icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科46巻2号

1992年02月発行

雑誌目次

カラーアトラス

種痘様水疱症

著者: 長谷川優子 ,   澤田俊一 ,   上出良一

ページ範囲:P.102 - P.103

患者 15歳,男
 初診 平成2年3月23日
 主訴 露出部の発疹
 既往歴 特記すべきことなし.
 家族歴 特記すべきことなし.
 現病歴 3歳頃より毎年3〜9月に日光暴露後,露出部に無自覚性浮腫性紅斑,丘疹が生じ,数日後に水疱,痂皮となり,1〜2週後には萎縮性瘢痕を残して治癒した.ときに結膜充血,差明,眼痛も認めた.日光過敏症状は10歳頃最も強く,強い日光暴露後,腹痛,発熱を伴うこともあった.

原著

帯状疱疹再罹患例の水痘皮内反応

著者: 角田孝彦 ,   菊地克子

ページ範囲:P.105 - P.108

 当科で1988年から1990年の3年間に経験した帯状疱疹再罹患18例について報告した.性別は男4例,女14例,年代別では60歳台が最も多く,罹患回数は2回が16例,3回が2例であり,部位は前回と同じもの6例,異なるもの12例であり,症状は前回より軽いものが多かった.これらの例の初診時水痘皮内反応は,合併症のない13例では陽性11例,陰性2例,合併症のある5例では1例を除きいずれも陰性であった.

白癬性毛瘡

著者: 杉本理恵 ,   加藤卓朗

ページ範囲:P.109 - P.115

 65歳,男子の上口唇に発症したTrichophyton(以下,T.)rubrumによる白癬性毛瘡の1例を報告した.この患者には10年来の足白癬があるがT.mentagrophytesによるものであり,足白癬とは無関係に須毛部への感染が起こったと考えられた.また最近12年間に本邦で報告された白癬性毛瘡43症例について,過去の田中ら,および猿田・中原の集計と比較しながら統計的考察を行った.浅在性白癬から続発したと考えられる症例も多いが,その中には別の経路から感染した可能性のある症例も含まれていると思われ,菌種の同定のみならず菌のより詳細な形態学的観察の必要性を指摘した.

Solid-Cystic Hidradenomaの電顕的検討

著者: 藤山純一 ,   内平孝雄 ,   亀井敏昭 ,   麻上千鳥

ページ範囲:P.117 - P.122

 44歳,女子.初診の3年前より右腰部に存在する一部嚢腫状の皮下腫瘤.光顕所見:真皮から皮下組織にかけて,充実性腫瘍巣と単房性嚢腫からなる腫瘍が存在.腫瘍細胞の大部分は,楕円形核と紡錘形ないし多角形の胞体を有する細胞で,一部に胞体が空胞状に明るく見えるいわゆるclear cellも混在.充実性腫瘍巣には大小の管腔が認められ,管腔は類円形核を持つ1層の立方形細胞で囲まれていた.嚢腫壁の一部は,嚢腫腔に面する1層の扁平な細胞で覆われていた.電顕所見:管腔に面する立方形細胞や嚢腫腔に面する扁平な細胞はいずれも低電子密度の核を有し,管腔や嚢腫腔に面して多数の微絨毛が存在し細胞質内には明調な分泌顆粒が認められた.これらの細胞に連続する数層の細胞は,高電子密度の核を有し,細胞質内には豊富なグリコーゲン顆粒が認められた.腫瘍細胞の電顕的特徴から,自験例はエックリン汗腺曲導管部ないし分泌部に由来すると考えられた.

Malignant Eccrine Spiradenoma—過去23例のまとめを中心として

著者: 木花いづみ ,   新関寛徳 ,   生冨公明

ページ範囲:P.123 - P.128

 78歳,女性.10年前より左腰部の示指頭大の皮下結節が徐々に増大,初診時9×7×5cmの弾性やや軟の半球状に隆起した腫瘤を認めた.組織学的には良性なeccrine spiradenomaの組織を示す部分,エックリン腺癌の組織を示す部分および両者の移行部が認められ,既存のeccrine spiradenomaが悪性化したmalignant eccrinespiradenomaと診断した.自験例において免疫組織学的および電顕学的検索を行い腫瘍起源について検討するとともに,自験例を含めた過去報告例23例について臨床的特徴をまとめた.

