグメンチン)内服,翌日顔面より皮疹出現,4日目には皮疹拡大,歩行困難となりTENと診断し,当科入院.後日原因薬剤の検索に貼布試験,掻爬貼布試験,内服テスト,皮内テスト,スクラッチテスト,リンパ球刺激試験を行った結果では,sulfasalazineはすべて陰性,クラブラン酸カリウム・アモキシシリンは貼布試験では陰性,掻爬貼布試験,皮内テスト,内服テストでは陽性所見を認めた.以上により本疾患はクラブラン酸・アモキシシリンによる薬剤性TENと診断した.

初発口腔粘膜疹に単純性疱疹が併発した尋常性天疱瘡

著者: 神崎麻理子 ,   岡大介 ,   幸田衞 ,   小野雅史 ,   植木宏明

ページ範囲:P.485 - P.488

 口腔粘膜疹のみの尋常性天疱瘡初発期に口腔内単純性疱疹を合併していたため,診断,治療に苦慮した症例を経験した.患者は43歳,男性.3週間前に口腔内びらんが出現し,発熱や頸部リンパ節腫脹を伴ってきた.生検では粘膜上皮の球状変性(PAP法にて抗I型単純疱疹ウイルス抗体陽性)と同時に棘融解像も見られたが,血中の抗表皮細胞間抗体は陰性であった.抗ウイルス剤投与にて軽快傾向であったが,初診3週後に初めて顔面皮膚に弛緩性水疱が出現し,全身各所に拡がった.この皮膚病変の組織は典型的な尋常性天疱瘡で,抗表皮細胞間抗体は組織,血中とも陽性であった.

人工肛門周囲に生じた特異な肉芽様結節の1例

著者: 戸村敦子 ,   佐藤典子 ,   村井博宣 ,   真家興隆 ,   高橋伸也

ページ範囲:P.489 - P.491

 横行結腸人工肛門造設術を受け保護具を使用していた67歳男性において,人工肛門周囲に肉芽様結節が敷石状に生じた1例を報告した.本例は紅斑やびらんが先行し,その経過や臨床像,組織像は1971年にTappeiner & Pflegerが報告したgranuloma glutaeale infantum(GGI)にほぼ一致するものであったが,表皮の上〜中層の粘膜上皮様細胞形成が特異的であり,その発症機序につき考察した.

皮膚疣状結核の1例—本邦における最近の動向

著者: 狩野俊幸 ,   金沢一也 ,   片山洋 ,   北島康雄 ,   矢尾板英夫

ページ範囲:P.493 - P.497

 24歳,女性.外傷後,右膝蓋部に発症した皮膚疣状結核の1例を報告した.合わせて,1980年から1989年までの10年間に本邦皮膚科領域で報告された24例について統計的考察を行った.過去の集計と比較した結果,初診時年齢が明らかに高齢へと移動していた.この要因として,発病年齢そのものの高齢化も若干認められたが,むしろ発病から初診までの期間が長期化していることがその主因と考えられた.最後に,本症に対する治療期間についても簡単に触れた.

胃癌を合併した紅皮症の1例

著者: 北川佳代子 ,   福田知雄 ,   渡辺匡子 ,   山崎雄一郎

ページ範囲:P.499 - P.502

 74歳,男.昭和63年9月末より瘙痒性環状紅斑出現し,徐々に拡大したため10月24日当科初診.ステロイド外用,抗ヒスタミン剤内服するも皮疹は拡大し,発熱を認めるようになり当科入院となる.先行する皮膚疾患,薬剤摂取の既往なし.入院時ほぼ全身の落屑を伴うびまん性の潮紅,発熱,リンパ節腫張を認めた.原因検索として各種検査施行したところ,食道胃十二指腸造影,内視鏡にてBorrmann 2型の胃癌が発見されたため,当院外科にて胃全摘術施行.以後皮疹は著明に軽快し,1カ月半後には治癒した.なお全経過を通じ,血中SCC関連抗原値は皮疹と平行して推移した.本例は症状の消長より,内臓悪性腫瘍に随伴したdermadromeとしての紅皮症と考えられた.また血中SCC関連抗原値は,広範囲な皮膚病変を有する紅皮症においては,病状を知る上での指標の一つになるものと考えられた.

多発型Nevus Lipomatosus Superficialisの2例—その分布と発症機序について

著者: 中澤淳 ,   小澤明 ,   新妻寛

ページ範囲:P.503 - P.506

 多発型nevus lipomatosus superficialisの2例を報告した.症例1:36歳,男性.右腰部に片側性に発症.症例2:25歳,女性.腰部に両側性に発症.どちらも,病理組織学的にはnevus lipomatosus superficialisの典型像であった.本症の本邦報告例は,現在までに130余例あるが,その分布が両側性の症例報告は4例をみるにすぎない.そこで,本症の分布,発症機序について,若干の考察を試みた.

