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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科49巻1号

1995年01月発行

雑誌目次

カラーアトラス

AIDS患者にみられた脂漏性皮膚炎

著者: 石井則久 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.6 - P.7

患者 27歳,男
初診 1991年9月9日

原著

Lafora病—皮膚生検による確定診断

著者: 中村周 ,   伊藤薫 ,   伊藤雅章 ,   早津邦広 ,   宮下光太郎 ,   宮武正 ,   川崎浩一 ,   高橋均

ページ範囲:P.9 - P.12

 14歳,女.ミオクローヌスてんかんの症例に対して腋窩皮膚生検を行い,Lafora病と診断することができた.組織学的にエクリン汗腺曲導管,直導管,表皮内汗管およびアポクリン汗管の細胞質内とアポクリン汗腺筋上皮細胞質内にperiodicacid-Schiff染色陽性を示す円形の封入体を認めた.同様の封入体は真皮神経線維束の一部にも認められた.これらの封入体はα—アミラーゼで消化され,β—アミラーゼ消化に抵抗性であり,従来の報告のようにpolyglucosanと考えられた.

陰嚢肉様膜平滑筋肉腫—免疫組織化学的所見および細胞増殖能による検討

著者: 野口義久 ,   原弘之 ,   涌井史典 ,   本庄三知夫 ,   森嶋隆文 ,   車谷峰子

ページ範囲:P.13 - P.17

 40歳,男.10年前より陰嚢左側に自覚症を欠く皮内硬結が出現,徐々に増大し,自発痛,圧痛を伴うようになったため,近医にて2度切除を受けるも再発を繰り返した.直径32×30mm,弾性硬の自発痛,圧痛のある常色の腫瘤で,覆皮と癒着,下床と可動性である.組織学的に,真皮上層から下層,皮下組織にかけて腫瘍塊が認められ,辺縁では肉様膜と連続している.腫瘍細胞は紡錘形あるいはcigar shapedの核を有し,大小不同が目立ち,異型性が著明である.免疫組織学的に腫瘍細胞の胞体は抗HHF35抗体,抗α—smoothmuscle actin抗体および抗desmin抗体による染色で陽性,平滑筋腫瘍であると思われた.細胞増殖能の検索として,AgNORsと核DNA量の測定を対照の皮膚平滑筋腫3症例と比較して検討した結果,対照が良性所見であったのに対し,自験例はいずれも悪性所見であった.陰嚢平滑筋肉腫の本邦の報告は自験例が6例目であり,皮膚科からは初めてである.

今月の症例

Schweninger-Buzzi型特発性斑状皮膚萎縮症

著者: 小松威彦 ,   福田正之 ,   佐川曜子 ,   水川良子 ,   長島正治 ,   瀬山義幸 ,   多島新吾

ページ範囲:P.18 - P.21

 29歳,女性.約8年前,前駆症状なく体幹に白い皮疹が出現.初診時,前胸部,腹部に爪甲大までの白色調,長円形,半球状に隆起する柔らかい萎縮病変が11個散在していた.抗核抗体80倍陽性.HBs Ag陽性.Weigert染色で病変部の弾性線維がほぼ消失していた.生化学的に検索し,辺縁正常部と比べ病変部isodesmosine含量が63%に減少していたが,不溶性elastin当たりの含量には目立った低下は認めなかった.病変部培養線維芽細胞のm-RNAの発現は,collagen,elastinとも正常部と差異はなかった.以上の結果よりelastinの分解亢進が病因と密接に関連していることが示唆された.

連載

Clinical Exercises・22—出題と解答

著者: 川島眞

ページ範囲:P.21 - P.21

 43 疣贅状表皮発育異常症について正しい記載はどれか.
  ①主としてヒト乳頭腫ウイルス1型の感染による汎発性疣贅である.

Practical English for Busy Physicians・13

著者: D.Emmet

ページ範囲:P.86 - P.86

新しい辞書,きれいなオフィス作りについて……
 最初に良いお知らせがあります.大変役に立っ辞書“A Dicitionary of Dermatologic Terms”の第4改訂版が出版されました.編集者はRobert L. Carter, M.D.で,大変お手頃な値段とサイズでWilliams & Wilkins Companyから出ています.これはかなり改訂されており,AIDS(病気ではなくsymptom com—plexとして)やHHV6のような新しいものも入っており,また現在の皮膚科医たちの間でいかにギリシャ語やラテン語が語源の単語が誤用されているかというような内容まで入っています.更にもっと興味深いことに,ラテン語・ギリシャ語文法についてのページもあり複数の形式や属格の正しい使い方も述べています.いくつかの単語,Lyme disease, erythema chronicum migransは含まれておりませんが,その他の22のerythemasは入っており十分にあなたを満足させると思います.オオフジ・シンドロームやミツダ・リアクションはアメリカでは大変珍しいのですが,この本で詳しく説明されています.ここでこの本の出版にあたり多大な寄付をしてくれたWestwood-Squibb Companyにお礼を言わなければなりません.私としては強くこの本をお買いになることを薦めます.またもう1冊を秘書の方にいかがでしょうか.

