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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科49巻10号

1995年09月発行

雑誌目次

カラーアトラス

単発性色素性蕁麻疹

著者: 千葉純子 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.774 - P.775

患者 3ヵ月,男児
初診 1984年3月2日

原著

局面状皮疹を呈した移動性血栓性静脈炎(TM)—症例報告と局面型TMの提唱

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.777 - P.780

 両足内踝から土ふまずにかけてと両手掌に対側性に生じ,臨床的には紅色丘疹が次々と外側に生じて遠心性に拡大する局面状皮疹を呈し,組織学的には新旧の血栓性静脈炎の典型像を呈した30歳女性例を報告した.従来の移動性血栓性静脈炎(TM)とは部位・形態が特異で,局面型TMと呼称した.病因的に物理的圧迫や過労との関連が考えられた.副腎皮質ホルモン剤内服が有効であったが,ヨウ化カリウム内服もある程度奏効した.

慶應大学皮膚科における最近の皮膚T細胞性リンパ腫(菌状息肉症)の治療

著者: 菊池新 ,   仲弥 ,   清水宏 ,   早川和人 ,   西川武二

ページ範囲:P.781 - P.785

 慶應義塾大学医学部皮膚科学教室における最近の皮膚T細胞性リンパ腫(菌状息肉症)20例の治療成績をまとめ,病期ごとの治療指針につき考按を加えた.古典型菌状息肉症の症例では,紅斑期〜扁平浸潤期に対し光線療法(PUVA,UVA)が極めて有効な症例,無治療でもあまり変化のない症例があり,積極的な治療は行わずに経過観察を行った.また腫瘍期に至った菌状息肉症の症例では放射線照射,化学療法,BRM(ガンマインターフェロン)全身投与などを組み合わせて治療したが,成績は不良でいずれの症例も死の転帰をとった.Sézary症候群では,長い紅皮症の経過中はステロイド外用,光線療法などを施行し,リンパ節転移出現後は化学療法を用いたが,予後は不良であり,進行期の菌状息肉症とともに現在のところいかなる治療も無効と考えられた.古典型菌状息肉症,Sézary症候群に含まれないその他の皮膚T細胞性リンパ腫の症例のうち孤立性皮膚腫瘍など局所に限局するものでは手術療法,ガンマインターフェロン局注や放射線照射も極めて有用と考えられた.

今月の症例

AIDS患者にみられた再発性水痘

著者: 渋谷博文 ,   金井貴子 ,   小宅慎一 ,   内藤琇一 ,   柏原光介

ページ範囲:P.787 - P.790

 53歳,女の顔面,四肢に散在する水疱を生じた症例を報告した.1年半前に右三叉神経第1枝の帯状疱疹の既往がある.今回,両手掌手背の水疱にて発症.Human immunodeficiency virus抗体陽性を示し,カリニ肺炎を合併.外用のみで経過観察するも,その後意識障害の出現とともに皮疹は顔面,上下肢に拡大.四肢の水疱は神経の走行とは関係なく散在し,個疹は大豆大前後と大きく孤立性に存在.水疱内の細胞は蛍光抗体法により単純疱疹ウイルス(−),水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)(+).アシクロビル投与にてすみやかに痂皮化し,その後水疱の新生なし.ウイルスの分離はなされていないため断定はできないが,潜伏感染していたVZVによる再発性水痘と考えた.

汎発性黒子症候群の1例

著者: 清水享子 ,   福田知雄 ,   清水宏 ,   橋本隆 ,   多島新吾

ページ範囲:P.791 - P.794

 26歳,男性.汎発する黒子のほか,心電図異常,難聴,耳介聳立,漏斗胸を合併し,汎発性黒子症候群と診断された1例を報告した.汎発性黒子症候群の診断基準を満たす本邦報告例28例につき若干の統計的考察を行ったところ,汎発する黒子は全例に認められ,他の併発症状としては,精神神経系障害,心異常,頭蓋顔面の異常,発育障害が多く認められた.本症候群は遺伝性疾患と考えられているが,本邦例では外国例に比し,遺伝関係が確認された症例は少なく,散発例が多かった.また明らかに男性に多いという傾向が認められた.遺伝形式に関しては,常染色体優性遺伝という考えが多いが,本邦例の統計からは,他の遺伝形式も考慮すべきと思われた.

