icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科48巻12号

1994年11月発行

雑誌目次

カラーアトラス

臍窩を中心に放射状に配列した脂漏性角化症

著者: 大谷稔男 ,   荻野篤彦

ページ範囲:P.1054 - P.1055

患者 83歳,男
 初診 平成4年2月21日
 家族歴 特記すべきことはない.
 既往歴 心不全および糖尿病にて内科に入院中.悪性腫瘍の既往はない.
 現病歴 腹部にいぼ状の扁平な小結節が多発しているのを内科主治医が気づき,皮膚科に往診依頼があった.発症時期は不明である.
 現症 膀窩を中心に放射状に黒褐色の線状皮疹が配列しており,その周辺には黒褐色ないし褐色の扁平皮疹が散在する(図1).

原著

家族性悪性黒色腫

著者: 白石正彦 ,   三橋善比古 ,   橋本功 ,   鎌田義正

ページ範囲:P.1057 - P.1062

 家族性悪性黒色腫の小児姉妹例を報告した.症例1は15歳,女性.約1年前,右背部の皮疹に気づいた.次第に拡大し,結節状に隆起.初診時,結節の径は15mm,広基性,黒褐色,濃淡不整であった.病理組織学的にはnodular melanomaであった.症例2は9歳,女児(症例1の妹).約1年前,右前腕部に皮疹が出現.次第に拡大.皮疹は小豆大で境界明瞭,扁平に隆起する赤褐色斑.組織学的にはsuperficial spread—ing melanomaであった.患者の家族にみられた小色素斑を検索し,この姉妹とその母親にdysplastic nevus(DN)を確認した.DNと悪性黒色腫について若干の文献的考察を加えた.

臨床統計

高齢者のアナフィラクトイド紫斑

著者: 種井良二 ,   橋本明彦 ,   山本達雄

ページ範囲:P.1063 - P.1067

 60歳以上の高齢者に発症したアナフィラクトイド紫斑(a.p.)の臨床的特徴について検討した.確診例は10年間に5例(女性4例)あり,平均年齢は73歳で,Schönlein型とHenoch型のいずれの病型も認められた.高齢者症例の特徴として,女性に多く,腎症状や関節症状を伴うものが多く,腹部症状を伴うものが少ないことや,発疹消失までの期間が長く慢性で再発性の経過をとりやすいなどの傾向がみられた.また,確診例以外に臨床的にa.p.を疑った症例は10例あったが,ほとんどの症例が先行・基礎疾患を合併し,症候性の血管性紫斑なのかa.p.なのか決め難い症例が多かった.

今月の症例

多形滲出性紅斑様皮疹を呈した成人T細胞白血病の1例

著者: 藤田弘 ,   黒川滋子 ,   今泉俊資 ,   奥知三

ページ範囲:P.1069 - P.1071

 55歳,女性.ペルー生まれ日系2世.3年前に日本に移住し,約2年前より四肢・体幹に軽度瘙痒を有する虹彩状を呈する紅斑が出没していた.組織像では基底層の液状変性と真皮の著明な浮腫が認められ,異型リンパ球が表皮・真皮に多数浸潤していた.浸潤リンパ球の表面形質はCD4,CD25陽性細胞が大部分を占め,皮膚組織にてHTLV-l proviral DNAのモノクローナルな組み込みが証明され,成人T細胞白血病の特異疹と診断した.特異疹として多形滲出性紅斑の像を呈した成人T細胞白血病は極めて稀と考えられた.

症例報告

Rowell症候群の1例—多形滲出性紅斑様皮疹を合併した全身性エリテマトーデス

著者: 松原邦彦 ,   金内日出男 ,   今村貞夫

ページ範囲:P.1073 - P.1076

 40歳の女性.約1年前よりRaynaud現象が出現し,半年前より目と口腔内の乾きを自覚した.その後顔面に蝶形紅斑,四肢辺縁部に小水疱を伴い,地図状に融合している環状紅斑を生じた.環状紅斑は,組織学的に多形滲出性紅斑様であった.血液検査で白血球減少,抗核抗体陽性,抗DNA抗体陽性,抗RNP抗体陽性,RF高値が認められた.いわゆるRowell症候群の1例と考え報告する.

