症例報告
充実網状型Clear Cell Acanthoma—症例報告並びに乾癬型との比較
著者:
菊池朋子1
三橋善比古1
橋本功1
所属機関:
1弘前大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.509 - P.512
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症例は,79歳,男性.初診の6年前から右耳前部に小腫瘤が出現し,漸次拡大,初診時は豌豆大であった.全摘標本のHE染色で,不規則なpapillomatosisを呈する肥厚した表皮内に,胞体の明るい細胞の増殖を認め,PAS染色で胞体内にジアスターゼ消化性の陽性顆粒を認めた.自験例は,円柱形細胞の柵状配列,毛包構造,管腔構造,squamous eddy, basaloid cellの増殖などを認めない点で,trichillemmoma,trichillemmal differentiation in seborrheic keratosisとは鑑別され,Kerl2)が報告した充実網状型のclear cell acanthomaに一致するものと診断した.Clear cell acan—thomaの本邦報告例を乾癬型と充実網状型に分けてその臨床像を比較検討したところ,乾癬型に比して充実網状型では,男性に好発し,部位では下肢に好発,皮表からの突出が著しく,褐色調を呈するという傾向が認められた.