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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科46巻4号

1992年04月発行

雑誌目次

カラーアトラス

表皮嚢腫から発生したと考えられる基底細胞上皮腫

著者: 高橋千恵 ,   林正彦 ,   松本正朗

ページ範囲:P.310 - P.311

患者 63歳,男
 初診 平成元年11月20日
 家族歴・既往歴 特記することはない.
 現病歴 昭和57年頃から鼻背部に米粒大の丘疹が生じ,しだいに大きくなってきた.
 現症 鼻背部に20×22mmの表面平滑,毛細血管拡張を伴う弾性やや硬の腫瘤がある(図1).
 経過および治療 初診日生検をしたところ粥状物質を排出し1/3くらいに縮小したが,それ以上縮小しなかった.また生検標本にbasaloid cellの小塊が混じていたことから毛包上皮腫などを疑い,平成2年1月29日全切除を行った.

原著

血管平滑筋腫における交感神経の分布について

著者: 岸本三郎 ,   小林和夫 ,   宮下文 ,   平野眞也

ページ範囲:P.313 - P.317

 71歳,男性の左手背に生じた有痛性の血管平滑筋腫の1例を報告した.組織学的には病巣の多くは静脈型を示す典型的な血管平滑筋腫であった.自験例の腫瘍細胞はデスミン陽性を示し,しかも分枝を示さず束状配列を示した.電顕的には比較的未分化な腫瘍であった.交感神経の分布は腫瘍のごく一部にのみ見られ,それらは腫瘍に巻き込まれた正常動脈に分布する交感神経と理解した.デスミンによる免疫組織化学・電顕・交感神経の分布所見より自験例はmuscular venuleの血管平滑筋より生じた血管平滑筋腫と考えた.

慢性放射線皮膚炎上に生じた脈管肉腫

著者: 西井芳夫 ,   伊藤裕子 ,   猿喰浩子 ,   川津友子

ページ範囲:P.319 - P.325

 患者は66歳,女性.34歳の時,子宮癌術後に放射線照射を受けた.約30年を経過した2〜3年前より,放射線照射部位の右臀部に瘙痒感が出現.1年前より,同部位に淡紅色の乳頭状結節が出現した.病理組織像では,真皮〜皮下組織に腫瘍細胞が集塊をなして増殖し,上層では著明な管腔形成像とそれを縁どる内皮細胞の腫瘍性増殖がみられ,第8因子染色によって腫瘍細胞は弱陽性を呈した.電顕像では,細胞核は異型性に富み,細胞質内には遊離リボゾームが比較的多くみられ,細胞内小器官に乏しく,全体としては未分化な像であった.また,少数ながらWeibel-Palade顆粒も認められた.

悪性黒色腫20年間の推移—東北大学皮膚科150例の観察

著者: 加藤泰三 ,   末武茂樹 ,   杉山泰子 ,   谷田泰男 ,   竹松英明 ,   富田靖 ,   田上八朗

ページ範囲:P.327 - P.330

 1970年より1990年の21年間の当教室における悪性黒色腫の症例は150例である.新stage分類による推移では,Stage IIIが一定して多く,Stage IVの症例が減少し,逆にStage IIの増加が認められた.病型別には末端型が最も多いものの,1980年前後での比較では増加傾向はみられない.これに対して,結節型黒色腫は1980年以後,年々増加する傾向がある.予後に関しては末端型のものが著しい改善を示している.1975年以前と1976年から1985年までのものを比較すると,5年生存率は各々28%,75%である.しかし,腫瘍の厚さが4mmを越えるものではきわめてその予後が悪い.結節型黒色腫は予後の改善傾向は全く認められず,したがってこのタイプの黒色腫の増加は今後大きな問題となる可能性がある.粘膜部黒色腫は部位的な差があり,外陰部・鼻腔など解剖学的に早期発見が困難な部位の黒色腫の予後がきわめて悪い.

多彩な症状を伴った魚鱗癬症候群—Refsum症候群とRud症候群の中間型

著者: 栄花芳典 ,   増谷衛 ,   上田宏

ページ範囲:P.331 - P.336

 42歳,女性.生下時より魚鱗癬様紅皮症のごとき皮膚を呈し,主な組織学的所見としては,不全角化を伴う角質増殖であり,表皮全体としても軽度に肥厚を認める.皮膚症状以外には,眼症状として白内障と黄斑部変性,手足の骨変形,深部腱反射の低下,神経性難聴を認め,陰毛の粗生・生理の遅発および早期閉経・ホルモン検査上閉経後のパターンを示すことより性機能不全なども疑わせ,魚鱗癬に多臓器の症状を伴う魚鱗癬症候群を強く疑わせる.現時点において,我々の知り得る範囲では,自験例にみられたような臨床症状を呈する魚鱗癬症候群は存在しない.そのことから自験例は新しい魚鱗癬症候群の一型と考えられる可能性も否定できない.現時点では,Rud症候群よりはRefsum症候群様を呈した魚鱗癬症候群と考えたい.

