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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科46巻12号

1992年11月発行

雑誌目次

カラーアトラス

粘液水腫様苔癬

著者: 石田卓 ,   本田まりこ ,   戸沢孝之 ,   新村眞人

ページ範囲:P.974 - P.975

 患者 48歳,女
 主訴 顔面,四肢の丘疹
 初診 昭和62年5月11日
 家族歴・既往歴 特記すべきことなし.
 現病歴 初診の約10年前,前腕の小丘疹に気づく.漸次四肢,顔面に拡大.
 現症 皮疹は両上肢に顕著に認められ,小豆大までの黄褐色蝋様光沢を呈す半球状の丘疹が手背,両上肢伸側に集籏,融合してみられ,同部は浮腫性硬化局面を呈した(図1,2).顔面,下腿屈側では丘疹は孤立性に認められた.

原著

重症筋無力症,胸腺腫切除後に発症した紅斑性天疱瘡—Two Color Flow Cytometryによる末梢血リンパ球画分の解析

著者: 竹内陽一 ,   石川治 ,   石川英一 ,   岡本幸市

ページ範囲:P.977 - P.980

 46歳,女.重症筋無力症,胸腺腫切除後に発症した紅斑性天疱瘡の1例を報告した.末梢血リンパ球画分でLeu 4,Leu 2a,Leu 2aDR,Leu 3aLeu 8,Leu 2aLeu 11細胞画分の高値を認めた.特にtwo color flow cytometryで確認したLeu 3aLeu 8細胞(helper T cell)画分の上昇は,胸腺切除を受けた重症筋無力症単独患者や,天疱瘡単独患者には認めなかったこと,および同細胞画分が,自己抗体産生に促進的に働くことにより,自験例の免疫学的機序を考察する上で注目に値した.Two color flow cytometryによる解析が今後天疱瘡などの自己免疫疾患における免疫系の異常を理解する上で有用と思われた.

Desmoplastic Malignant Melanoma

著者: 金井塚生世 ,   早川広樹 ,   川口博史 ,   石井晴美 ,   馬場直子 ,   杉山朝美 ,   相原道子 ,   高橋泰英 ,   長谷哲男 ,   中嶋弘 ,   厚坂啓司

ページ範囲:P.981 - P.985

 Desmoplastic malignant melanomaの2例を報告した.症例1は49歳の男性で,左踵部の黒色斑が初発症状であった.病理組織学的に,原発巣では類円形細胞と紡錘形細胞の混在した増殖と膠原線維の一部増生が認められた.左膝窩部の転移巣では膠原線維の増生が著明で,肥厚性瘢痕様であった.症例2は42歳の男性で,左背部の黒色腫瘤が初発病巣であった.病理組織学的に,紡錘形細胞の増殖と膠原線維の増生が認められた.2症例とも腫瘍細胞と線維芽細胞との鑑別(特に症例1におけるリンパ節転移および膝窩転移巣)が困難であり,その鑑別にはS−100蛋白染色,silvercolloid染色,Fontaiia-Masson染色などが有用であった.

Eccrine Poroma 21例の集計—免疫組織化学的検討を中心に

著者: 坂井博之 ,   中村哲史 ,   松尾忍 ,   飯塚一 ,   佐藤真理子

ページ範囲:P.987 - P.990

 旭川医科大学皮膚科学教室で経験したeccrine poroma 21例につき臨床,病理組織および免疫組織化学的に検討した.21例中14例が女性で,また50歳以上が全体の約8割を占めていた.好発部位は足で,約半数に発生がみられ,下肢を含めると3/4を占めた.組織学的には全例Pinkus型の病巣が主体であるが,少数例では主病巣に付随してSmith & Coburn型とWinkelniann & McLeod型の病巣が認められた.免疫組織化学的検索においては,全表皮型抗ケラチン抗体は全例陽性を示した.Epi—thelial membrane antigen(EMA)は9例で腫瘍全体に発現がみられたが,9例では,cuticular cellのみが陽性で,poroid cellは陰性であった.免疫組織化学的所見について若干の考察を加えた.

