症例報告
原発巣不明の悪性黒色腫の1例
著者:
清水聡子1
山田晴義1
仲弥1
西川武二1
所属機関:
1慶應義塾大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.913 - P.916
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13歳,男.1カ月来の右鼠径部の皮下腫瘤を近医にて摘出され,組織学的に悪性黒色腫のリンパ節転移が疑われたため来院した.初診時,右鼠径部の手術創直下に皮下腫瘤を触知するも,諸検査にて他に悪性黒色腫の原発巣・転移巣を思わせる所見なし.原発巣不明の悪性黒色腫の右鼠径リンパ節転移と診断し,腫瘤を含め鼠径リンパ節郭清術を施行.腫瘤の組織像は線維化が主で,他のリンパ節にも悪性所見を認めなかった.DAV療法7クールまで終了し確定診断から15カ月後の現在,再発転移を認めない.原発単不明の悪性黒色腫の本邦報告例14例につき検討したところ,予後の記載のあった13例中8例(62%)が2年以内に死亡しており,経過中(7〜15カ月)他に転移を認めないものは3例(23%)と少なかった.また転移巣が1つの領域リンパ節に限局し,他に合併症のない症例でも,予後が悪いという傾向が認められた.