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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科48巻2号

1994年02月発行

雑誌目次

カラーアトラス

単発性肥満細胞症

著者: 高橋千恵 ,   堀口裕治 ,   松本正朗

ページ範囲:P.134 - P.135

患者 7カ月,男児
 初診 平成3年11月7日
 家族歴・既往歴 特記することなし.
 現病歴 生後1カ月頃背部の色素斑に気づかれた.入浴により同部に発赤をきたす.
 現症 上背部に18×36mmの褐色で中央部顆粒状〜夏みかんの皮様の,浸潤を触れる局面が存在する(図1).Darier徴候(+).

原著

Darier病—E—カドヘリンの免疫組織学的検討

著者: 神部隆之 ,   窪田泰夫 ,   碇優子 ,   溝口昌子

ページ範囲:P.137 - P.140

 16歳,女性.茶褐色調角化性丘疹が頸部,腋窩,鼠径部および乳房下に多発し,腹部には小灰白色斑,手掌足底には小陥凹と角質増殖,さらに爪部には爪甲下肥厚と爪甲縦割線,口腔粘膜には小結節などを認め,多彩な皮膚所見を呈したDarier病の1例を経験した.病理組織像では,角質増殖と表皮に棘融解による裂隙形成および円形体,顆粒体の出現を認めた.さらに今回我々は,免疫組織学的染色により,細胞接着分子の一つであるE—カドヘリンの本症における表皮有棘細胞間での染色性について検討したので,若干の文献的考察を加え報告した.

Eosinophilic cellulitis(Wells)

著者: 佐藤英嗣 ,   東清吾 ,   山口潤 ,   高木章好 ,   熊切正信

ページ範囲:P.141 - P.145

 37歳,女性の四肢に生じたeosinophilic cellulitis(Wells)の1例を報告した.四肢に痛みを伴った浸潤を触れる浮腫性紅斑が出現し,表面に水疱ないしは膿疱の形成がみられた.再発を繰り返し,その治療には副腎皮質ホルモン剤が有効であった.検査の上では好酸球増多があったが,他の異常はなかった.病理組織学的には好酸球の稠密な浸潤とflame figureの像が認められた.自験例では誘因は不明であった.

連載

Clinical Exercises・11—出題と解答

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.145 - P.145

今月の症例

Incontinentia pigmenti achromiansの1例

著者: 大島昭博 ,   八木宏明 ,   戸倉新樹 ,   滝川雅浩

ページ範囲:P.147 - P.150

 多種の先天奇形を伴い,モザイク型の染色体異常を示した1歳女児のin—continentia pigmenti achromiansを報告した.出生時より種々の外表奇形,眼奇形,骨欠損,鎖肛があり,生後4か月頃より全身に線状,渦巻状の脱色素斑が出現した.末梢血リンパ球の染色体分析にて46,XX, del(13)(q14)/47,XX,+del(13)(q11 orq14)=31/19とモザイク型の染色体異常を示した.既報告例における染色体異常について文献的考察を行った結果,本症と染色体のモザイク状態との関連が示唆された.

症例報告

皮膚筋炎および混合性結合組織病の家系内発生例

著者: 池亨仁 ,   五十嵐敦之 ,   竹原和彦

ページ範囲:P.151 - P.154

 母に皮膚筋炎,長男に混合性結合組織病(MCTD)が発症した1家系を経験した.症例1:57歳,女性.顔面に紅斑を認め,筋力低下を訴えた.血清CPK,アルドラーゼ上昇.筋電図,筋生検にて筋炎の所見を認め,皮膚筋炎と診断した.プレドニゾロン内服にて臨床症状,検査所見とも改善.経過観察中急死し,死因は心筋梗塞が疑われた.症例2:30歳,男性.症例1の長男.両手指に腫脹および硬化を認める.抗核抗体speckled 5120倍陽性,抗RNP抗体128倍陽性の所見を示し,臨床症状および検査所見よりMCTDと診断した.プレドニゾロンの内服にて軽快.膠原病の家族内発生について若干の考察を加え報告した.

DDSが奏効した皮膚筋炎の1例

著者: 川島淳子 ,   木花光

ページ範囲:P.155 - P.157

 発症初期の皮膚筋炎の症例に対しDDSが著効を示したので報告した.症例は51歳男性で,感冒様症状に始まり,日光暴露を機に急速に発疹が出現した.初診時,顔面に発赤腫脹,前胸部,手背MP関節部に紅斑,背部に掻爬に一致した線状紅斑を認めた.やや遅れて筋症状も出現した.最近,DDSが皮膚筋炎の皮膚症状に有効との報告がなされたが,自験例では皮疹のみならず筋症状,検査成績とも速やかに軽決した.本症に対するDDSの作用機序は不明であるが,症状改善後も再発を認めないことから,本症における免疫異常が炎症の持続に関与する機構をDDSがブロックする可能性も考えられ,DDSは皮膚筋炎に対し使用する価値があると思われる.

