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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科45巻9号

1991年08月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Dermal Duct Tumor

著者: 木花光 ,   野田淳子

ページ範囲:P.634 - P.635

患者 51歳,男
 初診 平成1年7月4日
 家族歴・既往歴 特記すべきことはない.
 現病歴 1年前より下腿に皮疹が1個出現し,徐々に拡大してきた.自覚症状はない.
 現症 左下腿中央外側に広基性に隆起する小豆大,淡紅褐色の小結節が1個存在する.基部で分葉し粟粒大の小丘疹2個を認める.小結節の表面は軽度角化しているが,全体としては弾性軟にふれる(図1).

原著

膠原病患者における爪郭毛細血管像の画像解析—強皮症患者を中心とした検討

著者: 大塚勤 ,   石川英一

ページ範囲:P.637 - P.644

 強皮症患者について爪郭毛細血管像の画像解析を行った.強皮症確実例では,正常人に比して皮膚筋炎患者と同様に毛細血管係蹄間隔の延長,毛細血管係蹄の3カ所(輸入脚,輸出脚,尖端部)の拡張と脚間距離の延長が見られた.強皮症疑い例では輸入脚,輸出脚の拡張のみが認められた.他方,全身性エリテマトーデス患者では毛細血管係蹄間隔の延長だけが見られた.これらの変化は,平均値検定で強皮症スコア3〜6の定型群で,また臨床症状のうちRaynaud現象陽性,指尖温度低下などの末梢循環障害ありの群で正常人と比較して有意に顕著であった.さらに,発症後経過年数とともに変化は顕著となる傾向があった.しかし,重症型(タイプ3)と軽症型(タイプ2)との間では他の臨床症状・臓器病変の有無と同様に有意差を認めなかった.

紅斑性天疱瘡—症例報告およびブロッキング免疫蛍光法を用いた抗原特異性の検討

著者: 白彦平 ,   池田志斈 ,   森岡眞治 ,   小川秀興

ページ範囲:P.645 - P.648

 紅斑性天疱瘡の1典型例を報告するとともに,本症例において検出された抗表皮細胞膜(間)抗体が,尋常性あるいは落葉状天疱瘡と同じ抗原に結合し得るかどうか,ブロッキング免疫蛍光法を用いて検討した.その結果,1)牛鼻皮膚の凍結切片に前もって落葉状または紅斑性天疱瘡血清を反応させた場合では,次に反応させたビオチン標識落葉状天疱瘡抗体の結合はほぼ阻害された.2)一方尋常性天疱瘡血清で前処理した場合では,ビオチン標識落葉状天疱瘡抗体の結合は多少抑制されたものの,なお明らかな結合が認められた.これらの結果は,紅斑性天疱瘡抗原は落葉状天疱瘡抗原と類似の抗原性を持ち,尋常性天疱瘡抗原とは異なること,すなわち紅斑性天疱瘡は落葉状天疱瘡と同じ疾患群であるとの従来の考えを免疫蛍光法にて新たに裏づける知見と思われた.

単発性肥満細胞症—自験2例を含めた本邦報告84例の検討

著者: 大竹直人 ,   柴垣直孝 ,   高野隆一 ,   窪田泰夫 ,   島田眞路 ,   玉置邦彦

ページ範囲:P.649 - P.654

 症例1:8カ月,男児.生後2カ月頃より左足底内側縁に虫刺され様紅斑が出現した.初診時,同部位に15mm×11mm大,やや紡錘形,境界明瞭,表面平滑,扁平隆起性の淡紅色局面を認めた.浸潤を強く触知したが,Darier's signは陰性であった.組織学的には典型的なUnna型の肥満細胞症と診断した.症例2:10カ月,女児.生下時すでに左下腿外側に紅斑が出現していた.初診時,同部位に12mm×10mm大,類円形,境界明瞭,表面平滑,扁平隆起性の淡黄紅色局面を認めた.わずかに浸潤を触知したが,Darier's signは弱陽性であった.組織学的には,血管周囲型の肥満細胞症と診断した.両症例とも経過中,fiushingはなく,皮疹部に水疱形成も認められなかった.この2例を含めた単発性肥満細胞症の本邦報告84例を検討した.その結果,自験2例とも稀な型の単発性肥満細胞症と思われた.

