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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科47巻13号

1993年12月発行

雑誌目次

カラーアトラス

腫瘤型石灰化上皮腫

著者: 木花いづみ ,   寺木祐一 ,   栗原誠一

ページ範囲:P.1150 - P.1151

 患者 40歳,女性
 初診 平成3年10月16日
 主訴 左鼻唇溝部の腫瘤
 既往歴 特記すべきことなし.
 家族歴 特記すべきことなし.
 現病歴 初診の1カ月前より左鼻唇溝部に痤瘡様紅色丘疹が出現,刺激を加えていたところ急速に増大してきた.
 現症 左鼻唇溝中央に10×10×6mm,半球状に隆起した暗赤色,弾性硬の腫瘤を認めた(図l).表面は光沢を有し,一部に痂皮を付着している部分,黄白色の内容が透視できる部分も存在した.自覚症はなかった.

原著

旭川医科大学および関連施設で過去4年間に経験したライム病の臨床像—ボレリア分離成功例を中心に

著者: 橋本喜夫 ,   川岸尚子 ,   坂井博之 ,   松尾忍 ,   飯塚一 ,   梶田哲 ,   岸山和敬 ,   水元俊裕 ,   宮本健司

ページ範囲:P.1153 - P.1159

 1987年に本邦で初めてライム病が報告されて以来,その報告例は増加しつつある.日本のライム病は第Ⅱ期以後の症例が少なく,一般に軽症例が多いといわれるが,まだ症例数も少なく,その臨床像の特徴や経過は明らかになっていない.われわれは1989年に第1例目を報告して以来,14例のライム病を経験し,そのうち8例に皮疹部からのボレリア分離に成功した.そこでこれらの臨床像や経過を報告し,本邦のライム病の臨床的特徴をまとめ,皮疹部からのボレリア分離の重要性を述べた.

妊娠性疱疹—自験例の報告と本邦報告例の検討

著者: 加倉井真樹 ,   鈴木正之 ,   佐藤俶也 ,   原田重徳 ,   矢尾板英夫

ページ範囲:P.1161 - P.1167

 妊娠性疱疹の1例を報告し,あわせて本疾患と類天疱瘡との関係について考察を試みた.症例は43歳,女性.妊娠6週頃,瘙痒性浮腫性紅斑出現し,徐々に増数拡大し,緊満性水疱を形成するようになった.組織学的には表皮下水疱で,蛍光抗体直接法では基底膜部にC3とIgGの沈着をIgG subclassはIgG1, IgG2, IgG4の沈着を認めた.間接法ではIgG classの抗基底膜抗体を認め,さらに補体結合価は5倍まで陽性であった.抗原の分子量は180kDであった.患者血清よりIgG subclassを分離精製したところIgG1,IgG2,IgG3,IgG4に抗基底膜抗体が認められ,その補体結合能を調べたところIgG1に補体結合能を認めたが,他のIgG subclassには補体結合能が認められなかった.妊娠9週目,稽留流産のため子宮内容除去術を受けたが皮疹は増悪した.プレドニゾロン50mg/日を内服し,その後皮疹は徐々に改善した.

Trichogenic Trichoblastoma—2例の報告と本邦例の検討

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.1169 - P.1174

 Trichogenic trichoblastoma(TGTB)の2例を報告し,本邦例を検討した.症例1:52歳女.左鼻孔部の有茎性腫瘤で真皮中層から皮下にぶどう房状に連続する上皮・間質小塊あり.症例2:51歳女.左頸の皮下小結節で真皮下層から皮下に境界明瞭な上皮・間質増殖あり.2例とも2列の上皮性索条や毛芽様構造,および分化した毛嚢や毛形成をみる.本邦で論文発表されたTGTB14例に自験2例を併せ検討したところ,臨床的に鼻部周辺に皮下ないし有茎性腫瘤として好発している.組織学的に胞巣の構築を単一中心性と多中心性に分けたところ,Headingtonの原著例に相当する後者は4例と少なく,前者が12例と多数を占めた.前者はfibrofolliculoma,後者はtrichoepitheliomaとの関連が窺えた.