充実網状型Clear Cell Acanthoma—症例報告並びに乾癬型との比較

著者: 菊池朋子 ,   三橋善比古 ,   橋本功

ページ範囲:P.509 - P.512

 症例は,79歳,男性.初診の6年前から右耳前部に小腫瘤が出現し,漸次拡大,初診時は豌豆大であった.全摘標本のHE染色で,不規則なpapillomatosisを呈する肥厚した表皮内に,胞体の明るい細胞の増殖を認め,PAS染色で胞体内にジアスターゼ消化性の陽性顆粒を認めた.自験例は,円柱形細胞の柵状配列,毛包構造,管腔構造,squamous eddy, basaloid cellの増殖などを認めない点で,trichillemmoma,trichillemmal differentiation in seborrheic keratosisとは鑑別され,Kerl2)が報告した充実網状型のclear cell acanthomaに一致するものと診断した.Clear cell acan—thomaの本邦報告例を乾癬型と充実網状型に分けてその臨床像を比較検討したところ,乾癬型に比して充実網状型では,男性に好発し,部位では下肢に好発,皮表からの突出が著しく,褐色調を呈するという傾向が認められた.

Large Cell Lymphocytomaの1例

著者: 海老原全 ,   小粥雅明 ,   杉浦丹 ,   秋山真志

ページ範囲:P.513 - P.516

 69歳,女に生じたlarge cell lymphocytomaを報告した.右頬部に紅色結節を認め,組織学的には,真皮内に,異型性を有する大型の核を持つ明調な細胞が集簇,小型リンパ球様細胞が混在,または周囲を取り囲む形で境界比較的明瞭な結節状集塊が形成されており,個々の細胞は電顕的に,大型で,クロマチンが辺縁に凝集した核を有し,intercellular junctionは欠如していた.全摘後2年を経たが,全身状態良好で,皮膚以外の症状は認められず,1980年にDuncanらの提唱したlarge celllymphocytomaに一致すると考えられた.本症は本邦ではいまだまれな疾患であり,その位置づけとしては,cutaneous lymphoid hyperplasiaの範疇に含められ,特にlymphadenosis benigna cutisの一亜型として整理されるべきと思われた.

Bowen病様変化を伴った汗孔角化症の1例

著者: 和泉達也 ,   菊池新 ,   天野佳子 ,   宮川俊一 ,   多島新吾

ページ範囲:P.519 - P.522

 68歳,男.約30年前より躯幹全域,下肢に播種状に散在する直径1cm程度の環状褐色角化性病変を認めた.下背部の蜂窩織炎を併発した後,隣接する角化性皮疹が拡大してきたため,同部を切除した.組織学的には,角質増生,不全角化,cornoidlamellaを認め,汗孔角化症の像であり,一部にBowen病様の所見がみられた.汗孔角化症は,最近では前癌病変としてとらえられており,本例でも悪性化の誘因として,蜂窩織炎という強い炎症反応が考えられた.本症例についての考察とともに,現在までの内外の汗孔角化症の悪性化の報告例をまとめ,若干の検討を加えた.

リンパ節転移をきたした外陰部Bowen癌

著者: 森聖 ,   竹田薫 ,   石垣優 ,   原一夫

ページ範囲:P.523 - P.526

 58歳女性.外陰部に発生したBowen癌の1例を報告した.排尿時,外陰部にしみるような疼痛が出現してから,約半年で左鼠径部リンパ節への転移を認めた.過去10年間におけるBowen癌の本邦報告例をまとめ,若干の文献的考察を加えた.所属リンパ節その他転移は39例中11例に認められた.また,リンパ節腫大,リンパ節郭清の臨床経過に,SCC関連抗原の値がよく相関し,自験例の今後のfollow-upの一つの指標になるものと推測された.Bowen病は比較的安全な腫瘍といわれているが,一旦浸潤性に増殖すると予後の悪い腫瘍であり,リンパ節郭清を含めた外科的治療,化学療法などの集学的治療と,長期間にわたる経過観察が肝要と思われた.

治療

アトピー性皮膚炎における光化学(PUVA)療法—とくに瘙痒の軽減効果について

著者: 段野貴一郎 ,   宇谷厚志 ,   太田深雪 ,   大野佐代子

ページ範囲:P.529 - P.533

 結節性痒疹を呈するアトピー性皮膚炎の3例に対して外用PUVA療法を試みたところ,激しい瘙痒がすみやかに軽減され,それに遅れて皮疹の改善が得られた.組織学的にはマスト細胞の減少がみられた.PUVA療法は難治性のアトピー性皮膚炎の寛解導入に有用であり,ステロイド外用剤のランクダウンが可能となった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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