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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科50巻3号

1996年03月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Mycobacterium avium-intracellulare complexによる皮膚非定型抗酸菌症

著者: 藤田弘 ,   黒川滋子 ,   今泉俊資 ,   犬塚加代子 ,   奥知三

ページ範囲:P.198 - P.199

患者 41歳,男性
 現病歴 約10年前,右手背に大豆大の丘疹が出現した.自覚症状がなかったため放置していたところ徐々に大きさが拡大,中央より自潰し,やがて潰瘍局面となった.今までに他院にて3回植皮術を受けたがいずれも生着せず,徐々に潰瘍は深くなり腱が露出してきたため当科を受診した.

原著

結節性筋膜炎—自験2例の報告と本邦皮膚科領域報告120例の検討

著者: 大島昭博 ,   松本博子 ,   井出瑛子 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.201 - P.206

 症例1:30歳,男性.右前腕屈側に有痛性小指頭大の皮下結節を認め,約1ヵ月で鳩卵大まで増大した後,大豆大まで自然縮小,生検後消退した.症例2:24歳,男性.左前腕屈側に有痛性,米粒大の皮下小結節を認め,約1週間で大豆大となり,しびれを伴う.組織学的には両症例とも結節性筋膜炎(線維腫型)と考えられた.異時性,異所性に2つの皮下結節が出現した1例を含め,結節性筋膜炎の2例を報告するとともに本邦皮膚科領域報告120例につき若干の文献的考察を加えた.

臨床統計

乳房外Paget病42例の統計的観察

著者: 矢野健二 ,   細川亙 ,   垣淵正男

ページ範囲:P.207 - P.210

 当科で経験した42例の乳房外Paget病について統計的観察を行った.当科における皮膚悪性腫瘍のうち本症は16.7%を占めていた.男女比は2:1で男性に多く平均年齢は69歳であった.発症から初診までの期間は平均4.7年であり,推定発症年齢は平均64.3歳であった.発症から初診までに患者が受けた治療は抗真菌剤塗布13例,ステロイド剤塗布7例であった.Paget病以外に他臓器癌が認められた症例が7例あり,胃癌3例,大腸癌,肺癌,子宮頸癌,基底細胞癌が各1例であった.臨床像は,他覚所見として紅斑はほぼ全例,湿潤・糜爛は約半数,自覚所見として瘙痒感が約半数に見られた.治療は全例手術治療を施行し,リンパ節郭清は22例に施行した.病変の進行度は,上皮内癌が26例(61.9%)で,浸潤癌が16例(38.1%)であった.局所再発は6例に認められ,5年生存率は78.1%であった.

今月の症例

全身性形質細胞増多症の症候を示した第2期梅毒—プロゾーン現象と一過性に抗核抗体陽性を示した症例

著者: 中島英貴 ,   安井喜美 ,   池田光徳 ,   池田政身 ,   小玉肇

ページ範囲:P.211 - P.213

 39歳,女性.体幹,両上肢に浸潤性紅斑と紅色結節が多発した.頸部,両鼠径部のリンパ節腫脹があり,膝,手指の関節痛も訴えた.組織学的には多数の形質細胞浸潤を伴う肉芽腫性炎症の所見を示した.初診時,抗核抗体陽性,高ガンマグロブリン血症を認め,TPHA 10,240倍陽性であったが,RPRテストはプロゾーン現象による偽陰性を示した.全身性形質細胞増多症の症候を示す梅毒2期疹と診断し,アモキシシリン内服治療により治癒した.治癒後抗核抗体は陰転化した.梅毒感染によるB細胞賦活により抗核抗体が一過性に陽性を示したと考えた.

プロトテコーシスの1例

著者: 波多野裕二 ,   山本昇壯 ,   岡野伸二

ページ範囲:P.215 - P.218

 66歳,男性.ミカン栽培従事者に発症したプロトテコーシスの1例を報告した.初診8ヵ月前より右手背に紅色浸潤性皮疹を生じ,水疱,膿疱,潰瘍を混じた肉芽腫性病変を続発した.また前腕には多数の皮下結節がみられた.原因微生物の分離培養は成功しなかったが,病理組織学的に,間質内や巨細胞内に内生胞子を形成した胞子嚢を豊富に認め,その特異な所見より本症と診断した.外科的切除に加え,アンホテリシンB外用,フルコナゾール内服を併用した.治療開始後6ヵ月で皮疹は次第に軽快治癒し,以後3年間皮疹の再燃は認めていない.本疾患は無葉緑素藻類の一種に分類されるプロトテカを原因微生物とする稀な感染症であり,本邦では自験例を含めて11例の報告がみられるのみである.本疾患に対する治療法は確立されていないが,自験例ではアンホテリシンB,フルコナゾールは比較的有効であった.