CHILD症候群の1例

著者: 横手隆一 ,   犬塚加代子 ,   戸倉新樹 ,   瀧川雅浩

ページ範囲:P.796 - P.799

 初診時日齢38,生直後より認められた右半身の奇形を主訴に受診した女児のCHILD症候群を経験したので文献的考察を加え報告した.初診時,身長45cm,体重2690g,右上肢は肩甲帯から欠損,右胸郭の低形成,右下腿,足部の低形成を認めた.顔面,頭部と左半身は正常であった.右鼠径部,右肩相当部を中心に,正中で明瞭に境界された魚鱗癬様紅皮症病変があり,生検組織像では,錯角化と表皮肥厚,好酸球浸潤を伴い,顆粒層は不明瞭であった.患児は肺炎による呼吸不全のため日齢88で永眠した.

連載

Clinical Exercises・30—出題と解答

著者: 渡辺晋一

ページ範囲:P.799 - P.799

 59 角質増殖型の足白癬の説明として正しくないものはどれか.
  (A) 足蹟から足趾全面にわたる禰漫性の角質増殖と落屑性紅斑を形成する.

Practical English for Busy Physicians・21

著者:

ページ範囲:P.854 - P.854

適切適当な単語選び,インターネットについて
 英語の世界では“KISS”という有名な表現があります.これは日本語で言う“接吻”とは違いますよ!実はあまりご存じじゃないかもしれませんが,医学論文でも度々使用されます.つまり“Keep It Simple Stupid”の頭字語ですよ.実に良いアドバイスではありませんか.最近次のような論文を受け取りました.“An analysis of these cases didn't show an increased incidence of the disease and seasonal differences in incidence were not apparent.”この文章は判りやすくはありますが簡潔とは言いにくいので,“An analysis of these cases showed no seasonal or yearly changes in incidence.”と変えました.また別の論文では“A 24 year old Japanese woman had first noticed discrete papules on her trunk at age 22.”となっていましたが,これは無症候性のものでしたから,“A 24 year old Japanese woman had first noted asymptomatic papules…”としました.

症例報告

尋常性魚鱗癬を合併したCrouzon症候群の1例

著者: 市川寛 ,   杉本東 ,   三須憲雄 ,   実川雅一

ページ範囲:P.800 - P.802

 26歳,男性.交通事故による左眼球脱臼のため当院に搬送された.入院後の検査で異常顔貌,眼球突出,上顎骨低形成,頭蓋変形を認め,父親も同様の顔貌であり,Crouzon症候群と診断した.成長,発育は正常で知能障害はなかった.小学生の頃より,体幹,四肢に徐々に拡大する皮膚の乾燥,粗槌化,鱗屑を認め,病理組織学的検討と,末梢血リンパ球ステロイドサルファターゼ活性が正常であったことより尋常性魚鱗癬と診断した.Crouzon症候群は,頭蓋顔面異骨症とも呼ばれ,稀な疾患であり,尋常性魚鱗癬との合併例も見あたらないため報告した.

