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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科48巻8号

1994年07月発行

雑誌目次

カラーアトラス

掌蹠点状角化症

著者: 杉山悦朗 ,   大草康弘 ,   田中信

ページ範囲:P.646 - P.647

患者 46歳,女性
 初診 平成4年5月29日
 主訴 掌蹠の自覚症状を欠く角化性丘疹
 既往歴 特記すべきことなし.
 家族歴 患者には同胞が6人おり,異父兄である長兄に同症を認めたという.長兄は40歳頃より患者と同様の角化性丘疹が掌蹠に出現し,49歳で胃癌にて死亡した.祖父母,父母,他の同胞,子および甥姪に同症を認めない.血族結婚はない.現病歴 40歳頃より掌蹟に角化性丘疹が出現し徐々に増加,増大した.
 現症 両手掌の中央部を除いた周囲部に小豆大までの境界明瞭な類円形で淡黄色調の角化性丘疹が散在している(図1,2).両足底には土踏まずを除く全面に小豆大までの中央に角栓を有する角化性丘疹が多発し,一部は融合している(図3).

原著

身体各部位の正常角層層数—角層の層数は部位によって違うのか? 年齢によって違うのか?

著者: 甄雅賢 ,   工藤和浩 ,   末武茂樹 ,   田上八朗

ページ範囲:P.649 - P.652

 正常角層は扁平な角層細胞が細胞間脂質を介してサンドイッチのように何層も積み重なってできた膜状物である.身体各部位における角層層数の違いを調べるために,皮膚疾患患者から得た正常部皮膚の凍結切片を用い1%サフラニン液で染色した後,2%KOH水溶液により角層を膨潤させ層数を数えた.角層が最も薄いのは男子の陰茎部で約6層,次いで眼瞼の約8層で,逆に最も厚いのは手掌と足蹠で40層以上であった.十分な標本数が得られた部位で年齢と角層層数の関係を検討したところ,頬部と眼瞼では年齢によって角層層数に違いはなかったが,下肢伸側では加齢に伴って角層層数の増加がみられた.腹部では逆に高年齢層のほうが角層層数が少なかった.また増殖細胞のマーカーであるPCNAに対するモノクローナル抗体を用いて表皮の増殖の程度を評価し,角層層数との関係を検討したが両者の問に相関は認められなかった.

連載

Clinical Exercises・16—出題と解答

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.652 - P.652

Practical English for Busy Physicians・10

著者:

ページ範囲:P.738 - P.739

もう1冊の本の紹介と添削文の出題
 医学論文は普通感情的なものでないと言われていますが,しかし時として大変感情的反応を呼び起こすこともあります.西洋の科学者たちに最も共通した問題は患者の人種について言及するかどうかの決定にあります.私はJournal of the American Academy ofDermatology(JAAD,ブルージャーナルでおなじみの)やThe Archives of Dermatologyの編集者たちの公式な決定を知りませんが,人種についての表記が重要であれば,それは規約の中に入っているでしょうし,もしそうでなければ,やはりそれは規約の中に入れてないと思います.例えば,脚に潰瘍ができているWestern patient(アジア人以外の患者)の場合,これではその患者がアメリカ人黒人かどうかはっきりと判断できないし,もしそうであればsickle cell anemiaの可能性も高くなるわけです.年齢・性別についてはいつもはっきりと述べられていますから,このような論争にはなりませんね.それと,使用を避けて欲しい別の感情的単語として‘suffered’があります.“Thepatient suffered from diabetes”よりも“The patientdeveloped diabetes”のほうが良いでしょう.このように考慮された英語は日本語よりずっとドライです.

今月の症例

乾癬様皮疹を示した川崎病の1例

著者: 岩崎加代子 ,   藤田弘 ,   奥知三 ,   増田裕行 ,   古川福実 ,   滝川雅治

ページ範囲:P.653 - P.655

 10カ月,男児.川崎病の経過中に乾癬様皮疹が出現した症例を経験した.平成5年1月5日より発熱が出現し,その後全身の紅斑,眼球結膜の充血,頸部リンパ節の腫脹を認め当院小児科に入院した.入院後,アスピリン,γ—グロブリンの投与で発熱,血液検査所見は改善したが,BCG接種部位,顔面手背の紅斑が消退しないため当科に紹介された.BCG接種部位の紅斑から皮膚生検を施行し,乾癬に一致する組織像が得られた.ステロイド剤の外用で,紅斑は10日後に消退した.乾癬様皮疹を示した川崎病の報告例は自験例を含め3例であり,興味深いと思われ報告した.

