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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科48巻6号

1994年05月発行

雑誌目次

カラーアトラス

無菌性小膿疱を播種状に認めた川崎病

著者: 酉抜和喜夫 ,   新井宣博 ,   貴田岡節子

ページ範囲:P.446 - P.447

 患者 6歳7カ月,男児
 皮膚科初診 1990年11月21日
 既往歴 3歳と5歳時に急性上気道炎
 現病歴 1990年11月14日急に39℃台の発熱,翌15日全身に瘙痒性紅斑が出現した.16日当院小児科を受診し,溶連菌感染症の疑いで抗生剤治療を受けたが下熱せず,紅斑の拡大,咳嗽,嘔吐が出現し,18日小児科に入院.入院時診察で全身紅斑,眼球結膜充血,口唇紅潮,苺状舌(図1),頸部リンパ節腫脹,手足の紅斑性硬性浮腫(図2)などから川崎病と診断された.19日体幹の紅斑上に小膿庖が出現,翌20日全身へ拡大し,21日皮膚科に紹介された.

原著

Nodular scleroderma

著者: 山下浩子 ,   吉川伸子 ,   上村知子 ,   川島眞 ,   柏崎禎夫

ページ範囲:P.449 - P.456

 全身性強皮症(PSSと略す)に伴うnodular scleroderma(NSと略す)の2例を報告し,詳細な記載のある既報告12例と合わせて検討した.その特徴は①主に胸腹部に1〜3cmの褐色調の楕円形結節が多発する,②PSS発症1〜2年後に出現し,数カ月で増数する,③病理組織学的には膠原線維の増生である,④症例の一部にケロイドの素因がある,などである.特に,その特徴的な臨床像に着目すれば,独立疾患としてとらえてよいと思われる.NSの発症機序は不明であるが,PSSとの関連性において,PSSの自己免疫疾患としての免疫学的異常状態が誘因となる,あるいはPSS+ケロイド素因の個体に発症しやすい特異な線維性増殖症と考えたい.

Prostaglandin E1軟膏が難治性皮膚潰瘍の局所血流量に及ぼす効果

著者: 森崎清一郎 ,   岡本英理子 ,   喜多野征夫

ページ範囲:P.457 - P.460

 Prostaglandin E1軟膏の外用が難治性皮膚潰瘍部内の局所血流量に及ぼす影響について検討した.血流量の測定はレーザードップラー血流計を用い,褥瘡を有する4症例の7病巣を対象とした.また,潰瘍周囲の皮膚血流量に対する影響についても同様に検討した.この結果.潰瘍部内の血流量は本剤の塗布により7病巣中の6病巣に増加が認められた。ただし,1病巣は塗布後測定値がまったく安定せず測定不能であった.6病巣の平均測定値は塗布前が11.0±4.89ml/min/100gであったのに対し,塗布後14.6±6.80ml/min/100gと,有意に増加した.潰瘍周囲の皮膚血流量は7病巣中の3病巣に増加が認められ,3病巣で不変,1病巣では軽度の減少が認められた.7病巣の平均測定値は塗布前が8.9±2.84ml/min/100gであったのに対し,塗布後11.9±6.54ml/min/100gとなったが,有意な増加ではなかった.以上,本剤の治療効果の一因子として潰瘍部内の血流増加作用の関与が示された.

連載

Clinical Exercises・14—出題と解答

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.456 - P.456

Practical English for Busy Physicians・9

著者:

ページ範囲:P.539 - P.541

私のお勧めする2冊の本および読者の添削例
 出版用の記事の原稿を書くということは,時としてなかなか興味深い精神訓練を必要とすることがあります.私は今(2月中旬)アメリカで,まだ雪の残る長野県を皮切とする講義と温泉の旅の準備で荷づくりをしています.However(何度も申し上げた通りbutを使用しないで下さい)この記事を皆さんがお読みになるのは5月の連休頃であり,おそらく英語の文法の勉強よりも旅行のことで頭の中はいっぱいのことでしょう.そして私はいつも旅行に出かける時は何か読む物を必ず持って行きますので,皆さんの旅行のために取って置きの本を御紹介しましょう.今回3冊の本を御紹介したかったのですが,スペースの都合で2冊について紹介し,3冊目は次回の記事の中でお知らせします.
 最初の1冊は“Manual of Style”,English EditionでAmerican Medical Associationから出版されており印刷はWilliams and Wilkinsです.初版は1962年で,これはAMA Journalへの投稿者のために書かれた本です.この本は読みやすい本ではなく,就寝前に読む本としては最適で,2〜3ページも読めばすぐに眠りにつけると思います.しかし,この本は重要かつ役に立つ情報がぎっしりと入っています.