初発病変を切除後周辺に多発した若年性黒色腫

著者: 中谷明美 ,   柳原誠 ,   森俊二 ,   山本明史 ,   浦田裕次 ,   桑原まゆみ

ページ範囲:P.991 - P.996

 症例:6歳の男児.右下腿後面に直径5mmの紅色ドーム状丘疹が出現.某医で液体窒素による凍結療法後に切除.その4カ月後,手術瘢痕周辺に直径2mmから4mmまでの紅色丘疹と直径3mmの紅斑が出現.腫瘍より5mm離して一塊として切除.2年6カ月後再発なし.病理組織学的に,すべて若年性黒色腫.また,岐阜大学皮膚科で経験した単発性および多発性若年性黒色腫,悪性黒色腫,母斑細胞母斑,dysplastic nevusについてS−100蛋白と抗メラノーマ抗体(HMB45)による免疫組織染色を行い,それらの染色性について検討した.若年性黒色腫では抗メラノーマ抗体陽性細胞が腫瘍細胞巣深層まで散在性に陽性であった.

今月の症例

Kaposi肉腫の結節を主訴に来院した後天性免疫不全症候群(AIDS)の本邦人例

著者: 小林孝志 ,   山崎雄一郎 ,   福田知雄 ,   渡辺知雄 ,   小野田登

ページ範囲:P.999 - P.1004

 30歳,男.Kaposi肉腫の結節を主訴に来院した後天性免疫不全症候群(AIDS)の本邦人の1例を報告した.躯幹,四肢に自覚症状を認めない結節が多発,個疹は母指等大程度の多くは類円形で,表面平滑な暗赤色調を呈する若干隆起性の皮疹であった.両側鼠径部,腋窩部リンパ節腫大あり,左扁桃部にも皮膚とほぼ同様の結節を認めた,亀頭部にはびらん局面が存在し,会陰部に尋常性疣贅と思われる皮疹が多発していた.これまでのところ,本邦でのAIDSとKaposi肉腫の合併は比較的稀であるが,今後の症例の増加の可能性もあり若干の文献的考察を加え報告した.

GB3モノクローナル抗体により確定診断された致死型先天性表皮水疱症(Herlitz型)

著者: 川上民裕 ,   大西善博 ,   松井良介 ,   柳原康章 ,   長村洋三 ,   赤羽和博 ,   清水宏 ,   西川武二

ページ範囲:P.1005 - P.1009

 生後8日目の男児.生下時に頭部,左耳介,口囲,口腔粘膜,下顎,手指,臀部に米粒大から鶏卵大までの緊満性水疱,びらんと左下腿から趾尖にかけてほぼ全体にびらん,潰瘍を認めた.約1カ月後には指趾の変形,癒着が生じ,生後85日目にDICで死亡した.水疱は光顕的には表皮下の裂隙であり,電顕的にはlamina lucidaでの解離であることが確認された.GB3モノクローナル抗体を用いた蛍光抗体間接法では,患者皮膚基底膜部のGB3抗原は完全に欠如していた.以上より自験例を致死型先天性表皮水疱症(Herlitz型)と確定診断した.本邦ではGB3モノクローナル抗体を用いて本症を確定診断しえたとする報告は,学会発表の1例を除いて,文献上いまだにない.

電子線照射後,浸潤リンパ球様細胞に形態学的変化を認めたMycosis Fungoides d'emblée

著者: 田端英之 ,   石川治 ,   石川英一

ページ範囲:P.1011 - P.1015

 67歳,女.Mycosis fungoides d'embléeと診断した症例に電子線照射を行った.照射前と比較して照射後再発時の皮膚浸潤細胞では,mycosis cellに代ってblastlike cellが顕著に増加した.細胞の超微計測でもこれらの細胞は古典的mycosis fungoidesのblast-like cellに近い値を示した.この原因として,原疾患の増悪以外に,電子線照射の関与も否定できないと思われる.