症例報告

膀胱腫瘍患者にみられた紅皮症の1例

著者: 松原邦彦 ,   金内日出男 ,   今村貞夫

ページ範囲:P.221 - P.223

 患者は76歳男性.平成4年6月に膀胱腫瘍(TCC,G1,CIS)切除術を施行され,術後のBCG療法中に全身に落屑を伴う潮紅が出現した.プレゾニドロンの投与で軽快するが,その後も膀胱腫瘍の再発を繰り返したのでマイトマイシンとテラルビシンの膀胱内注入療法および腫瘍切除術を施行された.膀胱腫瘍の治療後に紅皮症が悪化する傾向があり,プレドニゾロンの点滴を繰り返していた.泌尿器科的治療が行われていない時でも軽度の潮紅,落屑が認められ,プレドニゾロン10mg/日内服が必要であった.平成6年5月頃からは膀胱腫瘍と紅皮症の病勢が平行して推移する傾向が認められた.紅皮症の発症に腫瘍,薬剤双方の関与が疑われる.

胃癌を合併した丘疹—紅皮症(太藤)の1例

著者: 奥木弥生 ,   永井弥生 ,   天野博雄 ,   田村敦志 ,   石川治 ,   宮地良樹 ,   河村修

ページ範囲:P.225 - P.227

 79歳,男.初診約3年前より瘙痒性皮疹が出現し,徐々に増悪した.初診時,顔面頭部を除き,躯幹,四肢に浸潤性紅斑,播種状の紅色苔癬状丘疹を認めたが腹部の横皺,肘窩,腋窩に健常皮膚を残しており丘疹—紅皮症と診断した.悪性腫瘍の検索にて早期胃癌が発見された.自験例では切除後も皮疹の改善は見られず胃癌との因果関係は明らかでないが,これまでに本疾患と悪性腫瘍の合併報告は少なからずあり,本疾患における内臓悪性腫瘍の検索は必要と思われた.

再発性血栓性静脈炎を伴ったループスアンチコアグラント陽性抗リン脂質抗体症候群

著者: 稲沖真 ,   谷内克成 ,   高松由佳 ,   竹原和彦 ,   山崎雅英 ,   朝倉英策

ページ範囲:P.228 - P.230

 22歳,男性.初診の3週間前から両下腿に浸潤性紅斑と硬結が繰り返し生じた.組織学的には皮下脂肪組織内の血栓性静脈炎が認められた.ループスアンチコアグラント陽性,抗カルジオリピン抗体は陰性.PICが軽度高値を示したが他の凝固系検査に異常はなかった.SLEおよびその他の膠原病を示唆する所見は認められなかった.以上から原発性抗リン脂質抗体症候群と診断した.扁桃摘出後皮疹はやや改善し,アスピリン1日量40mg内服1カ月後から皮疹の新生はみられなくなった.本症の病勢と扁桃炎の活動性の間に相関がうかがわれた.

慢性関節リウマチに合併した壊疽性膿皮症の1例

著者: 川口博史 ,   山口晃弘 ,   鈴木毅 ,   山田昭夫 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.231 - P.233

 62歳,女性.慢性関節リウマチとしてステロイド,免疫抑制剤などで治療を受けていたが,右大腿に急速に拡大する有痛性巨大潰瘍が出現した.組織学的にはリンパ球,組織球,形質細胞,好中球などよりなる非特異的肉芽腫性反応で,明らかな血管炎の所見は認められなかった.局所の疼痛に対して,硬膜外麻酔などを行いつつプレドニゾロンを1日50mg内服したところ,数日後より疼痛は改善し,皮疹は乾燥し始めた.約5カ月後には瘢痕を残して治癒した.大腿の巨大な局面はその後経過良好であったが,下腿には軽微な外傷をきっかけに,小潰瘍が再発した.壊疽性膿皮症は,潰瘍性大腸炎,大動脈炎症候群など種々の自己免疫性疾患,免疫異常が疑われる疾患に合併することが知られているが,慢性関節リウマチに合併する壊疽性膿皮症は比較的稀と思われ,ここに報告した.