今月の症例

上気道感染に伴って生じた集簇性膿疱性血管炎の2例

著者: 亀井恵理 ,   相場節也 ,   田上八朗 ,   田畑伸子 ,   小川洋一

ページ範囲:P.461 - P.464

 膿疱性血管炎を生じた73歳と16歳の男性例を経験した.両症例とも上気道感染後5〜7日目に,表面に膿疱が集簇した浸潤性紅斑が発熱とともに出現し,同時に口腔内アフタを認めた.膿疱内容は無菌性で,膿疱を伴う浸潤性紅斑の病理組織は,角層内膿疱と,真皮から皮下脂肪織にかけて好中球とその核残渣から成るleukocyto—clastic vasculitisの像を呈した.プレドニゾロンの内服で皮疹と発熱はすみやかに軽快し,再発は認められなかった.私たちが調べた限りにおいて,これらの症例は膿疱性血管炎を呈する既知のいずれの疾患にも合致していなかった.

症例報告

皮膚筋炎にみられた難治性潰瘍—組織学的に膜嚢胞性病変を伴う脂肪織炎を認めた1例

著者: 中山文明 ,   田川一夫 ,   寄藤和彦 ,   田辺恵美子

ページ範囲:P.465 - P.468

 27歳,女.皮膚筋炎の診断にてプレドニゾロン60mg/日より治療を開始して,筋症状,皮膚症状ともに軽快した.しかしながら,プレドニゾロン減量中に左上腕屈側,右下眼瞼,右大腿上部外側,左腰部に硬結を伴う有痛性紅斑がそれぞれ出現し,左上腕屈側の紅斑は虫食い状に潰瘍化した.当初,肉芽の新生が十分に認められなかったが,プレドニゾロンを若干増量したところ,潰瘍は上皮化した.組織学的に那須らが提唱した膜嚢胞性病変を認め,皮膚筋炎に伴った脂肪織炎より生じた潰瘍と考えた.自験例では間質性肺炎,悪性腫瘍は認められなかったが,文献的には予後不良例が多く,今後とも慎重に経過を見る必要のある症例と考えた.

アリルイソプロピルアセチル尿素による固定薬疹の1例

著者: 笠松正憲 ,   神崎保 ,   辻卓夫

ページ範囲:P.469 - P.472

 78歳,男性.アリルイソプロピルアセチル尿素による固定薬疹を経験した.平成3年3月から,固定した部位に紅斑出現・色素沈着化を繰り返していた.セデスG®の内服試験で5時間後に色素沈着部に紅斑が出現した.セデスG®成分の内服試験では,アリルイソプロピルアセチル尿素で皮疹の再燃あり.同剤による固定薬疹と診断した.色素斑部,健常部での貼布試験,およびlymphocyte stimulation test(LST)は陰性であった.

骨髄性プロトポルフィリン症の1例

著者: 木村京子 ,   江副和彦 ,   車地祐子 ,   横関博雄 ,   西岡清

ページ範囲:P.473 - P.475

 13歳男性の骨髄性プロトポルフィリン症の1例を報告した.兄に同症あり.血中,便中プロトポルフィリン値は高値で,光溶血試験陽性,赤血球蛍光も認められた.400nmの単色光を用いた光線テストでは浮腫性紅斑が誘発された.患者の非露光部の皮膚組織を対照として,誘発された紅斑,露光後に出現した発疹の病理学的検討を行った.PAS陽性物質の沈着の範囲,程度が非露光部対照皮膚,誘発紅斑部,露光後発疹部という順に強くなっており,PAS陽性物質の沈着が光線照射による組織障害の程度を反映していた.また誘発紅斑組織では乳頭層血管壁と一部基底層に沿ってC3の沈着が認められた.骨髄性プロトポルフィリン症の症状発現の機序に補体の関与が考えられた.

