患者 33歳,男性
初診 昭和56年6月23日
現病歴 生下時より前頸部に自覚症状を欠く皮疹が存在していたという.放置していたが,今回切除目的で来院した.
現症 左前頸部に,上下に連なって半球状ないし角状に隆起する小豆大の2個の正常皮膚色の結節を認める(図1,2).触れると上方の結節は軟らかいが,下方の結節は軟骨様硬で,この軟骨様硬結は皮下にまで続いて認められるが,下床とは可動性を有した.
雑誌目次
臨床皮膚科48巻1号
1994年01月発行
雑誌目次
カラーアトラス
軟骨母斑
著者: 山本俊幸 , 古瀬善朗
ページ範囲:P.6 - P.7
総説
色素性乾皮症研究の現況—遺伝子研究とその臨床応用を中心に
著者: 錦織千佳子 , 森脇真一 , 武部啓 , 今村貞夫
ページ範囲:P.9 - P.17
最近の分子生物学的研究の進歩に伴って明らかになってきた色素性乾皮症(XP)の遺伝子レベルでの研究について総括した.XPA群の異常を相補するXPAC遺伝子の変異の箇所と臨床像との関連性について解析したところ,日本人XPA患者では,86%が,制限酵素A1wNIを用いたPCR-RFLPで診断可能なイントロン3のスプライシングの異常のホモ接合体であり,このタイプは,皮膚症状,神経症状ともに重症の典型的なA群の臨床像を示した.一方,Hph Iを用いたRFLPで診断可能な変異をホモ接合体で持つ患者は,日本では2人いたが,チュニジアのXPA患者では7例中6例(86%)がこのタイプの異常であり,この遺伝子型を示す患者は,皮膚症状,神経症状ともに軽症であった.このような,XPAC遺伝子を用いた遺伝子診断により,XPA群の診断が迅速かつ正確にでき,予後の判定や保因者診断,胎児診断にも応用可能なことを示した.
原著
各種紅斑の血流量と“赤さ”の程度(皮膚血液量)の関係—機器による定量的測定
著者: 白井志郎 , 滝脇弘嗣 , 高野浩章 , 荒瀬誠治
ページ範囲:P.19 - P.23
我々が視覚的にとらえている皮疹の“赤さ”と皮膚血液量の関係を定量的に調べるために,UVB紅斑,DNCB皮膚炎,ラウリル硫酸ナトリウムによる刺激性皮膚炎,乾癬,温熱による紅斑,鬱血状態および老人性血管腫上で両者を同時に計測した.“赤さ”(血液量)の定量にはビデオマイクロスコープ画像の緑バンド平均輝度から算出した吸光度類似指数,血流量の定量にはレーザー血流計を用いた.その結果,炎症性紅斑での両者の関係はほぼ同軸上に並ぶ正相関を示したが,乾癬では相対的に血液量の増加が大であった.これらに比し,温熱紅斑では血流量の増加が,血管腫では逆に血液量の増加が著明であり,鬱血では血液量の増加に反して血流量はむしろ低下し,散布図では前記炎症群と異なる領域を占めた.したがって,“赤さ”と血流量は必ずしも同一の次元にあるとはいえず,ことに成因の異なる皮疹ではそれぞれで異なった血流動態を示すと考えた.
好中球浸潤と急激な潰瘍形成をみたmyelodysplastic syndrome—自験2例の報告とその発症機序について
著者: 森田明理 , 榊原茂 , 笠松正憲 , 辻卓夫
ページ範囲:P.25 - P.29
Myelodysplastic syndrome(MDS)が基礎疾患としてあり,感染,外傷を契機として,皮膚に急速な紅斑の拡大と潰瘍形成がみられた症例を2例経験した.1例はステロイドが著効し,1例は自然軽快した.皮膚病理組織学的に真皮に稠密な好中球の浸潤がみられた.両症例ともSweet症候群や壊疽性膿皮症の典型像とは異なる.MDSでは造血幹細胞や,これから分化した末梢白血球は形態や機能に異常があるため,局所での好中球増殖因子に対する反応の異常が起こり,Sweet症候群と同様な病態を起こしたと考えられた.
