症例報告
Malignant Melanoma in situの1例
著者:
小口真司1
徳田安孝1
松本和彦1
池川修一1
斎田俊明1
所属機関:
1信州大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.937 - P.940
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37歳,女性の右前腕に生じたmalignant melanoma in situの1例を報告した.10歳頃右前腕伸側にほぼ米粒大の小黒色斑が生じているのに気づいた.20歳頃には径約5mmの楕円形状の黒色斑となった.顔面の接触性皮膚炎を主訴に当科を受診した際,初診医がこの黒色斑に気づき生検した.組織像では表皮基底層部を中心に異型メラノサイトの個別性増数が目立ち,一部では有棘層に及んでいた.腫瘍細胞の表皮内での胞巣形成は病巣右側半分には多数認められるが,左側半分では目立たず左右非対称性の組織構築を示していた.これらの細胞は,免疫組織化学的にS−100蛋白陽性で,抗メラノーマ単クローン抗体HMB−45でも陽性反応を示した.本症例は,その診断をmalignant melanoma in situとするか,dysplastic nevusとするかが問題になると思われる.この2つの疾患概念について検討を加え,本症例をmalignantmelanoma in situと診断する我々の根拠を示した.