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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科50巻11号

1996年10月発行

雑誌目次

カラーアトラス

環状扁平苔癬

著者: 木花光 ,   川島淳子

ページ範囲:P.862 - P.863

患者 56歳,女
初診 1992年6月17日

原著

Melanoma in situ病変をみた小型先天性および後天性色素性母斑—ホルマリン固定パラフィン包埋未染標本の蛍光法的所見を中心として

著者: 下島博之 ,   森鳴隆文 ,   森鳴智津子 ,   岡田知善 ,   涌井史典 ,   藤田日出難 ,   原弘之 ,   落合豊子

ページ範囲:P.865 - P.869

 Malignant melanoma(MM)in situ病変をみた小型の先天性色素性母斑(CMN)の30歳,女性例(症例1)と後天性色素性母斑(AMN)の8歳,男児例(症例2)を報告した.興味あることは症例1では1)長径7mm,病理組織学的にsuperficialtypeのCMNの被覆表皮から母斑病巣を欠く表皮にsuperficial spreading melanoma(SSM)insitu病変が連続性にみられたこと,2)未染標本の蛍光法と同一切片のHMB−45染色で基底層〜有棘層に紡錘形〜大型円形の蛍光性腫瘍細胞が個別性〜小胞巣状に増生し,HMB−45は強陽性で,SSM in situの所見に一致していたこと,症例2では1)長径8mm,掻痒を伴う黒子(AMN)の表皮に異型境界部活性を認めたこと,2)未染標本の蛍光法では紡錘形〜円形〜多形の蛍光性腫瘍細胞からなる不規則形の胞巣であったことである.以上,小型のCMNやAMNがMMの前駆病変になりうること,MM in situ病変の確認に未染標本の蛍光法が有用であることを強調したい.

臨床統計

HIV感染者23名における皮膚病変について

著者: 西山貴郁 ,   石井則久 ,   杉田泰之 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.871 - P.874

 横浜市立大学医学部附属病院開院以来4年5ヵ月間に皮膚科を受診したHIV感染患者は計23人で,男性が20人,女性が3人であった.年齢分布では若年者に多くみられた.約3分の2の症例は性行為による感染症と考えられ,特に1994年以降では性行為による感染が増加する傾向がみられた.皮膚症状としては乾燥性皮膚,口腔カンジダ症,脂漏性皮膚炎などが高率に認められた.性行為による感染者では血液製剤による感染者に比べて梅毒抗体価陽性,梅毒疹,陰部ヘルペスなどが著明に高率であった.

今月の症例

Nodular colloid degenerationの1例

著者: 荒浪暁彦 ,   桜井みち代 ,   戸倉新樹

ページ範囲:P.876 - P.878

 52歳,男.両側頬部内側に生じた扁平隆起性燈赤色局面を主訴に受診.生検皮膚標本のHE染色にて,真皮全層にわたり,好塩基性の無構造物質が充満していた.この物質は,PAS陽性,クリスタルバイオレット,コンゴーレッド,ダイロン,チオフラビンTの各染色で陰性,ファンギーソン染色で黄染し,電顕的に短く樹枝状に分岐し交叉する線維であることより,nodular colloiddegenerationと診断した.

症例報告

ぶどう膜炎を併発した乾癬性紅皮症の1例

著者: 横田田鶴子 ,   小林仁 ,   大河原章 ,   小竹聡

ページ範囲:P.879 - P.881

 43歳,男性.10歳代後半から尋常性乾癬に罹患,近医で治療を受けていたが次第に皮疹は悪化,24歳頃から乾癬性紅皮症の状態となり当院を受診.その後種々の治療に抵抗し,軽快増悪を繰り返すうち,41歳頃から眼痛,差明,結膜毛様充血,前房蓄膿が出現,これらの所見から前部ぶどう膜炎と診断した.全経過中関節症状を認めず,HLA-B27は陰性であった.尋常性乾癬および乾癬性紅皮症にぶどう膜炎が併発することは,関節症性乾癬や膿庖性乾癬に比して稀であるが,乾癬性紅皮症にぶどう膜炎を伴った症例と考えた.若干の文献的考察を加えて報告した.