成人にみられた伝染性紅斑22例の臨床的検討
著者: 篠田英和 , 吉田彦太郎
ページ範囲:P.31 - P.36
成人の伝染性紅斑22例の臨床的検討を行った.女性例が21例と圧倒的多数を占め,30歳代が15例みられた.発熱は37.5℃以下の微熱43%,全身倦怠感59%,関節痛(主に膝,手指に多い)59%,手指や下腿の浮腫感55%,さらに指の朝のこわばりが27%にみられるなど,小児例と比較し全身性症状を伴いやすい傾向がみられた.また,手指や下腿の浮腫感および朝の指のこわばりは成人例の特徴と考えた.皮膚症状は,小児例と比較し記すべき違いはなかった.自覚症として,かゆみ2例のほか,チクチク,ピリピリ,チカチカなど各1例あり,小児例では認めにくい症状もみられた.経過は1週間で軽快したものが72%で全身症状を伴いながらも小児例と同じく予後が良かった.なお,自験例では妊娠中の症例が3例あったが,無事出産できた.今後,女性例の場合は胎児水腫の併発もあり,風疹同様,妊娠との関係を念頭においての診療が重要である.
今月の症例
Nocardia brasiliensisによる皮膚ノカルジア症の2例
著者: 西尾達己 , 笹井陽一郎 , 松元二郎 , 加治英雅 , 永田正和
ページ範囲:P.37 - P.41
症例1は31歳,女性.左肘頭部の菌腫で,外傷後9カ月で発症し診断のつかないまま軽快再発を繰り返していた.組織学的には真皮内の膿瘍中に好塩基性の顆粒がみられ,グラム染色で顆粒の周辺に微細な菌糸を認めた.診断確定後も塩酸ミノサイクリン,オフロキサシン,ST合剤などの治療に抵抗し再発を繰り返したが,最終的には切除し約2年間で治癒した.症例2は76歳,男性.右手背から前腕にかけてのリンパ管型で,外傷後1カ月で発症し,塩酸ミノサイクリンの内服4週間で治癒した.どちらも原因菌はNocardia brasiliensisであった.今後本症の治療にはin vitroで有効性の確かめられたトスフロキサシンなども使用されるべきと考えた.
連載
Practical English for Busy Physicians・7
著者:
ページ範囲:P.122 - P.123
“…ish”,datesについておよび添削の実例
最近次のような文章の論文を受け取りました.“Thelesion gradually became brownish pigmented.”さて,今ここでは文法的な細かいことはさておき,この文章では“ish”を使って“brownish”と言う形にしてありますが,これは“brownishly pigmented”とならなくてはいけません.伝統的に日本語の形容詞の「…ぽい」は英語において“ish”と訳されています.今の若い人たちは「子供っぽい」のように単語の最後に“ぽい”を付けて使用していますが,つまりこの前出の論文の文章は才気漲る30代の青年医師によって書かれており,「赤っぽい」と同様に,「茶色っぽい」としてしまいましたが,この使用法には制限があります.要するにこの場合は明らかにオリジナルでの「茶色っぽい」(オリジナルの日本語の原稿を見ていないので多少推測している訳ですが)を直訳して“brownish”にしたものと思われます.しかし残念ながらこの場合,日本語においても「茶色っぽい」が適切でないように,英語でも“ish”は専門的な原稿では使用しません.茶色に変化が見られたら,“light brown”とか“slightly brown”または“somewhat brown”というように表現して下さい.一方,多くの人が“brown in color”という言い方を使ったりします.例えば“the lesion graduallybecame somewhat brown in color(or brown in pigmentation)”のように.しかしこれはちょっと両方はくどいですね.色は色,pigmentationはpigmentationですから.