IgAの顆粒状沈着を認め,一過性に経過した水疱症の1例

著者: 高淑子 ,   岡田匡 ,   塩見祐子 ,   宮川幸子 ,   白井利彦

ページ範囲:P.1078 - P.1079

 54歳,男性のIgAの顆粒状沈着を認めた一過性水疱症の1例を報告した.腹部症状とともに,両肘頭,両膝蓋部に辺縁に水疱を伴う紅斑が出現したが,ステロイドの外用のみで10日後に消退し,以後再燃は認めない.組織学的に真皮乳頭層にmi—croabscessを認め,螢光抗体直接法では,乳頭層に一致して顆粒状にIgAが沈着していた.

後天性表皮水疱症の1例

著者: 山本洋子 ,   風間隆 ,   山崎登茂美 ,   河井一浩 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.1081 - P.1084

 58歳,女性の後天性表皮水疱症の1例を報告した.4年ほど前より軽度の機械的刺激により四肢に糜爛,水疱を生じるようになった.皮疹は夏期に増悪して全身に拡大し,強い瘙痒を伴う紅斑と水疱を新生し,冬期に軽快するという季節的変動を示した.水疱の治癒後に稗粒腫と瘢痕,色素沈着を残した.爪の変形および口腔粘膜病変は認めなかった.家系内に同症を認めなかった.組織学的に表皮下水疱で,螢光抗体直接法にて表皮基底膜部にIgG,C3の線状沈着を認め,間接法は原液ないし2倍希釈血清で陽性であった.免疫電顕で基底板直下にIgG沈着を認めたことより,後天性表皮水疱症と確診した.

接合部型表皮水疱症の姉妹例

著者: 新見直正 ,   森田栄伸 ,   山田悟 ,   山本昇壯

ページ範囲:P.1085 - P.1089

 接合部型表皮水疱症の姉妹例を報告した.症例は28歳と33歳女性でいずれも7歳頃より軽微な外力によって指趾先端に水疱および血疱が生じるようになった.水疱は再発を繰りかえすが,瘢痕を残さず上皮化した.その後,指紋は消失,指尖部は短縮し,手掌,足底にびまん性の過角化を生じるようになり,爪には変形,萎縮,消失が認められるようになった.また,姉(33歳女性)には軽微な外力にて膝部,下腿,ときに前腕に水疱を生じることがあったが,体幹には姉妹ともに水疱形成を認めたことはない.電顕的にはjunctionolysis, hemidesmosomeの数の減少,attachmentplaqueの縮小が観察された.臨床的・電顕的所見より,本症例は接合部型表皮水疱症の姉妹例と考えられた.

Infantile acropustulosisの1例

著者: 佐藤真樹 ,   角田孝彦

ページ範囲:P.1091 - P.1094

 幼小児にみられる再発性膿疱性疾患であるinfantile acropustulosisの1例を報告した.生後2〜3週目より手足に小膿疱が反復性に出現し,ステロイド外用は無効だった.組織学的には好中球と少数の好酸球を容れた角層下単房性膿疱を認めた.本邦報告例9例について末梢血と膿疱内の好酸球について考察を加えた.掌蹠膿疱症と本症は鑑別できると考えられた.

好酸球性筋膜炎の1例

著者: 筒井真人 ,   川岸尚子 ,   松尾忍 ,   飯塚一

ページ範囲:P.1095 - P.1097

 47歳,男性.初診の半年前,ワープロを連日にわたり使用した後,両前腕皮膚に突っ張り感が出現し,徐々に四肢・側胸部・側腹部・下腹部に皮膚の瀰漫性硬化および色素沈着を認めるようになった.指趾の硬化,筋肉痛,Raynaud症状はない.抗核抗体陽性(160倍),末梢血好酸球数増多(9%)以外には異常検査所見はない.病理組織学的には,著明な筋膜の肥厚と単核球,少数の好酸球の浸潤が認められた.以上の所見から好酸球性筋膜炎と診断した.プレドニゾロン30mg/日内服を開始し,皮膚硬化の軽快,末梢血好酸球数の正常化が認められた.

Pitted keratolysis

著者: 中本千尋 ,   中川浩一 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.1099 - P.1101

 27歳,男性に発症したpitted keratolysis(PK)を報告した.自覚症状を欠く地図状の紅斑を全趾腹に認めた.足に多汗症がみられたほか,特有の悪臭を認めた.病巣皮膚からの一般細菌培養でStaphylococcus epidermidis,Micrococcus属,Coryne—bacterium属が分類された.病理組織学的検査では,角層内にHE染色にてヘマトキシリン陽性の菌体成分を確認した.菌体成分はPAS染色,グラム染色ともに陽性だった.また,菌体内にはメチレンブルー染色にて濃染するBarbes-Ernst小体が観察され,これらの菌をCorynebacterium属と同定した.Cefaclorを750mg/日投与し,同時に局所の清潔乾燥をはかるよう指導したところ,約1週間後に略治した.