連載

Clinical Exercises・9—出題と解答

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.1174 - P.1174

元気な皮膚科医であるために・6

クリスマスとお正月

著者: 今山修平

ページ範囲:P.1182 - P.1182

 幸せな人にはサンタクロースが来てくれて願っていた通りのものが貰えます.クリスマスが過ぎて幾つか眠るとじきにお正月が来ます.大晦日には,前々から用意しておいた新品の下着と靴下と奇麗な服を出してもらい,念入りに体を洗って眠ります.お正月の朝(元旦)には世の中のすべて,空気までもがすっかり新しくなるからです.
 少し大人になってみると,こんなに大事なことがどうして1週間くらいの間に続けて起きるのか不思議でしたが,いつしか忘れていました.機会を得て北国に赴任し,当地で2度目のクリスマスを迎えた時に,忘れていた不思議な気持ちが突然に思い出されました.

今月の症例

外陰部Bowen病,Bowenoid Papulosis,尖圭コンジロームが混在した1例

著者: 新関寛徳 ,   小野寺有子 ,   増田光喜 ,   清水宏 ,   本田まりこ ,   新村眞人 ,   西川武二

ページ範囲:P.1175 - P.1180

 Bowen病(BD),Bowenoid papulosis(BP),尖圭コンジローム(CA)が同時期に外陰部に出現した42歳女性例を報告した.BPとCAでは電顕的にウイルス様粒子を認め,PAP法による乳頭腫ウイルス抗原の検索でも陽性所見を得たが,BDでは両者とも陰性であった.Southern blot hybridization法,in situ hybridization法,PCR法を用いたHPV-DNAの検索では,各々の皮疹よりウイルスDNAを検出したが,HPV−1,−2,−6,−11,−16,−18,−31,−33,−35,−51型DNAのいずれの型別も同定できなかった.本症例はオーバーラップ症候群のためのステロイド剤,免疫抑制剤を内服中であり,免疫抑制状態にあった.このような状態がBPの悪性化,あるいはBDの合併に関与した可能性が考えられ,同様の症例の診察,経過観察にあたっては皮疹の悪性化も考慮する必要があると考えられた.

症例報告

皮膚病変部よりボレリアの分離,培養に成功したライム病の1例

著者: 田中智 ,   嵯峨賢次 ,   高橋誠 ,   牧田敦宣 ,   佐藤七七朗

ページ範囲:P.1183 - P.1186

 症例は60歳男性.初診の約1カ月前に北海道十勝地方池田町で山歩き中,右前胸部にダニと思われる虫体の咬着を受けた.数日後,同部位より紅斑が出現し,遠心性に急速に拡大してきた.ライム病による慢性遊走性紅斑と考え,塩酸ミノサイクリン100mg/日の内服を開始した.後日,病変部より生検した皮膚切片を試料とした培養でBorrelia burgdorferi陽性所見を得たためライム病と診断した.また血清抗Bor—relia burgdorferi抗体も陽性であった.

壊死性筋膜炎の1例

著者: 園田早苗 ,   猿喰浩子 ,   西井芳夫 ,   川津友子

ページ範囲:P.1187 - P.1190

 慢性関節リウマチ,間質性肺炎のためプレドニンの長期投与を受けていた67歳女性の右手背,前腕,上腕に発症した壊死性筋膜炎の症例を報告した.初診時,手背,前腕,上腕に著明な発赤,腫脹,水疱,紫斑がみられた.輸液による全身管理,抗生剤投与とともに広範囲なデブリドマンを施行,その後メッシュ植皮術を行い完治した.初診時の水疱内容液,デブリドマン時の壊死組織からは黄色ブドウ球菌が単独で検出された.

