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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科50巻3号

1996年03月発行

文献概要

今月の症例

プロトテコーシスの1例

著者: 波多野裕二1 山本昇壯1 岡野伸二2

所属機関: 1広島大学医学部皮膚科学教室 2尾道総合病院皮膚科

ページ範囲:P.215 - P.218

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 66歳,男性.ミカン栽培従事者に発症したプロトテコーシスの1例を報告した.初診8ヵ月前より右手背に紅色浸潤性皮疹を生じ,水疱,膿疱,潰瘍を混じた肉芽腫性病変を続発した.また前腕には多数の皮下結節がみられた.原因微生物の分離培養は成功しなかったが,病理組織学的に,間質内や巨細胞内に内生胞子を形成した胞子嚢を豊富に認め,その特異な所見より本症と診断した.外科的切除に加え,アンホテリシンB外用,フルコナゾール内服を併用した.治療開始後6ヵ月で皮疹は次第に軽快治癒し,以後3年間皮疹の再燃は認めていない.本疾患は無葉緑素藻類の一種に分類されるプロトテカを原因微生物とする稀な感染症であり,本邦では自験例を含めて11例の報告がみられるのみである.本疾患に対する治療法は確立されていないが,自験例ではアンホテリシンB,フルコナゾールは比較的有効であった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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