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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科47巻1号

1993年01月発行

雑誌目次

カラーアトラス

頭頂部に生じた巨大エクリン汗孔腫

著者: 稲葉義方 ,   横井清 ,   新村眞人

ページ範囲:P.6 - P.7

 患者 93歳,女
 主訴 頭部腫瘤
 初診 昭和61年5月15日
 既往歴・家族歴 特別なものはない.
 現病歴 約70年前より頭頂部の小豆大丘疹に気づいていたが放置していた.約8年前より増大し,腫瘤を形成したため当科を受診した.
 現症 左頭頂部に下床との癒着を認めない7.5×6×3.5cmで弾性硬の紅色半球状隆起腫瘤を認め,表面はびらんし浸出液と悪臭を伴っていた(図1).

原著

Linear IgA Bullous Dermatosis—自験3例の報告と本邦報告例の検討

著者: 加倉井真樹 ,   湯尾尚可 ,   近藤正孝 ,   鈴木正之 ,   北島康雄 ,   矢尾板英夫

ページ範囲:P.9 - P.16

 自治医科大学において開院以来20年間で3例のlinear IgA bullous der—matosisを経験した.症例1;54歳,女.皮疹は緊満性水疱で大部分は紅斑を伴わず,一部環状に配列する傾向を示した.症例2;76歳,女.不整形の紅斑と紅斑上に半米粒大から爪甲大までの緊満性水疱を認めた.症例3;21歳,女.鶏卵大の紅斑とその辺縁に環状に配列する小水疱を認めた.3例とも組織学的には表皮下水疱で免疫蛍光抗体直接法で基底膜部に線状IgAの沈着を認めた.IgAのサブクラスはIgA 1であった.症例1および2の免疫電顕では,IgAがlamina lucidaに沈着している所見を認めた.症例1および3のHLAの検索ではB8陰性であった.3例ともDDS100mgで著効を示した.当教室例と本邦報告例を比較,検討した.

外歯瘻—自験例9例の報告と本邦報告例の統計的観察

著者: 矢野健二 ,   秦維郎 ,   松賀一訓 ,   伊藤理 ,   松田秀則 ,   古市浩美 ,   芝本英博 ,   前田文彦 ,   吉田有香子

ページ範囲:P.17 - P.20

 外歯瘻は誤診されやすい疾患であるため,皮膚科医,形成外科医にとっても認識すべき疾患の一つと考える.そこで今回我々は自験例9例について検討するとともに,本邦報告例について統計学的観察を行い,以下の知見を得た.①自験例の内訳は男5例,女4例,左4例,右5例で,瘻孔の部位は頬部7例,頤部,耳下腺咬筋部各1例であった.②原因歯は下顎第1大臼歯が5例,第1,2切歯,第2大臼歯,智歯,上顎第1大臼歯が各1例であった.③原因疾患は根尖病巣が8例,智歯周囲膿瘍が1例で,処置歯7例,未処置歯2例であった.④皮疹の病型分類は,膿瘍型6例,瘻孔型2例,肉芽腫型1例であった.⑤本邦報告例155例の統計的観察の結果は男が57%とやや多く,10代,30代が多かった.原因歯は,下顎の第1大臼歯が最も多く,瘻孔の部位は頬部が71%を占めていた.

当科における陥入爪の症例検討とその治療法について

著者: 清水隆弘 ,   倉本賢 ,   伊藤孝明 ,   田中靖 ,   南祥一郎 ,   宮崎孝夫 ,   相模成一郎

ページ範囲:P.21 - P.24

 1984年から1991年までの過去8年間の当科での陥入爪の症例は102例であり,罹患部位はすべて第1趾であった.男女比は2:3で女性にやや多い傾向を示し,年齢別患者数は,8歳から78歳にわたり男女とも20歳代に集中する傾向が見られた.そのうち,観血的治療を要した症例は74例であった.爪甲の形態は,爪甲辺縁の弯曲が鈍なものと,さらに弯曲が強いものとがあった.罹患趾の末節骨に対し2方向のX線検査を行ったところ,後者のtypeでは全症例に末節骨背面に骨棘形成を認めた.これらの症例に対し骨棘切除を行い良好な結果を得た.この結果より爪甲の変形は骨棘の有無と関係している可能性があり,陥入爪の術式を決める上で有用であると考えた.