ペニシリン製剤により誘発された汎発性膿疱性乾癬の1例

著者: 川合美里 ,   南波正 ,   清島真理子 ,   森俊二 ,   北島康雄

ページ範囲:P.803 - P.805

 42歳,女性.小児期より尋常性乾癬に罹患し,以後出産,上気道感染等を機に汎発性膿疱性乾癬を反復したが,最近はシクロスポリン内服により良好にコントロールされていた.歯科より投薬されたペニシリン製剤,消炎鎮痛剤を内服したところ,同日より両手掌の紅斑と痒みが発生し,翌日より紅斑が全身に拡大し,その後膿疱が出現した.膿疱は組織学的には角層下海綿状膿疱であった.治療はステロイド内服が著効し,30mg/日より開始したところ膿疱は投与開始より3日目で消失した.パッチテスト,内服テストが陽性であったことから,ペニシリン製剤で誘発された汎発性膿疱性乾癬あるいは膿疱型薬疹の可能性を考えた.両者の鑑別と薬剤誘発による膿疱性乾癬に関し,文献的考察を加えた.

右尺骨動脈より出血した血管ベーチェット病の1例

著者: 細川倫子 ,   宮澤偵二 ,   斉藤克郎 ,   舩山道隆

ページ範囲:P.806 - P.808

 再発性アフタ,下肢の結節性紅斑様皮疹,血栓性静脈炎等の症状で,不全型ベーチェット病として17年間経過観察していた39歳男.右前腕内側に発赤腫脹を生じ,同部より出血して,皮下血腫形成により尺骨神経麻痺症状を伴った.手術時,右尺骨動脈の裂隙と周囲の動脈の狭小化が認められた.組織学的には血管内皮細胞の増殖による閉塞性病変が主体で,血管周辺組織の軽度の炎症性変化を伴っていた.血管ベーチェット病の本邦報告例を検討し,考察を加えた.

単純疱疹ウイルス感染が関係した急性苔癬状痘瘡状粃糠疹

著者: 秋山朋子 ,   清島真理子 ,   北島康雄

ページ範囲:P.809 - P.811

 単純疱疹ウイルス感染が関係したと考えられる急性苔癬状痘瘡状粃糠疹の1例を報告した.症例は11歳,男児.5月11日頃前胸部中央に爪甲大黒色血痂を伴う潰瘍が出現し,その後紅斑を伴う米粒大から大豆大の水疱が数個みられるようになった.血液像では好中球27.3%と減少し,リンパ球57.8%と増加し,単純疱疹ウイルスIgG抗体価7.3,IgM抗体価1.0を示し高値であった.約1ヵ月後には皮疹が四肢にもみられた.この時,単純疱疹ウイルスIgG抗体価112と上昇し,IgM抗体価は0.2と減少した.紅斑のみ呈する新鮮な皮疹から生検したところ,表皮内への著明なリンパ球浸潤が認められ,リンパ球周囲には表皮細胞の変性,空胞化がみられた.真皮上層血管周囲には著明なリンパ球浸潤がみられ血管壁の破壊,赤血球の血管外漏出が認められた.急性苔癬状痘瘡状粃糠疹の初期の組織像と考えられた.吉草酸ベタメサゾン軟膏外用により皮疹は色素沈着を残して軽快した.

心筋梗塞を伴った抗カルジオリピン抗体陽性の全身性エリテマトーデス・Sjögren重複症候群

著者: 湊原一哉 ,   沢田泰之 ,   入舩あゆみ ,   横関博雄 ,   片山一朗 ,   西岡清 ,   飯塚純子 ,   石原直子 ,   鈴木文男 ,   青木延雄

ページ範囲:P.813 - P.816

 全身性エリテマトーデスとSjögren症候群の重複症候群の経過中に心筋硬塞を発症した43歳女性例を報告した.初診時,顔面紅斑,手指の凍瘡様紅斑,乾燥性角結膜炎,口腔乾燥症状,唾液腺シンチ両側軽度集積低下,口唇生検4°,抗SS-A抗体2倍よりSjögren症候群と診断.経過中,多関節痛および顔面・四肢の浮腫,蛋白尿出現.全身性エリテマトーデスとSjögren症候群の重複によるネフローゼ症候群と診断.プレドニゾロン40mg/日より経口投与開始.投与開始5日目に軽度の背部痛を訴え,心電図II, III, aVFとV4〜6のST上昇と異常Q波,心エコー検査の下壁,心尖部心筋のakinesisより急性心筋硬塞と診断した.自験例では,抗カルジオリピン抗体陽性であり動脈硬化などの危険因子のない若年発症の心筋硬塞の原因の一つとして抗リン脂質抗体の関与が考えられた.

