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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科47巻6号

1993年05月発行

雑誌目次

カラーアトラス

偏食によるペラグラ

著者: 片山治子

ページ範囲:P.430 - P.431

 患者 71歳,男性
 初診 1990年4月4日
 家族歴 弟に乾癬.妻が4年前に大腸癌で死去
 既往歴 10年前に胃潰瘍で胃切
 現病歴 1990年3月末頃より,両手背に発赤・腫脹が出現し,灼熱感が強いため4月4日当科を受診した.妻に先立たれてからは,独居で自炊している.野菜を好んで食べ,蛋白源は,卵をご飯にかけて食べるぐらいで,豆類や肉類は好まず,魚も滅多に食べない.日本酒を円に2合飲む.車を長時間運転し,日光に当たることが多い.
 現症 両手背に境界鮮明な紅褐色局面があり,汚臓な痂皮やびらんを伴う(図1,2).灼熱感,接触痛が強い.下口唇にも痂皮,びらんがみられる.下痢はなく,むしろ便秘傾向である.精神症状なし.

原著

Subacute Cutaneous Lupus Erythematosus—症例報告と本邦23例の集計

著者: 新関寛徳 ,   田中勝 ,   宮川俊一 ,   関山菜穂

ページ範囲:P.433 - P.437

 25歳,女.23歳時,ARA診断基準5項目を満たし,全身性エリテマトーデス(definite SLE)の診断を受け,プレドニゾロン40mgより治療開始した.7.5mgにて維持療法中に顔面,両前腕等に鱗屑を伴う環状紅斑が出現.病理組織学的には液状変性と真皮浅層中心の細胞浸潤を認め,ループスバンドテストは陽性であった.抗SS—A抗体単独陽性.以上より本症例をsubacute cutaneous LEと診断した.本邦報告例23例の集計を行ったところ,抗SS-A抗体単独陽性群ではループスバンドテスト陽性例,全身性エリテマトーデスの診断基準を満たす症例が多く,自験例の種々の所見と一致をみた.それに対し抗SS-A・SS-B抗体両者陽性群ではループスバンドテストは陰性例が多く,乾燥症状を伴う症例が多かった.本邦報告例11例のHLAの集計ではHLA-Aw33,B44を有する症例が有意に多かった.

骨接合用金属によるニッケル皮膚炎患者末梢血単核球のサイトカイン産生

著者: 古賀哲也 ,   今山修平 ,   堀嘉昭

ページ範囲:P.439 - P.442

 65歳男性の骨接合用金属包埋1カ月後に,術創部に発症した慢性接触性皮膚炎を経験し,以下の検討を行った.金属プレート材料内に含まれるニッケルのパッチテストによって強陽性反応を認め,同時に大腿部病変のflare up現象が認められた.組織学的に一部表皮内のリンパ球浸潤と表皮肥厚,真皮上層に主として血管周囲性の好酸球と形質細胞を混在するリンパ球浸潤がみられた.ニッケルによるリンパ球幼若化試験は陽性であった.また患者末梢血単核球をニッケルの存在下で72時間培養した培養上清には,IFN—γとIL−2活性が認められた.以上より本症例においては皮疹の発現に,ニッケル特異的T細胞から産出されたサイトカインが関与している可能性が示唆された.

Steatocystoma MultiplexとEruptive Vellus Hair Cysts—防衛医科大学校皮膚科教室例の検討

著者: 野口博光 ,   近兼健一朗 ,   比留間政太郎 ,   石橋明

ページ範囲:P.443 - P.447

 1981年1月から1991年12月までの11年間に当教室においてsteatocys—toma multiplex(SMと略す)およびeruptive vellus hair cysts(EVと略す)と診断された14例について,臨床所見および病理組織学的所見を検討した結果,SMとEVの合併が2例(症例1および11),嚢腫壁はanagen型の角化様式を示したが総合的にEVと診断された症例が1例(症例13),臨床的にEVが疑われたが組織学的にほぼSMであったものが1例(症例14)存在した.これらの成績は,組織発生学的にSMとEVを同一スペクトルム上に位置づけられる毛包漏斗部由来の嚢腫とみなす最近の考えに符合した.SMはその中で脂腺導管部付近に由来する一典型,EVは毛包漏斗部上部に由来する一典型で,非典型例は,2種類の嚢腫のhybridとも考えられるが,遺伝的に単一な毛包由来の嚢腫で表現型に幅があるために,種々の臨床ならびに組織学的所見を示すのかもしれないし,逆にそれぞれに遺伝的異質性あるいは表現型模写が存在する可能性も否定しきれない.

