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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科46巻9号

1992年08月発行

雑誌目次

カラーアトラス

鼻翼裂を合併した鼻神経膠腫

著者: 諫山士郎 ,   新妻寛

ページ範囲:P.698 - P.699

 症例 2カ月,女児
 初診 平成2年3月27日
 既往歴 児頭回施異常にて出生
 家族歴 特記することはない.
 現病歴 出生時,既に紅色調でドーム状を呈する拇指頭大の腫瘍が鼻根部に認められた.その後,大きさ,色調等に著変はなかった.
 現症 鼻根部の全体を占める(図1),直径2.5cm高さ1.5cmの淡紅色調,弾性硬の腫瘍.表面には一部に硬毛が認められる(図2).なお,右鼻翼裂をみる.

原著

チオプロニンによる薬疹—ジベル型薬疹と紅斑丘疹型薬疹の2症例におけるSH製剤のパッチテスト成績

著者: 菊地克子 ,   角田孝彦 ,   堀内令久

ページ範囲:P.701 - P.704

 パッチテスト陽性反応を示した2症例のチオプロニン薬疹(ジベル型と紅斑丘疹型)を経験した.SH製剤のパッチテストを行ったところ,症例1ではチオプロニンと内服歴のないカプトプリル,ブシラミンの3剤で陽性を呈した.これらの3剤で同時にパッチテスト陽性を示した症例は私たちの知るかぎり初めてである.これらの3剤は,いずれもメルカプト・プロピオニル・アミノ酸の構造を持っており,この構造に反応しやすい素因を患者がもっていたと考えた.患者および正常人でのパッチテストの成績より上記SH製剤のパッチテストの至適濃度を提案した.

Fox-Fordyce病—血中性ホルモンの検討

著者: 森本照子 ,   相澤浩 ,   上出良一 ,   新村眞人

ページ範囲:P.705 - P.708

 Fox Fordyce病の発症機序における性ホルモンの役割を検討するために,本症女性患者3例について,血中luteinizing hormone(LH),follicle stimulating hormone(FSH),prolactin(PRL),estradiol(E2),testosterone(T),dihydrotesto—sterone(DHT)をradioimmunoassayにて測定した.血中LH,FSH,PRL,E2には異常値を認めなかったが,Tは1例に高値を認め,DHTは3例全例に高値を認めた.また1例に卵胞・黄体混合ホルモン剤の内服療法を施行し,瘙痒の劇的な改善を認めた.以上より本症の発症原因に性ステロイドホルモンが何らかの関与をしている可能性が示唆された.

立毛筋母斑

著者: 後藤一史 ,   安斎真一 ,   東海林真司 ,   穂積豊 ,   佐藤紀嗣 ,   麻生和雄

ページ範囲:P.709 - P.714

 当科にて経験した立毛筋母斑の6例に電顕的免疫組織学的検討を加え報告するとともに本邦報告例を中心に検討を加えた.その結果,本症は出生時あるいは生後間もなくより認められる有毛性の色素斑を呈することが多いが,様々な臨床像をとり得ることがわかった.また,本症に特徴的な真皮の種々の方向に走行する平混筋束は,免疫組織化学的検討にて立毛筋と同一の性状を示すことが確認され,本症の呼称を立毛筋母斑とするのが適切であると考えた.

今月の症例

顕著なElastophagiaがみられた汎発型環状肉芽腫の2例

著者: 加倉井真樹 ,   岡部直美 ,   出光俊郎 ,   鈴木正之 ,   片山洋 ,   矢尾板英夫

ページ範囲:P.717 - P.721

 病理組織学的に顕著なelastophagiaを示した汎発型環状肉芽腫2例を報告し,併せて本疾患とannular elastolytic giant cell granulomaとの関係について考察を試みた.症例1:60歳,女.初診の2年前に右手指背に堤防状に隆起した紅斑が出現.1年前から躯幹,下肢に米粒大の淡紅色丘疹が多発,集簇し手掌までの紅色局面を呈する.症例2:54歳,男.初診の1年前に項部の半米粒大の紅色丘疹が出現.3カ月前から同様の病変が背部,肩,上腕に拡大,一部で融合傾向を示す.両例とも糖尿病の合併がみられた.組織学的には真皮上・中層に膠原線維の変性,および弾力線維を貪食した異物型巨細胞と組織球の浸潤からなる肉芽腫が認められた,一部で柵状配列が観察され,た.弾力線維の断裂,変性は認められるが完全な消失はみられない.コロイド鉄,トルイジン・ブルー染色で一部に陽性所見が得られた.以上によりelasto—phagiaを伴った汎発型環状肉芽腫と考えた.