手掌に限局した扁平苔癬の1例

著者: 岡田善胤 ,   三浦隆

ページ範囲:P.477 - P.479

 両手掌に限局し,掌蹠角化症に酷似する臨床像を呈した扁平苔癬の1例を報告した.72歳,女性.1年前より両手掌に角化性紅斑が出現,ステロイド外用療法に反応しなかったという.両手掌から指の側縁にかけて,掌蹠角化症に酷似した境界明瞭で角質増殖性に軽度隆起する暗紅色紅斑が存在する.口腔内病変はなく,爪,会陰など他部位に皮疹は認められなかった.自覚症状はない.組織像は錯角化のない角質増殖,部分的な顆粒層の肥厚,表皮突起の鋸歯状延長を伴う表皮の不規則な肥厚,基底層の液状変性,真皮上層のリンパ球を主体とした帯状の細胞浸潤で,扁平苔癬と診断した.

Mycobacterium avium complexによる皮膚非定型抗酸菌症の1例

著者: 青木明恵 ,   伯野めぐみ ,   海老原全 ,   繁益弘志 ,   仲弥 ,   原田敬之

ページ範囲:P.481 - P.484

 四肢・躯幹に皮下硬結が多発したMycobacteritfm avium complexによる非定型抗酸菌症の6歳男児例を報告した.経過中,腹部,両大腿に自覚症状を欠く,表面に軽度紅斑を伴う大豆大から豌豆大の球状の皮下硬結を8個認めた.病理組織学的には,真皮に中心に乾酪壊死を伴う肉芽腫形成を認め,自潰した膿の培養にて非定型抗酸菌が検出され,種々の細菌学的検索からMycobacterium avium complexと同定された.2個の結節は自潰し,残る5個は手術的に摘出した.本症の本邦報告例は,1964年から1992年7月までに3例みられるのみであり,そのうち,1例はステロイド投与中の患者であった.自験例は免疫不全を認めずステロイド投与もされていない小児の多発例である.感染経路としては,経皮的に菌が侵入したというよりは,経気道的に肺に感染し,血行性に転移して皮下に肉芽腫をつくり,肺病巣は自然治癒したと推測された.

Mycobacterium gordonaeによる皮膚非定型抗酸菌症の1例

著者: 福田知雄 ,   畑康樹 ,   木村俊次

ページ範囲:P.485 - P.488

 右前腕屈側から手関節にかけ小結節を散在多発した非定型抗酸菌症の57歳女子例を報告した.患者は発症7カ月前より熱帯魚の飼育を開始,また,最近半年で7kgの体重減少がみられていた.病理組織学的には一部に乾酪壊死を伴う肉芽腫性炎症を認めた.組織培養の結果,抗酸菌の集落形成を認め,抗酸菌鑑別のための諸検査の結果より,起因菌をMycobacterium gordonaeと同定した.治療は使い捨てカイロによる温熱療法にミノサイクリンの内服を併用し,小結節は消退傾向を示した.Mycobacterium gordonaeを起因菌とする皮膚非定型抗酸菌症の報告は極めて稀であり,自験例は本菌の病原性を考える上で貴重な症例と考えられた.

慢性増殖性口腔カンジダ症の1例

著者: 高橋裕美子 ,   石川治 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.489 - P.491

 44歳,男性.20年前より舌と頬粘膜に自覚症状を欠く白色粘膜疹出現.爪・皮膚に異常なく,組織学的に粘膜上皮上層内に菌要素を認めた.内分泌および一般免疫系に異常なく,組織所見とをあわせ慢性増殖性口腔カンジダ症と診断した.本症と慢性粘膜皮膚カンジダ症および白板症との鑑別を述べるとともに,その発症機序にっき若干の考按を試みた.

尋常性狼瘡の1例—下肢と背部に皮疹を認め,リンパ節結核を伴った1例

著者: 木花いづみ ,   寺木祐一 ,   宮本秀明 ,   斎藤すみ ,   大井田美保 ,   中野政男

ページ範囲:P.493 - P.496

 78歳,女.10歳代に発症した左膝蓋部の尋常性狼瘡.胡桃大の皮疹が2年前より急速に拡大してきた.初診時,左膝蓋部を中心に径30cm大,中心部に易出血性の肉芽腫様局面を有する境界明瞭な赤褐色浸潤性局面を認めた.組織学的にはラングハンス型巨細胞を伴う類上皮細胞性肉芽腫であったが,生検時の結核菌培養で2回とも陰性であった.そのため抗結核剤を使用しない治療を行っていたところ背部に黄褐色局面を生じ,左鼠径リンパ節を触れるようになった.その後繰り返し生検,培養を行った結果,ヒト型結核菌が分離,同定され,INH,RFPの内服を開始したところ瘢痕治癒の傾向にある.最近6年間の本邦報告例24例について簡単にまとめ,若干の考察を加えた.