サルコイドーシスを合併した強皮症の1例

著者: 黒須まゆみ ,   清島真理子 ,   森俊二 ,   諏訪哲也 ,   森田浩之 ,   武田則之

ページ範囲:P.1191 - P.1194

 52歳男性にみられた強皮症とサルコイドーシスの合併例を報告した.15年前よりRaynaud症状出現.10年前より両前腕に鱗屑を伴った紅斑が出現し,2年前に羞明に気づいた.当院第3内科に入院し,経気管支肺生検にて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めサルコイドーシスと診断した.眼科所見では,前房炎,硝子体混濁,血管炎を認めた.また,手指から手背にかけての浮腫性腫脹と強指症,手背から前腕の皮膚硬化がみられ,抗核抗体(centromere type)は1280倍と陽性を示した.前腕伸側の病理組織像では,膠原線維の均質化および小血管壁の肥厚が認められ,また真皮上層に乾酪壊死を伴わない類上皮細胞から成る肉芽腫がみられることから,サルコイドーシスを合併した強皮症と診断した.膠原病とサルコイドーシスの合併は,共に免疫異常を示す点で何らかの関連があると思われたので,若干の文献的考察を加え報告した.

コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウムによる薬疹の2例

著者: 新井雅明 ,   石田卓 ,   新村眞人

ページ範囲:P.1195 - P.1198

 コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム(ソル・メドロール®)によるまれな薬疹の2例を報告した.症例1は41歳の女性で顔面神経麻痺のためソル・メドロール®を点滴投与開始(240mg/日より漸減)11日後に,顔面,頸部,胸部を中心に爪甲大の紅斑を生じた.症例2は56歳の男性で突発性難聴のためソル・メドロール®を点滴投与開始(1000mg/日より漸減)8日後に全身に爪甲大の紅斑を生じた.2例ともソル・メドロール®の点滴による再投与試験で紅斑が再現された.症例2は,6位のメチル基がないプレドニゾロンや,21位のコハク酸エステルがないメチルプレドニゾロン,またコハク酸エステルをもつ他のステロイドでは再投与試験陰性であり,ステロイド骨格構造やコハク酸エステル部分といった部分的な構造ではなく,コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウムの全体的構造がその抗原性と関連していると考えられた.

H1—blockerおよびH2—blockerの併用療法が奏効した局所性温熱蕁麻疹の1例

著者: 久野由恵 ,   渡部裕子 ,   渡辺久代 ,   柳原誠 ,   森俊二 ,   伊藤隆

ページ範囲:P.1199 - P.1202

 45歳,女性.入浴時,湯が触れた部位に一致して瘙痒を伴った紅斑と腫脹を生じ来科.40℃以上の温水にて負荷部位に限局する紅斑,膨疹および瘙痒を認め,局所性温熱蕁麻疹と診断した.本邦では局所性温熱蕁麻疹の報告例はなく,世界でもその報告が30症例に満たない稀な蕁麻疹であり,その発生機序は不明な点が多く,治療に抵抗する例が多い.今回我々はH1—blockerとH2—blockerの併用療法にて症状の消失をみた1例を経験したので報告する.

高IgE症候群の成人例

著者: 石井清英 ,   山田裕道 ,   鈴木光子 ,   高森建二 ,   小川秀興

ページ範囲:P.1203 - P.1207

 高IgE症候群の成人例(32歳男性)の皮膚症状を中心に報告した.本例は21年にわたり小児科医によってfollow upされていたが,繰り返す慢性気道感染症による呼吸不全のため,当院に入院し気道感染対策を主とする治療を行った症例である.皮膚症状としては,爪カンジダ症,舌カンジダ症,足白癬などの真菌症,呼吸不全に続発したばち状指,弾力性に富む皮膚の過伸展が認められた.慢性湿疹様の皮疹および黄色ブドウ球菌の皮膚感染症は成人後は著明に減少したという.免疫学的には血清IgE高値(4988IU/ml),IgE RASTスコアはカンジダ,アスペルギルスなどの真菌で高値を示した.好中球機能検査においては,患者好中球の走化能の低下,患者血清中の好中球走化能抑制因子の存在が示され,本症の病態との関連が示唆された.その他血中ヒスタミン濃度の上昇,顆粒球由来エラスターゼの上昇などが認められた.