症例報告

フルコナゾールが有効であつた続発性皮膚クリプトコッカス症の1例

著者: 深堀隆 ,   上田幹雄 ,   橋本進一 ,   溝渕一哉 ,   中村充男 ,   野田洋介 ,   奥田良治

ページ範囲:P.657 - P.659

 肺病変に続発しフルコナゾール内服にて軽快した皮膚クリプトコッカス症の1例を報告する.症例は50歳,女性.喀疾,咳嗽,微熱を訴えて来院.胸部X線写真上,右上肺野に斑状影を認め精査するも確診に至らず.肺結核の疑いにて抗結核薬を投与するも無効.約4カ月後,右頬部に丘疹および左肘部に潰瘍を伴う結節出現.同部の生検および膿汁の真菌培養にて皮膚クリプトコッカス症と診断.フルコナゾール400mgの内服投与にて皮膚病変とともに肺病変も軽快した.

Linear IgA bullous dermatosis of childhoodの1例

著者: 川口博史 ,   高橋さなみ ,   宮沢めぐみ ,   佐々木哲雄 ,   石井典久 ,   中嶋弘 ,   黒沢伝枝

ページ範囲:P.661 - P.664

 5歳,男児.初診約1カ月前より皮疹が出現し,全身に拡大した.初診時には,ほぼ全身に緊満性水疱が認められ,小水疱が環状に配列している所見もみられた.組織学的には表皮下水疱で,蛍光抗体法にて基底膜に一致してIgAの線状沈着が認められた.ステロイド外用は無効であったが,DDS1日25mg内服約1週間で皮疹は乾燥し,1カ月後には略治した.発症後約1年間,再発はみられていない.Linear IgAbullous dermatosis of childhoodの定型例で,DDSが劇的に奏効した1例を報告した.

顔面の静脈血栓症にて発症した抗カルジオリピン症候群の1例

著者: 薄場秀 ,   本多章乃 ,   戸村好太郎

ページ範囲:P.665 - P.668

 65歳,男性の抗カルジオリピン症候群の1例を報告した.初診の約2年前より顔面の浮腫が出現し,生検にて静脈血栓症と診断した.抗カルジオリピンIgG抗体が陽性を示し,臨床症状と合わせて抗カルジオリピン症候群と診断した.その後両下肢にも浮腫が出現し,血管造影にて大腿静脈血栓症の合併と判明した.これらの症状は,プロスタグランディンE1製剤の投与にて改善した.本症の血栓症は下肢に発症することが多く,顔面に発症した例は調べ得た限りではみあたらず,本邦第1例であると思われた.本症の報告は内科領域では増加しているが,皮膚科領域ではまだあまりない.今後,顔面の難治性浮腫をみた場合,本症も考慮すべき一疾患であると考えられた.

慢性関節リウマチに伴つた頭部潰瘍の1例

著者: 有川順子 ,   村田恭子 ,   檜垣祐子 ,   乃木田俊辰 ,   川島眞 ,   佐藤和人

ページ範囲:P.669 - P.671

 76歳,女性の慢性関節リウマチ患者の頭部に生じた皮膚潰瘍を経験した.患者は22年前に同部位の有棘細胞癌に対し放射線療法および腫瘍摘出術を受けていた.潰瘍部の生検で腫瘍細胞は認めず,壁内にリウマトイド結節様の変化を伴う壊死性血管炎の像を認め,rheumatoid vasculitisによる潰瘍と診断.アルプロスタジルの点滴,プレドニゾロン20mg/日にひき続き潰瘍縫縮術を施行し略治した.Rheumatoid vas—culitisによる頭部潰瘍はまれと考え報告した.

特異な臨床像を呈したgeneralized morphea

著者: 玉田康彦 ,   押谷佳美 ,   守屋英一 ,   池谷敏彦 ,   松本義也

ページ範囲:P.673 - P.675

 49歳,男性.1987年秋頃より前胸部に皮膚硬化局面が生じ,限局性強皮症の診断にて経過を観察していたが硬化部が漸次拡大してきた.1993年1月受診時顔面,体幹,四肢にほぼ対称性に皮膚硬化局面を認めるが,手指の硬化やレイノー現象はなく,各種自己抗体も陰性で胸部X-P,食道造影も異常なかった.硬化部組織像では真皮膠原線維の結節状膨化と均質化が認められるが血管病変はなく,臨床像は特異であるが予後良好なgeneralized morpheaと考えている.