症例報告

広範な潰瘍性病変と蛋白漏出性胃腸症を伴ったHenoch-Shönlein紫斑病の1例

著者: 中川聡 ,   熊坂久美子 ,   熱海正昭

ページ範囲:P.23 - P.26

 45歳,男.3週間前からの両下腿の有痛性潰瘍を主訴に受診した.同部位に小水疱を伴う地図状の潰瘍があり,その周辺に粟粒大の紅色丘疹が散在していた.組織学的には,真皮に好中球主体の細胞浸潤,細小血管のフィブリノイド変性および広範な赤血球の漏出を認めた.検査所見では低アルブミン血症があり,四肢に著明な浮腫がみられた.入院数日後より悪心,血性嘔吐があり,内視鏡で十二指腸下降部の著しいびらんを認めた.その後腹痛が強度となり筋性防御も出現し,穿孔が疑われたが,開腹術所見では空腸と回腸全域に強い発赤腫脹と多量の腹水を認めたのみで,穿孔はみられなかった.術後にステロイド療法を開始し,以後は順調に回復した.皮疹が広範な潰瘍を主体とし,さらに蛋白漏出性胃腸症を伴って重篤な腫部症状を生じた点が本症として特異である.

慢性関節リウマチ患者に生じたWegener肉芽腫症—出血性膿疱で初発し壊疽性膿皮症様潰瘍を呈した1例

著者: 酉抜和喜夫 ,   粟田口敏一 ,   舟生俊夫

ページ範囲:P.27 - P.29

 慢性関節リウマチの56歳女性に発症したWegener肉芽腫症の1例を報告した.1988年春鼻閉,同年暮に鞍鼻出現.翌年春下肢に出血性小膿疱多発.組織は膿疱性血管炎.鼻粘膜組織像は巨細胞を伴う壊死性肉芽腫性炎.抗好中球細胞質抗体陽性.出血性膿疱は2週間位で手拳大の壊死性蚕食性潰瘍へと進展.プレドニゾロン療法で皮膚潰瘍は瘢痕治癒.Wegener肉芽腫症において壊疽性膿皮症様皮疹を呈した点が特徴的であった.

慢性関節リウマチ患者に認められたsclerosing Panniculitisの1例

著者: 安部正敏 ,   割田昌司 ,   石川治 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.31 - P.34

 64歳,女性の慢性リウマチ患者に見られた静脈瘤を伴わないsclerosing panniculitisの1例を報告した.左下腿に境界明瞭な圧痛を伴う硬結局面があり,組織学的に真皮下層から皮下脂肪織にかけ高度な線維化と小血管の拡張,また脂肪細胞壊死と膜性脂肪変性を認めた.本疾患は静脈系の循環不全が病因と指摘されており,広義の静脈瘤症候群とするむきもある.しかし,自験例では臨床所見および静脈造影で静脈瘤を認めなかった.本症は近縁疾患であるhypodermitis sclero—dermiformis, stasis panniculitisとの鑑別が問題となるが,静脈瘤の有無と組織学的所見の違いより鑑別可能であると思われる.また,本症と慢性関節リウマチの関係は不明であるが,これまでに合併例1例の報告がある.

サラゾスルファピリジンが奏効した関節症性乾癬

著者: 岩澤うつぎ ,   宮川かおり ,   柿沼寛 ,   鈴木啓之

ページ範囲:P.35 - P.38

 43歳,男.約20年来,尋常性乾癬と診断され加療されていた.当科初診の10カ月前より関節の腫脹,疼痛,運動制限が出現.皮疹の性状と病理組織所見,およびリウマチ血清反応陰性を示す関節症状を併せて関節症性乾癬と診断した.関節痛増悪のため入院,メソトレキセートの少量間歇投与を試みたが効果なく,サラゾスルファピリジン(サラゾピリン®)に変更したところ関節症状は軽快し,通常の生活および職場復帰が可能となった.サラゾスルファピリジンの関節痛に対する作用機序など若干の考察を記した.