今月の症例

妊娠後期にみられた紅斑を伴った色素沈着(色素分界線条)の2例

著者: 小澤宏明 ,   六郷正和 ,   阿部雪江

ページ範囲:P.337 - P.339

 共に経過順調な妊娠8カ月の妊婦に出現した下肢屈側の左右対称,境界明瞭な紅斑を伴う淡褐色の色素斑,すなわち,妊娠に伴った色素分界線条2例を経験した.症例1は大腿から膝窩にかけて,症例2は,大腿から下腿にかけての屈側全体に皮疹が分布していた.分娩後,紅斑は速やかに消褪し,色素沈着は残るが,それも次第に消褪傾向を示した.色素斑はこれまで報告された妊娠に伴う色素分界線条のように自験例でも下肢に現れ,しかも,皮神経の支配領域に一致していた.以上より,妊娠に伴う単なる下肢の循環不全や,生理的な色素増強でなく,ある程度選択的な神経圧迫などの影響があって出現したものと考察した.

Nodular Sclerodermaの2例

著者: 宮川俊一 ,   小松威彦 ,   多島新吾

ページ範囲:P.341 - P.344

 汎発性強皮症(PSS)に結節状皮疹が多発した2例の女性例を報告した.第1例は47歳,女.皮疹は紅斑より始まり極期にはケロイド様外観を呈した.第2例は30歳,女.結節は皮膚線維腫様の臨床像を呈した.両者とも組織学的に真皮における膠原線維の結節状増生を認めnodular sclerodermaに一致すると考えた.両例ともPSSの皮膚硬化とほぼ同時期に発症したことからPSSの特殊な皮膚硬化と考えた.

症例報告

第2期顕症梅毒—結節性紅斑を伴った1例

著者: 市川栄子 ,   浅野さとえ ,   岡部省吾

ページ範囲:P.345 - P.348

 下腿に結節性紅斑を伴った第2期顕症梅毒の1例を報告した.症例は38歳男性.1990年1月中旬より体幹,顔面,掌蹠,腋窩,陰部に皮疹が出現し,2月初旬より下腿に膝関節痛を伴う有痛性の皮疹が出現したため当科を受診した.初診時,顔面,体幹,四肢に梅毒性丘疹があり,掌蹠においては梅毒性乾癬,腋窩および陰部においては扁平コンジローマの臨床像を呈していた.また口腔内には梅毒性アンギーナを認めた.下腿には有痛性の皮疹が多発しており,臨床および組織学的に結節性紅斑と診断した.梅毒血清反応は緒方法640倍,ガラス板法64倍,TPHA 1280倍.咽頭病変擦過後の漿液および扁平コンジローマの組織中にTreponema pallidumを認めた.

自己赤血球感作性紫斑病の1例

著者: 五味博子 ,   倉持政男 ,   斎藤学 ,   岡田善胤 ,   波多野真理 ,   三浦隆 ,   中山豪 ,   斎藤恒博

ページ範囲:P.349 - P.352

 自己赤血球感作性紫斑病の1例を報告した.59歳女性,平成2年1月頃より四肢に中心硬結を伴った環状出血斑が多数出没.同年5月23日初診時,左大腿部に,中心に黄白色調の硬結を伴う爪甲から手拳大の輪状紫斑が多数群集して認められた.自己赤血球の皮内注により,同様の皮疹が再現された.一般検査上228万/mm3の血小板増加が指摘された.ブスルファン投与により血小板数およびその機能には改善が認められたが,皮疹の出現頻度およびその拡大程度に対する影響はとくに指摘されなかった.本症における皮疹発症機構に関し,とくに血小板の多寡および血小板機能という両面からの検討を加えた.