研究ノート・20

Friction melanosis

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.644 - P.644

 前号では,cement burnの顛末を書いたが,私の場合,実際には,「見えども診れず」の場合の方がはるかに多い.現在,friction melanosisという病名になっている疾患を最初に経験したときがその典型だった.留学前であるから1981〜82年にかけてだったと思うが,若いやせ型の女性の背面や肋骨の走行に一致して,びまん性の褐色色素沈着をきたした症例を続けて2例経験した.自覚症状もないし,発疹も特異で戸惑ってしまった.1例目は生検を施行したが,メラノファージを認めるだけで,液状変性もなくアミロイドの沈着もみられなかった.内服薬や化粧品などとの関係を疑っていろいろ検索したが結局わからずじまいで,そのまま2年間の留学に出立したが,骨の走行に一致して配列する特異な色素沈着だけはいつまでも頭にこびりついていた.
 1984年に帰国してみると,すでにこの病態は,谷垣や浅井らにより,ナイロンタオルによるfrictionmelanosisとして定着していた.その論文を読んだとき,あの頭から離れなかった症例の臨床像が鮮明に蘇り,足をすくわれた思いがした.実は自分も愛用していたナイロンタオルが原因だったとは…….あの当時は,光接触過敏症の実験でマウスの耳の腫ればかり測定していたので,どうしても免疫学的なメカニズムばかり考えてしまい,慢性の機械的刺激には,とても考えが及ぼなかった.患者さんを診たときに,その背景にあるライフスタイルをトータルに捉えることのできなかった自分を恥じた.それとともに臨床家たるには,耳の厚さを測るような実験ばかりでなくこういう研究もできなくては駄目だとつくづく思うようになった.

今月の症例

増殖性筋炎の1例

著者: 柴垣直孝 ,   大竹直人 ,   窪田泰夫 ,   宇野明彦 ,   高山修身 ,   島田眞路 ,   玉置邦彦

ページ範囲:P.655 - P.659

 58歳男性.初診4日前より左耳介後部に自覚症状のない皮下硬結が出現し急速に増大し硬度を増した.初診時,左耳介後部に約6×5cm,境界不明瞭,石様硬,可動性のない皮下硬結を触知した.血液一般検査にて軽度の炎症所見を示し,頸部CTにて左胸鎖乳突筋の腫大を認めた.組織学的には皮下組織から筋膜,筋内膜に膠原線維の増生とムチン沈着ならびに異型性を伴う線維芽細胞様細胞と神経節細胞様細胞の増殖を認めたが,筋線維には異常を認めなかった.以上より増殖性筋炎と診断し経過観察したところ,硬結は約3週間で自然消腿傾向を示した.増殖性筋炎は結節性筋膜炎,増殖性筋膜炎と同一のスペクトラム上に存在する良性反応性疾患であるが,比軽的まれな疾患であり,組織学的に悪性像を思わす所見もみられるため診断には十分な注意が必要であり,若干の考察を加えて報告した.

背部弾性線維腫について

著者: 柳川茂 ,   大隅正義 ,   関根紀一 ,   坂本充弘

ページ範囲:P.661 - P.666

 背部弾性線維腫の2例を報告し,皮膚科分野であまり知られていないこの疾患についての概要を述べた.本症は肩甲骨下部に発生することが多い腫瘍状病変であり,エラスチン染色にて変性した弾性物質が多量に含まれることから命名されたもので,日本人,特に沖縄地方での症例が多い.膠原線維間に混在する弾性物質は,電顕的に正常の弾性線維によく似た形態の線維状物質と微細な線維が雲状塊様に集合した小球状物質とから成り,相互に融合して,光顕レベルでは小球状,数珠状,ムカデ線維状,平滑線維状の形態をとる.発生部位的特徴から機械的刺激による反応性増殖症と考えられているが,その出現機序は弾性線維の性質を知るうえで興味深いものがある.また,本症の地理的偏在性から,何らかの遺伝的環境的要因が関わっていることが示唆されている.

症例報告

Hypodermitis Sclerodermiformisの1例

著者: 星野弥生 ,   大西一徳 ,   石川英一

ページ範囲:P.669 - P.672

 68歳,女性のhypodermitis sclerodermiformisの1例を報告した.両下腿に境界明瞭な色素沈着を伴う有痛性硬化局面があり,組織学的に真皮および脂肪織の線維化,小血管壁の肥厚,内腔狭小化を認める.外国例では静脈瘤や鬱滞性皮膚炎などを合併する症例が見られ広義の静脈瘤症候群と考えられるが,本邦では皮膚硬化のみを呈する症例についてその臨床的・組織学的特徴を表す病名として本診断が用いられてきた.静脈鬱滞による皮下組織炎とは組織学的に鑑別可能であると思われる.