Pagetoid Bowen病—自験2例の報告とレクチン組織化学

著者: 大草康弘 ,   水川良子 ,   千葉万智子 ,   古川隆代 ,   長島正治

ページ範囲:P.25 - P.29

 Pagetoid Bowen病の2例を報告した.症例1は72歳女性で右膝窩に,症例2は75歳男性で右前腕屈側,手関節に近接してそれぞれ1×1.5mmの紅色の鱗屑・痂皮局面を認めた.病理組織学的には大型で明るい胞体を持つPaget様細胞がBowen病の病巣内に多数認められた.電顕的にはPaget様細胞は細胞内小器官がよく発達しており,トノフィラメントの発達は極めて悪かった.レクチン組織化学ではPaget様細胞はCon A,LCA,WGAで強陽性反応を示し,マンノース,グルコース,N—アセチルグルコサミン,シアル酸などを含む糖鎖が出現,増加していることが示唆され,Paget様細胞はBowen病の腫瘍細胞が特殊に変化した細胞であると考えられた.

臨床統計

再発性帯状疱疹

著者: 田中信 ,   大草康弘 ,   杉山悦朗

ページ範囲:P.31 - P.33

 1989〜1991年の3年間に静岡赤十字病院皮膚科で経験した25例と他施設の60例の計85例の再発性帯状疱疹をもとに再発性帯状疱疹の特徴をまとめた.1)頻度は帯状疱疹の1.7%で従来いわれているほど少なくない.2)若年発症の女性で,膠原病特に全身性エリテマトーデス(SLE)を合併している帯状疱疹は再発しやすい.3)合併症を有する場合は極めて短期間で再発する.4)前回と同一神経領域に再発することは少ない.5)46%が合併症を有していた.6)3回以上の再発(6例)もみられた.若年発症のSLEに合併した女性の帯状疱疹は再発に留意する必要がある.

今月の症例

汎発性黒子症候群の1例

著者: 渡辺彰浩 ,   杉山都子 ,   中田土起丈 ,   飯島正文 ,   藤澤龍一

ページ範囲:P.35 - P.41

 多数の異常を合併し,明らかな家族歴を有する汎発性黒子症候群の1例を報告した.45歳,女性,手掌,足底,口唇粘膜を含む全身に汎発性に黒褐色の小色素斑が存在.皮膚の過弾力性等の皮膚症状,心血管系異常,泌尿生殖器異常,精神神経異常,眼隔離開,頭蓋骨欠損等の合併を認めた.家族内では,母親,長男,長女に同様の汎発性黒褐色小色素斑が確認された.小色素斑は病理組織学的に単純性黒子像を呈した.Voronら1)の診断基準に従い,汎発性黒子症候群の本邦既報告29例に自験1例を加えて検討した.

鉄欠乏性貧血を伴った骨髄性プロトポルフィリン症の1例

著者: 浅越健治 ,   妹尾明美 ,   山田琢 ,   荒田次郎 ,   天野康生

ページ範囲:P.43 - P.47

 13歳,男児.幼児期より光線過敏症状を認める.父に軽い同症.初診時,顔面・前腕に淡褐色の不整形瘢痕,および指関節背面に皮膚肥厚を認めた.蛍光顕微鏡下で赤血球に赤色蛍光.光溶血現象陽性.赤血球中プロトポルフィリン値157μg/dlと上昇.鉄欠乏性貧血を合併.β—カロチン,コレスチラミン,および鉄欠乏性貧血に対し鉄剤の内服により加療した.骨髄性プロトポルフィリン症の臨床・病理について若干の文献的考察を行った.また,自験例では治療開始直後,長時間の日光暴露により皮疹の増悪をみており,その原因として,①β—カロチンの有効血中濃度が得られていなかった,②鉄剤内服が関与した等が考えられた.これらをふまえて,内服療法,鉄欠乏性貧血合併時の鉄剤投与の問題点についても文献的考察を行った.

症例報告

フィブリン糊による接着植皮を施行した臀部慢性膿皮症(汎発型)の1例

著者: 藤岡範子 ,   西川千香子 ,   山田裕道 ,   高森建二

ページ範囲:P.51 - P.55

 臀部の膿皮症を主症状とし,項部,腋窩部にも同様病変を認めた臀部慢性膿皮症(汎発型)の50歳男性例を報告した.臀部の膿皮症については病巣部を切除し,生物学的組織接着剤であるフィブリン糊を用いた分層(網状)植皮術を行った.フィブリン糊による接着植皮術は,本症のように安静が保ちにくく,適当なタイオーバーが困難な部位での植皮の際に有効な手段であると思われた.本症の発症要因については現在なお明らかではないが,自験例では白血球機能について検討を行ったところ,好中球殺菌能の著しい低下が認められた.このことより,本症の病像形成に好中球の殺菌能の低下が関与している可能性が示唆された.