連載 皮膚病の現状と未来・6

学会そして研究会

著者: 川島真

ページ範囲:P.1009 - P.1009

 医学の細分化傾向は,皮膚科学の分野にも着実に現れている.皮膚疾患ごとの学会,研究会が催され,開催日が重なることも稀なことではなくなってきた.それぞれの疾患についてスペシャリストが集まり,十分に議論を尽くすことは意義深いことであり,そこに細分化の意味もある.しかし,いずれの学会,研究会も巨大化する傾向にあり,当初の趣旨とはやや離れてしまう流れになってきていろように感じる.日本皮膚科学会会員数の増大がもたらす結果であるから,喜ばしいことではあるが,学会,研究会の質を考えると必ずしも手放しで喜んではいられないであろう.
 これだけ発表の機会が増えると,ほぼ同一の内容を繰り返し聴くこともでてくる.何度聴いても新たな印象を受ける発表もあるが,スライドはもちろん原稿も全く同じではないかと思われる報告もある.別の会場の演題も聴きたいのであるが,その前後の演題に興味がある場合にはしかたなくお付き合いせざるをえない場合もでてくる.プログラムの編成はもちろん十分に練られたものであろうが,複数の会場での同時進行が避けられない演題数が集まる以上,万人を満足させる編成は無理である.また,討論に十分な時間を割くことも難しく,不満が残ることもある.

症例報告

金製剤使用中に間質性肺炎を併発した尋常性天疱瘡の1例

著者: 二宮涼子 ,   児浦純義 ,   平川毅 ,   増田敏雄 ,   池上あずさ ,   山下英俊

ページ範囲:P.1017 - P.1021

 症例は60歳,女性.尋常性天疱瘡を副腎皮質ホルモン剤で治療し,その減量途中で補助療法として金製剤を使用したところ総使用量75mgの時点で間質性肺炎を発症した症例を報告した.金製剤による間質性肺炎の報告例の中では最少の使用量であった.尋常性天疱瘡に対する金製剤の使用に関しては適応についての慎重な判断と投与後の呼吸器症状の出現やLDH・好酸球の変動等に十分に注意すべきであると思われた.

Sjögren症候群が疑われる高度の顎下腺炎の男性に認められたWaldenström高γグロブリン血症性紫斑

著者: 加藤直子 ,   門田悟

ページ範囲:P.1023 - P.1026

 Sjögren症候群が疑われる60歳の男性に認められたWaldenström高γグロブリン血症性紫斑の症例を報告する.患者は数年前から数回以上にわたり,中等度以上の肉体労働後に,下肢に大豆大までの小紫紅色斑の出現と消褪とを繰り返していた.新たな紫斑のエピソード後,24時間以上経過してから生検した病理組織像は,真皮上層の血管周囲にリンパ球を主体とする単核球性細胞浸潤を示した.血清学的に抗SS-A抗体は陰性であるものの,κ型およびλ型を有するIgGが7910mg/dlを呈する多クローン性高γグロブリン血症,リウマチ因子,低補体血症および免疫複合体を認め,数年前より生じた両顎下腺の無痛性の腫脹,乾燥性角結膜炎,口腔乾燥症状などからSjögren症候群を疑っている.

全身性強皮症の経過中,抗RNP抗体と筋症状が出現した抗Topoisomerase I抗体陽性例

著者: 袋秀平 ,   入舩あゆみ ,   谷口裕子 ,   片山一朗 ,   西岡清

ページ範囲:P.1027 - P.1030

 24歳の女性.強指症,舌小体短縮,指尖陥凹瘢痕を認め,抗topoisomerase I抗体陽性で強皮症と診断した.初診時抗RNP抗体は陰性であったが,経過観察中に陽性化した.肺線維化が進行,筋症状も出現したため経口ステロイドの他,免疫抑制剤,ステロイドのミニパルス療法を施行した.治療により呼吸器,筋症状のみならず皮膚の硬化も軽減した.抗topoisomerase I抗体,抗RNP抗体(および抗セントロメア抗体)の間の重複陽性例は比較的まれであり,そうした症例が呈する臨床症状について詳細に記載した報告は少ない.本症例については抗RNP抗体に起因する筋症状であると考えた.

陰茎に潰瘍を形成したMyelodysplastic Syndromeの1例

著者: 鬼頭美砂紀 ,   新田悠紀子 ,   池谷敏彦

ページ範囲:P.1031 - P.1033

 61歳,男性.Myelodysplastic syndrome(refractory anemia with excessof blasts in transformation)の治療中に,陰茎に潰瘍が出現した.病理組織学的には真皮下層の血管および神経周囲に白血病細胞浸潤がみられ,生検時のスタンプ標本ではAuer小体を有する骨髄芽球が認められた.Myelodysplastic syndromeの特異疹と考え報告した.

