症例報告
単純疱疹ウイルス感染が関係した急性苔癬状痘瘡状粃糠疹
著者:
秋山朋子1
清島真理子1
北島康雄1
所属機関:
1岐阜大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.809 - P.811
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単純疱疹ウイルス感染が関係したと考えられる急性苔癬状痘瘡状粃糠疹の1例を報告した.症例は11歳,男児.5月11日頃前胸部中央に爪甲大黒色血痂を伴う潰瘍が出現し,その後紅斑を伴う米粒大から大豆大の水疱が数個みられるようになった.血液像では好中球27.3%と減少し,リンパ球57.8%と増加し,単純疱疹ウイルスIgG抗体価7.3,IgM抗体価1.0を示し高値であった.約1ヵ月後には皮疹が四肢にもみられた.この時,単純疱疹ウイルスIgG抗体価112と上昇し,IgM抗体価は0.2と減少した.紅斑のみ呈する新鮮な皮疹から生検したところ,表皮内への著明なリンパ球浸潤が認められ,リンパ球周囲には表皮細胞の変性,空胞化がみられた.真皮上層血管周囲には著明なリンパ球浸潤がみられ血管壁の破壊,赤血球の血管外漏出が認められた.急性苔癬状痘瘡状粃糠疹の初期の組織像と考えられた.吉草酸ベタメサゾン軟膏外用により皮疹は色素沈着を残して軽快した.