臨床統計

広範囲に分布した多発性平滑筋腫—北里大学皮膚科10年間の集計および免疫組織化学的検討

著者: 矢口厚 ,   米元康蔵

ページ範囲:P.449 - P.452

 症例,29歳の女性,脳幹部腫瘍にて入院中.20年前より右上肢に有痛性の小結節が出現し,徐々に右半身を主体に増多したため当科受診.淡紅色ないし紅褐色調を呈した粟粒大から小豆大までに隆起する弾性硬の結節が広範囲に分布,圧痛を伴う.臨床的に多発性平滑筋腫と診断した.結節部の生検組織像は真皮上層から下層にかけて被膜のない境界明瞭な平滑筋線維束の集塊が認められた.その線維束はelastica—van Gieson染色およびAzan-Mallory染色にて平滑筋と認められた.当科における過去10年間の平滑筋腫ならびに平滑筋母斑17例について,性差,合併症,平滑筋線維の性格につき検討した.性差では平滑筋腫,平滑筋母斑ともに女性に多く,子宮筋腫の合併は多発性平滑筋腫の3例中2例のみならず単発性平滑筋腫症例にも認められた.また免疫組織化学的に平滑筋腫は平滑筋母斑よりも幼若な平滑筋線維より構成され,血管平滑筋腫とも異なる性格を有する.

今月の症例

Cutaneous Ciliated Cystの2例

著者: 田中博康 ,   中島奈保子 ,   新井雅明 ,   石田卓 ,   戸沢孝之

ページ範囲:P.455 - P.458

 Cutaneous ciliated cystの2例を報告した.症例1:12歳女児.数カ月前より,右下腿部の腫瘤に気づき漸次増大した.直径4mmおよび6mmの嚢腫状皮下腫瘤で自覚症状を伴わなかった.症例2:12歳女児.約1年前より,右足底の腫瘤に気づき漸次増大した.15×17mmの嚢腫状皮下腫瘤で軽度の圧痛を認めた.組織学的には2症例とも同様の嚢腫が真皮に存在し,その壁細胞は内腔面に線毛を有する1層の円柱上皮で構成されており,cutaneous ciliated cystと診断した.本症は女性の下肢にのみ生じる希有な疾患であり,Müller管由来と考えられている.過去の報告例を総括し,比較検討した.

症例報告

成人の膿痂疹の2例

著者: 宮沢めぐみ ,   田口真紀 ,   馬場直子 ,   佐々木哲雄 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.459 - P.462

 成人の膿痂疹の2例を報告した.症例1:47歳,男性の痂皮性膿痂疹.左上肢に膿疱,痂皮を伴う紅斑性局面が散在.培養にてA群溶連菌T11型陽性.組織学的にも表皮の膿疱,痂皮形成を認めた.アンピシリン内服にて治療した.症例2:67歳,女性の水疱性膿痂疹.全身に大小のびらん面と水疱を認め,培養にて黄色ブドウ球菌が陽性.組織学的には表皮顆粒層における裂隙形成を認めた.ミノサイクリン内服にて治療した.2種類の膿痂疹につき,若干の考察を加えた.

全身性エリテマトーデス—シェーグレン症候群オーバーラップ例にみられた末梢および中枢神経症状ならびに当教室でみた類似例について

著者: 割田昌司 ,   石川治 ,   石川英一

ページ範囲:P.463 - P.466

 57歳,女性.1985年12月頃より手指,顔面に自覚症状を欠く紅斑が出現し,全身性エリテマトーデスと診断,4年後シェーグレン症候群の合併が明らかとなった.1991年3月発熱,関節痛とともに両下肢の運動・知覚障害,6月に痙攣発作が現れた.自験例を含め当教室で経験したシェーグレン症候群厚生省診断基準案確実例中,シェーグレン症候群単独12例では精神神経症状を認めた症例はなかった.一方,続発性シェーグレン症候群では47例中3例に精神神経症状が認められ,いずれも全身性エリテマトーデスとのオーバーラップ例であった.文献的にも全身性エリテマトーデスとシェーグレン症候群の精神神経症状は臨床的に区別し難いと指摘されており,シェーグレン症候群の精神神経症状の診断にあたっでは,他の膠原病,特に全身性エリテマトーデスの合併に留意するとともに,長期の経過観察が必要であると思われた.