紅皮症型扁平苔癬の1例—Cyclosporin Aが有効であった症例

著者: 伊藤文彦 ,   橋本喜夫 ,   松尾忍 ,   飯塚一 ,   金田孝道

ページ範囲:P.677 - P.680

 72歳,女性.57歳頃から両手背に痒みを伴う淡紫紅色の皮疹が出現,ステロイド外用剤による治療に反応せず徐々に増数,拡大し約6年でほぼ全身に拡がった.誘因と思われる薬剤の服用歴はなく,輸血,臓器移植の既往もない.ステロイド外用剤のほか,グリセオフルビン,DDS,シクロフォスファミド,エトレチナートの内服を試みたがいずれも十分な効果は認められなかった.Cyclosporin A(CyA)の内服により投与後1週目から皮疹は著明な軽快傾向を見せた.また,CyA投与後では表皮細胞間のICAM−1発現も著明に抑制された.稀な病型と思われる紅皮症型の扁平苔癬の1例を報告し,CyAの臨床効果とその作用機序について若干の考察を加えた.

アトピー性皮膚炎患者に生じた非ステロイド系消炎剤のスプロフェン軟膏による接触皮膚炎

著者: 辻隆 ,   斎藤すみ ,   原万美子 ,   松谷紫 ,   大沢純子 ,   宮川加奈太 ,   北村和子 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.681 - P.684

 顔面病変の急性増悪したアトピー性皮膚炎(AD)患者に生じたスプロフェン軟膏による接触皮膚炎の1例を経験した.症例は22歳の女性で,11歳頃よりADとして加療され,18歳より顔面皮疹に対しても時々ステロイド系外用剤を使用していた.同剤からの離脱目的でスプロフェン軟膏(スレンダム軟膏®)を外用したところ,3週間後より皮疹の急激な悪化と拡大が見られ,スプロフェン軟膏の貼布試験が陽性のため同軟膏による接触皮膚炎と診断した.しかし3カ月後の貼布試験は陰性で,光貼布試験は陽性であった.アトピー性皮膚炎では治療およびステロイド系外用剤の離脱目的で非ステロイド系外用剤を顔面,頸部に使用する機会が多い.当科で行った難治性の顔面病変があるアトピー性皮膚炎の14症例において非ステロイド系外用剤の貼布試験を実施したので,その結果についても若干の考察を加えた.

ヘアードライヤーの熱風による作為性皮膚症

著者: 涌井史典 ,   高山篤子 ,   斉藤範夫 ,   西山千秋

ページ範囲:P.685 - P.688

 ヘアードライヤーの熱風によると思われる作為性皮膚症の12歳,女子例を報告した.巨大な膿痂疹を思わせるびらんを主訴に受診したが,その後奇妙な形の紅斑が下腿や足底に次々と生じた.病理組織所見が熱傷の組織像に類似していたこと,患者の家庭環境に問題のあったこと,父親とのコミュニケーションが円滑になり,皮疹が新生しなくなったことなどが自験例における作為性皮膚症の特徴と考えられた.

スナノミ症の1例

著者: 佐山重敏 ,   大野佐代子 ,   澤見万里 ,   天野博之

ページ範囲:P.689 - P.691

 ケニアで感染したと思われる38歳,男性に生じたスナミノ症の1例を報告した.臨床像は右足底に見られた直径約5mmの孤立性の白色丘疹で,中央に黒点を伴っていた.自覚症状は著明でなく,不快感を訴える程度であった.丘疹部の角層を除去し,内容物を押し出して作成した組織標本で,スナノミのものと思われる構造物を認めた.治療は,寄生部位を掻爬し,10%ポビドンヨードゲルの外用を行った.

