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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科49巻5号

1995年04月発行

特集 最近のトピックス1995 Clinical Dermatology 1995

II 皮膚疾患の病態

c-KITとメラノーマ

著者: 船坂陽子1 市橋正光1

所属機関: 1神戸大学医学部皮膚科学教室

ページ範囲:P.76 - P.80

文献概要

 培養メラノサイトはc-kit遺伝子およびc—KIT蛋白を強く発現しているのに対し,メラノーマ細胞株では8株中5株においてc-kit遺伝子の発現を検出しえたがその発現は弱かった.c-KITリガンドによる刺激後,メラノサイトではc-KITのチロシン残基の著明なリン酸化がみられたのに対し,メラノーマ細胞では10株中4株において弱いリン酸化反応をみるのみであった.ポリクローナル抗体を用いた免疫組織染色では,表皮基底層および毛包部に存在するメラノサイトの細胞膜に一致してc-KITの強い発現を認めた.境界母斑(6例中6例)および複合母斑の表皮境界部に存在する色素細胞(6例中6例)は強陽性を示したが,複合母斑の真皮直下を除く真皮母斑細胞(6例中6例),真皮内母斑(4例中4例),および青色母斑細胞(4例中4例)は陰性であった.Dysplastic nevusでは表皮内に存在する色素細胞は13例中13例に,表在拡大型黒色腫では4例中3例において陰性化を認めた.結節型黒色腫(5例中5例),肢端黒子型黒色腫の垂直増殖部(8例中8例)および転移巣(7例中6例)の色素細胞は一部のクローン(約5〜10%)において陽性を認める以外は陰性化していたが,肢端黒子型黒色腫の表皮基底層に沿った水平増殖部では8例全例とも陽性であった.以上より,1)c-KITの発現は表皮内におけるメラノサイトの増殖分化に重要な役割を果たすこと,2)その発現は異所性増殖および悪性化に伴い減弱ないしは消失する傾向にあること,3)肢端黒子型黒色腫の水平増殖部はdysplastic nevus,表在拡大型黒色腫,結節型黒色腫とはc-KITの発現動態が異なることが示された.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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