抗SS-B再発性紅斑の1例

著者: 川上民裕 ,   斉藤隆三

ページ範囲:P.159 - P.162

 24歳,女性.初診の約2カ月前,頬部,背部に自覚症状のない皮疹が出現.個疹は示指頭大の浸潤を伴う浮腫性紅斑で始まり,次第に遠心性に拡大し,環状ないし馬蹄形となり,全経過約4カ月で色素沈着を残し消退した.また初診後にも同様の皮疹が出現したが,ステロイド外用にて半月後には消退した.組織学的には真皮全層の血管および毛嚢・汗腺周囲のリンパ球浸潤がみられる.眼・口腔の乾燥症状はない.抗核抗体1280倍,抗SS-A抗体16倍,抗SS-B抗体32倍.シルマー試験,耳下腺造影,口唇生検で異常はない.以上の所見より抗SS-B再発性紅斑と診断した.自験例を含む本邦報告13例を集計し,統計的考察を加えるとともに本症の概念,鑑別診断についても言及した.

Waardenburg症候群の2例

著者: 宮本秀明 ,   堀内義仁

ページ範囲:P.163 - P.165

 Waardenburg症候群の2例を報告した.症例1:10歳,男.出生時から左眼の虹彩異色症(青色)と,前頭部に白髪があった.聴力はやや低下しているが,聾学校ではなく,普通の小学校の通学.両親とも聾で,父は右眼の虹彩異色症(青色)がある.鼻側部眉毛過形成があり,内眼角と涙点の側方転位を伴った.症例2:4歳,女.聾学校生徒.補聴器使用.出生時から両側の虹彩異色症(青色)あり.内眼角と涙点の側方転位を伴ったが,白斑も前頭部の白髪もなかった.眼底検査で白子様眼底を呈した.視力は,右0.6,左0.7であった.両親とも聴力は正常で,虹彩異色症もなかった.

Werner症候群の1例

著者: 中野俊二 ,   加藤恵子 ,   津田眞五 ,   笹井陽一郎

ページ範囲:P.167 - P.170

 Werner症候群の典型例を報告した.59歳,男性.家族歴に血族結婚はなく同症もない.患者は出生後より著患なく成長したが低身長であった.30歳頃より嗄声に始まる体の異常に気づき,その後,年余にわたり若年性白内障,禿髪,足関節痛,足部皮膚の硬化,体重減少が出現し進行性に増悪した.48歳時,足底の腓胝腫のため当科を受診.経過観察中に四肢に多発した難治性の皮膚潰瘍に外用療法,観血的治療を行った.

Periumbilical perforating pseudoxanthoma elasticumの1例

著者: 根本治 ,   森川玲子

ページ範囲:P.171 - P.173

 67歳,女性.臍周囲に数年来ある色素沈着を伴った局面の中心部から角質様物質が排出した.同部より生検し,組織学的にperforationを伴うpseudoxanthomaelasticumの像を呈した.

陰茎に発生したverruciform xanthomaの1例

著者: 小菅綾子 ,   植木裕美子 ,   村田哲 ,   北島康雄 ,   矢尾板英夫

ページ範囲:P.175 - P.178

 67歳,男性の陰茎亀頭部冠状溝全周に索状に発生したverruciform xanthoma(以下VX)の1例を報告した.自験例は臨床的には黄色〜淡紅色の表面微細顆粒状の柔らかい腫瘤であり,組織学的には,乳頭腫症,表皮肥厚と表皮突起の延長,真皮の乳頭層から網状層にかけての泡沫細胞の浸潤を示した.VXが陰茎に単独発生した例は本邦では2例目であるが,外国でも3例の報告があるのみである.現在までの報告例とあわせ,若干の文献的考察を加えた.