大頭症とSturge-Weber症候群を伴つた色素血管母斑症の1例

著者: 山岸敬子

ページ範囲:P.693 - P.695

 大頭症とSturge-Weber症候群を伴った色素血管母斑症の1例を報告した.症例は出生後20日,女児.出生時より顔面・体幹・上肢に単純性血管腫と異所性蒙古斑,頭囲拡大,先天性緑内障あり.てんかん発作はないが軽度の言語発育遅延あり.MRI撮影にて上矢状洞の描出不良と表在皮質・深部脳静脈に側副血行路と思われる異常血管像あり.上矢状洞の閉塞性異常はSturge-Weber症候群に伴う先天性の脳静脈系異常と診断した.頭囲拡大の原因は脳静脈の循環障害によるものと考えた.

色素血管母斑症IVa型—多発性小色素斑合併症

著者: 糸田川裕子 ,   長谷川義博 ,   安原稔

ページ範囲:P.697 - P.699

 2歳,男児.生下時よりほぼ全身に非対称性の不規則な形状の褐色斑と血管腫様変化が認められ,背部から腰部にかけては,それらに混じて青色斑が存在した.さらに数mmから1cm大までの黒褐色斑が,褐色斑領域を中心に百数十個認められた.病理組織所見にて,前者は扁平母斑,単純性血管腫,蒙古斑,後者は母斑細胞は認められないが活性の高い黒子様変化と考えられた.他臓器病変はなく,本症を色素血管母斑症(PPV)IVa型と診断した.PPVは現在まで海外報告例19例を含む109例が報告されており,IV型は11症例認められる.また,多発性小色素斑を合併する症例としては自験例を含め3例認めた.いずれも扁平母斑が主体をなすPPVⅢ型,Ⅳ型であった.

Infantile digital fibromatosis

著者: 吉川康之 ,   丸山幸治 ,   須田和義 ,   郡司裕則 ,   小野一郎 ,   金子史男

ページ範囲:P.701 - P.704

 2歳1カ月,女児の右第5趾に生じたinfantile digital fibromatosisの1症例を報告した.光顕的には腫瘍細胞質内の類円形封入体が認められ,定型像を示した.電顕的には腫瘍細胞はnuclear indentation, myofilaments, basal lamina様構造が認められmyofibroblastと考えられた.免疫組織学的には,細胞内封入体は抗muscle—actin抗体に陽性所見を示した.

被包性脂肪壊死性小結節(菊池)の1例

著者: 筒井真人 ,   山本明美 ,   松尾忍 ,   飯塚一

ページ範囲:P.705 - P.707

 52歳男性の右膝蓋部に生じた被包性脂肪壊死性小結節の1例を報告した.臨床的には,3cmの範囲で直線状に可動性を有する自覚症状のない単発性の皮下小結節で,摘出した小結節は黄白色,表面平滑で軟骨様の硬さを有していた.同部に外傷・注射の既往はなく,数の変化も認められなかった.組織学的には厚い結合織により被包された蜂巣状膜様構造を呈しており,唐草模様状あるいは絨毛状構造を有する部分も認められた.パラフィン切片を用いた各種脂肪染色が陽性で膜嚢胞性病変(那須)に一致する所見と考えられた.

Eccrine spiradenomaの1例

著者: 山岸敬子 ,   高田実

ページ範囲:P.709 - P.711

 70歳男性の前頭部に生じたeccrine spiradenomaの1例を報告した.組織学的に腫瘍内に大型,小型の腫瘍細胞から構成される顕著な嚢腫構造を認めた.免疫組織学的にS100蛋白は大型細胞のすべてに弱陽性を示した.さらにcarcinoembryonicantigen(CEA),epithelial membrane antigen(EMA)は管腔に面した大型細胞の一部と,管腔および嚢腫内腔縁に陽性を示した.α—smooth muscle actin(αSMA)は管腔部の外側に位置する小型細胞の一部に陽性を示した.自験例では分泌部への分化を示す細胞と,未分化な細胞の存在が示唆された.

Mucinous carcinoma of the skinの1例

著者: 中村嘉男 ,   姉小路公久

ページ範囲:P.713 - P.716

 83歳,男.約2年前左頬部の腫瘤に気づく.同部位に9×12mm,暗赤色,扁平に隆起した腫瘤あり.治療は全摘した.組織所見では,腫瘍は真皮内に境界鮮明な充実性の腫瘍細胞塊があり,大型の嚢腫と多くの小管腔形成を含む.これに隣接して狭い結合織により分葉されたムチンの集積の中に好酸性物質を分泌する小型の腫瘍細胞塊が多数不規則に島嶼状に浮遊している.これらの性格の異なる2種の腫瘍につき検討した.