限局性類天疱瘡の1例

著者: 中嶋賢 ,   辻卓夫

ページ範囲:P.467 - P.469

 90歳の男性.両下腿に生じた限局性類天疱瘡の1例を報告した.水疱は瘙痒を伴う拇指頭大までのもので,1カ月来出没を繰り返していた.病理組織学的には表皮下水疱で,真皮では好酸球を主体とする細胞浸潤がみられた.皮疹部の蛍光抗体直接法ではIgG,C3ともに陰性であったが,血清中の抗基底膜部抗体は正常人皮膚を基質とした時320倍まで陽性であった.治療はステロイド軟膏外用を行い,水疱の新生は徐々に抑えられ2週間後には紅斑を残すのみとなった.

Acrokeratosis Paraneoplasticaの1例

著者: 狩野葉子 ,   篠原央 ,   郭宗宏 ,   長島正治

ページ範囲:P.471 - P.474

 73歳,男性の早期胃癌に伴ったacrokeratosis paraneoplasticaの1例について報告した.初診2カ月前より,両耳介から顔面にかけて粃糠様鱗屑をつけた軽度瘙痒のある皮疹が出現した.皮疹は拡大する一方,手掌,足底に潮紅と角化が出現し,爪甲の混濁も伴ってきた.消化器症状の訴えはなかったが,検索の結果,早期胃癌が証明された.外科にて胃亜金摘出術が施行され,皮疹は積極的な治療を行わずに軽快した.症例の蓄積がなされるにつれ,本症が従来より言われた上部消化管・気道の悪性腫瘍に限らず,種々の悪性腫瘍に伴って出現すること,また,本症は腫瘍の症状に先行して皮疹が認められる例が多く,その診断意義の大きいことを述べ発生機序について考察した.

無月経時に出現する再発性光沢苔癬の1例

著者: 和泉達也 ,   八木宏明 ,   海老原全 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.475 - P.478

 26歳,女性.躯幹を中心に粟粒大から半米粒大の小丘疹が多発して認められたため当科初診.この皮疹は無月経時にみられ,比較的短期間のうちに出現,消退を繰り返す.このような皮疹は,初診前6回,初診以降4回,計10回認められた.また,女性ホルモン剤投与時には,数時間で速やかに消退した.病理組織像では光沢苔癬に典型的であるが,リンパ球様細胞や組織球のほかに好中球も認められた.さらに,自験例において,月経周期と皮疹の発症機序に関して若干の考察を行った.

紅斑型環状肉芽腫の1例

著者: 木花いづみ ,   寺木祐一 ,   中野政男

ページ範囲:P.479 - P.481

 71歳,女性の両膝,両手背に生じた紅斑型環状肉芽腫の1例を報告した.初診の1カ月前より両膝に手掌大の環状紅斑,手背のMP関節部に沿って浸潤性紅斑が出現,組織学的には環状肉芽腫に典型的な所見を呈していた.糖負荷試験にて境界型を示し,血中アンギオテンシン変換酵素(ACE),リゾチームの上昇を認めたが,生検の2カ月後皮疹の自然消退に伴って正常化した.環状肉芽腫の非定型疹のうち紅斑型は比較的稀で,特に他の非定型疹を伴わず紅斑型の発疹のみを認めた症例は本邦では自験例を含めて5例の報告をみるのみであった.本症における血中ACE,リゾチームについての意義について若干の考察をつけ加えた.