先天性頭蓋内皮膚洞の1例

著者: 大江麻里子 ,   肥田野信 ,   石井毅 ,   井沢正博

ページ範囲:P.57 - P.60

 4カ月,女児の後頭正中部にみられた直径1.5cm大の皮下腫瘤と径2.2cm大の結節で,神経学的症候は呈していなかった.皮膚洞は骨欠損部を貫通し,腫瘤末端は第四脳室にまで達し,盲端になって終わっていた.本症は放置により髄膜炎などの重篤な神経症状を呈してくることが知られているが,未然に摘出すれば予後は良好である.

Pseudo-Kaposi Sarcomaの1例

著者: 田中稔彦 ,   河本博明 ,   森保 ,   岩崎泰政 ,   中村浩二 ,   山田悟 ,   山本昇壯 ,   住元篤子

ページ範囲:P.61 - P.64

 18歳,女.13歳頃より右足の皮膚温が左足に比較して高いことに気づいていた.初診4カ月前より,特に誘因なく右第2趾に暗紫色調の腫脹を生じた.その後疹痛を伴うようになり,同部を打撲した後に潰瘍を形成した.種々の保存的加療を受けたが治癒傾向がみられず当科に紹介された.入院後の検査で右足の皮膚温の上昇,骨の成長促進,静脈血酸素分圧上昇が認められ,DSA(digital subtraction angiography)で右足背部の網目状の動静脈瘻が確認された.病理組織学的には血管内皮細胞の胞巣状の増殖が認められ,これらの所見から本症例をpseudo-Kaposi sarcomaと診断した.治療は右第2趾の関節の離断術を行い,現在までのところ経過良好である.

鼻尖部のArteriovenous Hemangioma—鼻筋を含めた局所皮弁で再建した1例

著者: 松永純 ,   熊坂久美子 ,   末武茂樹

ページ範囲:P.65 - P.67

 Arteriovenous hemangiomaは,顔面に好発する多数の中小血管からなる小腫瘤の一つである.良性の腫瘍であるため,切除後,単純に縫縮できない場合には,局所皮弁による再建も適応の一つになる疾患である.今回,我々は,67歳の女性の鼻尖部左に生じた11×13mm大のarteriovenous hemangiomaを切除した後の皮膚欠損を,鼻筋を含めたaxial patternの皮弁を用いて再建し,良好な結果を得たので報告する.

胸部に生じたSpindle Cell Lipomaの1例

著者: 加藤直子 ,   権藤寛 ,   上野洋男

ページ範囲:P.69 - P.72

 55歳男性の胸部に生じた紡錘形細胞脂肪腫の1例を報告した.臨床的には,胸骨上の皮下に無症候性で嚢腫状に触れる腫瘤で,組織学的には,大部分が成熟脂肪細胞による通常の脂肪腫様構造の周囲に,紡錘形細胞の増殖が厚く取り巻くように発達していた.器質には粘液性物質と膠原線維が豊富で,肥満細胞が散在していた.紡錘形細胞は比較的一定の方向を示しながら増殖し,部分的に脂肪細胞と紡錘形細胞が混在していた.免疫組織学的に紡錘形細胞はvimentinに陽性でS−100蛋白に陰性,脂肪細胞はvimentin,S−100蛋白ともに陰性であったが,紡錘形細胞内に小塊として存在する脂肪細胞の細胞膜および核の一部はS−100蛋白に陽性であった.電子顕微鏡的には紡錘形細胞は細胞膜の乏しい二極性の細胞で,周囲に膠原線維を豊宿に認めた.

Spindle Cell Lipomaの1例

著者: 馬場直子 ,   佐々木哲雄 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.75 - P.78

 Spindle cell lipomaは脂肪腫の一亜型で,中年以降の男性の項部,肩,背部の皮下に単発性に好発し,組織学的に,成熟脂肪細胞と紡錘形細胞が混在し,膠原線維の増生と粘液基質を伴う像を特徴とする.自験例は,54歳女性で,左前腕と右大腿の2カ所に生じ,臨床的には非典型例であった.組織学的には,腫瘍は真皮内に境界明瞭に存在し,粘液様基質の中に脂肪細胞,紡錘形細胞,膠原線維束が混在しており,典型的なspindle cell lipomaの組織像であった.免疫組織染色にて,spindle cellはvimentin陽性,脂肪細胞はS−100蛋白陽性,基質はalcian blue,colloid iron陽性で,hyaluronidaseに消化され,toluidine blueでメタクロマジーを示した.電顕所見では,spindle cellは基底膜はなく,胞体に乏しく,多数の粗面小胞体を持ち,大小の陥凹を有する核を持つといった特徴を備えていた.