頭部熱傷瘢痕部における有棘細胞癌と基底細胞癌の同時発生例

著者: 小関伸 ,   安斎眞一 ,   石沢俊幸 ,   武田光 ,   杉木浩 ,   吉川賢一 ,   近藤慈夫 ,   伊藤義彦

ページ範囲:P.717 - P.719

 80歳,女性.生後数カ月時に頭部に熱傷を受傷し,その後瘢痕を形成した.初診1年前より同部2カ所に潰瘍が同時に発生したため近医受診.生検にて悪性病変を指摘され,当科を紹介された.組織学的に一方は有棘細胞癌,他方は基底細胞癌であった.両者の瘢痕上における同時発生例の報告は本邦では稀であり,貴重な症例であると思われた.

先天性色素性母斑に発生した悪性黒色腫の1例

著者: 坂井博之 ,   川岸尚子 ,   広川政己 ,   松尾忍 ,   飯塚一

ページ範囲:P.721 - P.724

 55歳,女性.出生時から右大腿に黒褐色色素斑を認める.初診の約1年前から大きさ43×25mmの色素斑上に直径約8mmの半球状に隆起した腫瘤が出現してきた.病理組織学的には,表皮真皮接合部および真皮全層にかけて瀰漫性に母斑細胞の浸潤を認め,その中に大型で異型性に富む核を有し,周囲の母斑細胞とは明瞭な境界を有する腫瘍塊を認める.免疫組織化学的には,異型細胞よりなる部分はHMB45に陽性を示し,周囲の母斑細胞は陰性であった.またS−100蛋白は両者ともに陽性を示した.所属リンパ節への転移は認められなかった.病理組織学的,免疫組織学的所見から先天性色素性母斑に発生した悪性黒色腫と診断した.

手掌に発症した悪性黒色腫

著者: 谷田宗男 ,   小澤宏明 ,   只木行啓 ,   六郷正和 ,   末武茂樹

ページ範囲:P.725 - P.727

 65歳,女性の手掌に発症した悪性黒色腫の1例を報告した.3年前より左手掌に黒色斑が出現したが放置していたところ,初診の1カ月前から黒色斑の中央部が急に盛り上がってきた.組織は典型的で,左腋窩リンパ節に転移を認めた.治療として定型的腫瘍拡大切除と植皮を行った.植皮片には網状植皮片を用いて機能的にも概ね良好な結果を得た.手掌に発症する悪性黒色腫は足底に比べて比較的まれではあるが,一方早期の確実な治療が可能でもあることから,その存在を念頭に置いておくべきものと考え報告した.

頭部と顔面に多発性の皮疹を生じた皮膚良性リンパ腺腫症—ステロイド内服が有効であった1例

著者: 谷田宗男 ,   原正啓 ,   渡辺真理子 ,   相場節也 ,   富田靖

ページ範囲:P.729 - P.732

 頭部から顔面にかけ多発性の皮疹を生じたlymphadenosis benigna cutisの症例を報告した.治療はステロイド外用,ミノマイシン等の抗生物質の投与に対し難治であったが,ステロイド内服にはよく反応した.組織像ではリンパ濾胞様構造を認める典型像であった.免疫組織学的検索では,T細胞,Langerhans細胞,HLA-DR陽性樹枝状細胞,B細胞などが混在する多彩な形態を示し,良性の反応性の増殖を起こした状態であることが示唆された.

治療

菌状息肉症(紅皮症型)のインターフエロン—αによる治療例

著者: 堀内義仁 ,   家本亥二郎 ,   長谷哲男 ,   中嶋弘 ,   早川広樹 ,   伝宝憲一 ,   杉山朝美 ,   毛利忍

ページ範囲:P.733 - P.736

 紅皮症型菌状息肉症(TNM分類:T4N1B0M0,StageⅢ)と診断された71歳の女性に対してステロイド剤の外用とPUVA療法を行ったが,臨床症状の改善が認められなかった.そのため,natural interferon—αの50日間連日の筋肉内投与(300万単位/日)による単独療法に変更したところ,臨床的ならびに病理組織学的に皮疹の明らかな改善が認められた.しかし,完全寛解は得られず,投与中止1週後より再発が認められた.副作用としては,発熱,肝酵素の上昇,白血球,赤血球,血小板の低下が認められたが,いずれも軽微なものであった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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