Microsporum canisによる老人のケルスス禿瘡

著者: 矢口厚 ,   田沼弘之 ,   太田幸則 ,   西山茂夫 ,   阿部美知子 ,   高木千鶴

ページ範囲:P.1103 - P.1105

 75歳,女.頭頂部に瘙痒感を伴う爪甲大の脱毛局面に気づき近医を受診.抗生剤含有ステロイド軟膏を外用するが効果なく,脱毛局面は徐々に拡大し易抜毛性も認められるようになったため当科を受診.頂点に膿疱を有する半米粒大,淡紅色丘疹が散在する脱毛局面が認められ,同部位の皮膚生検および鱗屑よりの真菌培養を施行した.組織所見では毛包中心性の稠密な細胞浸潤と毛包破壊像が認められ,また真菌培養ではMicrosporum canisが証明され同菌によるケルスス禿瘡と診断.治療はグリセオフルビン1日500mg内服およびポビドンヨード(イソジン液)での消毒を行い,9週目には略治した.

フマル酸ケトチフェン点眼薬による接触皮膚炎の2例

著者: 丸山道代 ,   佐藤伸一 ,   戸田淨

ページ範囲:P.1107 - P.1110

 アレルギー性結膜炎にザジテン®点眼薬を使用した2症例を報告した.症例1は約1カ月後に,症例2は約3カ月後に両眼瞼周囲の瘙痒と浮腫性紅斑が強い接触皮膚炎が出現した.成分別パッチテストの結果,症例1,症例2ともに主剤のフマル酸ケトチフェンによるアレルギー性接触皮膚炎と診断した.

完全房室ブロックを伴った高齢者のサルコイドーシスの1例—心内膜心筋生検陽性例

著者: 小池且弥 ,   橋本喜夫 ,   松尾忍 ,   久保等 ,   飯塚一

ページ範囲:P.1111 - P.1114

 完全房室ブロックを伴った高齢者のサルコイドーシスを報告した.患者は75歳,女性.約1年前から前額部に紫紅色の環状皮疹が出現し,生検の結果サルコイドーシスが疑われた.心電図で完全房室ブロックを認め,心内膜心筋生検の結果,巨細胞を伴う肉芽腫が証明され心サルコイドーシスと診断した.サルコイドーシスにおいて心病変の検索の重要性を述べ,自験例のような高齢者のサルコイドーシスについて若干の考察を加えた.

Bazex症候群の1例

著者: 小林容子

ページ範囲:P.1115 - P.1118

 68歳,女性.1990年初めに瘙痒を伴う皮疹に気づいた.同年10月肝細胞癌に対し肝右葉切除術および上行結腸癌に対し内視鏡的ポリープ切除術を施行.この時点で手掌,足底に紅斑角化局面と手背,趾背,耳介,頬部に乾癬様の局面さらに爪甲変化を認めた.術後も皮疹の顕著な軽快はなく,ステロイド外用などの治療にも抵抗した.現在肝癌再発部に肝動脈塞栓術を施行中であるが,皮疹は徐々に近位側に拡大傾向にある.国内外のBazex症候群の報告例を比較すると,国内ではBazexらの提唱した上部消化管あるいは呼吸器原発以外の腫瘍合併例が多くなっている.これらの結果より本症候群の合併腫瘍は,提唱された腫瘍部位以上に拡大解釈してよいものと考えている.

神経線維腫症Ⅵ型と思われる1家系例

著者: 中野創 ,   野村和夫 ,   橋本功

ページ範囲:P.1119 - P.1121

 Riccardiの分類による神経線維腫症(neurofibromatosis,以下NF)Ⅵ型,すなわち色素斑のみで神経線維腫を欠く病型と思われる1家系例を経験したので報告した.発端者は4カ月,男児.出生時より躯幹,四肢に粟粒大から鶉卵大までの褐色色素斑がみられ,青色色素斑も一部混在.母および母方祖母にも同様の色素斑が多数みられるが,神経線維腫は全くみられない.母および母方祖母の臨床経過も含めて自験例はNF Ⅵ型と考えられた.NF Ⅵ型の家系例の報告は,これまで3例のみであり稀である.NF Ⅵ型では中枢神経系の合併症が報告されており,今後の経過観察が重要と考えられた.