フレロキサシンによる光線過敏型薬疹の3例

著者: 山口潤 ,   小口尚 ,   徳留康子 ,   勝俣道夫

ページ範囲:P.817 - P.819

 73歳,男性(症例1),79歳,男性(症例2)および82歳,女性(症例3)に生じたフレロキサンシンによる光線過敏型薬疹を報告した.症例1は内服3ヵ月,症例2は4ヵ月,症例3は1ヵ月後より露光部に一致して瘙痒性皮疹が出現し,内服中止後に略治した.3例ともに内服誘発試験で陽性であった.自験例の共通点として患者は薬剤を長期間投与された高齢者であった.したがって本剤使用の際にはその特性を熟知し,十分な配慮をして副作用を防ぐ必要があると思われた.

スキーの後に増悪した種痘様水疱症

著者: 赤坂俊英 ,   昆宰市 ,   前田正彦

ページ範囲:P.820 - P.822

 12歳,男児の冬季のスキー後に増悪した種痘様水疱症の1例を報告した.皮疹は春から初夏には認められず,雪面上の紫外線の直接照射光と反射光の加算により発症したと考えた.さらに,紫外線の各波長の最小紅斑量(MED)の測定で300nmからUVA領域にかけての低MEDおよびUVA領域へのシフトが認められた.また,自験例が冬季のみに発症した理由,あるいは種痘様水疱症が数年後に発症しなくなる理由には紫外線の反復照射で皮膚の紫外線に対するなれの現象,あるいはUVAに対する耐性の獲得が関与すると考えられた.

唇紅部に及んだ上口唇の脂漏性角化症の1例

著者: 小林孝志 ,   山崎雄一郎 ,   荒木由紀夫 ,   渡辺知雄

ページ範囲:P.823 - P.825

 95歳,女性の上口唇左側に一部唇紅部にまで及んで生じた脂漏性角化症の症例を報告した.本腫瘍は,手掌および足底以外全身いずれの部位にも生じ得る.またその発生と毛包との関わりが古くから示唆されている.筆者らが検索し得た限りでも,本腫瘍が毛包の存在しない唇紅部に及んだとする報告はない.自験例は上口唇皮膚に生じた腫瘍が増殖していく過程で唇紅部にまで拡大したものと考えた.

Cystic eccrine spiradenoma

著者: 木花光 ,   川島淳子

ページ範囲:P.826 - P.828

 52歳,女性の臀部に数年前より生じた巨大なeccrine spiradenomaの1例を報告した.大きな嚢腫の内腔に充実性腫瘍塊が存在し,さらにその中に多数の裂隙が形成されていた.嚢腫壁,裂隙壁には内皮細胞はなく,外力による脈管の破綻により間質内の小空隙に出血を繰り返した結果,本組織像を呈するようになったと推察した.

尿道にも病変が進展したerythroplasia of Queyratの1例

著者: 添田道太 ,   津田眞五 ,   清川兼輔 ,   白水加乃 ,   宮里稔 ,   笹井陽一郎 ,   田井良明

ページ範囲:P.829 - P.831

 74歳,男性.初診の約4ヵ月前より外尿道口を中心に表面ビロード状を呈する境界明瞭な紅斑が出現.抗真菌剤,抗生物質,ステロイド含有軟膏の外用などで軽快しないため,久留米大学病院皮膚科を受診.皮膚生検にてBowen病の組織像を認めた.肉眼的に病変は尿道内に及んでいたため,陰茎部分切除術を行った.切除した尿道粘膜は不規則に肥厚し,異型細胞を多数認めたが,粘膜下への浸潤はなかった.男性の尿道の外尿道口より舟状窩に至る部分の尿道粘膜は,重層扁平上皮より構成されているため,erythroplasia of Queyratの病変が外尿道口にみられる場合には,尿道内への病変の波及に注意すべきである.