抗悪性腫瘍剤エトポシドによる血栓性静脈炎の1例

著者: 根本治 ,   森川玲子

ページ範囲:P.1035 - P.1037

 症例:40歳,女性.卵巣腫瘍手術後の化学療法(1回目,シスプラチンとエトポシド,2回目,カルボプラチンとエトポシド)後に四肢に腫脹および静脈の走行に一致した硬結が出現した.組織学的にこの硬結は好酸球の密な浸潤を伴った血栓性静脈炎で,全身ステロイド療法にて改善あるいは予防できた.薬剤試験のリンパ球刺激試験,パッチテスト,スキンウインドウテストなどでエトポシドを疑った.

ヒトヒフバエによる皮膚蠅症の1例

著者: 渡辺真理子 ,   相場節也

ページ範囲:P.1039 - P.1041

 36歳,男性で中央アメリカのベリーゼに滞在中に罹患したヒトヒフバエによる皮膚蠅症の1例を報告した.中央に瘻孔を持つせつ様皮疹から幼虫を摘出して診断がつけられた.この症例は中南米特有の疾患であり,本邦では比較的稀で10例目である.

好酸球性海綿状態が見られた播種状表在性汗孔角化症

著者: 池谷敏彦 ,   新田悠紀子 ,   原一夫 ,   水野勝行 ,   玉田康彦

ページ範囲:P.1043 - P.1047

 49歳,男性.初診7年前より左腰部に瘙痒を伴う丘疹が出現,漸次増加し両上肢,体幹,両大腿に直径2〜5mmの淡紅色から赤褐色の孤立性丘疹が播種状に拡大した.大きな丘疹は周辺が堤防状に隆起し,中央はやや萎縮性で色素沈着がみられるものや,細い角化性隆起がとりまいている局面も認められた.発疹出現前に薬剤の内服はしていなかった.病理組織学的に皮疹周辺部に錯角化を伴う栓状角質増殖を認め,播種状表在性汗孔角化症と診断したが,好酸球性海綿状態を伴った苔癬状皮膚炎所見が随所に認められた.免疫組織学的検索にて,表皮内および真皮に浸潤した小円形細胞はMT1,LN3陽性,MB1陰性で活性化されたTリンパ球と考えられた.また表皮の好酸球性海綿状態の周辺ではランゲルハンス細胞が増加していた.

色素性母斑に合併したTrichogenic Trichoblastomaの1例

著者: 赤坂俊英 ,   今村優子 ,   鎌田満

ページ範囲:P.1049 - P.1051

 15歳,男性の鼻尖部の色素性母斑局面に発症したtrichogenic trichoblas—toma(TT)の1例を報告した.色素性母斑は後天性の複合型母斑であり結合織の増生を伴っていた.色素性母斑の存在あるいは結合織の増生がTTの発症に強く関与していると考えた.

多発した老人性脂腺増殖症の1例—液体窒素療法が著効

著者: 沼田和代 ,   岩原邦夫

ページ範囲:P.1053 - P.1056

 60歳男性.約20年前より,顔面に小豆大位の小結節が出現.数年間のうちに多発してくるも放置していた.初診時,顔面,頭部に直径2〜15mm大の中心臍窩をもつ小結節が100個以上存在していた.病理組織像は,開大した毛包と,その周辺に脂腺小葉が多数増殖し,典型的であった.また,本症例は喘息の治療として,プレドニン10mg/日を30年間内服中であった.治療として,液体窒素療法を週1回部分的に施行し,皮疹はほぼ消失した.その後プレドニンの内服は継続中であるが,ほとんど再発は認められない.液体窒素療法は手軽であり,老人性脂腺増殖症においては,直径15mm大の大きなものにも効果的であり,また顕著な瘢痕も残さないことから,治療の第一選択にあげられるものと思われる.

治療

老人性色素斑,脂漏性角化症に対するルビーレーザー治療の効果

著者: 佐藤守弘 ,   郡司裕則 ,   長谷川隆哉 ,   有賀毅二 ,   吉田弘昭 ,   伊藤信夫 ,   小野一郎 ,   金子史男

ページ範囲:P.1057 - P.1061

 ルビーレーザーはメラニン色素に選択的に吸収され,熱性破壊をすることから,メラニン沈着性皮膚疾患の治療に用いられる.我々は老人性色素斑,脂漏性角化症に対してルビーレーザー照射を試み,良好な治療結果を得た.また,照射後の潰瘍化および瘢痕形成などの副作用は全く認められなかった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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