下腹部に生じたsyringocystadenoma papilliferum

著者: 川上民裕 ,   斉藤隆三

ページ範囲:P.497 - P.500

 79歳,男の下腹部中央に生じた単発性のsyringocystadenoma papilliferumの1例を報告した.2年前に発症し,脂腺経斑などの先行する病変はなかった.臨床的には,広基有茎状,扁平隆起する14×11×3mmの表面細顆粒状を呈する紅色腫瘤で,圧排すると漿液性の浸出液がでる.組織学的には,皮表より上方に向かって増生する腫瘍で,楕円形の核をもち円柱状で比較的大きな内腔側細胞と,円形の核をもち立方形で胞体の少ない真皮側細胞より構成される.円柱形細胞は1から数層,立方形細胞は1層で,絨毛状に増殖している.自験例を含む本邦報告191例を集計し,統計学的考察を加え報告するとともに組織発生についても言及した.

毛包と汗管への分化を示した腫瘍の1例

著者: 東裕子 ,   松川中

ページ範囲:P.501 - P.503

 69歳,男性.左側頭部の腫瘤を組織学的に検索した.それは,比較的大型の嚢腫構造,小角質嚢腫を中心としそれに連なった細長い細胞索の集まり,種々の程度に拡張した汗管と思われる管腔よりなる腫瘍であった.また腫瘍内に未熟な毛乳頭,shadow cell様細胞からなる塊状物も認めた.それらの間質は著しく増殖し好酸性に染色された.以上より本腫瘍を毛包と汗管への分化を示す1つの毛包系腫瘍と考えた.

耳介で大きく発育したいわゆる皮膚混合腫瘍の1例

著者: 四ツ柳高敏 ,   横井克憲 ,   桜庭実

ページ範囲:P.505 - P.507

 いわゆる皮膚混合腫瘍は,組織学的に上皮性組織および非上皮性の間葉組織によって構成されている腫瘍である.顔面などの目立つ部位に好発することから,比較的小さなうちに外科的に治療されることが多いと考えられるが,我々は耳介の直径約5cmの本症を経験したので報告した.

耳介血管平滑筋腫の2例

著者: 松浦浩徳 ,   妹尾明美 ,   荒田次郎

ページ範囲:P.509 - P.511

 耳介血管平滑筋腫の2例を報告した.症例1は84歳,女性.右耳介の無症状の小結節.組織学的に,毛細管型と静脈型の混在であったが,空胞状の変化を示す細胞を認める.症例2は37歳,男性.左耳介の無症状の小結節.組織学的には,血管平滑筋腫の典型例であった.症例1において,空胞状の変化を示す細胞に第ⅤⅢ因子関連抗原が陽性であり,血管内皮細胞と考えられた.このことは,本腫瘍の形成に血管内皮も関与していることを示唆している.

骨破壊を伴ったグロムス腫瘍の1例

著者: 寺内雅美 ,   中村潔 ,   白浜茂穂

ページ範囲:P.513 - P.515

 若年女性の爪下に好発し有痛性の腫瘍として知られているグロムス腫瘍は多数報告されている.本腫瘍の特徴の一つに骨侵食が起こることがあるとされているが,皮膚科領域における骨病変の報告は見られない.今回我々はX線上並びに手術時に骨侵食像を示す典型的なグロムス腫瘍を経験したので報告した.骨侵食の原因はいまだ不明であるが,グロムス腫瘍が骨に近い部位に発生した場合,慢性的に骨を圧迫するため骨侵食が起こると思われる.今後の腫瘍摘出後の骨変化の経過観察や症例の蓄積が必要と思われる.