糖尿病を合併した非クロストリジウム性ガス壊疽の1例

著者: 谷口章 ,   北村清隆 ,   三木甫

ページ範囲:P.673 - P.676

 68歳の女性.未治療の糖尿病がある.約5日間前より右股部から大腿内側に発赤と腫脹が出現した.X線上皮下から筋層にかけてガス像が認められた.組織学的に脂肪織から筋膜にかけての広範な壊死が,血管内に血栓が認められた.病巣よりγ—Streptococcus,Peptococcus,Peptostreptococcus,Bacteroidesなどの細菌が培養された.初診より4日目にデブリードマンを,25日目に植皮術を施行し,抗生物質併用にて約3カ月間で略治した.

周産期妊婦に発症した水痘の1例

著者: 藤岡彰 ,   若林邦男

ページ範囲:P.677 - P.679

 妊娠第37週,周産期の妊婦に発症した水痘の1例を経験した.この時,胎児に与える影響を考え積極的に治療すべきものと考えた.しかし治療による胎児への影響も考慮する必要があった.Varicella zoster virusに対し高い抗体価を有するγグロブリン製剤の使用が最も安全かつ効果的と考え,母体へ投与した.皮疹は速やかに軽快し,正常に出産,生まれた児に異常はなかった.周産期妊婦に発生した水痘とその治療について考察を行った.

有棘細胞癌様の臨床像を呈した限局性白癬性肉芽腫—イトラコナゾールの著効例

著者: 奥田長三郎 ,   伊藤雅章 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.681 - P.684

 限局性白癬性肉芽腫の1例を経験した.臨床的に,被髪頭部に結節が生じ,急速に増大するとともに潰瘍化し,有棘細胞癌様の外観を呈した.組織学的に,真皮内に肉芽腫形成と菌糸型の真菌要素がみられ,生検組織片からTrichophyton rubrumが分離された.イトラコナゾール100mg/日の内服により,病巣は9週で治癒した.副作用は認められなかった.

シェーグレン症候群の環状紅斑を疑わせたスウィート症候群の1例

著者: 松本義也 ,   川部美智子 ,   宮川晴子 ,   安江隆

ページ範囲:P.685 - P.688

 18歳,女性.シェーグレン症候群(以下,SjSと略す)の環状紅斑に酷似した環状浸潤性紅斑が顔面,上肢に生じた.特に全身症状はなかったが眼の乾燥感を訴え,皮膚生検にて真皮の血管と汗腺周囲にリンパ球様細胞浸潤が認められ,SjSを疑い諸検査を行ったがSjSの所見は認められなかった.初診より4年後,上気道炎症状と高熱を伴って,顔面,上肢と前胸部に圧痛ある環状浸潤性紅斑が再び生じた.白血球増多,血沈値高度亢進,CRP強陽性で,皮疹発生より1週後の皮膚生検では真皮全層に斑状に多核白血球を主とした著明な細胞浸潤が認められた.諸症状がABPCとDDSに不応で,ベタメタゾン1日4mgの併用が著効し,本症例の環状紅斑はスウィート症候群によるものと考えられた.自験例のように,スウィート症候群では,組織像もSjSと矛盾しないことがあり,その診断には長期間の経過観察と,皮疹発生よりの時間を考慮した複数回の生検が必要のことがあると考えられた.

瘢痕性類天疱瘡—IgA2,J鎖の沈着を認めた1例

著者: 河井伸江 ,   風間隆 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.691 - P.694

 75歳,女性.1年半前から口腔内に水疱,糜爛が出現し,1年前から臍・腋窩・外陰・肛門に水疱が出没.臍部は瘢痕となり,3カ月前より両眼の結膜癒着も出現.組織学的に皮膚に表皮下水疱を,口腔粘膜に上皮下水疱を認め,蛍光抗体直接法で口腔粘膜の上皮・固有層境界部にIgAの線状沈着を認めた.間接法は陰性.口腔粘膜基底膜部にIgA2,J鎖の線状沈着を認めたが,IgA1,セクレタリーコンポーネントは陰性.DDSは無効,ニコチン酸アミド・テトラサイクリン内服で,口腔粘膜以外の水疱新生は抑制された.

尋常性天疱瘡の1例

著者: 高淑子 ,   川口浩二 ,   村松勉 ,   宮川幸子 ,   白井利彦

ページ範囲:P.695 - P.697

 58歳,女性.尋常性天疱瘡の1例を報告した.口腔内糜爛で発症し,躯幹に水疱形成もみられたため,ステロイド服用による治療を受けるも,しばしば再燃した.臨床症状,抗表皮細胞間物質(ICS)抗体価と血中SCC抗原(squamous cell carci—noma-related antigen)レベルが比較的よく相関した.