脳回転状皮膚を呈した色素性母斑の1例

著者: 佐々木裕子 ,   松本博子 ,   荒浪暁彦 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.833 - P.835

 脳回転状皮膚は症状名で,様々な病因により皮膚にひだと溝が生じ脳回転を思わす局面が出現することを特徴とし,頭部に好発する.41歳,男性.10歳頃より右後頭部に淡褐色斑が生じ徐々に隆起拡大.初診時右後頭部に約12×10cmの脳回転を思わす隆起性局面が認められ,組織学的には真皮型色素性母斑であった.色素性母斑による脳回転状皮膚の1例を若干の考察を加え報告する.

子宮癌手術後のacquired lymphangioma

著者: 川岸尚子 ,   飯塚一 ,   岸山和敬 ,   渡辺信

ページ範囲:P.836 - P.838

 68歳,女性.60歳時に子宮癌の手術の既往がある.子宮癌手術の3年後の63歳頃から左大陰唇に小丘疹,小水庖が出現し,徐々に増加してきた.66歳頃には,右大陰唇にも同様の皮疹が出現し,浸出液も伴うようになったため,当科を受診した.病理組織学的に真皮乳頭層から真皮上層にかけて,1層の内皮細胞からなる著明に拡張した管腔が多数みられ,第VIII因子関連抗原を用いた免疫組織化学染色は陰性であった.自験例を報告するとともに本邦報告例13例について検討した.

陰嚢部にverruciform xanthomaを生じたCowden病の1例

著者: 金児みわ子 ,   斉木実 ,   横林敏夫 ,   岨手善久 ,   臼井達也 ,   斎田俊明

ページ範囲:P.840 - P.842

 64歳,男性のCowden病の1例を報告した.顔面に扁平疣贅様丘疹,手掌,手背,足底に疣贅様または鶏眼様角化性丘疹,歯肉に乳頭腫と高口蓋,躯幹に多発性脂肪腫が認められ,陰嚢部には表面カリフラワー状の紅色有茎性結節が見いだされた.消化管ポリポーシス,甲状腺腺腫,腎腫瘍も合併していた.腹膜肉腫,副鼻腔炎,胆石症の既往歴がある.病理組織学的には手背の角化性丘疹は乳頭腫状の角質増生と表皮の肥厚を示し,歯肉部にも上皮の肥厚がみられた.陰嚢部の結節はverruciform xanthomaの所見を示した.Cowden病でverruciform xanthomaを伴った症例は今までのところ報告されておらず,自験例が最初の報告と思われる.本例を含めた本邦報告例38例について若干の考察を加えた.

発疹性黄色腫の1例

著者: 永井弥生 ,   石川治 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.843 - P.845

 46歳,女性.初診約1ヵ月前より膝蓋,肘頭に黄白色の紅暈を伴う小丘疹が出現した.組織学的に真皮内に泡沫細胞の集塊を認めた.検査にてIV型高脂血症および糖尿病を認めた.高脂血症治療薬を投与したところ皮疹は約6週間で速やかに消褪した.自験例は皮疹が外力を受けやすい部位に限局し,結節性黄色腫や結節性発疹性黄色腫の分布に類似していたが,明らかな結節は認めず,発疹性黄色腫と考えられた.