自傷性皮膚障害と考えられた顔面の遷延性皮膚潰瘍の1例

著者: 山田朋子 ,   臼井恵太郎 ,   出光俊郎 ,   矢尾板英夫

ページ範囲:P.235 - P.237

 顔面に3年間難治性の潰瘍局面を生じ,臨床像は壊疽性膿皮症および深在性真菌症,皮膚結核に類似していたが,諸検査より否定され,入院後,急速に治癒し,以後,再発をみない特異な潰瘍を経験したので報告する.症例は44歳の明るい性格の女性である.3年前より左口角部に潰瘍が出現し,以後,拡大し来院した.初診時,左口角部から頬部にかけて6×4cmの不整形の潰瘍局面があり,辺縁は鋭利で平滑,潰瘍底面は鮮紅色調の肉芽を有していた.同部の細菌,抗酸菌および真菌培養は陰性.組織所見は非特異的であった.使用していた外用剤,および消毒薬の貼布試験は陰性であった.抗生剤の点滴と外用により,20日間で瘢痕治癒した.以後,4年間再発をみない.本症例の潰瘍が長期にわたり,遷延化した原因としては掻破などの機械的刺激(自傷行為)および不適切な外用剤の使用が関与している可能性が高いと推察された.

爪の破壊を伴い急速に成長した小児の色素線条の1例

著者: 杉内利栄子 ,   高橋和宏 ,   望月衛 ,   加藤泰三

ページ範囲:P.239 - P.241

 症例は7歳男児.1歳頃より右第V指爪に褐色色素線条が出現,次第にその幅が拡大した.初診半年前より爪の一部が破壊し,爪床の角質が肥厚してきた.初診時,右第V指後爪郭から連続して爪甲のほぼ4分の3の幅を占める黒褐色色素線条が認められ,後爪郭では青色調が透見される.爪遠位部約3分の1の爪甲が脱落し,爪床には角質増殖が見られる.爪母を含めて病変部を全摘した.組織学的には爪母から爪床の基底層にほぼ連続的に異型性のあるメラノサイトが増殖し,mela—noma in situに合致する所見であった.爪甲破壊部に悪性黒色腫を思わせる所見は認められなかった.

多発性斑状色素沈着症

著者: 谷口彰治 ,   幸野健 ,   林顕秀 ,   濱田稔夫 ,   高橋邦明

ページ範囲:P.242 - P.244

 10歳,男児に認められた多発性斑状色素沈着症の1例を報告した.数年前より躯幹および顔面に無症候性の灰褐色色素斑が多発している.病理組織像では,組織学的色素失調および真皮上層の小円形細胞浸潤を認めた.本症の成因は不明であり,類似疾患との異同につき考察を加えた.

硫酸キニジンによる薬疹の1例

著者: 大沼すみ ,   山本紫 ,   宮川加奈太 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.245 - P.247

 48歳,男.僧帽弁閉鎖不全症のため当院第1外科にて僧帽弁置換術を施行した.術後3日目より硫酸キニジンを300mgより内服投与開始された.内服2ヵ月半後より,全身に瘙痒を伴う紅斑出現.口腔内粘膜疹も認められた.当科に入院し,ベタメタゾン点滴静注にて皮疹は徐々に軽快した.10%硫酸キニジンのパッチテスト陽性.同時に四肢,体幹,顔面に紅斑のflare upが見られた.キニジン原末で希釈系列を作成して2回目のパッチテストを施行し,5%〜0.05%濃度で陽性と判定した.同時に行った10%ジソピラミドのパッチテストも陽性であった.UVA照射によるパッチテスト反応の増強は見られなかった.

腎障害を伴った臭化メチル化学熱傷

著者: 伊藤あおい ,   沢村大輔 ,   菊池朋子 ,   伊奈慎介 ,   孟宪民 ,   橋本功 ,   鎌田義正 ,   柿坂吉彦

ページ範囲:P.249 - P.251

 51歳,女性.腎障害を伴った臭化メチル化学熱傷を報告した.農作業中に臭化メチルを含む土壌薫蒸剤を左手指に浴び受傷.初診時より尿潜血を認め,皮膚症状は治療により軽快するも尿所見は改善せず,腎生検で糸球体の硬化像と尿細管の萎縮がみられた.自験例は腎障害を伴った臭化メチル化学熱傷の本邦第1例目の報告であり,また,臭化メチルが物理的接触により経皮吸収されて腎障害を起こしうることを示唆する症例であった.