眼皮膚型白皮症に発生した悪性黒色腫

著者: 稲葉義方 ,   三原一郎

ページ範囲:P.129 - P.135

 眼皮膚型白皮症の45歳女性の上背部に悪性黒色腫が生じ,全身への転移にて死亡した1例を報告した.自験例の眼皮膚型白皮症はチロシナーゼ陽性型であり,悪性黒色腫の原発巣と思われた背部の巨大有茎性腫瘤および下顎部の転移巣はamelanoticであった.上腕内側と頭蓋内には黒色の転移巣を認めたが,組織学的にはamelanoticな腫瘤においても一部の腫瘍細胞にはメラニン顆粒が存在した.なお,スタンプ蛍光法,S−100蛋白染色およびDOPA染色などで腫瘍細胞は陽性所見を示した.さらに躯幹と四肢には淡黄赤色の母斑細胞母斑を数多く認め,それらの中にはdysplastic nevusが含まれていた.なお,眼皮膚型白皮症に悪性黒色腫が生じたとの報告は我々の調べた限りでは21例のみであり,稀な合併と思われた.

連載 皮膚科医と写真撮影・1【新連載】

色彩と記録

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.115 - P.115

 皮膚科とは色彩との関わりが他のどの科よりも深い科である.内科や小児科でも黄疽の黄色や貧血の蒼白さがあるが,皮膚科で扱う変色の種類と範囲は桁違いに多い.モノクロ系では黒—灰—白色があり,カラーでは,紅色系,紫色系,黄色系,褐色系,青色系,緑色系などがあって,これらに濃淡,混在,経時的変動が加わる.皮膚面でのこうした色調変化は,他の所見とともに,診断上重要な情報となる.そしてこれを他の人に適正に伝えるためには,正確に記録(写真やスライド)にとどめておく必要がある.
 また皮膚生検を行った材料は,せっかく患者さんに痛い思いをさせたので,それに見合うだけの多くの情報を取り出すべきであるが,やはり基本的には通常の切片・標本も作製しておく必要がある.この切片にHEをはじめ,免疫染色も含めた種々の染色を加えると,顕微鏡の中で,皮膚面とはまた異なったカラフルな世界が広がる.治療に直接結びつく診断に迫られていなければ,いつまで見ていても飽きないミクロの世界である.そしてこれも写真やスライドという記録に正確にとどめておくことにより,他の人への伝達が可能になる.

今月の症例

耳下腺部の手術既往なしに生じたAuriculotemporal Syndromeの1例

著者: 高野隆一 ,   福田覚 ,   高山修身 ,   玉置邦彦

ページ範囲:P.137 - P.139

 Auriculotemporal syndrome(以下,ATSと略す)は現在Frey症候群としても知られており,食物あるいは飲料の経口摂取に伴い耳介側頭神経auriculotemporalnerveの支配領域に発赤または発汗を認める疾患群の総称である.本症候群は耳鼻咽候科領域では耳下腺部の手術後に起こる後遺症としてよく知られているが,皮膚科領域からの報告は少なく,本症例が手術の既往なしに生じたまれなATSであったことから,若干の文献的考察を加え,ここに報告する.

Fabry病の2例

著者: 稲葉義方 ,   原田鐘春 ,   三原一郎

ページ範囲:P.141 - P.145

 20歳と34歳の男性に認められたFabry病の2例を報告した.自験例はいずれも躯幹部と大腿部に多発する暗赤色の被角血管腫,四肢末梢の疼痛発作および発汗低下などFabry病に特徴的な臨床症状を有し,発汗テストにて著明な発汗障害を示した.組織学的には暗赤色小丘疹の真皮乳頭層に小血管の拡張像を,電顕的には真皮内血管内皮細胞に層状の微細構造を持つ高電子密度の沈着顆粒を多数認めた.酵素学的検査では白血球中α—galactosidase Aの酵素活性低下と尿中ceramide trihexoside排泄量の増加を確認した.また家系内に保因者を確認した.

症例報告

皮膚毛包虫症(疥癬型)の1例

著者: 青山浩明 ,   六郷正和

ページ範囲:P.149 - P.151

 61歳男性の皮膚毛包虫症(疥癬型)を報告した.患者は糖尿病性腎症で入院中に疥癬に罹患し,安息香酸ベンジルとクロタミトンの外用により疥癬が治癒した後に,再度,躯幹に瘙痒を伴う疥癬様の毛包一致性の丘疹が出現し,虫体の証明より皮膚毛包虫症(疥癬型)と診断された.躯幹,四肢に毛包虫が増殖して起こる疥癬型の皮膚毛包虫症は非常に稀である.また,本症例は,ステロイド剤を外用した既往がない点が特異である.本症例の毛包虫が常在性のものか,疥癬の治癒後に感染したものかは不明だが,患者の免疫能の低下が,通常は起こらない躯幹での毛包虫の増殖に関与したものと考えた.