多発性骨髄腫に併発した帯状扁平苔癬の1例

著者: 石黒和守 ,   天井周 ,   石田久哉 ,   法木左近 ,   上田恵一

ページ範囲:P.1209 - P.1213

 83歳,男.多発性骨髄腫(IgM,κ型)の経過中に右大腿後面に幅2.0〜5.0cmの3条の扁平に隆起した局面が出現.臨床的ならびに組織学的所見より帯状扁平苔癬と診断した.自験例の特徴としては,①線状および帯状扁平苔癬の報告の多くは皮疹の幅員の増減はあるが,ほぼ1条の配列をとるものであるのに対し,本症例は3条の帯状の皮疹が融合した特異な臨床像を示したことより,線状苔癬および炎症性線状疣状表皮母斑との鑑別診断を要した.②皮疹がBlaschko割線とほぼ一致した走行を示したことよりその意義について述べた.また③多発性骨髄腫の併発と扁平苔癬の発症機序について文献的考察を加え,これらの3点について若干の卑見を述べた.

色素性痒疹の2例

著者: 大塚勤 ,   山蔭明生 ,   田村多絵子 ,   石川英一

ページ範囲:P.1215 - P.1218

 色素性痒疹の2例を報告した.症例は26歳女性,17歳男性であり,項部・背部に瘙痒性紅色皮疹を繰り返して生じ,その後同部に粗大網目状色素沈着を呈した.一般検査上異常は見られず,鳥居の標準パッチテストはすべて陰性だった.組織学的に真皮上層に単核球細胞浸潤と組織学的色素失調,第2例ではそれに加えて表皮内にdyskeratotic cellがみられ,いずれも苔癬型組織反応に属していた.本症の病因・発生機序および治療について若干の文献的考察を行った.

腎不全に伴ったFinger Pad Tophi

著者: 加藤直子 ,   北野一郎

ページ範囲:P.1219 - P.1221

 43歳,女性の慢性腎不全患者に合併した指腹の痛風結節(finger pad tophi)について報告した.右母指および示指の指腹に,乳白色に透見される小結節を2個認めた.病理組織学的に真皮全層に及ぶ結合織性の隔壁に囲まれた針状結晶構造を有する物質の集塊を認め,De Galantha染色により沈着物質は尿酸塩と同定された.尿酸塩の周囲には軽度のリンパ球様細胞のみが浸潤し,異物型巨細胞や多核白血球は認められず,血液透析に伴って生じる低補体血症,白血球減少などの個体側の要因による異物肉芽腫反応の低下を反映していることがうかがわれた.

幼児の虫垂炎術後に生じた脂肪肉芽腫

著者: 浅越健治 ,   妹尾明美 ,   荒川謙三 ,   荒田次郎

ページ範囲:P.1223 - P.1225

 4歳,女児.急性虫垂炎術後に発熱と同時に下腹部,両季肋部に発赤・圧痛のある皮下硬結が出現した.抗生剤投与で炎症所見は改善したが下腹部に索状硬結が残存し,同部に波動を触れたため穿刺したが排膿はなかった.穿刺部より黄紅色・肉芽様軟腫瘤が隆起拡大したため当科を受診した.血清アミラーゼ,リパーゼ値は正常.組織所見では好中球,組織球,リンパ球を中心とする多彩で密な細胞浸潤がみられ,巨細胞の出現,脂肪融解の像も認められた.外科的に全摘出し,その後再発は認めていない.虫垂炎もしくは手術と関連した脂肪織炎,およびその結果としての脂肪肉芽腫と診断したが,原因を特定することはできなかった.外科的手術に関連した脂肪肉芽腫について考察した.

Down症に併発した蛇行性穿孔性弾性線維症

著者: 馬場直子 ,   斎藤胤曠 ,   塩谷千賀子 ,   田中祐吉 ,   佐々木佳郎

ページ範囲:P.1227 - P.1230

 18歳男子.以前よりDown症,心室および心房隔欠損症,肺高血圧症あり.3年前から膿疱性座瘡およびトリコチロマニア併発.1年前から両大腿前面と左上腕外側に線状・半環状萎縮性局面が多数散在し,一側辺縁に堤防状に丘疹を配列して一部結痂を示す皮疹が出現し次第に増生してきた.病理組織像では真皮上層に波状の変性線維の集塊と表皮肥厚を認め,変性物質はOrcein染色で陽性を示し,弾性線維と考えられた.Down症に併発した蛇行性穿孔性弾性線維症(elastosis perforans ser—piginosa)と診断し,その臨床的,組織的所見を報告するとともに,病因および発症機序について若干の考察を加えた.