急性汎発性膿疱性細菌疹—掌蹠膿疱症の経過中に生じ,骨関節症状も伴った1例

著者: 車地祐子

ページ範囲:P.39 - P.41

 掌蹠膿疱症の経過中に,発熱とともに全身に膿疱を生じ,骨関節病変も伴った1例を報告する.症例は45歳,女.2年前より掌蹠膿疱症があり,某医で治療していた.初診の1週間前に発熱,咽頭痛などの上気道炎症状,次いで胸痛が出現し,やがて手足の膿疱の増悪とともに全身に膿疱が多発した.白血球増加,赤沈亢進,CRP上昇およびASO高値がみられ,抗生物質内服にて約2週間の経過で軽快した.臨床症状,検査所見,経過などより本症と診断したが,掌蹠膿疱症の経過中であること,骨関節症状も伴ったことなど,両疾患の近縁性を示唆する症例と思われた.

再発性猩紅熱様紅斑の1例

著者: 千星泰子 ,   山田琢 ,   秋山尚範 ,   荒田次郎

ページ範囲:P.42 - P.44

 3歳,女児.1歳半頃より発熱時に体幹・四肢に浮腫性紅斑・紅色丘疹,手掌・足蹠に膜様落屑などの猩紅熱様皮疹を繰り返していた.平成4年7月31日午前2時頃発熱.明け方より体幹・四肢に浮腫性紅斑が出現,精査目的にて入院した.入院時,手掌・足蹠に膜様落屑が認められた.猩紅熱等の感染後の落屑を考え,ASK, ASO,抗DNase-Bを測定したがすべて陰性であった.咽頭培養でもA群β溶連菌は検出されなかった.そこで猩紅熱に類似した皮疹を呈する再発性猩紅熱様紅斑を考え,再度詳細に問診を取り直したところ,発熱時に解熱・鎮痛剤を内服していたらしいことが判明した.内服誘発試験の結果,アセトアミノフェンで陽性であった.臨床症状,内服誘発試験の結果からアセトアミノフェンによる再発性猩紅熱様紅斑と診断した.

いわゆる脊椎麻酔後紅斑

著者: 加藤直子

ページ範囲:P.45 - P.47

 脊椎麻酔後紅斑は,脊椎麻酔後に仙骨部を中心として発生する圧痛を有する紅斑である.脊椎麻酔後にのみ発生するとは限らず,硬膜外麻酔による手術操作後などにも観察される.この度,5例を報告した.2例の組織像は有棘細胞の好酸性変性,真皮上層の血管壁の膨化と血管周囲性の小円形細胞浸潤,真皮深層のエクリン汗腺分泌部の好酸性壊死および汗管部の閉塞などを示し,褥瘡と同一であった.本疾患についてはI度の褥瘡であるという認識を徹底し,その発生を予防することが重要と考えられる.

光線過敏症を伴ったアトピー性皮膚炎の1例

著者: 吉田智子 ,   西本正賢 ,   山本信二 ,   中嶋邦之 ,   高岩堯

ページ範囲:P.49 - P.52

 20歳,男性.小児期よりアトピー性皮膚炎.主に夏に増悪.種々の治療に抵抗性.入退院を当院4回,他院3回繰り返す.極期には紅皮症化.当院への5回目入院時にUVB-MEDを測定し,5秒(0.005J/cm2)と著明に短縮.UVAは5分(2.19J/cm2)照射にて紅斑出現.0.1%オクソラレン軟膏外用後のMPDは当科における異常値を示さず.UVA照射による短時間での紅斑出現はUVA光に混入したUVB光によるものと考えた.サンスクリーン剤(資生堂インターセプトサンスクリーンミルキーN,SPF 11, AAA)使用にてUVB-MEDは正常範囲内.UVA30分(13.14J/cm2)照射にて紅斑認めず.同剤使用により,露光部の皮疹の再燃を防止.ステロイドからの離脱等の理由により5回目入院中PUVA療法施行(計3.504J/cm2).皮疹は徐々に改善した.