帯状疱疹様の分布を示した肺扁平上皮癌皮膚転移の1例

著者: 服部尚子 ,   松川中 ,   中島啓喜 ,   北村成大 ,   北原比呂人

ページ範囲:P.1123 - P.1125

 68歳,男.1992年7月右上葉の肺扁平上皮癌(T 3 N 3 M 0 stage III b)と診断され治療中であったが,12月中旬,右上肢から胸部に疼痛を伴う皮疹が出現し,内科にて帯状疱疹として治療を受けたが改善がみられず,1月当科初診.初診時,右前胸部から右上肢にかけて,ほぼT2—T4領域に一致して自発痛を伴う皮疹が認められ,生検組織および剖検所見より肺癌の皮膚転移と診断した.帯状疱疹様の分布を示した内臓癌の皮膚転移について過去の報告をまとめ,その転移様式について考察した.なお,帯状疱疹様の分布を示した悪性腫瘍の皮膚転移の報告は本邦2例目である.

多彩な病理組織像を呈した熱傷瘢痕癌の1例

著者: 畑康樹 ,   秋山真志 ,   山田晴義 ,   仲弥 ,   原田敬之

ページ範囲:P.1127 - P.1131

 熱傷受傷後37年を経て熱傷瘢痕癌が生じた46歳の女性例を報告した.病理組織学的に比較的高分化な有棘細胞癌の像を呈する部分,著明な血管増生を呈する部分,未分化な紡錘型の腫瘍細胞が膠原線維間に増殖し,紡錘状有棘細胞癌を思わせるところ,さらに細胞間結合が粗になり,あたかも肉腫様の組織像を呈するところなど,様々な像が認められた.腫瘍と表皮との間に連続性が見られたこと,未分化な部分でも一部の腫瘍細胞がケラチン陽性であること,電顕にて未分化な腫瘍細胞にも少量ながらトノフィラメント,デスモゾーム等の形成を認めたことより扁平上皮癌と診断した.また本腫瘍細胞は免疫組織学的に,ケラチンとともにビメンチン陽性を示した.ケラチンとビメンチンの共存については皮膚由来の扁平上皮癌での報告はまだ少ないが,未分化で,3次元的組織構築の失われた癌に多い傾向が認められた.

Myiasisを合併した偽腺性有棘細胞癌の1例

著者: 稲積豊子 ,   杉俊之

ページ範囲:P.1133 - P.1135

 93歳,女性.右頬部の腫瘍にコガネキンバエによるmyiasis(蠅症)を生じた.腫瘍は組織学的には偽腺性有棘細胞癌であった.治療は,高齢のため手術は行わず,電子線照射を施行した.なお,コガネキンバエは通常動物の死体に寄生するが,本例のような人体寄生例は本邦初と思われた.

連載

Clinical Exercises・20—出題と解答

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.1084 - P.1084

Practical English for Busy Physicians・12

著者:

ページ範囲:P.1141 - P.1141

“In this study we analyzed the peripheral and tumors from seven patients with Disease X with DNA markers for different regions of chromosome Z and amplified the Y and Q gene and subjected the PCR product to single strand conformation polymorphism analysis.”
 さて,この長い文章を読むだけで疲れてしまいましたね.まずはじめに,この分野のエキスパートではない者(私?)にはDiseas X自身がDNA markersをもっているのか,それともDNA markersを研究道具として使用したのかが問題になってきます.そこで私は道具であったとし,withをusingに変更しました.そうすることでみんなにもっと判りやすくなったと思います.そしてもう少しはっきりさせるために幾つかのことをやりました.thenをandとamplifiedの間に入れ,その結果読者には最初にステップAを,続いてステップB,Cへと移行したことがはっきりと判ります.また,この論文の終わりの部分で“none of thepatients had a family history”とありましたが,これでは橋の下で見つけられた子供には代々の先祖の歴史がないとほのめかしていることになります.確かにこの論文は今までにない新しい診断について書いてありましたが,それでも“none of the patients had a positive family history”のほうが英語圏の者には判りやすくなります.しかしもっと単純に“none of thepatients had a family history of Disease X”としたほうが良いと私は感じました.

治療

伝染性軟属腫摘除時の疼痛緩和の試み

著者: 吉住順子 ,   石崎純子 ,   平本和代 ,   原田敬之 ,   渡辺一則

ページ範囲:P.1137 - P.1140

 正常皮膚の角層から吸収される局所麻酔薬としてプロピトカインおよびリドカインを2.5%ずつ含有するPLクリームを院内で調製した.伝染性軟属腫摘除術12例の前処置として,PLクリームを平均60分間occlusive dressing techniqueにて外用した.12例中11例(92%)で摘除時の痛みが全くないか軽度であった.重篤な副作用は認められなかった.