結節性紅斑様皮疹で発症した結節性動脈周囲炎疑い例

著者: 堀内賢二 ,   大黒久和 ,   能宗紀雄 ,   山田悟 ,   山本昇壯

ページ範囲:P.153 - P.156

 結節性紅斑様皮疹で発症し,病理組織学的所見,血管造影所見から結節性動脈周囲炎疑い例と診断した1例を報告した.症例は22歳,男性.20歳頃下肢に有痛性の結節性紅斑様皮疹が出現した.副腎皮質ホルモン内服等による加療を受けたが皮疹は消退,再燃をくりかえすため当科を紹介された.入院時,腰部から両下肢に母指頭大の有痛性皮下結節を多数認めた.皮膚生検にて,皮下組織に血栓を伴う動脈炎の所見がみられ,血管造影(DSA)にて下肢動脈末梢部のみならず,腎動脈末梢部にも微小動脈瘤を多数認めた.これらの所見より結節性動脈周囲炎の疑い例と診断した.自験例では,皮膚結節性動脈周囲炎との鑑別において腎血管造影の所見が有用であった.

Livedo Racemosaの1例

著者: 横田浩一 ,   小林仁 ,   深谷徹 ,   大河原章

ページ範囲:P.157 - P.160

 15歳女.初診の2カ月前から,両下肢に褐色の皮疹が出現し,しだいに拡大した.発熱,関節痛などの全身症状はなく,局所においても痒みを訴える以外圧痛,疼痛はない.初診時,四肢特に両下肢に境界不明瞭で不規則,樹枝状に融合した,褐色から赤褐色の斑が多数認められた.左下腿屈側色素斑の病理組織学的所見では,皮下および真皮皮下境界部の小動脈の内腔閉塞,内膜下のフィブリン様物質の沈着,血管壁および血管周囲へのリンパ球,組織球を主体とした細胞浸潤がみられた.Livedoracemosaには,特発性のものと症候性のものがあり,基礎疾患の検索をすることが重要である.本症例では免疫学的検査などに特別な異常はなく,基礎疾患の存在は特定できなかった.臨床および病理組織学的所見から,特発性のlivedo racemosaと診断した.

紅斑性天疱瘡と慢性円板状紅斑性狼瘡の合併

著者: 齋藤敦 ,   八坂なみ ,   大竹直人 ,   窪田泰夫 ,   宇野明彦 ,   島田眞路 ,   玉置邦彦

ページ範囲:P.161 - P.164

 25歳男性に生じた紅斑性天疱瘡に合併した慢性円板状紅斑性狼瘡の1例について報告した.顔面および躯幹には紅斑・びらん局面,手背部には一部線状配列に示す表面疣状角化性丘疹の集簇を認めた.病理組織学的所見の主体は,顔面の紅斑局面では顆粒層の棘融解像であり,手背部の疣状角化性丘疹では顆粒層の菲薄化と真皮上層部の巣状一部帯状の細胞浸潤であった.また,蛍光抗体直接法では紅斑性天疱瘡と慢性円板状紅斑性狼瘡のそれぞれに認められる所見が同時に紅斑局面と角化性丘疹の各皮疹で認められた.

胆嚢摘出により軽快した尋常性乾癬の1例

著者: 宮城嗣名 ,   高宮城敦 ,   真栄平房裕 ,   宮里肇 ,   名嘉真武男 ,   山田護

ページ範囲:P.165 - P.168

 59歳,男性.初診昭和63年7月7日.患者は初診から約2年前から頭部に瘙痒を伴う拇指頭大の落屑性紅斑を訴え,近医にて治療を続けたが完治せず,再燃を繰り返していた.昭和63年2月頃両側上肢に米粒大落屑性紅色丘疹が出現し,次第に躯幹,下肢へ拡大したため,臨床診断ならびに組織学的検索で尋常性乾癬の診断名として入院.病理組織所見では錯角化,表皮突起,乳頭層の棍棒状延長が認められた.PUVA療法,ステロイド外用療法併用するも難治性のため同年11月11日扁桃摘出術を施行した.術後4カ月後も皮疹に改善の徴はみられなかった.しかしその後超音波検査にて胆嚢結石を指摘されたため,平成元年3月14日外科にて胆嚢摘出術を施行したところ,術後皮疹は徐々に消褪し,正常皮膚の状態となり,現在まで再燃は全く認められていない.

先天性示指爪甲形成不全症

著者: 細谷順 ,   藤澤重樹 ,   兼松秀一 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.169 - P.172

 左示指爪甲が多爪型,右示指爪甲が矮爪型であった先天性示指爪甲形成不全症の1例を報告した.自験例を含めて106例について考察した結果,本症の示指の爪甲形成異常は,示指末節骨が二分裂するために発症し,その分裂の度合いにより,無爪型,矮爪型,多爪型になるものと考えられた.14%の症例に遺伝性が認められ,常染色体優性遺伝によるものと推測された.