乾癬性紅皮症治療中に認められた多発性ボーエン病

著者: 新関寛徳 ,   石河晃 ,   木花いづみ ,   生冨公明 ,   美田誠二

ページ範囲:P.723 - P.727

 61歳,男性,乾癬性紅皮症の治療中に発症した多発性ボーエン病の1例を報告した.紫外線療法,明らかな砒素摂取歴はない.PAP法によるヒト乳頭腫ウイルス抗原,電顕によるウイルス粒子は検出されなかった.本症例ではエトレチネート投与中に発症してきたため,その関与について考察した.文献的には同様の症例の既報告例はなく,逆に悪性腫瘍に奏効するとの報告がみられた.むしろ最近提唱されたretinoid-induced Köbner phenomenonに類似の現象であると考えられた.

連載 皮膚科医と写真撮影・4

顕微鏡写真の撮り方

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.727 - P.727

 これは臨床写真とは違って相手が標本であることと,撮り直しがきくことから,撮影自体は比較的楽である.とくに最近は生物顕微鏡の性能も良く,自動写真撮影装置もついているので,フィルムを装填しさえすれば,誰にでも同じように撮れるはずである.ところが出来上がりをみると違いがあるので,やはりそこにはいくつか注意すべき点があると考えられる.自動撮影装置がない場合は条件を整えるのが面倒で,たとえばかつて実体顕微鏡にアダプターでカメラをとりつけ,透過および斜めから落射する抗原を使ってマダニや剥離表皮・真皮の撮影を行ったことがあったが,条件が整うまでは試行錯誤が必要であった.今回は紙数の関係もあり,自動撮影装置のついた透過型のバノックス生物顕微鏡を用いた撮影上の注意点に限定して触れる.他の顕微鏡の場合でも基本的なところは共通と思われる.
1)カラー・モノクロに共通の事項

症例報告

下肢深部静脈血栓症の1例

著者: 安達ゆかり ,   細川宏 ,   朝田康夫 ,   山田久和

ページ範囲:P.729 - P.732

 下肢深部静脈血栓症(deep vein thrombosis)の典型例を報告した.自験例では,立ち仕事後に全身倦怠感と左下肢全体の鈍痛を自覚し,その後潮紅を有する進行性の左下肢腫脹が出現した.Enhance CTとRIシンチグラフィーにより左腸骨大腿静脈血栓症と診断された.自験例では側副血行路の発達が良く,下肢の腫脹は自然に軽快した.最近本邦でも本症の増加が指摘されている.本症は術後合併症としての発症が多く,通常外科領域の疾患であるが,類似症状を呈する皮膚疾患との鑑別上,皮膚科医も知る必要がある.

先天性下腿皮膚皮下組織形成不全(仮称)の1例

著者: 荒山由香 ,   丸山優 ,   岩平佳子 ,   露木重明 ,   工藤玄恵

ページ範囲:P.733 - P.736

 Focal dermal hypoplasia(FDH)に類似した稀な疾患を経験したので報告した.症例は3歳女児で,生下時より左下腿後面の真皮の菲薄,皮下脂肪組織の欠如と,踵部の過誤腫様腫瘤を認めた.発現部位,臨床経過等FDHの皮膚限局型と類似したが,内眼的および組織学的に,脂肪組織の増多を本態とするFDHの特徴的所見は認められなかった.本症の発生機転よりdysplasia,胎児外傷などの可能性について考察を加えた.

感染粉瘤様外観を呈した先天性耳瘻孔の1例

著者: 森理 ,   井ノ口憲一郎

ページ範囲:P.737 - P.738

 10歳,男児の左耳前部に生じた感染粉瘤様外観を呈した先天性耳瘻孔について報告した.右耳介にも乾性の瘻孔を認めた.近医で感染粉瘤として切開,排膿などの加療を受けていた.術中ピオクタニン注入により多数の瘻管を認めた.肉芽腫様結節と瘻孔部,瘻管を摘出した.医師の本症に対する知識の少なさが,病態的には単純な疾患を難治性疾患にしてしまうことと,併せて治療法につき文献的考察を行った.

動物疥癬の1家族例—イヌ疥癬虫による

著者: 岡恵子 ,   斎藤文雄 ,   大滝倫子 ,   篠永哲

ページ範囲:P.739 - P.742

 動物疥癬の1家族例(症例1:47歳母,症例2:16歳娘)を報告した.両例とも顔,手,陰部を除く全身に瘙痒性粟粒大丘疹が多発した.疥癬虫は検出できなかった.感染源は室内犬で,痂皮から容易にイヌ穿孔疥癬虫(Sarcoptes scabiei var canis)を検出できた.4カ月前にイヌをペットショップで購入したときすでにイヌ穿孔疥癬虫が寄生していて,飼育中に大量に繁殖してヒトにも感染したと考えられた.

猫ひっかき病

著者: 木花光 ,   岩本麻奈

ページ範囲:P.743 - P.746

 22歳,男の猫ひっかき病の1例を報告した.右手に病原体の侵入部位である初発皮疹を認めた.臨床的にミノサイクリンの内服が有効であった.本症の皮内反応の抗原が入手困難な本邦においては,本症の臨床診断に際し初発皮疹の確認が重要であることを強調したい.