片側上眼瞼腫脹を主訴とした全身性エリテマトーデスの1例

著者: 菅原隆光 ,   野村和夫 ,   田崎理子 ,   橋本功 ,   黒江清郎

ページ範囲:P.353 - P.356

 17歳,女性.片側上眼瞼の発赤,腫脹を主訴とした全身性エリテマトーデス(SLE)の1例を経験した.初診約1カ月前より上記皮疹出現初診時検査で白血球数・血小板数低下,関節痛,抗核抗体陽性,抗DNA抗体上昇を伴いSLEと診断した.皮疹の組織像は液状変性,真皮の小円形細胞浸潤や出血像であり,蛍光抗体直接法では基底層にIgG,IgA,C3の沈着がみられた.皮疹はステロイド内服にて比較的速やかに消褪した.現在さほど重視されてはいないが,1952年Michelson,北村は発疹学的にSLEを6型に分類しており,自験例はMichelsonのacute localized edematoustype,また北村の不全型に相当すると思われる.自験例のような特異な臨床像は比較的まれと思われ報告した.

大動脈炎症候群を伴う壊疽性膿皮症の1例—最近15年間の本邦136例の統計的考察

著者: 西本一栄 ,   西本正賢

ページ範囲:P.357 - P.361

 17歳女性の大動脈炎症候群を伴う壊疽性膿皮症の1例を報告した.壊疽性膿皮症(PG)は原因不明の難治性潰瘍を生じ,種々の全身合併症を伴うことが多い.合併症の存在よりPGの診断を確定できることもありうる.従来,欧米では潰瘍性大腸炎,本邦では大動脈炎症候群を合併することが多いといわれてきた.自験例を含め,最近15年間のPGの報告例136例について検討したところ,73.5%に合併症を認め,大動脈炎症候群22%,潰瘍性大腸炎21.3%とほぼ同数であった.また免疫グロブリン異常は16%にみられ,そのうちIgA単独上昇例は半数を占め,PGに特徴的と考えた.

食道病変を伴う尋常陛天疱瘡の1例

著者: 堀米玲子 ,   面高信平 ,   中村直

ページ範囲:P.363 - P.368

 食道にも病変の認められた,稀な尋常性天疱瘡の1例を報告した.症例は58歳,男性.口腔,咽喉頭,食道粘膜のほぼ全域にわたる易出血性のびらんを認めた.頬粘膜および食道より採取した組織は,いずれも粘膜上皮基底層直上より始まる棘融解性水疱であり,螢光抗体直接法にて上皮細胞間にIgGの沈着を認めた.発症以後1年2カ月経過した現在まで皮疹は全く認められていない.ステロイド剤の全身投与により食道病変は比較的すみやかに治癒したが,口腔病変は固形物の摂食により著しく悪化し難治であった.渉猟しえた文献をまとめ,食道病変を伴う尋常性天疱瘡の特徴につき若干の考察を加えた.

環状扁平苔癬の1例

著者: 筒井真人 ,   飯塚一

ページ範囲:P.371 - P.374

 65歳男性の躯幹,四肢に散在する環状扁平苔癬の1例を報告した.臨床的には,母指頭大までの大きさの境界明瞭,円形ないし類円形,辺縁隆起した環状局面で,中心部淡紅色から茶褐色,辺縁は淡紅色から紫紅色の色調を呈していた.頬粘膜には環状ないし線条の白色線条を認めた.組織学的には,辺縁隆起部に一致して扁平苔癬の像を呈する.皮疹出現の7カ月前から心筋梗塞のために利尿剤,抗血小板剤,冠動脈拡張剤,代謝性強心剤を服用中で扁平苔癬型薬疹も疑われたが,軽症のため薬剤を中止せずに副腎皮質ホルモン含有軟膏で経過を見たところ,約4カ月で皮疹の新生・増悪もなく軽快した.皮疹軽快後,心筋梗塞発作で死亡したため,皮疹が薬剤誘発性であるか否かを確認することはできなかった.

黄疸患者の足に生じたオレンジ色の小水疱,緑褐色皮疹

著者: 羽尾貴子 ,   西山千秋 ,   森嶋隆文 ,   中島熙

ページ範囲:P.375 - P.378

 40歳,男性.急性B型肝炎で入院中,両足縁から足底にかけて紅色小丘疹が出現した.皮疹は次第にオレンジ色の小水疱に変化し,さらに青カビのような緑褐色となって,出現後約3週間で鱗屑,痂皮となって剥離した.皮疹出現時の臨床検査所見は,GOT:137mIU/ml GPT:569mIU/ml, T.Bil:15.5mg/dl, D.Bil:12.95mg/dlであった.オレンジ色の水疱内容と緑褐色皮疹の組織片をHPLCを用いて分析した結果,オレンジ色の水疱内容はビリルビン,緑褐色の変化は,ビリルビンが酸化したビリベルジンの類縁物質によるものと判明した.正常人の血清中には存在することのないビリベルジンが,黄疸患者に生じた青カビ様皮疹から検出された貴重な症例を経験したので,若干の考察を加えて報告した.