症例報告
マダニ刺咬症—軽症のライム病が発症したと考えられる1例
著者: 大竹直人 , 窪田泰夫 , 島田眞路 , 玉置邦彦
ページ範囲:P.43 - P.47
3歳,女児.平成3年7月14日,山梨県の櫛形山に登り,草の中を走り廻った.約1週間後,両親が右後頭部に咬着する虫体に気づいた.平成3年7月22日の初診時,右後頭部にシュルツェマダニの雌が咬着していたが,飽血後の自然脱落を待つことにした.2週間経過しても自然脱落を認めないため切除した.咬着部周囲の紅斑はわずかに拡大し,右後頸部には拇指大,圧痛があるリンパ節を触知した.母親の話では,初診より10日目頃に2,3日間,両側頬部に環状紅斑,右下腿に強い筋痛が出現したということであった.ライム病を疑い,Borrella burgdorferi抗体(Bb抗体)を測定した結果,31.1%RS(正常10未満)(平成3年9月20日)であつたため,PIPCを2週間投与した.その後,症状の出現はなく,Bb抗体も44.9%RS(平成3年10月15日)から16.9%RS(平成4年3月30日)に低下した.自験例のように症状が軽いライム病では,Bb抗体の測定が診断,治療効果の判定に有用であると考えられた.
多発性根神経炎と膀胱直腸障害を呈した全身性エリテマトーデスの1例
著者: 割田昌司 , 石川治 , 宮地良樹 , 石川英一
ページ範囲:P.49 - P.52
ギラン・バレー型多発性根神経炎と膀胱直腸障害を呈した全身性エリテマトーデスの1例を報告した.ステロイドパルス療法後,神経症状は漸次改善が見られた.当教室で過去13年間に経過を観察しえた全身性エリテマトーデス58症例について,精神神経症状の有無と臨床および検査所見との関連を検討した.精神神経症状を有する症例(14例)で,抗カルジオリピン抗体の陽性率が有意に高く,特に精神症状との関連が強かった.
眼瞼浮腫のみで初発した皮膚筋炎の1例
著者: 高橋研一 , 六郷正和 , 熱海正昭
ページ範囲:P.53 - P.55
両上眼瞼の浮腫性紅斑のみのため受診した39歳の女性に,3カ月後にGottron徴候と筋症状が出現した.皮膚筋炎と診断しステロイド内服を中心とした治療で症状は軽快した.皮疹のみを初発症状とし筋症状を伴わない皮膚筋炎はしばしば見られるが,この症例は,初発疹の段階で治療を開始すれば筋症状の発現を未然に防ぐことができたとも考えられ,反省させられた.皮膚筋炎の診断に関し若干の文献的考察を加えた.
帯状疱疹後に生じたtrigeminal trophic syndromeの2例
著者: 河原由恵 , 桜岡浩一 , 菊池新
ページ範囲:P.57 - P.61
80歳と88歳の女性.三叉神経第Ⅰ枝領域の帯状疱疹に罹患後,同部にびらん,潰瘍が多発,細菌,真菌の局所感染も伴い難治となった.各種検査結果および,特に潰瘍形成の原因となるような基礎疾患の合併もないことから,両症例を帯状疱疹後に生じたtrigeminal trophic syndromeと診断した.Trigeminal trophic syndromeの概念について述べ,若干の文献的考察を加えた.なお,症例2では,水痘・帯状疱疹ウイルスの組織内持続感染の可能性をPCR法により検索したが,同ウイルスのDNAは検出されなかった.
帯状疱疹瘢痕部に皮疹を生じたannular elastolytic giant cell granuloma
著者: 杉本理恵
ページ範囲:P.63 - P.66
顔面,頸部などの露光部の他に1年前に罹患した帯状疱疹瘢痕部にも生じたannular elastolytic giant cell granulomaの1例を報告した.円形および類円形の浸潤性紅斑として発症し,夏期には顔面・頸部では露光部位に一致したびまん性の紅斑となり,手背・前腕にも拡大した.経過とともに丘疹が環状および連圏状に集簇する紅斑局面となった.組織学的には真皮内に多核巨細胞を主体とし,リンパ球,組織球,類上皮細胞からなる肉芽腫が形成され,巨細胞による弾性線維の貪食像,真皮内の弾性線維消失を認めるなど本症の特徴的所見を示した.本症は環状紅斑を典型像とし,より多彩な臨床像をとる可能性が考えられた.