乳暈部皮膚平滑筋腫の1例

著者: 馬場直子 ,   長谷哲男 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.483 - P.486

 子宮筋腫の既往を有する,69歳女性の乳暈部に生じた皮膚平滑筋腫の1例を報告した.大豆大,半球状,淡赤褐色,弾性軟の小結節で,軽度の圧痛と瘙痒あり.組織学的には,真皮内にエオジン好性,アザン・マロリー染色,マッソン染色で赤染,エラスチカ・ワンギーソン染色で黄染,PAS染色で紫色に染まる平滑筋細胞より成る腫瘍巣が島状に多数認められた.乳暈部平滑筋腫は比較的稀で,本邦報告例としては第5例目である.本症例を含め,乳頭・乳暈部発生例について文献的に考察し,子宮筋腫の合併との関連についても若干の考察を加えた.

Spindle Cell Lipomaの1例

著者: 丸尾充 ,   石黒和守

ページ範囲:P.489 - P.491

 68歳男性.上背部に小腫瘤が生じ,徐々に大きくなってきたので来院した.初診時上背部に14×10×5cmの半球状に隆起した腫瘤が認められたので,局所麻酔下に摘出術を行った.組織学的所見は皮下脂肪織に被膜で囲まれた腫瘤で,大部分は成熟脂肪細胞様細胞から構成されていたが,一部では成熟脂肪細胞様細胞と膠原線維の間にクロマチンに富んだ紡錘形細胞の増殖が認められた.以上の所見より脂肪腫の特殊型であるspindle cell lipomaと診断した.本症は予後良好な疾患であるが,分化型脂肪肉腫との鑑別が問題となることがあるので詳細な組織学的検索が必要であると思われた.

汎発性皮膚転移癌の1例

著者: 川上民裕 ,   大西善博 ,   松井良介 ,   柳原康章 ,   長村洋三

ページ範囲:P.493 - P.496

 47歳,男性.初診1カ月前に腹部に小豆大から拇指頭大のほぼ円形,淡紅色小結節が汎発性に出現.その後,胸背部にも拡大.個疹は扁平隆起性で皮内に硬結を触れる.組織学的には真皮網状層から一部皮下脂肪織にかけて異型の核と明るい胞体をもつ細胞よりなる腫瘍巣がみられ,巣内に印環細胞が散見される.胃透視,内視鏡検査にて胃癌(印環細胞癌)が発見され,本疾患を胃癌原発の汎発性皮膚転移癌と診断した.過去12年間の皮膚転移癌525例と汎発性皮膚転移癌25例を集計した.後者は前者に比し男性に多く,胃原発が多い.

悪性線維性組織球腫の1例

著者: 石井清英 ,   山田裕道

ページ範囲:P.497 - P.501

 83歳,男.右下腿内側の悪性線維性組織球腫の1例を報告した.自験例では6年前に近医の外科にて同部位の腫瘍を切除した際に悪性線維性組織球腫の病理診断を受けている.後療法として約5年間,放射線治療を受けていたところ手術瘢痕に一致して悪性線維性組織球腫の再発をみた.本症自体が術後再発しやすいと言われている上に,他腫瘍を含めた術後放射線照射後肉腫の中で本症の頻度が高いことも合わせて,興味ある症例と考えた.

有棘細胞癌様の表皮増殖を伴つた悪性黒色腫の1例

著者: 田村敦志 ,   石川英一

ページ範囲:P.505 - P.508

 66歳,男性.36歳頃,左足底の黒褐色斑に気づいた.初診3カ月前より同部が隆起し,周囲へ色素斑が拡大してきたため,当科を受診した.臨床所見より悪性黒色腫と診断し,入院,原発巣切除および予防的鼠径リンパ節郭清術を施行した.切除標本の組織像は表皮真皮境界部から皮下脂肪織にかけて,メラニンを豊富に含む異型性のある紡錘形の腫瘍細胞が浸潤性に増殖していた.さらに,腫瘍細胞とともに被覆表皮が角質真珠を伴い,不規則索状ないし島興状に増殖し,一見,有棘細胞癌様の組織構築を示した.しかし,表皮細胞に異型性は認めなかった.被覆表皮の増殖を伴った悪性黒色腫につき文献を検討し,若干の考察を加えた.