Verruciform xanthoma—稠密な形質細胞の浸潤を伴った症例

著者: 服部瑛

ページ範囲:P.253 - P.255

 71歳の男性の陰嚢左側に生じたverruci—form xanthomaについて報告した.皮疹は,赤橙色の表面顆粒状で有茎性の腫瘤であった.病理組織学的には,乳頭状増殖の顕著な腫瘍で,真皮乳頭層,同下層に泡沫細胞の増殖,浸潤がみられた.なお,泡沫細胞の集まりの処々に,また真皮深層にも稠密な形質細胞浸潤が認められた.さらに,真皮乳頭層,同下層では血管の増殖,拡張も目立った.本腫瘍は,口唇や陰嚢などの開口部に好発すること,さらに形質細胞浸潤をみることなどから,plasmocytosis circumorificialisとの関連性が興味深いと思われた.また,本腫瘍での形質細胞の浸潤に注目する必要があると考えられた.

Solid-cystic hidradenomaの1例

著者: 小林孝志 ,   桜岡浩一 ,   栗原誠一 ,   和泉達也

ページ範囲:P.257 - P.259

 42歳,女性の腹部に生じたsolid-cystichidradenomaの1例を報告した.腹部のドーム状に隆起する26×21mm大,弾性硬の結節病変で,組織学的に真皮中に扁平な細胞によって裏打ちされた嚢腫を認め,隔壁の一部に充実性の細胞集塊が存在,構成細胞はいわゆるepidermoid cellとclear cellが主体であった.本症およびclear cellhidradenomaとして報告されている本邦既報告例について両者の比較検討を行った.

皮下皮様嚢腫の1例

著者: 小林孝志 ,   長谷川喜厚 ,   桜岡浩一 ,   木花光 ,   栗原誠一

ページ範囲:P.261 - P.263

 11歳,男の耳後部に生じた皮下皮様嚢腫の1例を報告した.常色,境界明瞭でドーム状に隆起する26×20mm大,弾性軟の嚢腫であった.組織学的に皮下に層状角化物および毛を容れた嚢腫が存在,壁は表皮様構造をとるが一部毛を含む異物肉芽腫に置換されている部分も認められた.さらに嚢腫壁と連続して,またその近傍に毛嚢および脂腺が多数存在していた.本症の皮膚科領域における耳後部発症報告例は眼周囲に次いで多く,典型例と思われた.

大腸癌と合併した顔面の多発性perifollicular fibromaの1例

著者: 笹井収 ,   高橋和宏

ページ範囲:P.264 - P.266

 2年前に大腸癌(adenocarcinoma)の手術を受けた72歳の女性.10歳頃から鼻周囲に痒みのない皮疹が数個出現し,年齢とともにその数が徐々に増えた.姉,妹にも同じような症状があるという.その数個を切除し,病理組織学的に調べたところ,真皮内の毛嚢周囲の同心円状の膠原線維の増生を認め,perifollicular fibroma(PF)と診断した.過去にPFの多発した患者で悪性変化を伴う大腸ポリープ,cranial osteomaを合併した例や気管支拡張症を合併した例の報告があり,自験例のような10個以上の多発例に対しては,内臓疾患に注意する必要があると考える.

Acquired lymphangiomaの1例

著者: 成田肇

ページ範囲:P.268 - P.271

 82歳,女性.23年前,子宮癌のためコバルト照射を受けた.初診の約4カ月前より大陰唇部に浮腫性硬化を生じ,小水疱が多発してきた.皮膚生検では真皮に拡張した管腔構造を認め,その壁は第VIII因子関連抗原陰性であったので,管腔構造はリンパ管と考えられた.以上よりacquiredlymphangiomaと診断し,本症の本邦例のまとめ,文献的考察を加えて報告した.

皮膚軟骨腫の1例

著者: 野口雅博 ,   川上麻弥子 ,   三浦隆

ページ範囲:P.272 - P.274

 53歳,男性.約30年前に右拇指に栗のしぶ皮による外傷を受け,丘疹が出現し徐々に増大した.右拇指爪囲に弾性硬で半球状小指頭大の淡紅色の結節が認められた.組織学的には真皮内に境界明瞭な軟骨細胞の腫瘍状増殖が認められた.X線像ではこの結節部と指骨陰影との連続性は認められず,皮膚軟骨腫と診断した.腫瘍の一部に軟骨性骨化の所見が認められ,自験例より,皮膚軟骨腫は皮膚骨腫への分化を示す過程での1つの段階に位置するものではないかと推測された.