巨大な鼻瘤の1例

著者: 松田俊樹 ,   飯田真由美 ,   古田剛 ,   深谷元継 ,   岩瀬悦子 ,   安積輝夫

ページ範囲:P.173 - P.177

 68歳の男性で,20年位前より鼻尖部に紅斑が生じ,次第に頬部にも紅斑が生ずるようになった.10年位前より,鼻部の腫瘤形成が始まり,徐々に増大し,3年位前より腫瘤尖端部から排膿をくり返すようになり,ポリープ状に腫大してきた.鼻瘤の診断のもとに,全身麻酔下に全摘し全層植皮術を施行した.組織学的には,皮脂腺と結合組織の増殖,毛包の開大,毛細血管の拡張と増殖,形質細胞を含む単核の細胞浸潤像がみられ,Leverの分類のglandular hyperplastic typeに該当した.経過概要に若干の文献的考察を加えて報告した.

Fibroepithelioma(Pinkus)—症例報告と本邦例の集計

著者: 菊池新 ,   桜岡浩一

ページ範囲:P.179 - P.183

 68歳男性の腰背部中央に生じたfibroepithelioma(Pinkus)の1例を報告した.大きさ22×18×16mm,淡紅色で表面平滑,弾性硬で自発痛,圧痛のない有茎性腫瘤.病理組織学的には表皮より多数の上皮索が増殖し相互に癒合して網目状構造を呈し,腫瘍間質においては結合織成分の増殖がみられた.これら上皮索と間質の境界部では裂隙形成も認められた.自験例を含めたfibroepithelioma(Pinkus)の本邦報告例17例につき文献的検討を加えた結果,本腫瘍は中高年の下腹部,鼠径部,外陰部に好発し,大きさ10〜30mm程度,単発性で紅〜褐色調のものが多いことが示された.また,若干の免疫組織学的検討も行った.

Dermal Melanocytosisを伴ったClear Cell Basal Cell Carcinoma

著者: 赤坂俊英 ,   今村優子 ,   冨地信和 ,   鎌田満

ページ範囲:P.185 - P.188

 64歳女性の左頬部に生じたdermal melanocytosisを伴うclear cell basalcell carcinomaの1例を報告した.組織像は腫瘍胞巣の一部あるいは大部分が明調な胞体を有する細胞から構成され,明調細胞はPAS染色弱陽性.アルシアンブルー染色,S−100蛋白染色,CEA染色はそれぞれ陰性を示し,胞体は好酸性細顆粒状で空胞を有していることから,特殊な変性過程と考えられた.また,腫瘍周囲の膠原線維の走行に平行する真皮メラノサイトを散在して認め,basal cell carcinomaに伴う後天性dermal melanocytosisと考えた.

治療

形成外科的治療を行つたWeber-Christian病の1例

著者: 松賀一訓 ,   秦維郎 ,   矢野健二 ,   伊藤理 ,   松田秀則 ,   古市浩美 ,   芝本英博

ページ範囲:P.191 - P.193

 Weber-Christian病は発熱,皮下硬結を主徴とし,全身の脂肪織を侵す原因不明,再発性の疾患である.全身皮下の脂肪織炎の結果,しばしば皮膚に萎縮性陥凹を生じる.今回われわれは,寛解期と思われるWeber-Christian病の顔面変形,特に鼻唇溝部の陥凹変形に対して,顔面除皺術に準じた修正術を行い,好結果を得た.術後経過は順調であり,抜糸の時期も通常の場合と変わらず,創治癒の遷延も見られなかった.また本症自体の増悪も見られず,症状が寛解期にある場合は,種々の外科的治療を行っても差し支えない可能性が示唆された.

印象記

“5th International Psoriasis Symposium”印象記

著者: 二瓶義道

ページ範囲:P.194 - P.196

 サンフランシスコの国際乾癬シンポジウムは今年で5回目を迎えるという.私は初めての参加だが,これまではスタンフォード大学のFarber教授の主催によるもので,同大学講内で行われていた.今年からは,その後を継いだノースウェスタン大学H.H.Roenigk教授,カリフォルニア大学H.Maiback教授が主催して,サンフランシスコ市内のホテルで開催された(平成3年7月10〜14日).
 以前12月にサンフランシスコを訪れたことがあったが,とても温暖な気候だった.ガイドブックには7月のサンフランシスコの気候は最高気温が18℃と書いてあったが,まさか何かの間違いだろうと思い,たかをくくってほとんど半袖しか持っていかなかった.しかし,着いてみるとそれが事実であることがわかり愕然とした.アラスカからの寒流のため夏は毎日のように霧が発生し,自然の冷房が効いている街だという.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?