炎症性辺縁隆起性白斑の1例

著者: 浦野理英 ,   松尾聿朗 ,   大城戸宗男

ページ範囲:P.379 - P.382

 44歳男性の全身に白斑が散在する患者に,環状の紅斑性隆起を辺縁に伴う不完全色素脱失斑が出現した.環状紅斑は白斑に先行して出現し,数週間で消退するが,その中心部に不完全色素脱失斑を生じ,やがて完全色素脱失斑となる.臨床的に従来,炎症性辺縁隆起性白斑として報告されているものに一致すると思われた.紅斑部の病理組織像では,いわゆるsatellite cell necrosisも認められ,その発症に免疫機構の関与が示唆された.

Dystrophic Calcinosis Cutis

著者: 林伸和 ,   早川雅之 ,   江藤隆史 ,   古江増隆 ,   石橋康正

ページ範囲:P.385 - P.387

 60歳,男性.23歳時右股関節結核にて郭清および固定術を行い,完治していたが,59歳時瘢痕部の外傷を契機として難治性の瘻孔を形成した.抗酸菌および一般細菌培養陰性であった.軟X線写真上で針状の石灰化を認めた.術後瘢痕部に生じたdystrophic calcinosis cutisと診断し,瘢痕部皮膚を切除,植皮術を行った.組織学的には硝子化した膠原線維に囲まれた多発性の石灰化病巣であった.

乳房Paget病の1例

著者: 小林まさ子 ,   藤田優 ,   堀中悦夫

ページ範囲:P.389 - P.392

 29歳,女性の乳房Paget病の1例を報告した.初診の10年前に乳輪の外上方縁近くに黒色斑として出現し,徐々に拡大して乳頭部に及び,初診時乳頭を囲むような黒色斑として認められた.乳房単純切除術と腋窩リンパ節郭清術を施行したが,明らかな真皮内浸潤や乳癌の所見は認められず,転移の所見もなかった.組織学的には表皮内に腺腔様構造を示す典型的なPaget病であった.

連載 皮膚科医と写真撮影・2

臨床写真の撮り方(1)

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.368 - P.368

 診療の合間の写真撮影は写真館のような形で行うのは不便かつ無理であり,ストロボによる撮影を行うことになる.ストロボの色温度は6000ケルビン前後で,太陽光と同様の昼光型光源であり,昼光用のリバーサルフィルムを用いる.ASAまたはISOは100でよく,メーカーも問わない.ストロボは最近ではカメラレンズの周囲に環状に管球のついたものが主体となっており,実際この形のものが,平面的ではない皮膚面や口腔内などの陥凹部の撮影に適している.メーカーによっては多灯発光で陰影のない均一な明るさを,一灯発光で陰影のついた立体感を得られるものがある.カメラ自体については最近のものはほとんど自動化され,焦点のみ合わせればよいようになっているが,全景や陥凹部などで出来上がりのスライドが暗い場合には,カメラのASAやISOをフィルムのそれよりも1ランク低く設定するとよい.カメラの扱いは取扱説明書をよく読んでおく.ホコリと湿気には十分注意する必要がある.
 撮影については,生ま身で病変をもった患者さんを対象とすることから,そこにはおのずから必要な手順がある.

治療

局所PUVA療法が奏効したHistiocytosis Xの1例

著者: 遠藤恵 ,   安田秀美 ,   小林仁 ,   大河原章 ,   堀江孝至

ページ範囲:P.393 - P.397

 27歳,男.昭和58年自然気胸を生じ,昭和59年,口渇,多飲多尿が出現した.胸部X線で両肺野に小輪状,小嚢胞状陰影が確認され,開胸生検の結果histio—cytosis Xと診断された.その頃から,頭,額,躯幹中央部に淡紅色から黄褐色の半米粒大までの,血痂,粃糠様鱗屑を伴う丘疹,膿疱が出現し,ステロイド外用療法に抵抗性であった.病理組織学的には,異型性の強い単核球細胞の稠密な浸潤が真皮上層に存在し,免疫組織所見,電顕所見からLangerhans cellの特徴を持つ細胞であることが確認された.皮疹に対し8—methoxypsoralen(8—MOP)外用+UVA照射の結果,皮疹の著明な軽快が得られ,免疫組織学的にもOKT 6 cell, S 100 protein cellの減少が確認された.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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