印象記

オーストラレーシア皮膚科学会に参加して

著者: 西川武二

ページ範囲:P.1142 - P.1144

 第19回世界皮膚科学会(WCD)のホストとなるオーストラリアは,1997年の学会を成功に導くために,各方面へ目下強い働きかけを行っている.昨秋はDermatol—ogy Summit 1993と題して国際シンポジウムが行われ,その折に日本皮膚科学会の石橋理事長,大河原,新村両理事が,1995年11月3〜5日のオーストラリア・ケアンズでの第1回日豪皮膚科合同会議の打ち合わせのためにシドニーを訪れている.本年3月13〜18日にかけて,アデレイド市にて第12回国際医真菌学会が行われた折にも日本から多くの医真菌を専門領域とする皮膚科の先生方が学会へ参加し,日本からオーストラリアへ旅の容易さを認識している.また本年4月にはブリスベン市でメラノーマの国際シンポジウムが行われ,信州大学の斎田教授が参加したと聞いている.
 私はICD(International Com—mittee of Dermatology)およびIFD(Internatienal Foundationof Dermatology)の委員会のため本年5月12日から15日までシドニー市を訪れ,次いで,第28回オーストラレーシア皮膚科学会に参加する機会を得たので,世界皮膚科学会の場となるシドニー市ならびにオーストラレーシア学会について簡単に紹介させていただくことにする.

これすぽんでんす

白石・他著「肝斑患者に対するルビーレーザーによる治療とその限界」を読んで

著者: 滝脇弘嗣

ページ範囲:P.1146 - P.1146

 たまに再来する肝斑患者に経過を尋ねると,たいてい“少し薄くなったような気がする”と返答されます.カルテには経過良好,淡くなった,とかの記載が続いており,これが本当ならもう治っていてもいいんだが,と苦笑しながらいつもの処方箋を渡し,客観的な治療効果判定の必要性を感じておりました.
 白石正彦,他著「肝斑患者に対するルビーレーザーによる治療とその限界」(臨皮48:831,1994)では肝斑のルビーレーザー治療群と保存的治療群での効果の相違,経過が一目瞭然で,治療の優劣・欠点を論じるのに十分な説得力があり,あらためて機器による皮疹状態の定量化の有用性を痛感しました.ただ定量に使用された機器のメラニン指数について若干誤解があるのでないかと感じましたので投稿致しました.

滝脇弘嗣先生の御意見に応えて

著者: 白石正彦 ,   花田勝美

ページ範囲:P.1147 - P.1147

 拙著「肝斑患者に対するルビーレーザーによる治療とその限界—メラニン指数の推移による保存的治療との比較—」(臨皮48:831, 1994)に対する貴重な御意見を賜りありがとうございました.以下,御質問に対する若干の見解を述べさせていただきたいと思います.
 今回,色素沈着の定量化に用いたDerma-Spectrometer®の原理は,皮膚の色を決定している主な色素の一つであるヘモグロビンとメラニンの吸光特性を利用したものです.著者が論文内で用いたメラニン指数は,メラニンには吸収されるが,酸化ヘモグロビンにはほとんど吸収されない赤色光(655nm)を皮膚に放射した際のその反射率の逆数の対数値で示されます.したがって本装置は単色光を用いた反射分光光度計であり,Kollias N & Baqer AHの報告した広波長領域のそれとは厳密には異なります.還元ヘモグロビンは,酸化ヘモグロビンと異なり,赤色光の吸収が無視できませんから,うっ血を起こすような姿勢や機器の当て方では,このメラニン指数は影響を受けることになります.したがって,その色調の程度を個体間,あるいは同一個体内の他の部位との間で比較検討する場合は,臥位などの基準化した姿勢での測定法の統一,ないしは隣接正常部との差をとることも必要になると思います.しかしながら,著者が論文内で定義した相対メラニン指数は,治療に伴う皮膚病変部の色調の変化の推移を客観化することを目的に設定したものであります.つまり,同一人の同一部位での比較を行ったものです.したがって,治療前後の病変部の指数の比をとることでその目的を十分達し得るものと考えます.特に本装置は,臨床の場で使用されやすいように小型軽量化されており,かつ,前述の条件のもとではメラニンの動態をよく反映することが知られ,米国を中心にレーザー外来,紫外線の研究に頻用されております.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?