限界線療法により生じたactinic keratosis様病変の2例

著者: 西本一栄 ,   西本正賢 ,   沼原利彦 ,   中嶋邦之 ,   磯部智子 ,   高岩堯

ページ範囲:P.179 - P.182

 症例1は71歳,男.両足底の掌蹠膿疱症のため1976年より8年間,限界線を主体とする放射線療法を受ける.症例2は47歳,女.両手掌の手白癬として1973年より5年間,夏の3カ月間のみ限界線照射を受ける.2例とも組織所見では表皮はactinic keratosis(AK)様病変を示し,bowenoid typeが主体をなすと考えた.諸外国では,慢性放射線皮膚炎の悪性変化は,AKの類似病変と考えられている.本邦報告例の,慢性放射線皮膚炎上に生じたBowen病とされる症例でもAK様病変を併発していることが多い.慢性放射線皮膚炎上に生じたとされるBowen病の中には,bowenoid typeのAK様病変もあると考えた.

Eccrine duct miliaに続発した陰嚢石灰沈着症の1例

著者: 安齋眞一 ,   伊藤義彦

ページ範囲:P.183 - P.186

 45歳,男性の多発性陰嚢石灰沈着症を報告した.組織学的には皮膚嚢腫とその内容物に種々の程度に石灰沈着がみられた.あるものでは石灰沈着像のみで上皮性被膜が欠如していた.本症例でみられた嚢腫は真皮内汗管と接続し,内腔面に癌胎児性抗原が陽性であることからeccrine duct miliaであると考えられた.

巨大なclear cell hidradenomaの1例

著者: 安達ゆかり ,   伊庭仁樹

ページ範囲:P.187 - P.189

 35歳,男性の右肩に約6カ月の間で急速に直径約10cmに及ぶ大きさに増大したclear cell hidradenomaの1例を報告した.摘出標本は,充実性胞巣に大小多数の嚢腫が集簇していた.組織学的に腫瘍細胞は,主としてepidermoid cellとclear cellから構成され,また腫瘍組織内には管腔様構造や嚢腫様構造を多数含んでいる.本腫瘍は通常2cm大までのものが多く,これほど大きなものは稀と思われる.

棘融解を示したclear cell hidradenoma

著者: 森田昌士 ,   徳橋至 ,   上野和子 ,   鰺坂義之 ,   千葉紀子 ,   品川俊人

ページ範囲:P.191 - P.193

 29歳,女性の右側腹部に直径15mm大の暗赤色調の腫瘤を認めた.この腫瘤は大小の嚢腫構造を示す皮下腫瘍でclear cellとepidermoid cellの2種類の細胞からなり,病理組織学的にclear cell hidradenomaと診断した.自験例では腫瘍充実性胞巣内の数カ所にわたり棘融解の部分が存在し,大きな嚢腫形成の機序を考える上で興味ある所見と思われた.

Solitary dermal cylindromaと考えられた頭部腫瘍

著者: 原田洋至 ,   二瓶義道 ,   鈴木正夫 ,   金子史男

ページ範囲:P.195 - P.198

 70歳,女性.初診の約20年前より頭部に腫瘍が出現し徐々に増大した.真皮内において好塩基性細胞が大小不同の腫瘍胞巣を形成し,管腔構造を認めた.部分的に薄い硝子様膜が胞巣周囲を囲み,組織学的にdermal cylindromaと診断した.電顕的・酵素組織化学的検討を行ったが,腫瘍細胞の分化方向についてはエックリン腺,アポクリン腺のいずれとも決定し得なかった.本腫瘍の分化については,エックリン説,アポクリン説の両者がみられるなど一定せず,多様性のある可能性が考えられた.

耳介に生じたangioleiomyomaの1例

著者: 堀之薗弘 ,   観野正 ,   長村洋三

ページ範囲:P.199 - P.201

 25歳,男性の右耳介に生じたangioleiomyoma(静脈型)の1例を報告した.過去23年間の本症の本邦皮膚科領域報告は168例で,そのうち耳介に生じたものは22例(13.1%)であった.

卵巣悪性腫瘍(中胚葉性混合腫瘍)臍転移の1例

著者: 杉山悦朗 ,   大草康弘 ,   田中信 ,   清水篤 ,   村上隆一

ページ範囲:P.203 - P.206

 57歳,女性の卵巣悪性腫瘍(中胚葉性混合腫瘍)膀転移の1例を報告した.臍部腫瘤を主訴として来院し,組織学的に転移性乳頭状腺癌が認められた.精査の結果卵巣悪性腫瘍が見いだされ,化学療法施行後腫瘍切除術を行った.原発は卵巣の中胚葉性混合腫瘍であり,転移は癌腫部分のみに認められた.臍転移巣は腹腔内に連続せず,リンパ行性あるいは血行性転移と考えられた.