慢性関節リウマチに合併したannular elastolytic giant cell granulomaの1例
著者: 大塚勤 , 山蔭明生
ページ範囲:P.67 - P.70
71歳,男性.平成3年1月,上背部の自覚症状を伴わない紅色皮疹,レイノー現象および手指のこわばりに気づく.5月初旬,両側手関節に同様皮疹出現,同月中旬39℃台の発熱,両手背,指背に同様皮疹が出現し,6月20日当科初診.8月初めには両足関節の腫脹が出現.初診時,項部,左肩甲骨部,右膝蓋および両手関節屈側に,淡紫紅色,扁平または環状に隆起する紅斑が認められた.また,手指関節背面には淡紫紅色半球状隆起する結節が認められた.組織学的に,真皮上層から中層にかけて弾性線維を貪食した巨細胞を混じた肉芽腫を呈していた.また,検査上RF270/IU/mlであり,慢性関節リウマチの分類基準中4項目が認められた.自験例は,AEGCGに慢性関節リウマチが合併した稀な1例と考えられた.
壊死性筋膜炎の1例
著者: 吉川康之 , 長谷川隆哉 , 佐藤守弘 , 元木良和 , 有賀毅二 , 丹治修 , 金子史男
ページ範囲:P.71 - P.75
基礎疾患を有さない成人に発症した壊死性筋膜炎の重症例を報告した.症例は61歳男性.何ら原因なく左大腿部に激しい疼痛を伴う紅斑が出現し,マクロライド系抗生剤に反応せず,39.8℃の発熱が出現した.皮疹は急激に拡大し,左大腿のほぼ全周性に黒色調の壊死と水疱がみられ,周囲には広範囲に潮紅を伴つた腫脹が認められた.生検にて皮下組織や筋膜の壊死を認め,壊死組織の培養からStreptococcusPyogenesが同定された.心房細動と急激な血小板数の減少を併発したため,輸液,ペニシリン系の抗生剤(ピペラシリン)の投与,壊死部のsurgical debridementとともにジギタリス剤,メシル酸ガベキサートの投与を行い,約2週間で全身症状と局所症状は改善し,約1カ月後にmesh skin graftingを施行し,創はほぼ閉鎖した.
糖尿病性水疱の1例
著者: 飯田憲治 , 江口弘晃 , 三浦貴子 , 嵯峨賢次 , 高橋誠 , 鬼原彰 , 松田三千雄
ページ範囲:P.77 - P.80
糖尿病性水疱の1例を報告した.患者は,79歳女性で初診半年前より,NIDDM(インスリン非依存型糖尿病)typeⅡで内服薬処方し,コントロールは良好であった.両下腿に緊満性水疱が存在し,病理組織学的に表皮下水疱であった.免疫組織学的に真皮血管にIgMの沈着を認めた.
腎透析患者に生じたtransient acantholytic dermatosis
著者: 西井芳夫 , 川津友子
ページ範囲:P.81 - P.84
腎透析患者の背部に生じたtransient acantholytic dermatosisの1例を報告した.症例は51歳,男性.糖尿病性腎症による慢性腎不全のため血液透析施行中,背部に激痒を伴う角化性丘疹が出現.病理組織学的には,表皮内裂隙,棘融解細胞,異常角化細胞を認め,Darier病類似の像を示した.抗ヒスタミン剤内服とステロイド軟膏の外用を行い,約10カ月後には軽快し,以後の再発を認めていない.血液透析患者にみられる特異な角化性丘疹についてはこれまでに多くの報告があるが,自験例のように異常角化を伴う棘融解像を示したものはない.
結節性アミロイドーシスの1例
著者: 木花いづみ , 寺木祐一 , 荒木由紀夫
ページ範囲:P.85 - P.87
55歳,男性.約4年前より両上眼瞼縁に自覚症を欠く常色丘疹が多発,数珠状に配列してきた.HE染色では真皮全層に好酸性無構造物質が沈着.この物質はコンゴー赤染色にて橙赤色を,その偏光顕微鏡下で緑色の偏光を呈し,電顕所見からアミロイドと同定した.抗AL(λ)抗体に弱陽性を示し,L鎖(λ)由来と考えられた.全身性アミロイドーシスを示唆する所見はなく,皮膚限局性結節性アミロイドーシスと診断した.過去の本邦報告例について若干の文献的考察を加えた.