環状扁平苔癬

著者: 安部正敏 ,   秋元幸子 ,   割田昌司 ,   石川治 ,   宮地良樹 ,   服部瑛

ページ範囲:P.883 - P.886

 環状扁平苔癬の定型例および扁平苔癬で一部の皮疹が環状を呈し,組織学的に環状扁平苔癬に一致した症例の2例を報告した.2例とも組織学的所見では皮疹辺縁部の真皮上層に炎症性細胞浸潤像が認められたが,皮疹中央部では真皮上層の細胞浸潤はわずかであった.環状扁平苔癬はこれまで4つの皮疹成立過程による分類が報告されており,これらの分類に当てはめると自験例はlarge ring型に相当すると思われた.他方,一部の皮疹が環状を呈した定型的扁平苔癬例を経験したことと考えあわせると,患者から聴取した現病歴や皮疹の観察時期の相違により環状扁平苔癬の臨床分類が意味をもつかどうか疑問であると思われた.

肥満と糖尿病に合併した融合性細網状乳頭腫症

著者: 伊丹聡巳 ,   中田良子 ,   石川優子 ,   上出良一 ,   新村眞人

ページ範囲:P.887 - P.889

 22歳,女性の融合性細網状乳頭腫症で肥満と糖尿病に合併した症例を報告した.血糖値,体重と皮疹重症度の関係を見るために尿素系軟膏の外用のみで皮疹を長期間観察した.体重の減少した時期に皮疹の著明な軽快が観察され,肥満との関連性が強く示唆された.また,皮疹が軽快した時の血糖値は高いままであり,血糖値と皮疹の関連はないものと思われた.

塩酸ミノサイクリンによるnonpigmenting fixed drug eruptionの1例

著者: 高永哲也 ,   村津麻紀 ,   玉置昭治

ページ範囲:P.891 - P.893

 塩酸ミノサイクリンによnollpigmentingfixed drug eruptionを経験したので報告した.31歳,男性.1993年9月クラミジアに感染したため,塩酸ミノサイクリンを1週間内服した.再び尿道痛を生じたため,10月14日夜と15日朝に同剤を内服したところ,16日夜に肩から背中,下腿を中心に,爪甲大の比較的境界明瞭な紅斑が10数個出現した.紅斑は21日には自然消失した.内服試験は11月2日,9日の2度行い,いずれも初回皮疹部に一致して内服約12時間後に紅斑が出現し,数日で消退した.色素沈着はきたさなかった.これまでの文献を合わせて考察し,薬剤による,色素沈着を残さない,同一部位に繰り返す紅色斑ないし水庖をnonpigmenting fixed drug eruptionとしてよいと考えた.

Diaphenylsulfone(DDS)とチオプロニンによる薬剤アレルギー

著者: 新谷久恵 ,   下江敬生 ,   荒木寿枝

ページ範囲:P.895 - P.897

 Diaphenylsulfone(DDS)による肝機能障害が出現し,それに対して投与したチオプロニンにより皮疹が出現したと思われる稀な症例を経験したので報告する.57歳,女性.天疱瘡の診断でプレドニゾロン,DDSの内服中に,発熱を伴い,肝機能障害が出現した.DDSを中止し,チオプロニンの内服を開始したが,6日後より全身に紅斑,丘疹が出現した.薬疹を考え,チオプロニンの内服も中止し,プレドニゾロンをベタメタゾンに変更した.翌日より解熱し,皮疹もすみやかに軽快した.肝機能障害も徐々に改善した.組織所見では,表皮と真皮の境界を中心にリンパ球,組織球の浸潤を認め,表皮の空胞化,海綿状態が認められた.DLSTはDDS疑陽性,チオプロニン陽性,パッチテストはDDS陰性,チオプロニン陽性であった.

海外渡航後に発症した足のcreeping eruptionと考えた1例

著者: 石井良征 ,   梅林芳弘 ,   大塚藤男 ,   入江勇治 ,   荒木国興

ページ範囲:P.900 - P.902

 27歳,チリ人.初診1994年9月1日.1993年より日本に在住.初診の約1カ月前にマレーシアに渡航し,裸足で海辺周辺を歩いたという.日本に帰国後,左足縁,足底に蛇行する線状皮疹に気がっいた.生食の既往なし.組織学的には真皮上層から表皮にかけて著明な好酸球浸潤を認めた.未梢血好酸球10%(1040/mm3),IgE 1124 U/ml.典型的な臨床像より,ブラジル鉤虫幼虫の経皮感染によるcreeping eruptionと考えた.

