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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科51巻2号

1997年02月発行

雑誌目次

カラーアトラス

環状扁平苔癬

著者: 服部瑛

ページ範囲:P.102 - P.103

患者 45歳,主婦
初診 1993年2月1日

原著

掌蹠の角化,多発性ボーエン病およびエクリン汗孔癌の併発—砒素との関連について

著者: 石澤俊幸 ,   杉木浩 ,   三橋善比古 ,   近藤慈夫

ページ範囲:P.105 - P.108

 65歳,男性.初診の5年前,左下腿伸側に隆起性皮疹出現.初診時,左下腿伸側に鳩卵大の腫瘍,躯幹および大腿には褐色の角化性皮疹,掌蹠に多発性の角化性小結節,背部には脱色素斑が見られた.組織学的検索で,左下腿伸側の腫瘍はエクリン汗孔癌,躯幹および大腿の角化性皮疹はボーエン病と診断した.掌蹠の角化性皮疹は異型性を伴わない表皮の増殖であった.これらの皮疹の原因として砒素を考え,飲料水中の砒素を検索したが,検出限界以下であった.青年期の鉱山労働時に砒素に暴露された可能性が考えられた.本邦の多発性ボーエン病と皮膚悪性腫瘍の合併例について文献的考察を行った.

臨床統計

足底表皮嚢腫35例の臨床的・病理組織学的観察

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.109 - P.112

 当科で10余年間に経験した35例について検討した.臨床的に部位は足底32例,趾腹3例,左足17例,右足18例で左右差なし.年齢は1歳から69歳で,10代が16例46%と最多,男女比2対3で女性に多い.経過は1か月から7,8年にわたり,うち3〜6か月が16例46%で最多.疣状皮疹は8例の嚢腫表面,5例の嚢腫近傍にみられ,8例の嚢腫表面に点状陥凹ないし角化がみられた.組織学的にヒト乳頭腫ウイルス陽性の空胞化は21例60%にみられ,壁のみ陽性が1例,内容のみ陽性が9例,壁,内容とも陽性が11例であった.被覆表皮の空胞化も8例にみられた.空胞化陽性例は女性に多く,経過の短い嚢腫に多かった.この他嚢腫周囲の帯状の線維化が25例にみられ,表皮への開口例でより著明,慢性刺激や自然退縮に伴う所見と思われた.汗管との関連も10例で窺えたが,本嚢腫の汗管由来についてはさらに検討を要すると思われた.

今月の症例

掌蹠膿疱症患者への扁桃誘発試験にて発症したアナフィラクトイド紫斑病

著者: 小菅治彦 ,   海老原全

ページ範囲:P.113 - P.115

 54歳,女性.掌蹠膿疱症の原因検索のため扁桃誘発試験を施行し,アナフィラクトイド紫斑病を発症した.扁桃誘発後,足背,下腿を中心に浸潤を触れる紫斑が多発.組織像は壊死性血管炎で,蛍光抗体直接法にて真皮乳頭部血管壁にIgA,C3の沈着を認めた.また誘発試験後,anti-streptolysin O(ASO)の急激な上昇を認め,扁桃培養ではα,γ溶連菌が検出された.軽度の関節痛,血尿のほかは全身症状なし.安静,ステロイド,非ステロイド系消炎鎮痛剤,抗生物質投与にて軽快した.

症例報告

Wide spread discoid lupus erythematosusの母娘例

著者: 清水美奈 ,   檜垣祐子 ,   村田恭子 ,   川島眞

ページ範囲:P.117 - P.119

 Wide spread discoid lupus erythematosusの母娘例を報告した.症例1:18歳,女.顔面の萎縮性紅斑と右手背の角化性隆起性紅斑.症例2:47歳,女(症例1の母).顔面,手背の萎縮性紅斑.HLA抗原の検討では,日本人では比較的稀なB13, DR 12が共通して認められた.また,症例1の手背の皮疹は発疹学的にはhypertrophic dis—coid lupus erythematosusと考えた.

限局性強皮症を伴った進行性顔面半側萎縮症

著者: 吉成力 ,   森康記 ,   赤坂俊英 ,   昆宰市 ,   高橋弘明 ,   東儀英夫

ページ範囲:P.121 - P.123

 30歳,男性.頸部右側の限局性強皮症を伴った顔面右側の進行性顔面半側萎縮症を報告した.自験例は血清学的所見は陰性であるものの,両皮疹が隣接して存在したこと,15歳頃より右下顎部に褐色萎縮性局面と右顔面の変形が同時期に発症したことなどが特徴的所見であった.以上より,自験例は進行性顔面半側萎縮症が限局性強皮症の一型であることを支持する症例であると考えた.