正中頸裂の1例

著者: 四ツ柳高敏 ,   横井克憲 ,   荒道人

ページ範囲:P.1231 - P.1233

 頸部先天性異常のなかでも稀と思われる正中頸裂の1例を報告した.本症は,頸部正中の付肉,および縦走する赤色の浅い陥凹が特徴的である.本症を理解していれば診断は比較的容易と思われるが,瘻孔や頸部後屈障害を合併することもあるため,治療には注意が必要と考えられる.

陥凹が著明であった多発性Blue-Red Maculeの1例

著者: 岡田善胤 ,   倉持政男 ,   三浦隆

ページ範囲:P.1235 - P.1237

 陥凹が著明であった多発性blue-red maculeを持つレクリングハウゼン病の1例を報告した.患者は19歳,男性.思春期より体幹にcafé-au-lait斑が多発.18歳頃から小指頭大の暗紅色陥凹局面が体幹を中心に散発してきた.通常レクリングハウゼン病に見られる隆起性病変は認められなかった.陥凹皮疹の組織学的所見は真皮中層から下層における境界比較的鮮明な細胞集塊で,紡錘状の細胞から構成されていた.この神経線維腫の病変が真皮中層から下層に存在している点が通常みられるcutaneous neurofibroma1)とは異なるもので,本症の特殊型であるblue-red macule2)と診断した.本斑は臨床上陥凹が著明であった点が特異的であった.

臨床的に悪性化を疑ったCommon Blue Nevusの1例

著者: 庄田裕紀子 ,   浅田秀夫 ,   松井喜彦 ,   奥村睦子

ページ範囲:P.1239 - P.1241

 20歳,女性.小児期より右前腕に黒色結節が存在していた.最近急に増大し,周囲皮膚へのしみだし現象やサテライト現象を認めたため悪性化を疑い,拡大切除術を施行した.その後,組織学的に再検討を行った結果,普通型青色母斑と診断したが,本例のごとく良性青色母斑が周囲皮膚へ点状拡大した例は非常に珍しい.

悪性青色母斑の1例

著者: 前嶋啓孝 ,   橋本秀樹 ,   安斎眞一 ,   渡辺修一 ,   麻生和雄

ページ範囲:P.1243 - P.1248

 45歳,女性.右下腿屈側の黒色結節を主訴に来院した.悪性黒色腫を疑い広範囲切除,右鼠径リンパ節郭清を行った.病理組織学的所見では,原発巣は細胞増殖性青色母斑の組織像に悪性化を伴っており,悪性青色母斑と診断した.また右鼠径リンパ節に腫瘍の転移像を認めた.免疫組織学的には腫瘍細胞は抗S−100蛋白抗体,抗neuron specific enolase抗体,抗ヒトメラノーマ抗体(HMB−45)で陽性所見を呈した.

皮膚平滑筋肉腫の1例

著者: 山本美保 ,   齋藤和哉 ,   田中智 ,   飯田憲治 ,   田中真弓 ,   嵯峨賢次 ,   杉山貞夫 ,   高橋誠

ページ範囲:P.1249 - P.1254

 症例は28歳の男性で,2カ月前より右上腕伸側に結節を生じ,当初良性平滑筋腫と診断し単純切除したところ,組織学的所見にて皮膚平滑筋肉腫の診断となり再手術に至った.組織像は異型性,大小不同を示す細長い腫瘍細胞が交差しつつ密に集簇した腫瘍像を真皮浅層〜深層にかけて認めた.核分裂も散見された.胞体はAzan—Mallory染色で赤染し,鍍銀染色で箱入り像がみられた.また,電子顕微鏡所見ならびに酵素抗体法により,腫瘍細胞が筋原性であることが証明された.本症例を報告するとともに,過去の本邦既報告例につきまとめ,考察する.

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臨床皮膚科 第47巻 事項索引

ページ範囲:P. - P.

臨床皮膚科 第47巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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