指問白癬の3例

著者: 奥田長三郎 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.903 - P.906

 症例1:64歳,女性.基礎疾患なし.左第2,3,4指間部に紅斑,鱗屑,浸軟,糜爛と掻痒があり,Epidermophyton floccosumを分離した.症例2:82歳,女性.悪性リンパ腫で通院中で,右第1指間に自覚症状のない落屑と小水疱を認め,Trichophyton rubrumを分離した.症例3:77歳,女性.脳梗塞で入院中で,両手の全指間から指の近位側面にかけて鱗屑と軽微な紅斑があり,自覚症状の有無は不明である.常時手を握っている.T.rubrumを分離した.指間白癬は,当科で過去5年間に経験した手白癬74例中,今回の3例のみ(4,1%)である.過去18年間に文献上確認し得た本邦症例報告3例を含めた6例を検討すると,大部分がT.rubrumに起因し,全例女性で,60〜80代に好発し,いずれも,一見,カンジダ性指間糜爛症を思わせるが,どの指間にも生じ得ることが特徴と考えられる.

Cushing症候群患者にみられたヒト乳頭腫ウイルス57型による特異な巨大疣贅

著者: 本多章乃 ,   原弘之 ,   本庄三知夫 ,   落合豊子 ,   森嶋隆文 ,   松倉俊彦

ページ範囲:P.907 - P.910

 副腎皮質腺腫によるCushing症候群を合併していた34歳,男性の右第IV, V趾に発症した,ヒト乳頭腫ウイルス57型による巨大疣贅を報告した.患者の第V趾は爪甲が埋没し,健皮がみられないほど疣贅が増大していた.液体窒素療法等にも抵抗性であった.皮膚が軽度萎縮性で毛細血管が透見されたこと,高血圧が指摘されたことから諸検査を施行した.その結果,血中・尿中コルチゾールの上昇とACTHの低下を認め,腹部エコーにより右副腎腫瘍が発見され,Cushing症候群と診断した.右副腎摘出後,疣贅は急速に消褪傾向を示し,約3ヵ月半で完全に自然消褪した.自験例はコルチゾール過剰状態のために,疣贅が巨大化したものと推察される.難治性の疣贅に遭遇したときには,基礎疾患の存在を考慮する必要があると考えられた.

Intravascular papillary endothelial hyperplasiaの1例

著者: 荒木英俊 ,   轟葉子 ,   江藤隆史 ,   飯田直成 ,   守屋修二 ,   戸田淨

ページ範囲:P.911 - P.913

 46歳,女性の右第IV指に生じたintravas—cular papillary endothelial hyperplasia(IPEH)の1例を経験した.初診の約4ヵ月前より右第IV指爪甲外側の皮下腫瘤に気づいた.初診時同部位に直径7mmの圧痛のある弾性軟,周囲組織との癒着のない淡青色皮下腫瘤を認めた.MRI,血管造影から血管系腫瘍を疑い全摘手術を行った.病理組織学的には,皮下の拡張した管腔構造内に血栓形成と多数の乳頭状増殖を示す血管内皮細胞を認めた.内皮細胞は1層で細胞の異型性や分裂像はみられず,第8因子関連抗原は弱陽性を示した.本例では先行する他の血管系腫瘍はみられず,臨床的分類におけるpure formと診断した.IPEHの臨床分類および病理学的特徴を検討し報告した.

色素血管母斑症の1例

著者: 畑野浩幸 ,   小林仁 ,   大河原章 ,   吉田和彦 ,   高橋豊

ページ範囲:P.914 - P.916

 9ヵ月男児.出生時からほぼ全身に青色斑と紅斑を認めた.生後5ヵ月からてんかん発作が出現した.眼科学的に両側眼球メラノーシス,両側先天性緑内障を,神経学的に精神発達遅延,左片麻痺を認め,CTスキャンにて著明な脳萎縮と脳の石灰化があり,脳内血管腫の存在が示唆された.皮疹の病理組織所見は,青色斑部は真皮上層から下層にかけてdermal melanocyteが散見され,紅斑部は単純性血管腫の像を呈していた.以上より自験例をSturge-Weber症候群を合併した色素血管母斑症のII b型と診断した.本症について若干の考察を加えた.

