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特集 最近のトピックス Clinical Dermatology 1993 II 皮膚疾患の病態
上皮性腫瘍のケラチン発現—表皮細胞由来の腫瘍を中心に
著者: 片方陽太郎1
所属機関: 1山形大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.63 - P.67
文献購入ページに移動 ひとくちに上皮性腫瘍といっても数多く存在しており,本稿では表皮細胞由来のものに限ってケラチン蛋白の発現からみた上皮性腫瘍について概説する.これまでは組織学あるいは免疫組織学的研究が中心をなしていたが,近年の分子生物学の進歩により遺伝子工学的手法を用いた分子レベルでの研究やサイトカインをはじめとする細胞免疫学の研究が急速に進んでいる.しかし腫瘍への移行と密接に関連するケラチン蛋白を明確に特定するのは現状ではまだ困難といわざるをえない.これまでケラチンといえば細胞の構造維持に関与しているにすぎないといわれていたが,細胞内への情報伝達,細胞の分化あるいは分裂に極めて深く関与していることが明らかになっている.ある角化異常症や表皮水疱症では,その発症機序はケラチン蛋白自身の異常であることが遺伝子レベルで解明されている.皮膚科学の中で今後ますます重要な分野になりうる可能性を秘めている.
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