水疱形成を主とした全身性原発性アミロイドーシスの1例
著者: 川岸尚子 , 小林孝志 , 橋本喜夫 , 松尾忍 , 飯塚一
ページ範囲:P.89 - P.93
水疱形成を主とした原発性アミロイドーシスの1例を報告した.水疱は表皮下水疱であり,類天疱瘡との鑑別を要した.また,Bence-Jones蛋白,骨髄での形質細胞数増加がみられ,plasma cell dyscrasiaを伴うと思われた.水疱を主症状としたアミロイドーシスの場合,しばしばbullous amyloidosisという病名が使用される.国内外の文献を検索し,文献的考察を行った.
鼻腔内,足趾に悪性黒色腫を合併したWerner症候群の1例
著者: 上原貴美 , 坂井靖夫 , 磯ノ上正明 , 山村弟一 , 岡田奈津子 , 吉川邦彦
ページ範囲:P.95 - P.98
患者は46歳,女性.30歳頃より白髪,白内障出現.平成2年,耳鼻科にて左鼻腔内原発悪性黒色腫と診断され,拡大手術施行.その後,右第5趾に黒褐色斑が生じ,平成3年6月頃より同部の爪剥離と紅色結節を認め,当科にて悪性黒色腫と診断.右第4,5指切断術と右鼠径リンパ節郭清を施行した.患者の両親は血族結婚で,同胞には悪性腫瘍患者が多く,鳥様顔貌と細い四肢,糖尿病,高脂血症,アキレス腱の石灰化,皮膚線維芽細胞分裂能低下等を認め,Werner症候群と診断した.本邦では,悪性黒色腫を合併したWerner症候群の報告例は,自験例を含めて17例あるが,2カ所に悪性黒色腫がみられたWerner症候群の報告は自験例が初めてと思われる.
BCG接種部位に生じケロイド様外観を示した平滑筋腫の1例
著者: 吉田法子 , 和泉達也 , 秋山真志 , 杉浦丹
ページ範囲:P.99 - P.101
ケロイド様外観を呈した平滑筋腫の1例を報告した.症例は17歳,女性.左上腕のBCG接種部位に一致して小結節が集簇して出現,次第に融合し,不整形のケロイド様外観を呈する腫瘤を形成した.周囲には衛星状に存在する米粒大の腫瘤を伴っていた.病理組織学的に,腫瘤は平滑筋細胞の著明な増生より成っていた.BCG接種部位に生じた皮膚腫瘍として,各種腫瘍の報告がなされているが,自験例のごとく平滑筋腫の生じた例は他に認められない.また自験例はその外観が典型的な平滑筋腫のそれでなく,ケロイド様を呈していた点においても稀な症例と考えられた.
外陰部Paget癌の剖検例
著者: 市川雅子 , 村木良一 , 大塚藤男 , 中村靖司 , 小形岳三郎 , 野本岩男
ページ範囲:P.103 - P.106
55歳,男.右陰茎基部に腫瘤を形成し,初診時すでに広範な骨・リンパ節転移を認めた外陰部Paget癌の剖検例を報告した.経過中,腰椎の圧迫骨折を起こし下肢対麻痺,膀胱直腸障害が出現.種々の化学療法に反応せず,初診後1年4カ月で呼吸不全のため死亡した.転移は,脊椎骨,肋骨,胸骨,骨盤骨,傍大動脈・肺門リンパ節,肝,肺,副腎に認められた.組織像:原発巣腫瘤部では,真皮全層にわたり異型性の強いPaget細胞が小胞巣を形成し密に増殖していた.紅斑部では,同様のPaget細胞が表皮内から一部真皮内に広がっていた.転移巣は腫瘤部とほぼ同様の所見を得た.表皮内と一部真皮内のPaget細胞はPAS染色陽性(ジアスターゼ抵抗性)だったが,転移巣では陰性であった.CEA染色でも,原発巣では陽性,転移巣では弱陽性から陰性の細胞が増加した.転移巣腫瘍細胞が未分化細胞へと移行する所見と考えられた.