Apocrine cystadenomaの1例—ケラチン発現の免疫組織化学的検討

著者: 大西誉光 ,   藤村真美 ,   渡辺晋一

ページ範囲:P.918 - P.920

 35歳,男性の顔面に発症したapocrinecystadenomaの1例につき報告する.2年来の左下眼瞼の示指頭大の皮内〜皮下の小結節で,組織学的に断頭分泌を伴う円柱状の細胞を主体とする多房性の嚢腫で,本症と診断した.抗ケラチンモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的検討の結果,自験例の染色態度は主に正常汗腺の分泌部と同様であったが,一部には螺旋部に似通った染色態度の部分も認められた.

所属リンパ節に黒色病変を認めた巨大な異型青色母斑

著者: 尾山徳孝 ,   郡司裕則 ,   舘下亨 ,   二瓶義道 ,   小野一郎 ,   金子史男

ページ範囲:P.921 - P.923

 28歳,女性.右大転子部の黒褐色病変のため受診した.皮疹は暗青色の色素斑,および黒褐色の丘疹と結節で形成され,17×8.5 cmの範囲で集簇していた.所属リンパ節に2個の小豆大腫瘤を触知したため悪性青色母斑,ないし悪性黒色腫のリンパ節転移を疑い,色素斑を含めて腫瘤を全摘した.病理学的所見では,原発巣は青色母斑の組織像にメラノサイトの軽度異型性を伴っており,異型青色母斑と診断し,拡大切除術と右鼠径リンパ節郭清術を追加した.また腫脹し,黒褐色を呈していたリンパ節にも組織学的にメラノサイトの集簇を認めた.その後,再発は認められていない.

白皮症に合併した悪性黒色腫

著者: 湯浅徹也 ,   橋本健治 ,   水谷仁 ,   清水正之

ページ範囲:P.926 - P.929

 64歳男性の白皮症の患者に合併した,右上腕の悪性黒色腫の1例を経験した.毛球部のドーパ反応,チロシナーゼ反応は共に陽性で,チロシナーゼ陽性型白皮症と考えた.悪性黒色腫の大きさは28×26mm,腫瘤部は赤色で,局面部は黒色であった.また,上背部と両上肢に米粒大の角化性丘疹を認め,組織学的に日光角化症と診断した.白皮症に日光角化症が伴う頻度は非常に高いが,悪性黒色腫の発生した報告は少なく,本邦では2例目,世界で21例目となる.白皮症に合併する皮膚悪性腫瘍について,若干の考察を加えた.

脂漏性角化症上に発生したBowen病の1例

著者: 秋友保千代 ,   為政大幾 ,   細川宏 ,   堀尾武 ,   菱川秀夫

ページ範囲:P.930 - P.932

 59歳,女性.初診の5年前に左下腿外側の褐色斑に気づくも放置していた.初診の7ヵ月前より,その一部が隆起しびらんを生じてきた.褐色局面は3.5×3.0cm大で,そのほぼ中央に1.8×1.6cm大で表面にびらんと痂皮を伴う淡紅色の疣贅様腫瘤が存在した.病理組織学的に,褐色局面部は脂漏性角化症,腫瘤部はBowen病と診断した.脂漏性角化症から生じたBowen病や有棘細胞癌の報告例は比較的まれであるが,脂漏性角化症にびらんや腫瘤が生じてきた場合には,悪性変化に注意する必要があると考えられる.

皮下結節を伴った先天性白血病の1例

著者: 佐藤美貴 ,   清島真理子 ,   市橋直樹 ,   北島康雄 ,   山田幸治 ,   加藤義弘

ページ範囲:P.933 - P.935

 生後55日,男児.生後18日ごろより鼻閉,呼吸困難が出現した.生後55日頃から顔面,体幹部,鼠径部に小指頭大の皮下結節が出現し,生検組織において真皮全層および脂肪細胞間に異型性に富む単球様細胞からなる細胞浸潤がみられた.末梢血では白血球数が135,300/mm3にまで著増し,異型単核球も認められた.骨髄検査では骨髄芽球と単芽球の性質を有した芽球が70%を占め,染色体異常46, Y, t(x;10)(q2?;q2?),inv(9)(p11, q13)も認められた.以上より骨髄単球性白血病と診断し,VP−16,AraC,MITによる化学療法を行ったところ全身状態,皮膚症状ともに著しい改善がみられた.

