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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科46巻6号

1992年05月発行

文献概要

連載 皮膚病の現状と未来・3

ヒト乳頭腫ウイルス感染症(その3)

著者: 川島真1

所属機関: 1東京女子医科大学皮膚科

ページ範囲:P.413 - P.413

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 子宮頸癌におけるヒト乳頭腫ウイルスの発癌能の検討が盛んになされている.子宮頸癌は以前より感染因子の関与が疫学的に強く疑われ,一時期ヘルペスウイルス2型に的を絞って研究されていたが,明らかな証拠はついに得られなかった.1980年代のはじめ,尖圭コンジローマからヒト乳頭腫ウイルス(HPV)6型と11型DNAがクローニングされたが,そのDNAをプローブとして,これらとわずかに相同性を有する新しいウイルスDNAが子宮頸癌組織から検出,クローン化され,HPV 16型と命名された.この16型DNAをプローブとして検討したところ,子宮頸癌の約50%にHPV16型DNAが検出され,その他のHPV型も含めると大半の子宮頸癌からHPV DNAが検出されるに至り,HPV16型を主としたHPVの子宮頸癌発症における役割が注目されている.最近では,HPV 16型DNAの解析が進み,E6,E7遺伝子領域が細胞のimmortalityをもたらすトランスフォーミング遺伝子であることが示されているが,これだけでは癌化のすべてを説明することはできない.
 肺小細胞癌では,13番染色体長腕(13q),17番染色体短腕(17p)の一部の欠失が報告され,またその欠失領域にはそれぞれRB遺伝子やp53遺伝子と呼ばれる癌抑制遺伝子が存在しており,欠失による抑制遺伝子の不活化が癌化に重要なプロセスではないかとされている.ところで,子宮頸癌においては3pの欠失が認められているが,この領域に未知の癌抑制遺伝子が存在している可能性も疑われている.以前より知られているc-myc癌遺伝子の子宮頸癌での増幅などの事実と合わせると,HPV感染は癌化の初期段階に必要な条件であるが十分条件ではなく,その後にいくつかのステップの遺伝子変化を経てはじめて,真の癌化に至るものと思われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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