優性栄養障害型先天性表皮水疱症(Cockayne-Touraine型)の1例

著者: 時光玲子 ,   石黒直子 ,   川島眞 ,   石河晃 ,   清水宏

ページ範囲:P.125 - P.127

 57歳,女.幼少時よりわずかな外的刺激で主として手背,肘頭に水疱,びらんを生じ,瘢痕化を繰り返していた.加齢とともに水疱形成は減少傾向あり.指趾爪甲の萎縮,脱落を認めるが,指趾癒着はない.電顕所見では水疱部にanchor—ing fibrilの減少を認め,モノクローナル抗体(LH 7.2)を用いた蛍光抗体間接法ではVII型コラーゲンは水疱蓋側に陽性であった.臨床症状と免疫組織所見より本症例を優性栄養障害型先天性表皮水疱症(Cockavne-Touraine型)と診断した.

C型肝炎を伴った晩発性皮膚ポルフィリン症の1例

著者: 伊東英里 ,   中村裕之 ,   小林衣子 ,   對馬哲

ページ範囲:P.129 - P.132

 40歳,男性.C型肝炎を伴った晩発性皮膚ポルフィリン症の1例を報告した.また,ポルフィリン代謝を改善する目的でシメチジンを投与したところ有効と考えられたので,加えて報告する.初診の約1年前から手,背,顔など露光部,特に外傷の受けやすい部位に,水疱,びらん,外傷性瘢痕が繰り返し出現していた.皮膚脆弱性あり.飲酒歴25年.皮膚生検で表皮下水疱,および真皮上層の血管壁と基底膜にPAS陽性物質の沈着を認める.HCV陽性,軽度肝機能障害を認め,肝生検で慢性活動性肝炎の像を呈した.尿中コプロポルフィリン,尿中ウロポルフィリン,血清鉄,フェリチンは高値であった.IFN—α,シメチジン投与後皮疹は軽快し,尿中のポルフィリン体もシメチジン投与後著明に低下した.

好酸球性膿疱性毛包炎

著者: 横山敦子 ,   松坂優子 ,   岸浩之 ,   加藤文博 ,   昆みゆき ,   森元洋介 ,   三浦俊祐 ,   嵯峨賢次 ,   千葉雅史

ページ範囲:P.134 - P.136

 54歳,男.初診の約3年前より両下肢に瘙痒を伴う紅斑,膿疱が出現しステロイド剤外用するも症状は一進一退であった.その後同様の皮疹が頭部,顔面,体幹にも拡大した.組織学的に毛嚢およびその周囲の好酸球,好中球浸潤と毛嚢壁の破壊像を認め,末梢血好酸球増多も認めた.インドメタシン,ミノサイクリン,DDS併用にて皮疹は改善した.

リン酸コデインによる膿疱を伴った猩紅熱型薬疹の1例

著者: 泉裕乃 ,   伊丹聡巳 ,   内田智恵子 ,   上出良一 ,   新村眞人

ページ範囲:P.137 - P.139

 34歳,女.1993年7月14日より咳嗽のためリン酸コデインを内服したところ翌日より手掌,足背,下腹部に掻痒を伴う紅斑が出現し,下腹部では融合し紅色局面を形成し,小膿疱を多数伴っていた.7月19日に内服を中止し一旦軽快したが,7月23日に再度内服し同一部位に皮疹の再燃を見た.血液検査にて好酸球上昇があった.病理組織所見は角層下膿疱と真皮に好酸球を多数含む炎症細胞浸潤を認めた.リン酸コデインによるDLST陰性.パッチテストは皮疹部,無疹部共に陽性であったが,皮疹部のほうがより強く陽性となった.以上よりリン酸コデインによる膿疱を伴った猩紅熱型薬疹と診断した.猩紅熱型薬疹の症状はacute generalized exanthematous pus—tulosisと類似性があると考えた.

C型肝炎に対するインターフェロンα治療中に皮疹が増悪した乾癬の1例

著者: 松村文子 ,   渋江賢一 ,   清水昭彦 ,   古賀哲也 ,   利谷昭治

ページ範囲:P.141 - P.143

 58歳,男.13年前に乾癬と診断され,ステロイド外用剤などによる加療を受け,最近2年間は皮疹は頭部,爪,肘頭に限局していた.C型肝炎のため,連日インターフェロンα(IFN—α)1000万単位の筋注療法が開始された約3週間後より従来の皮疹の悪化と新たに両手掌と両足底に粟粒大から碗豆大までの角化性紅色丘疹が出現し始めた.IFN—α中止後4,5日間は皮疹の悪化が持続したが,その後徐々に改善し,IFN—α中止後2か月で従来の皮疹は軽快し,両手掌,両足底の皮疹も完全に消失した.以上からIFN—α治療による乾癬の増悪と考えた.悪化の機序については不明であるが,IFN—αの投与による生体内でのサイトカインバランスの変動説など文献的考察を行った.

加熱したアスファルトで受傷した顔面損傷

著者: 高橋和宏 ,   杉内利栄子

ページ範囲:P.144 - P.145

 25歳,男性の加熱したアスファルトによる顔面皮膚損傷の1例を報告した.初診時,顔面,頭髪にアスファルトが固着し,腫脹,出血,表皮剥脱を認め,額,眼瞼周囲など数十ヵ所にアスファルトの刺入がみられた.現在軽快したが,皮内,皮下に異物の残存埋没を認める.将来の発癌の可能性を懸念し,色素レーザー照射にて除去している.