体幹筋肉内に発生したAngiomyolipomaの稀な1例

著者: 北川太郎 ,   籠浦正順 ,   諸橋正昭

ページ範囲:P.79 - P.82

 27歳,男.左背部の有痛性皮下腫瘤を主訴として当科受診.腫瘤は広背筋と外肋間筋の間に存在していた.組織学的には血管,平滑筋,成熟脂肪細胞の3つの成分の増生より構成されておりangiomyolipomaと診断した.結節性硬化症の既往歴や家族歴はみられなかった.本症は良性の過誤腫であり,腎に好発するが,筋肉内発生は非常にまれであり,ここに報告した.

懸垂性脂肪腫の1例

著者: 瀬川郁雄 ,   櫻岡瑛一

ページ範囲:P.83 - P.85

 29歳,女性の懸垂性脂肪腫を報告した.自験例の発生部位は,脂肪腫として報告例の少ない外陰部であった,その発症も21歳と脂肪腫の好発年齢より早く,その後,急速に増大し巨大な腫瘤となっている.また,腫瘍細胞は同一の結合織被膜に包まれながらも腫瘤内に留まらず,皮下に伸展し鼠径管内へ侵入していた.自験例の特徴および外陰部に生じる脂肪腫について文献的に考察した.

治療

皮膚科領域におけるTissue Expanderの応用

著者: 伊藤理 ,   秦維郎 ,   矢野健二 ,   松賀一訓 ,   松田秀則 ,   古市浩美 ,   芝本英博 ,   前田文彦 ,   吉田有香子

ページ範囲:P.87 - P.91

 Tissue expansionは人為的に皮膚を拡張させて大きな皮膚欠損を閉鎖する方法である.1957年Neumann1)が考案し,1976年Radovan2,3)がシリコン製エキスパンダーを開発してから急速に普及した.本法はエキスパンダーの挿入,拡張,除去と皮膚閉鎖の3段階に分かれ,全過程に数カ月を要するが,巨大な母斑や瘢痕の切除後再建に整容的,機能的にすぐれた結果をもたらす.当科では4年前より本法を積極的に取り入れている.今回,皮膚科領域の疾患に応用した18例についてまとめたので,文献的考察を加えて報告する.本法を利用した皮膚科領域疾患の内訳は,禿髪4例,母斑6例,血管腫1例,瘢痕7例である.合併症は5例にみられたが,問題なく再建術は終了した.本法は比較的手技が容易で安全なため,皮膚科領域疾患の切除後再建に大きな威力を発揮すると考える.

座談会

第18回世界皮膚科学会に参加して

著者: 橋本健 ,   天谷雅行 ,   田上八朗 ,   西川武二 ,   新村眞人

ページ範囲:P.92 - P.101

 新村(司会) 第18回の世界皮膚科学会が今日の午前中で終わりました.先生方にはお疲れのところをお集まりいただきましてありがとうございます.学会の時に,シェリーご夫妻が編集された“A Century ofInternational Dermatological Congress”という本が配られましたが,それによりますと,InternationalCongress of Dermatologyは1889年に第1回がパリで開かれて,第一次・第二次世界大戦中は途切れたようですけれども,1952年に第10回がロンドンで開かれてから5年ごとに開催されて,ご承知のように,最近ではメキシコシティー,東京,ベルリンと開かれてきたわけです.今回はhonorary presidentがベア先生とリビングッド先生,presidentがジョン・シュトラウス,それから,secretary generalがSteve Katzで,ニューヨークマンハッタンのハドソン川沿いにあるジャビッツ・コンベンションセンターで1992年6月12日から18日まで開かれました.
 今日は,ニューヨークに残っております編集委員3人と,現在アメリカで活躍されております橋本先生,それから,アメリカに留学中の天谷先生に参加していただいて,今回の世界皮膚科学会についての座談会を開きたいと思います.

連載

Practical English for Busy Physicians・1【新連載】

著者:

ページ範囲:P.102 - P.103

はじめに
 今回より,より上手な英語の論文の書き方,投稿の仕方についてのシリーズを連載することになりました.私は1年間日本へ留学し,その後帰国してからも年に2,3回は日本で講義を行っておりますし,現に私の医院にはたくさんのファックスが送られて来ており,日本人が書いた英語の論文を読む機会に多く接しております.これからのシリーズの中で,英語圏以外の人にとって難しいと思われる事柄について述べていきたいと思います.そして,私としましては,読者の方々からのご意見や質問を受け付けてみたいと考えております.例えば,文法上の問題や,貴方にとって英語を書くうえでの,その他の判りにくいこと,難しいことなどを,是非編集室へ投稿して下さい.皆さんと一緒に考え,私と致しましては,最善をつくし説明していきたいと思います.
 私は最近幾つかの有名な医学雑誌(New EnglandJournal of Medicine,Journal of the American Medical Association,Archives of Dermatology,Journalof the American Academy of Dermatology)の編集者に電話をかけて,アメリカ以外から提出される論文の最も多い通常的な間違いについて聞いてみました.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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