マンソン孤虫症の1例

著者: 今村優子 ,   赤坂俊英 ,   冨地信和

ページ範囲:P.747 - P.749

 60歳女性の左前腕屈側に生じた移動性を欠く皮下結節からの虫体摘出によりマンソン孤虫症と診断された1例を報告した.本症の典型例は,移動性の腫瘤として認められ,初期には発熱,一過性の消化器症状,肺症状などの全身症状を伴い,好酸球増多を示す.自験例では,2年の経過中移動性を全く欠き,また局所に強い好酸球浸潤,異物反応を示したのみで,血液所見に異常なく,全身症状を伴わなかった点で特徴的であった.若干の文献的考察を加え報告した.

Steatocystoma Simplex

著者: 木花光 ,   岩本麻奈

ページ範囲:P.751 - P.753

 42歳男の右頬部に生じたsteatocystoma simplexの1例を報告した.本症は単発であることと遺伝性のないことを特徴とし,顔面に好発する.他の臨床・組織学的所見はsteatocystoma multiplexと同じである.Subcutaneous dermoid cystとの鑑別が重要であるが,生下時には認められないこと,皮下ではなく皮内に存在すること,毛嚢脂腺以外の付属器は見られないことが本症に特有である.また嚢腫に関与する毛嚢の数,嚢腫壁の角化様式も鑑別点になりうる.本症を粉瘤の組織学的診断の一つとして念頭に置く必要がある.

Encapsulated Neurofibromaの1例

著者: 入江広弥 ,   大西善博 ,   柳原康章 ,   長村洋三

ページ範囲:P.755 - P.757

 28歳,男性の臀裂右側に生じたencapsulated neurofibromaの1例を報告した.被覆表皮に著変なく,真皮下層から皮下脂肪織に存在する腫瘍である.腫瘍は被膜を有し,内部はかなり浮腫状で,間質にムチンの沈着を認めた.皮膚科領域における本邦報告例を集計し,鑑別すべき疾患について若干の考察を加えた.

SCC関連抗原が著明に上昇した瘢痕癌

著者: 儘田晃 ,   三浦圭子 ,   小原一則

ページ範囲:P.759 - P.761

 55歳,男性.5歳時の骨髄炎瘢痕上に2年前より潰瘍が生じた.初診時,左足外側縁から外顆にかけて存在する瘢痕の上に,50×25mm大,表面に壊死組織が付着した不整形な潰瘍があり,所属リンパ節は数個腫大.項部と上背部に直径10mm大の皮膚結節が5個存在.生検にて低分化型有棘細胞癌(SCC),T3N1M1,Stage IVと診断.手術および化学療法施行するも3カ月後死亡.血中SCC関連抗原は皮膚転移の増加とともに初診時の22.1ng/mlから死亡直前の245.0ng/mlまで上昇した.

Microscopic Satellitosisを認めた悪性黒色腫の1例

著者: 松井喜彦 ,   田代実 ,   片岡葉子 ,   本多朋仁 ,   田原由子 ,   日笠寿 ,   奥村睦子

ページ範囲:P.763 - P.765

 55歳,女性の右足に生じた悪性黒色腫の1例を報告した.右小趾球部に25×17mmの黒色斑がみられた.組織学的には表皮より真皮乳頭網状層にかけて腫瘍細胞が浸潤するacral lentiginous melanomaの像を呈し,腫瘍本体と離れて皮下組織にmicroscopic satellitosisを認めた.局所リンパ節および遠隔転移は認めず,TNM分類でPT 4 No MoのStage IIIと診断した.Microscopic satellitosisに関して若干の文献的考察を加えて報告した.

治療

フェニトイン内服およびフォイパン®外用療法を試みた優性栄養障害型先天性表皮水疱症の1例

著者: 今泉基佐子 ,   林一弘 ,   足立厚子 ,   谷昌寛

ページ範囲:P.767 - P.770

 9歳,女児の優性栄養障害型先天性表皮水疱症の1例を報告するとともに,フェニトイン内服療法あるいはフォイパン®外用療法を行いその評価を試みた.生下時両下肢に広範囲にわたる糜爛があり,以後も四肢伸側を中心に軽微な外力による水疱形成と瘢痕治癒を繰り返していた.毛髪・歯牙に異常なく,指趾の癒着も認めなかった.光顕的に表皮下水疱の形成,電顕的にdermolysisの像を認め,厚生省希少難治疾患調査研究班の分類に従い,優性栄養障害型先天性表皮水疱症と診断した.劣性栄養障害型先天性表皮水疱症に有効とされるフェニトイン内服療法あるいはセリン系プロテアーゼインヒビターであるフォイパン®外用療法を別個に自験例にも試みた.フェニトイン内服による治療効果は判然としなかったが,フォイパン®外用により臨床症状の改善傾向が認められた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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