被髪頭部に生じた巨大な表在型基底細胞上皮腫
著者: 森川敦子 , 森岡理恵 , 小川秀興 , 岩原邦夫
ページ範囲:P.107 - P.109
79歳,女.10年前より,頭部に生じ巨大な腫瘍を形成するに至った表在型基底細胞上皮腫の1例を報告した.本症のごとき巨大型は極めて稀であるうえ,発生部位として被髪頭部は稀で,自験例は被髪頭部に生じた表在型基底細胞上皮腫としては本邦6例目であった.
Neurotropic melanomaの1例
著者: 久野由恵 , 南波正 , 高木肇 , 柳原誠 , 森俊二 , 山本明史 , 浦田裕次
ページ範囲:P.111 - P.114
63歳,男性.右足底に鳩卵大の様々な色調をもつ隆起性病変の腫大を主訴として受診した.組織学的に異型性を有し,メラニン顆粒に乏しい主として紡錘形の腫瘍細胞が,柵状配列および一部に神経様構造をとり脂肪層まで浸潤していた.腫瘍細胞の表皮との境界部活性はほとんど認めなかった.免疫組織学的には抗S−100蛋白抗体,抗メラノーマ抗体(HMB−45)にて陽性であった.Neurotropic melanomaと診断し,広範切除,鼠径リンパ節切除およびフェロン—DAV療法を行った.1年間,再発は認められていない.
治療
イオントフォレーシスが有効であったsymmetrical lividities of the soles of the feetの1例
著者: 筒井真人 , 伊藤文彦 , 飯塚一 , 久保等
ページ範囲:P.115 - P.117
19歳,女性のsymmetrical lividities of the soles of the feetの1例を報告した.幼少時から掌蹠に多汗がある.初診の1年前,スーパーのレジ担当として長時間立ち仕事をするようになってから両足底内側縁にかゆみを伴うわずかに隆起する紅斑が出現してきた.塩化アルミニウム溶液,サリチル酸ワセリン軟膏,尿素軟膏,ステロイド軟膏などの外用療法に反応しないため,多汗症に準じて5%ホルマリンを用いたイオントフォレーシスを併用したところ浮腫性紅斑が著明に改善した.
印象記
“第2回Dermatology 2000”印象記
著者: 仲弥
ページ範囲:P.118 - P.120
第2回Dermatology 2000は1993年5月18日から21日までの4日間,オーストリアのウイーンにおいて開催された.Derma—tology 2000は間近に迫った21世紀に向けて,将来を見据えた皮膚科学を築くというテーマのもとに発足された国際皮膚科学会で,その第1回は3年前の1990年にロンドンにおいてロンドン大学のMalcolm M Greaves教授のもとに行われ,成功を収めている.今回はウィーン大学のKlaus Wolff教授をcongress & scientific com—mittee chairman,Georg Stingl教授をvice-chairman,そしてPeter Fritsch教授をorganizingcommittee chairmanとして,最新の基礎研究を積極的に皮膚科の臨床に応用し,さらに治療に結びつけていこうという理念のもとに大会が推進された.学会の出席者は約3,200人で,日本からの出席者は約100人であった.
ウィーンはヨーロッパの心臓部に位置する古都で,クラシックの音楽の伝統に輝く音楽の都であるとともに,ニューヨーク,ジュネーブに次いで「第3の国連都市」としても名を馳せ,世界で最も頻繁に国際会議の開かれる都市の一つでもある.会場となったオーストリア・センターは,そのウイーンの外れ,「美しき青き」ドナウ河畔にゆったりと立ち並ぶ国際原子力機関やOPECなどのモダンなビル群の一角に位置し,街の中心からはU-Bahn(地下鉄)に乗れば15分足らずで到達できた.美しい緑と豊かな空間が,都心からわずかな時間で手に入るウィーンの環境が実に羨ましく感じられた.ちなみにこの国連都市は,オーストリアが国連に提供しているもので,家賃は年にたったの1シリング(10円).「国連の存在は2〜3個師団の安全保障に匹敵するから」だそうで,オーストリア人のスマートな知恵が感じられる.