ミノサイクリン内服とビタミンD3外用が有効であった鱗状毛包性角化症の1例

著者: 長田和子 ,   清島真理子 ,   秋山朋子 ,   中谷明美 ,   和泉秀彦 ,   北島康雄

ページ範囲:P.275 - P.277

 8歳,女児.自覚症状のない硬貨大から爪甲大の円形鱗状の角化性皮疹が体幹に始まり多発し,大腿部にまで拡大した.組織像では毛包の拡大と毛包中心の過角化とその周囲表皮の葉状角層剥離を認め,鱗状毛包性角化症と診断した.毛包内ブドウ球菌は確認されなかったものの,ミノサイクリン内服とビタミンD3軟膏外用によって皮疹は軽快した.

連載

Clinical Exercises・36—出題と解答

著者: 川島眞

ページ範囲:P.259 - P.259

 71 ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の型と組織学的細胞変性効果の組み合わせで正しいものはどれか.
  ①HPV I型 —— 細胞質内封入体

Practical English for Busy Physicians・27

著者:

ページ範囲:P.278 - P.278

It is well known,hate and loveの使用について
 文法的に正確な文章においては一般的な曖昧な表現を避けていただいたほうが良いと思います.つまり具体的に言いますと,皆様もよくご存じの“it is wellknown”もその一つです.このフレーズは著者が抱えているまだ立証されていない事実や偏見を読者に与えてしまい,同意する読者は首を縦に振るか,または反論者を怒らせてしまうかもしれません.例えば私が“It is well known that the world is falt.”と書いたならば,読者は私のことを無知で馬鹿な奴だと思うでしょうし,“It is well known that dermatologists arebetter capable at taking of skin problems.”ならばどうでしょうか.多くの人は同意して首を縦に振ると思います.しかしながら医科学的な論文の中では立証されていない事実を安易に受け取るのは十分に注意したいものです.

治療

レックリングハウゼン病に見られた巨大神経線維腫の切除術におけるargon beam coagulator使用例

著者: 和泉智子 ,   野田徳朗 ,   舟橋美雪 ,   井上稲子 ,   神谷秀喜 ,   北島康雄 ,   浦田裕次

ページ範囲:P.279 - P.281

 巨大な神経線維腫の切除術には,相当量の出血が予想される.この手術時の出血対策としてargon beam coagulator(以下ABCと略す)を16歳と13歳のレックリングハウゼン病の女性患者の巨大な神経線維腫の手術例に用いたところ,出血量は300ml前後に抑えられ術後の経過も順調であった.ABCは血管の豊富な巨大な神経線維腫の切除には有用であると考えられた.

印象記

「日豪合同皮膚科学会」に参加して

著者: 菊池新

ページ範囲:P.282 - P.283

 日豪合同皮膚科学会は1995年11月3日から5日までの3日間,オーストラリアのケアンズで開かれました.ケアンズはオーストラリア北東部,南回帰線のはるか北側の熱帯に位置し,有名なグレートバリアリーフの中心に存在する都市で,東京との時差もわずか1時間という好条件もあり,日豪合同皮膚科学会は予想を上回る盛会となりました.
 まず感じたのは,おおらかなオートラリア人気質を反映してか,会頭の挨拶より先に学会場であるケアンズヒルトンホテルのプールサイドレストランで参加者の懇親を図るべくウェルカムランチがあり,私もプールサイドで,座長をして頂くことになっていた真っ黒なサングラスをしたAlanCooper先生やアデレードで開業している年収?千万という女医さんと話をする機会に恵まれました.そして驚いたのは,「日本で皮膚科医に診てもらうのにどのくらい待ちますか?」という彼女の質問に,慶應は混んでいるからと考えつつ「2時間ぐらい」と答えたところ,「そんなにすぐ診るのか」と仰天されてしまったことです.よくよくきいてみると,システムの違いこそあれ,オーストラリアには皮膚科専門医が極めて少なく,彼女のオフィスでは全予約制でしかも1日40人までしか診ないこともあって,予約して1,2ヵ月後にやっと診てもらえるとのことでした.当然皮膚科の保険点数も高いわけで,年収が軽く?千万になると電卓で計算していた日本の某メーカーの方に,「私と結婚したいの?」とジョークをとばしていたのが印象的でした.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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