潰瘍を呈した淡明細胞肉腫—1例報告と本邦例の集計

著者: 松本博子 ,   山田晴義 ,   仲弥 ,   西川武二 ,   伊崎寿之 ,   向井万起男

ページ範囲:P.509 - P.512

 約10年前,左踵部外側の胼胝様皮疹にて初発し,その後疼痛を伴い潰瘍化した淡明細胞肉腫に対し,広範切除術およびCYVADIC療法を施行した48歳,男性例を報告した.あわせて本邦における本症の報告40例につき統計的な検討を加えた.その結果,本症は10歳代から30歳代の男女に多く見られ,初発症状出現から確定診断まで長期間かかることも多く,10年以上要した例が14%を占めていた.本症は足に頻発し(42.5%),表面正常な皮下腫瘤であることが多かった.組織学的には本症は悪性黒色腫と同じ染色態度を示し,malignant melanoma of soft partsとも考えられている.治療については,単摘例に再発,転移が多くみられ予後が悪いことから,広範切除のほか,強力な化学療法も必要と思われた.

連載

Clinical Exercises・2—出題と解答

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.466 - P.466

Practical English for Busy Physicians・3

著者:

ページ範囲:P.520 - P.521

不規則な複数形・仮定法の使い方など
 さて今月は“不規則な複数形”について話しを始めることにしましょう.皆様もよく御存じの通りdeer,fish,sheepや一般的なpeople(例外も若干あります)は,複数形でも最後に‘s’を必要としません.医学用語の世界では,多くの用語がラテン語に基づいており,もう少し難しくなるし,略語の場合はさらに難しくなります.アメリカでは,ロマンスランゲージと言われるフランス語,ドイツ語,スペイン語のような言語が普通であり,ラテン語を学ぶ者は医者や教養の高い人たちに限られています.
 そしてamoebaの複数形はamoebaeであり,auditoriumはauditoriaとなり,rostrum(これはスピーチの時あなたが飲み水やメモを置くテーブルの正式な呼び名です)の複数形はrostra,dermatitisの数々のエピソードのためにはdermatitidesとなるわけです.

治療

鼻背皮弁を用いた鼻部皮膚腫瘍切除後欠損創の再建

著者: 斉藤浩 ,   橋本吏美 ,   梁取明彦 ,   山崎雙次

ページ範囲:P.513 - P.516

 我々は,過去1年間に鼻背から鼻尖部に切除後中等度の欠損創を生じた皮膚腫瘍の7例に対し,眉間より鼻背までの皮膚を利用したいわゆる“鼻背皮弁”を用いて再建し,おおむね良好な結果を得た.しかし皮弁茎部のひきつれや,先端部の感染および壊死を生じたものが各1例見られた.遊離植皮術や各種皮弁術などの利点,欠点も含め,本皮弁の特徴や適応について述べた.

印象記

仙台色彩かに—第17回日本研究皮膚科学会印象記

著者: 古川福実

ページ範囲:P.517 - P.519

 第17回日本研究皮膚科学会(研皮)が東北大学教授田上会頭のもと平成4年10月16日と17日の両日開催された.台風22号が日本へ接近した時期と重なり,天候が心配されたが学会の両日とも秋晴れで,450名を越える研究者が参加した.学会場となった仙台国際センターは,和風の趣きをうまく取り入れた現代的コンベンションセンターで,周囲の環境とも極めて良く調和し,まさに古き杜の都のニューサイエンス基地という印象だった.
 さて,今回の研皮において,田上会頭はいくつかの特色を演出された.その1つは,1993年の秋に京都で行われる三大陸合同研究皮膚科学会(Tri-Con)に向けての企画である.Tri-Conに向けて予行演習的雰囲気をもてるように欧米より2人の特別講演者と10人以上の教育講演者を招請された.特別講演者の一人は,田上会頭を初め多くの著名な日本の皮膚科の先生方が指導をあおいだAlbert M,Kligman先生である.Kligman先生は,初日(16日)のサテライトセミナーで“Photodamaged skinand its pharmacologic treat—ment”と題された講演をされ,翌日には“Hydration harms humanskin”と題された特別講演をされた.その2つの講演は,Kligman先生の長年の研究に裏打ちされた含蓄のある科学的な内容で,示唆に富むものであった.ウイットも交えながら聴衆に話し掛けられる姿は,とても80歳近い老人(失礼!)とは思えない若々しいもので,印象的であった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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