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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科46巻5号

1992年04月発行

文献概要

特集 最近のトピックス Clinical Dermatology 1992 II 皮膚疾患の病態

毛組織と男性ホルモン

著者: 板見智1

所属機関: 1大分医科大学皮膚科学教室

ページ範囲:P.72 - P.75

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 ヒトの上皮系毛包は男性ホルモンを活発に代謝するものの,明らかに男性ホルモン依存性に発育する髭毛でさえ,テストステロンを活性型男性ホルモンであるダイハイドロテストステロンよりもむしろ弱い男性ホルモンであるΔ4—アンドロステンジオンに主に代謝する.この点で,上皮系毛包は男性ホルモン標的組織としての性格を有していない.これに対し,上皮系毛包を誘導する作用があるとされる毛乳頭細胞では,培養髭毛乳頭細胞の場合,男性ホルモン非依存性の後頭部毛乳頭細胞に比べ,数倍高い5α—リダクターゼ活性を示す.また,男性ホルモン受容体を有することも報告されている.髭毛組織の上皮系および間葉系細胞を培養すると,それぞれ単独では増殖は男性ホルモンに影響されない.しかしながら,共存下では上皮系の細胞の増殖は,男性ホルモンにより著明に亢進する.これらのことより,髭においては,男性ホルモンの標的組織は間葉系組織である毛乳頭であり,上皮系組織は毛乳頭細胞の産生する何らかの因子により増殖すると考えられる.多毛症でも,抜去した恥毛(上皮系細胞)の5α—リダクターゼ活性は正常との間に差が認められないが,恥丘部皮膚線維芽細胞の5α—リダクターゼ活性は高値を示しており,皮膚の間葉系細胞における男性ホルモンの代謝異常が原因の一つと考えられる.男性型脱毛症の発症に,男性ホルモンの関与していることは明らかであるが,その作用機序は依然不明である.今後,男性型脱毛の患者の毛乳頭細胞における男性ホルモン作用機序を明らかにする必要がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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