成人T細胞白血病の長期観察例

著者: 浜田哲 ,   川越りか ,   児浦純義 ,   太良光利 ,   米澤士郎

ページ範囲:P.53 - P.56

 症例1;69歳男性.浸潤性紅斑・結節・腫瘤の多発を認め,皮膚組織でHTLV−1プロウイルスDNA陽性.症例2;72歳女性.紅斑,丘疹の多発を認め,後に末梢血リンパ球でHTLV-IプロウイルスDNA陽性.いずれも末梢血所見からはくすぶり型ATLであり,皮膚型として発症したと考えられた.症例1は皮疹に対してブレオマイシン外用と液体窒素凍結療法のみで,また症例2は皮疹に対してのPUVA療法とともにγ—インターフェロンと軽度の化学療法による全身的治療を行い,初診より症例1は約7年,症例2は約5年の良好な経過を観察した.特に皮膚型のATLで予後不良を示唆する所見の少ない場合には,強力な全身的治療を避け,皮疹に対する局所療法を主体とした治療をより考慮すべきであると考える.

前腕に発生したMondor病の1例

著者: 寺木祐一 ,   木花いづみ

ページ範囲:P.57 - P.59

 29歳,女性の右前腕に発症したMondor病の1例を報告した.皮疹は右前腕の表在性の静脈に沿って長さ20〜30cmの索状の硬結を数本触れた.初診時には軽度の発赤と圧痛を認めるも,数日後には認めなくなった.組織学的に脂肪織内の静脈に,血管壁の著明な肥厚を伴った血栓像を認めた.血栓内,壁に好酸球を混じるリンパ球の浸潤もみられた.elastica-van Gieson染色で内弾性板様構造を認めた.皮疹は約1カ月ほどで自然に消褪した.皮疹発生の数日前に重いビールのケースを運んだことが発症誘因として考えられた.

Cowden病の1例

著者: 鈴木正之 ,   加藤英行 ,   矢尾板英夫 ,   吉田行雄 ,   笠野哲夫 ,   木村健

ページ範囲:P.60 - P.63

 59歳,男のCowden病の1例を報告した.顔面の丘疹,手背を中心とした尋常性疣贅様丘疹,手掌の点状陥凹,下腿を中心とした扁平疣贅様丘疹,舌の丘疹を認めた.その他,胃から大腸にかけてのポリポーシスを認めた.組織学的には手背の皮疹は限局性非特異的な表皮肥厚と過角化を示した.抗パピローマウイルス抗体を用いた免疫組織学的検索では陰性であった。

Trichofolliculomaの1例—組織学的にtrichogenic trichoblastomaの可能性も示唆された1例

著者: 田村智恵子 ,   三浦隆

ページ範囲:P.64 - P.65

 Trichofolliculomaはhair germに由来する成熟度の高い過誤腫1)である.今回我々が経験した1症例はtrichogenic trichoblastomaと極めて類似した組織像を呈したが,中心に角栓を入れた毛包構造が主体であり,さらに表皮内における2次毛包の放射状の突出が認められるという組織学的所見を重視して本症と診断した.

Bilateral segmental neurofibromatosisの1例

著者: 清水聡子 ,   田中勝 ,   宮川俊一

ページ範囲:P.67 - P.69

 76歳男性に生じたbilateral segmentalneurofibromatosisの1例を報告した.臨床的に胸背部に限局して両側性に神経線維腫を多発性に認めたが,他の領域には神経線維腫症の症状を認めず,von Recklinghausen病の家族歴もない.国内外の既報告例8例をまとめ,文献的に考察を加えた.本症は神経線維腫症の発症機序を考える上で興味深い症例と考えられ,今後も症例を集積し検討すべきであると考えた.

Laugier-Hunziker-Baran症候群の1例

著者: 龍崎圭一郎 ,   石川治 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.71 - P.73

 症例は75歳,女.初診の約1年前から左手指,約半年前からは右手指にも黒褐色斑が多発してきたため来院した.手指の他,口唇,口腔粘膜および足趾にも黒褐色斑が多発して見られたためPeutz-Jeghers症候群を疑い,消化管の精査を行ったがポリポーシスは認められなかった.発症が老齢かつ家族歴がないこと,ポリポーシスを欠くことよりLaugier-Hunziker-Baran症候群と診断した.左手指の黒褐色斑の病理組織像では,基底細胞層のhyperpigmentationと真皮内にメラノファージおよびメラニンの滴落がみられた.

グルコン酸カルシウム静注部位に生じた皮膚石灰沈着症の1例

著者: 坂井博之 ,   松尾忍 ,   飯塚一 ,   土田晃

ページ範囲:P.75 - P.77

 患者は生後13日,女児.複雑心奇形のため市立土別総合病院小児科に入院中,低カルシウム血症の改善目的で右手および右足にグルコン酸カルシウムの点滴投与を受けた.点滴漏洩部位に皮下結節と白色丘疹が出現し,病理組織学的に膠原線維の変性,断裂と,コッサ染色陽性を示す顆粒状物質の沈着を認めた.X線写真においても不整形石灰化陰影が認められた.無処置のまま経過を観察したところ,白色丘疹部から結石状物質が排出され,皮下結節は次第に縮小し,消失した.