肺癌の皮膚転移

著者: 寺鳴亨 ,   本城貴子 ,   新藤季佐 ,   鈴木伸典 ,   井上健 ,   小林庸次

ページ範囲:P.938 - P.940

 74歳,男性.初診1ヵ月前から腰部に茶褐色皮疹が出現し増大した.生検では,表皮に異型性はなく,真皮内に重層扁平上皮に類似した異型細胞の増殖を認めた.同時に咳漱,血痰を認め呼吸器内科でも精査し,胸膜の生検で重層扁平上皮に類似した異型細胞の増殖を認め,肺癌の皮膚転移と考えた.腫瘍マーカーに異常は認めなかった.初診より17日目に癌性リンパ管炎を併発し死亡した.皮膚転移巣が原発巣より早く発見された症例を報告する.

インターフェロンα筋注部位に生じた巨大皮膚潰瘍

著者: 木花光 ,   長谷川喜厚 ,   小林孝志

ページ範囲:P.941 - P.943

 腎癌の69歳男に,家人がインターフェロンαの筋肉注射を続けていたところ,注射部位の両側臀部に巨大な皮膚潰瘍が生じた症例を報告した.機序として,誤って皮下織に注入された本剤が軽微な炎症を惹起し,その炎症が修復される間もない,同一部位への頻回の投与が炎症を悪化させ,上方の皮膚への血流を断ち壊死に陥らせたと考えられた.この副作用を予防するためには,注射部位をローテートして同一部位への連続の注射を避けることが肝要であろう.

連載

Clinical Exercises・43—出題と解答

著者: 伊藤雅章

ページ範囲:P.917 - P.917

 図1は正常ヒト表皮の透過型電子顕微鏡像である.(酢酸ウラン・クエン酸鉛染色,×24,000)85 矢印で示す構造物の構成分子として正しい組み合わせはどれか.
  ① kalinin

Practical English for Busy Physicians・34

著者:

ページ範囲:P.937 - P.937

アメリカの医療保険の及ぼす皮膚科医の現状について
 皆さんは全米中の一般病院(無利益病院を除く)のベッド数の半分をたった1社でコントロールしているなんて信じられますか?つまりその会社は病院の経営面を管理するのが仕事であり,その同じ会社が無利益病院を含む総ベッド数の7パーセントをコントロールしており,利益は10億ドルにも達しています.会社名はColumbia/HCAと言いますが,毎年規模がどんどん大きくなっており,実際に医療機器の会社はその会社から商品購入の話があっても安い値段を出さざるを得ないのが現状です.それもアメリカの多種多彩な医療保険のせいでこのような会社に振り回されるはめになっています.日本でも同じようなことが起こらないとは言い切れないかもしれませんね.詳しいことはThe New English Medical Journal(1996年)の8月1日,8月8日号をお読み下さい.

治療

アルガトロバンが奏効した循環障害性難治性皮膚潰瘍の1例

著者: 石澤俊幸 ,   杉木浩 ,   安齋眞一 ,   三橋善比古 ,   近藤慈夫

ページ範囲:P.945 - P.947

 70歳,女性.初診の23年前,乳癌のため左乳房切断術施行.その2年後,手術部の除痛を目的に神経遮断術を施行したが,左上肢の運動障害を残した.初診の2年前より,左手の手指に紅斑および水疱が生じ,潰瘍を形成して壊死に至り,左IV指の切断術を行った.その翌年の冬,左手に水疱,壊死が生じ,プロスタグランジンE1製剤を投与したが効果がなかった.この時,凝固時間の軽度上昇とトロンビン-AT III複合体の上昇が見られたことより,アルガトロバン(ノバスタン®)の点滴静注を施行したところ,トロンビン-AT III複合体の低下とともに臨床症状も改善した.その後も冬期に同様症状が出現するが,アルガトロバンの投与で軽快した.プロスタグランジンE1製剤にて十分な効果を呈しない皮膚潰瘍症例については,アルガトロバンの使用も考慮すべきであると思われた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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