隆起性皮膚線維肉腫が多発した1例

著者: 海老原全 ,   桜岡浩一 ,   早川和人 ,   清水宏 ,   仲弥 ,   原田敬之

ページ範囲:P.517 - P.520

 隆起性皮膚線維肉腫が左大腿と右上腕に発生した1例を報告した.患者は40歳,男.13年前左大腿に腫瘍が生じ,近医にて切除を受け隆起性皮膚線維肉腫と診断された.最近,腫瘍摘出部位に一致して,径約2cmの弾性硬,褐色調の結節が生じ,さらに右上腕にも同様の臨床像を呈する径約1cmの結節が生じた.組織学的には両者とも,真皮内にstoriform patternを呈し,増殖する線維芽細胞様細胞と膠原線維束からなる腫瘍塊を認めた.個々の細胞に明らかな異型性は認められなかった.電顕による観察では,腫瘍細胞は軽度の凹凸,切れ込みのある核を有し,細胞質内には豊富な粗面小胞体を認め,線維芽細胞様細胞の特徴を示した.以上より,本例を多中心性に発生した隆起性皮膚線維肉腫と診断した.本症の多発例について文献的に検討し,自験例の発生につき若干の考按を加えた.

菌状息肉症とHodgkin病とを合併した1例

著者: 中川聡 ,   一迫玲 ,   相場節也 ,   熱海正昭 ,   田上八朗

ページ範囲:P.521 - P.524

 61歳,男性.5〜6年前より体幹・四肢に痒みのある色素沈着局面が次第に増加してきた.1年半前から右頸部・腋窩リンパ節の腫脹に気づき,生検でHodgkin病と診断された.最近になって色素沈着が拡大し紅斑も一部伴うようになってきた.紅斑部の生検像は菌状息肉症と診断された.また,入院中にGrawitz腫瘍が発見された.菌状息肉腫とHodgkin病との合併例は本邦では報告されておらず,Grawitz腫瘍をも合併している例はきわめて稀である.

食道粘膜病変を伴った悪性黒色表皮腫の1例

著者: 和泉達也 ,   八木宏明 ,   海老原全 ,   杉浦丹 ,   丸尾啓敏 ,   小坂昭夫

ページ範囲:P.525 - P.528

 著明な食道粘膜病変を伴った悪性黒色表皮腫の1例を経験したので報告する.症例は66歳,男.初診1年前,進行胃癌にて当院外科において胃亜全摘術を施行された.初診時,全身の色素沈着と顔面,手背,腋窩,鼠径部などに色素沈着や疣状皮疹を伴う皮野の著明な粗糙な局面,口腔粘膜に乳頭状増殖を認めた.これらの皮疹は胃癌のリンパ節転移の進行とともに増悪傾向を示し,特に口腔粘膜疹において顕著であった.また,手背,腋窩の皮膚生検の結果,組織学的に角質増生,乳頭腫症,基底層の色素沈着を認めた.さらに,X線造影,内視鏡検査にて食道粘膜にびまん性に乳頭状増殖性病変がみられた.治療にエトレチネート内服を試み,投与後2カ月目より皮疹の若干の軽快をみた.

胃癌の診断に先行したSister Joseph's noduleの1例

著者: 堀内義仁 ,   宮本秀明 ,   野登誠

ページ範囲:P.529 - P.531

 41歳,女性.初診の2週間前に臍部の自覚症状を欠く腫瘤に気づいた.当科での生検結果は印環細胞癌であった.内科に依頼し精査を行ったところBorrmann Ⅳ型の胃癌(組織学的には印環細胞癌)が確認された.内科入院精査で,子宮,卵巣に転移を疑わせる所見を認めたため化学療法を施行したところ,膀部腫瘤の著明な縮小を認めた.臍は転移性膚癌の中で特異な部位として知られているが,1965年以降の転移性皮膚癌本邦報告例51例中,原発巣として胃癌が26例を占め胃癌の中では比較的若い女性の印環細胞癌が多かった.

治療

手術後変形予防のために—装具による圧迫療法

著者: 四ツ柳高敏 ,   桜庭実 ,   横井克憲

ページ範囲:P.535 - P.538

 皮膚の種々の手術後,瘢痕拘縮による変形を予防するために,術後早期からの圧迫とモデリングが重要であり,特に装具を利用した後療法により創形態は良好に維持される.しかし複雑な形態や凹凸のある部位の再建後においては装具の作成や維持が困難な場合が多い.我々は熱可塑性プラスチックを利用した装具を使用しているが,作成が容易で複雑な形態に良く適合し,瘢痕拘縮の程度に合わせた微調整が可能なことから,種々の部位の再建後に有用であるので報告した.各再建術につき,手術法のみでなく,症例に応じた術後管理が結果に大きく作用することを念頭において治療すべきであると思われた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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