成人に生じた皮下型環状肉芽腫

著者: 奥田長三郎 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.79 - P.81

 53歳,女性.リウマチ性疾患と下腿の外傷の既往なし.恙虫病の既往あり.高血圧で治療中に,右下腿に自覚症状のない皮下硬結が2個生じた.組織学的に皮下脂肪組織内に膠原線維のne—crobiosisとそれを取り囲むpalisading granu—lomaがみられ,granulomaの内部に巨細胞が多数混在するが,ムチンは証明されない.生検から2カ月後,結節は自然退縮傾向を示した.成人に生じた皮下型環状肉芽腫と考えられるが,本邦では同様の症例報告はこれまでに4例をみるのみである.

Ofloxacinが奏効したBL型らいの1例

著者: 杉田泰之 ,   小関正倫 ,   矢島幹久 ,   岩田誠 ,   石井則久 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.83 - P.85

 75歳,男性.61歳頃から嗅覚の低下を自覚し,74歳頃から両手のしびれ感,両側前腕および下腿の知覚低下があった.神経内科学的にらいと診断された後,全身に地図状の軽度隆起した紅斑が汎発し,皮疹部の皮膚滲出液スメア標本の抗酸菌染色,光田反応,臨床症状を考慮してBL型のらいと診断した.らいの治療薬としてofloxacin(OFLX)を1日300mg単独投与で治療を開始したところ,3カ月後には皮疹と皮膚滲出液スメア標本の抗酸菌染色所見は改善し,その後他の治らい薬も併用して良好な経過を示した.本症例は,らいの治療薬として近年注目されているOFLXが,らい反応の出現もなく,治療に有効であった症例と考えられた.

治療

白血球除去療法を試みた水疱性類天疱瘡の1例

著者: 土井尚 ,   田中康一郎 ,   天野國幹 ,   堀内賢二

ページ範囲:P.87 - P.90

 70歳,女性.初診の約1年前よりほぼ全身に水疱,紅斑出現.諸検査にて水疱性類天疱瘡と診断後,ステロイドをはじめとする種々の治療を試みるも抵抗性で骨粗鬆症,胃潰瘍の副作用が出現したため輸血時,白血球除去を目的に使用されている白血球除去フィルターを用いた白血球除去療法を開始した.同療法にて皮疹は徐々に改善し約3カ月後にはステロイド離脱が可能となり現在ほぼ皮疹の新生は抑えられている.近年種々の治療に抵抗性あるいは副作用のために従来の治療が継続できない自己免疫性水疱性疾患に対して血漿交換療法を主とする血液浄化療法が試みられているが,自験例のように白血球除去療法を用いた治療はいまだ報告されていない.詳細な機序は不明で臨床効果も確立されていないが,今後試みられる治療法の一つと思われる.

慢性皮膚粘膜カンジダ症—イトラコナゾール内服療法の試み

著者: 松岡芳隆 ,   栗原重 ,   漆畑修 ,   斉藤隆三

ページ範囲:P.93 - P.95

 10歳,男性.8歳時にカンジダ性口内炎.9歳時に原発性甲状腺機能低下症.2カ月前,顔面の疣贅様の角質増殖性紅斑,会陰部の落屑性紅斑局面,手指・足趾の爪囲爪炎出現.臨床・組織・免疫学的所見より自験例を慢性皮膚粘膜カンジダ症と診断した.自験例は各種抗真菌剤治療に抵抗性で経口抗真菌剤であるイトラコナゾールを使用し粘膜・皮膚症状の改善を認めた.

印象記

「第4回日中合同皮膚科学術会議」印象記

著者: 加藤泰三

ページ範囲:P.96 - P.98

 第4回日中合同皮膚科学術会議は1994年9月21日から23日の3日間中国の成都市で開催された.パンダのふるさととして,また三国志の舞台として有名な成都市は四川省の省都であり,人口は940万,四川省全体ではなんと1億700万,ほぼ日本全体に匹敵します.
 私は2年前ひょんなことから瀋陽にある中国医科大学に2カ月ほど滞在したことがあります.その時の楽しい思い出から,機会があればまた中国へ出かけてみたいと思っていました.そして,今年の冬陳教授(中国医科大学)から成都にいらっしゃいという誘いの手紙を頂き,この会議に参加することにしました.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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