顔面の腫脹を主訴とした悪性組織球症の1例

著者: 高木晴美 ,   梅木薫 ,   伊奈慎介 ,   野村和夫 ,   橋本功 ,   鎌田義正 ,   四ツ柳高敏

ページ範囲:P.846 - P.848

 61歳,男性.59歳時よりC型慢性肝炎で治療中.初診約1ヵ月前より蜂刺されを契機として顔面の著明な浮腫,口唇・口囲の浸潤性紅斑および弾性硬,圧痛を伴う硬結が出現,体重減少もみられた.汎血球減少,肝機能異常,肝脾腫を認めたが,発熱・リンパ節腫脹はなし.組織所見は真皮中層から皮下脂肪織の血球を貪食する組織球系細胞の結節状増殖像.肝・骨髄への有意な浸潤はみられず,以上の所見より皮膚原発悪性組織球症(malignant histiocytosis; MH)と考えた.ステロイド内服療法で皮疹は著明に改善するも,両側顔面神経麻痺および左反回神経麻痺をきたしたため,両側下眼瞼兎眼に対し瘢痕拘縮形成植皮術を施行した.自験例のような顔面の腫脹を主訴とし,皮疹改善後に末梢神経麻痺をきたしたMHは極めて稀と考えた.

治療

尋常性乾癬に対するPUVA bath療法

著者: 広川政己 ,   和田隆 ,   木ノ内基史 ,   坂井博之 ,   橋本喜夫 ,   筒井真人 ,   飯塚一

ページ範囲:P.849 - P.851

 旭川医科大学附属病院皮膚科に入院した26例の尋常性乾癬患者に対し,PUVA即時照射法の変法であるPUVA bath療法を施行し,良好な治療結果が得られたので報告する.効果判定にはPsoriasis Area Severity Index score(PASIスコア)を基準に用いた.全症例の平均PASIスコアは,治療前が12.3,治療後が3.0,平均総照射量は43.1 J/cm2,平均照射回数は19.7回であった.有効以上の症例が19例あり,有効率は73.1%であった.尋常性乾癬に対するPUVA bath療法の利点は,従来より施行されている外用PUVA療法のような手間の繁雑さや,過度の色素沈着などの整容上の問題点がなく,非常に低いUVA照射線量で内服PUVA療法とほぼ同等の治療効果が得られることである.このことは,PUVA療法の最終的な副作用として問題となるPUVA発癌の危険性を低減するという面からも,非常に有望な治療法であると思われる.

これすぽんでんす

杉田泰之,他著「Ofloxacinが奏効したBL型らいの1例」を読んで

著者: 和泉眞藏 ,   小原安喜子

ページ範囲:P.852 - P.852

 杉田泰之,他著「Ofloxacinが奏効したBL型らいの1例」(臨皮49:83, 1995)として報告された症例についてお手紙を差し上げます.本症例報告の主旨は,BLらいに新しい治らい剤として注目されているofloxacinが奏効した点にあると思われますが,臨床経過から見てBLらいとするには不適当な症例と考えます.
 報告によりますと,本例の診断確定は1991年となっていますが,正しくは1990年10月です.某大学病院の神経内科でらいと診断され,らい予防法指定医である筆者の1人が診察し,皮疹部の塗抹菌検査陽性,皮膚と腓腹神経の病理組織学的所見から活動期の境界群らい(BTらい)と確定診断されました.その後諸般の事情で国立療養所多磨全生園に転院し今日に至っています.

ご意見に答えて

著者: 杉田泰之

ページ範囲:P.853 - P.853

 病型,治療法についての貴重なご意見をありがとうございました.ご指摘の内容について説明させていただきます.
 まずはじめに,私たちの論文は,病型がBL型に変化した後に開始した治療の経過を報告したものです.療養所に入園する以前の症状には不明な点もあり,皮疹が生じる以前の病型については言及していません.また,論文に示した皮疹の出現以前にらいに特異的な皮疹はなく,皮膚の組織液の抗酸菌染色を複数回行いましたが,らい菌は検出できませんでした.この症例を最初にらいと診断した某大学神経内科の先生方は,徹底的に抗酸菌染色を行われ,神経組織に1個のらい菌を認めることができたとのことでした.当初から菌が検出されていたという指摘ですが,徹底的な抗酸菌染色で神経組織内に1個発見できるかどうかという程度であったのです.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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