乾癬様皮疹を伴った局面型サルコイドーシス

著者: 渡辺亮治 ,   沖永美弥子 ,   堤正彦 ,   小宮根真弓 ,   大塚藤男

ページ範囲:P.699 - P.702

 72歳,女に多発した局面型皮膚サルコイドを伴ったサルコイドーシスの1例を報告した.顔面では定型的な局面型の皮疹を呈したが,上肢の皮疹は鱗屑を付着した爪甲大までの紅斑で,尋常性乾癬を思わせた.組織学的にはいずれも乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫で,表皮に乾癬様所見を認めない.胸部X線像で見いだせなかったbilateral hilar lymphadenopathy(BHL)が67Gaシンチにて認められ,眼科的所見,心電図所見も本症の診断を支持した.また本例は血清ACE(アンギオテンシン転換酵素)値が正常範囲内であったが,その意義についても若干の考察を加えた.

致死型先天性表皮水疱症の1例

著者: 八田尚人 ,   光戸勇 ,   足立壮一 ,   坂井秀彰 ,   谷口滋

ページ範囲:P.703 - P.707

 致死型先天性表皮水疱症の1例を報告した.症例は生後11日目の女児で,出生時より全身にびらんと水疱を認めた.手足の爪は脱落しており,びらんは瘢痕,稗粒腫を残さずに治癒した.コルチコステロイドとビタミンEの全身投与によって治療したが生後131日目に死亡した.水疱はlamina lucidaに形成されていた.水疱部では半デスモソームに減少がみられたが,水疱周囲および無疹部においては半デスモソームに異常はみられなかった.

足底に生じたPilonidal Sinusの1例

著者: 森川玲子 ,   根本治

ページ範囲:P.709 - P.711

 51歳,女性,理容師の足底に生じたpilonidal sinusの1例を報告した.臨床的に外傷性表皮嚢腫を疑い切除したが,術中,皮下組織内に長さ3mmの毛髪を認めた.組織学的には,表皮の肥厚と真皮における毛髪断片の存在,さらにその周囲の炎症性肉芽腫様反応であった.本症例は,これまでに報告されている理容師,搾乳者,dog groomerの指間に生じたinterdigital pilonidal sinusと同様の機序により発症したものと考えられた.すなわち,毛髪が皮膚に入りこみ,その部で感染を繰り返しながら瘻孔を形成するものと思われる.我々の症例は,足底に生じた点において稀である.

Eccrine Angiomatous Hamartomaの1例

著者: 福沢久美子 ,   堀越貴志 ,   影下登志郎

ページ範囲:P.713 - P.716

 Eccrine angiomatous hamartomaの1例を報告した.5歳女児.生下時より右下腿前面に小指頭大皮膚色で有毛性の結節が存在し,成長に伴い徐々に増大し,また褐色調を帯びてきた.結節に一致して局所多汗を認めた.病理組織検査にて真皮中層のエクリン汗腺の増加,汗腺壁の肥厚と,真皮中層から皮下組繊にかけて血管腫構造を認めた.組織学的にも本症の典型例と考えられた.抗血液型抗原(患者血液型B型)による免疫組織染色で,血管腫の血管内皮細胞は陰性であり,通常の血管腫とは異なるものと考えられた.本症は,エクリン汗腺と毛細血管が同時に増殖し腫瘤を形成する一種の過誤腫であると考えた.

治療

ポートワイン血管腫の組織像とレーザー治療効果について—血管壁,血管内腔を中心にして

著者: 松賀一訓 ,   秦維郎 ,   矢野健二 ,   伊藤理 ,   松田秀則 ,   古市浩美 ,   芝本英博

ページ範囲:P.717 - P.722

 ポートワイン血管腫(PWS)の病理組織学的所見とレーザー治療の有効性との関係は興味深い問題であるが,従来のPWSの組織学的分類は血管壁の状態に関しては言及されていない.しかしレーザー治療の原理が,他の組織にダメージを与えず選択的に血管を破壊するものであるならば,その血管壁の状態も重要であることが推測される.我々は54例のPWS患者の標本を光学顕微鏡下に観察し,それぞれの血管壁の厚さと血管腔の大きさを測定,アルゴンレーザー治療の効果との関係を検討した結果,次の結論を得た.①PWSの血管は,正常皮膚の血管より壁,内腔とも大きい傾向がある.②血管壁の厚さと血管腔の大小の両者には相関関係はない.③アルゴンレーザー治療の効果は,血管の分布する深さが浅く,血管壁の厚さが薄いタイプが有効率が高い傾向にある.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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