皮下腫瘤として出現したメルケル細胞癌

著者: 大草康弘 ,   杉山悦朗 ,   田中信

ページ範囲:P.207 - P.209

 87歳,女性の頬部に皮下腫瘤として出現したメルケル細胞癌の1例を報告した.右頬部に2.2cm×2.2cmの弾性硬の皮下腫瘤がみられ,腫瘤は被覆皮膚と癒着し,下床とは可動性であった.病理組織学的には真皮下層から皮下組織に大小の胞巣を形成し,敷石状に稠密に浸潤,増殖する腫瘤細胞を認めた.免疫組織化学的検索で腫瘤細胞はneuron-specific enolase陽性,サイトケラチン陽性であり,電顕的には腫瘍細胞の細胞質に直径が100〜150nmの有芯顆粒とmicrofibrilが認められた.メルケル細胞癌が極めて稀に皮下腫瘤として出現すること,本症の診断には電顕的に有芯顆粒を検索することが重要であり,高齢者の顔面に出現した皮下腫瘤では,早期発見のために本症も念頭におき積極的に手術し,病理組織学的検索を行うべきであることを述べた.

左上肢運動神経麻痺を合併した帯状疱疹の1例

著者: 中村明美 ,   河津研子 ,   石田晋之介 ,   山崎雙次

ページ範囲:P.211 - P.215

 69歳,男性.左上肢運動神経麻痺を併発した帯状疱疹の1例を報告した.左肩から左上肢にかけて疼痛を伴う紅斑性小水疱多発,3日後より左上肢挙上不可能となる.水痘・帯状疱疹ウイルス抗体価(CF)32倍.筋電図にてneurogenic pattern.治療はprednisolone 50mg/日より漸減,リハビリテーション療法を併せて施行し,早期に日常生活に支障を残さず回復した.若干の文献的考察を加えて報告した.

Aspergillus terreusによる爪真菌症

著者: 中川俊文 ,   高岩堯

ページ範囲:P.217 - P.219

 34歳,女性のAspergillus terreusによる左第1趾の爪真菌症を報告した.患者には以前より蛋白漏出性胃腸症があり,それによる低アルブミン血症と細胞性免疫の低下が認められた.爪真菌症の発生におけるこれらの因子の関与について考察した.

治療

アトピー性皮膚炎患者に対する抗アレルギー剤内服治療と血清interleukin−4値の変化

著者: 笠松正憲 ,   辻卓夫

ページ範囲:P.221 - P.224

 アトピー性皮膚炎(AD)患者に対する抗アレルギー剤内服治療で,皮疹の軽快をみた.ADとサイトカインの関係を知るため,抗アレルギー剤フマル酸ケトチフェンを内服薬として用い,血清中interleukin−4(IL−4)値とsoluble CD 23(sCD 23)を測定した.血清IL−4値は,抗アレルギー剤投与開始時1.620±1.352pg/ml(0.33〜7.87pg/ml),投与終了時1.256±1.037pg/ml(0.17〜4.70pg/ml)で,有意な差(p<0.01)が認められた.一方,sCD 23値は,投与開始時277.7±97.0pg/ml(129〜559pg/ml),投与終了時287.0±87.6pg/ml(119〜523pg/ml)で,抗アレルギー剤内服治療による変化は認められなかった.また,試験開始時AD患者sCD 23値を健常人値(242.6±103.9pg/ml)と比較すると,若干高値であったが有意な差はなかった.

印象記

The Third Congress of the Euronean Academy of Dermatology and Venereology(EADV)に参加して

著者: 日野治子

ページ範囲:P.226 - P.228

 私が,夏休みと称して1週間の休暇を貰い,出かけたのは,DenmarkのCopenhagenで開催されたEADV(European Academyof Dermatology and Venereology)で,このEADVは,1987年10月3日,non-profit associationとしてLuxembourgで設立された.その目的は,“the purpose ofproviding Continuing Medical Education in the fields of dermatology and venereology and helping to maintain high professional standards within our two specialities,related professions and health services where these are related to dermatology andvenereology”とされている.
 第1回目は1989年Florence,第2回目は1991年Athens,今回が3回目である.American Academy of Dermatologyのヨーロッパ版ともいうもので,期間は1993年9月27日から9月30日まで,すでに開催期間の終わったTivoli,Cirkus,近くの映画館など計8カ所を会場として行われた.主催者側の発表では,約3500人が登録したそうだが,5000人を見積もっていたので少し当てが外れたとの声も聞いた.日本からは,久木田淳教授,肥田野信教授,西山茂夫教授,西川武二教授,佐々木雅英先生,紫芝敬子先生,早川律子先生,滝脇弘嗣先生,中川秀巳先生,土田哲也先生,江藤隆史先生など,さらにDenmark在住の小林隆先生も参加しておられた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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