基本情報
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41巻13号(1987年12月発行)
41巻12号(1987年11月発行)
41巻11号(1987年10月発行)
41巻10号(1987年9月発行)
41巻9号(1987年8月発行)
41巻8号(1987年7月発行)
41巻7号(1987年6月発行)
41巻6号(1987年5月発行)
41巻5号(1987年5月発行)
41巻4号(1987年4月発行)
41巻3号(1987年3月発行)
41巻2号(1987年2月発行)
41巻1号(1987年1月発行)
40巻12号(1986年12月発行)
40巻11号(1986年11月発行)
40巻10号(1986年10月発行)
40巻9号(1986年9月発行)
40巻8号(1986年8月発行)
40巻7号(1986年7月発行)
40巻6号(1986年6月発行)
40巻5号(1986年5月発行)
40巻4号(1986年4月発行)
40巻3号(1986年3月発行)
40巻2号(1986年2月発行)
40巻1号(1986年1月発行)
39巻12号(1985年12月発行)
39巻11号(1985年11月発行)
39巻10号(1985年10月発行)
39巻9号(1985年9月発行)
39巻8号(1985年8月発行)
39巻7号(1985年7月発行)
39巻6号(1985年6月発行)
39巻5号(1985年5月発行)
39巻4号(1985年4月発行)
39巻3号(1985年3月発行)
39巻2号(1985年2月発行)
39巻1号(1985年1月発行)
38巻12号(1984年12月発行)
38巻11号(1984年11月発行)
38巻10号(1984年10月発行)
38巻9号(1984年9月発行)
38巻8号(1984年8月発行)
38巻7号(1984年7月発行)
38巻6号(1984年6月発行)
38巻5号(1984年5月発行)
38巻4号(1984年4月発行)
38巻3号(1984年3月発行)
38巻2号(1984年2月発行)
38巻1号(1984年1月発行)
37巻12号(1983年12月発行)
37巻11号(1983年11月発行)
37巻10号(1983年10月発行)
37巻9号(1983年9月発行)
37巻8号(1983年8月発行)
37巻7号(1983年7月発行)
37巻6号(1983年6月発行)
37巻5号(1983年5月発行)
37巻4号(1983年4月発行)
37巻3号(1983年3月発行)
37巻2号(1983年2月発行)
37巻1号(1983年1月発行)
36巻12号(1982年12月発行)
36巻11号(1982年11月発行)
36巻10号(1982年10月発行)
36巻9号(1982年9月発行)
36巻8号(1982年8月発行)
36巻7号(1982年7月発行)
36巻6号(1982年6月発行)
36巻5号(1982年5月発行)
36巻4号(1982年4月発行)
36巻3号(1982年3月発行)
36巻2号(1982年2月発行)
36巻1号(1982年1月発行)
35巻12号(1981年12月発行)
35巻11号(1981年11月発行)
35巻10号(1981年10月発行)
35巻9号(1981年9月発行)
35巻8号(1981年8月発行)
35巻7号(1981年7月発行)
35巻6号(1981年6月発行)
35巻5号(1981年5月発行)
35巻4号(1981年4月発行)
35巻3号(1981年3月発行)
35巻2号(1981年2月発行)
35巻1号(1981年1月発行)
34巻12号(1980年12月発行)
34巻11号(1980年11月発行)
34巻10号(1980年10月発行)
34巻9号(1980年9月発行)
34巻8号(1980年8月発行)
34巻7号(1980年7月発行)
34巻6号(1980年6月発行)
34巻5号(1980年5月発行)
34巻4号(1980年4月発行)
34巻3号(1980年3月発行)
34巻2号(1980年2月発行)
34巻1号(1980年1月発行)
33巻12号(1979年12月発行)
33巻11号(1979年11月発行)
33巻10号(1979年10月発行)
33巻9号(1979年9月発行)
33巻8号(1979年8月発行)
33巻7号(1979年7月発行)
33巻6号(1979年6月発行)
33巻5号(1979年5月発行)
33巻4号(1979年4月発行)
33巻3号(1979年3月発行)
33巻2号(1979年2月発行)
33巻1号(1979年1月発行)
32巻12号(1978年12月発行)
32巻11号(1978年11月発行)
32巻10号(1978年10月発行)
32巻9号(1978年9月発行)
