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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科47巻11号

1993年10月発行

連載 元気な皮膚科医であるために・5

生まれたときに黒子がないのは何故か

著者: 今山修平1

所属機関: 1九州大学医学部皮膚科教室

ページ範囲:P.963 - P.963

文献概要

 照らされた物体が特定の波長を反射すると,その波長の色に見えます.赤のスペクトルを強く反射する酸化ヘモグロビンのせいで血液は鮮かな紅です.逆にすべてが吸収されれば,(反射されて)眼に届く光の成分がありませんから「暗く」または「黒く」見えます.私たちの体を包む皮膚(表皮)にはメラニンがありますが,この色素は地上に届く太陽光を幅広く吸収する「黒い」色素です.言い換えれば,光を幅広く吸収できるからこそ,たぶん人は,体内へ光を侵入させないためのバリアーとしてメラニン色素を採用したのでしょう.とすると地上環境が今と違っていた時代には,メラニン以外の色素を用いていた(例えば青や赤や緑の)動物または人の祖先がいたかもしれません.しかしそのような動物は現代まで生き残れなかったでしょう.
 大地が形成され,永遠に続くかと思われるほど降り続く雨と嵐の時期が終焉し,雲が晴れて大地に光が降り注ぐとともに,メラニン以外の色素を採用していた動物は地上では生存できなくなったでしょう.あるいは全く逆に,(どちらかというとあまり冴えない色の)メラニンを採用していた動物だけが地上に出て繁殖できたのかもしれません.届く光が全く異なる海の中で,魚たちが思い思いに自由な色合いで泳いでいることは,その有力な証拠であるような気がしますが,これくらいの話は既に誰かが記載しているところでしょう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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