32巻8号(1978年8月発行)
32巻7号(1978年7月発行)
32巻6号(1978年6月発行)
32巻5号(1978年5月発行)
32巻4号(1978年4月発行)
32巻3号(1978年3月発行)
32巻2号(1978年2月発行)
32巻1号(1978年1月発行)
31巻12号(1977年12月発行)
31巻11号(1977年11月発行)
31巻10号(1977年10月発行)
31巻9号(1977年9月発行)
31巻8号(1977年8月発行)
31巻7号(1977年7月発行)
31巻6号(1977年6月発行)
31巻5号(1977年5月発行)
31巻4号(1977年4月発行)
31巻3号(1977年3月発行)
31巻2号(1977年2月発行)
31巻1号(1977年1月発行)
30巻12号(1976年12月発行)
30巻11号(1976年11月発行)
30巻10号(1976年10月発行)
30巻9号(1976年9月発行)
30巻8号(1976年8月発行)
30巻7号(1976年7月発行)
30巻6号(1976年6月発行)
30巻5号(1976年5月発行)
30巻4号(1976年4月発行)
30巻3号(1976年3月発行)
30巻2号(1976年2月発行)
30巻1号(1976年1月発行)
29巻12号(1975年12月発行)
29巻11号(1975年11月発行)
29巻10号(1975年10月発行)
29巻9号(1975年9月発行)
29巻8号(1975年8月発行)
29巻7号(1975年7月発行)
29巻6号(1975年6月発行)
29巻5号(1975年5月発行)
29巻4号(1975年4月発行)
29巻3号(1975年3月発行)
29巻2号(1975年2月発行)
29巻1号(1975年1月発行)
28巻12号(1974年12月発行)
28巻11号(1974年11月発行)
28巻10号(1974年10月発行)
28巻8号(1974年8月発行)
28巻7号(1974年7月発行)
28巻6号(1974年6月発行)
28巻5号(1974年5月発行)
28巻4号(1974年4月発行)
28巻3号(1974年3月発行)
28巻2号(1974年2月発行)
28巻1号(1974年1月発行)
27巻12号(1973年12月発行)
27巻11号(1973年11月発行)
27巻10号(1973年10月発行)
27巻9号(1973年9月発行)
27巻8号(1973年8月発行)
27巻7号(1973年7月発行)
27巻6号(1973年6月発行)
27巻5号(1973年5月発行)
27巻4号(1973年4月発行)
27巻3号(1973年3月発行)
27巻2号(1973年2月発行)
27巻1号(1973年1月発行)
26巻12号(1972年12月発行)
26巻11号(1972年11月発行)
26巻10号(1972年10月発行)
26巻9号(1972年9月発行)
26巻8号(1972年8月発行)
26巻7号(1972年7月発行)
26巻6号(1972年6月発行)
26巻5号(1972年5月発行)
26巻4号(1972年4月発行)
26巻3号(1972年3月発行)
26巻2号(1972年2月発行)
26巻1号(1972年1月発行)
25巻13号(1971年12月発行)
特集 小児の皮膚疾患
25巻12号(1971年12月発行)
25巻11号(1971年11月発行)
25巻10号(1971年10月発行)
25巻9号(1971年9月発行)
25巻8号(1971年8月発行)
25巻7号(1971年7月発行)
特集 基底膜
25巻6号(1971年6月発行)
25巻5号(1971年5月発行)
25巻4号(1971年4月発行)
25巻3号(1971年3月発行)
25巻2号(1971年2月発行)
25巻1号(1971年1月発行)
24巻12号(1970年12月発行)
24巻11号(1970年11月発行)
24巻10号(1970年10月発行)
24巻9号(1970年9月発行)
24巻8号(1970年8月発行)
24巻7号(1970年7月発行)
24巻6号(1970年6月発行)
24巻5号(1970年5月発行)
24巻4号(1970年4月発行)
24巻3号(1970年3月発行)
24巻2号(1970年2月発行)
24巻1号(1970年1月発行)
23巻12号(1969年12月発行)
23巻11号(1969年11月発行)
23巻10号(1969年10月発行)
23巻9号(1969年9月発行)
23巻8号(1969年8月発行)
23巻7号(1969年7月発行)
23巻6号(1969年6月発行)
23巻5号(1969年5月発行)
23巻4号(1969年4月発行)
23巻3号(1969年3月発行)
23巻2号(1969年2月発行)
23巻1号(1969年1月発行)