手指に限局したバージャー病

著者: 松下佳代 ,   三田均 ,   柏英雄 ,   服部隆司 ,   酒井章

ページ範囲:P.146 - P.148

 56歳の男性.初診の3年前より左右中指尖端に潰瘍が出現し,その後病変は他指に拡大した.プロスタグランジン製剤や抗血小板製剤等の加療にも抵抗性で壊死は進行した.サーモグラフィーで両指尖部の低温域と,アンギオグラフィーにて前腕末梢の動脈の先細り閉塞と樹根状側副路が確認され,バージャー病と診断したが,皮疹拡大の誘因として接触皮膚炎,自傷を含めた外的要素も否定できないと考えられた.

高齢者に生じた悪性リンパ腫の1例

著者: 大山学 ,   菊池新 ,   大畑恵之 ,   西川武二 ,   岡本真一郎 ,   池田康夫

ページ範囲:P.149 - P.152

 躯幹,四肢に多発性皮膚腫瘤を呈した悪性リンパ腫76歳男性例を報告した.皮膚病理組織では真皮全層に核小体が明瞭な淡明で大型の核を持つ異型細胞の浸潤を認め,これらはB細胞の表面形質を呈していた.皮膚腫瘤部から抽出したDNAの解析では免疫グロブリンH鎖遺伝子の再構成を認めた.全身症状として発熱,盗汗があり,胸腔,腹腔内,全身の骨にも腫瘤を認めたことよりB細胞性リンパ腫stage IV bと診断.CHOP療法にて皮膚および全身の症状は消失したが,入院の長期化とともに,俳徊,抑うつなどの症状が出現し,中途にて外来通院治療とした.高齢者悪性リンパ腫の治療では,薬剤投与量およびその副作用,独特の予後決定因子,入院の長期化に伴う問題,合併症への配慮など成人のリンパ腫の治療以上に問題点が多く,治療指針は確立したものはないのが現状である.そこで,自験例を通し高齢者リンパ腫の問題点を明らかにするとともに若干の考按を加えた.

涙腺,唾液腺に対側性に生じたmucosa associated lymphoid tissue lymphomaの1例

著者: 神戸直智 ,   秋元幸子 ,   竹内裕子 ,   田村敦志 ,   石川治 ,   宮地良樹 ,   橋田巌 ,   櫻井英幸

ページ範囲:P.154 - P.156

 症例は36歳,男性.1994年6月頃から両側頬部が腫脹し,その後両側の上眼瞼に皮下結節が出現した.初診時,左右の上眼瞼外側や耳前部に対側性に皮下結節を認めた.病理組織学的に,真皮から皮下脂肪織にかけて塊状に稠密な単核球の浸潤を認め,耳下腺と考えられる腺管構造が混在していた.浸潤細胞は明るい胞体を有する大型のリンパ球様細胞で,CD19陽性,CD45RO陰性であった.サザンプロット法にて免疫グロブリンH鎖遺伝子の再構成を認めた.B細胞リンパ腫と診断し,複数の腺組織に限局していることなどよりmucosa associated lymphoid tissue(MALT)lymphomaの範疇に合致すると考えた.放射線治療を施行し,腫瘤は速やかに縮小した.現在経過観察中であるが,再発はみられていない.

転移性皮膚病変が診断の契機となった原発性十二指腸癌の1例

著者: 椙山秀昭 ,   大竹直人 ,   古江増隆 ,   島田眞路 ,   池田正信 ,   佐藤公

ページ範囲:P.158 - P.160

 45歳,男性.初診約1か月前に左肩甲部の皮下腫瘤に気づいた.以後腹部,胸部にも増数した.組織学的に低分化型腺癌の皮下腫瘍塊を認めたため,転移性皮膚癌を疑い全身検索を施行した.その結果,腹部CTにて膵鈎部の高さに約40×30mm大の腫瘍性占拠性病変を認め,また上部消化管内視鏡では十二指腸2nd portionに潰瘍堤の明瞭な潰瘍性病変を認めた.内視鏡生検にて皮下腫瘤と同様の組織像を示し,さらに他臓器に腫瘍巣を認めえないことから原発性十二指腸癌とそれによる転移性皮膚癌と診断した.原発性十二指腸癌は全消化管癌に占める割合が少なくまれな疾患であるが,皮膚の転移性病変が診断の契機となった報告は過去にみられず貴重な症例と思われ報告した.

鼠径リンパ節転移を認めた多発性ボーエン病

著者: 阿達直子 ,   孫正義 ,   千葉雅子 ,   森康記 ,   間山諭 ,   赤坂俊英 ,   昆宰市

ページ範囲:P.161 - P.163

 62歳の男性に生じた多発性ボーエン病の1例を報告した.皮疹は全身に多発性に散在した.左上腕,胸部,右大腿の皮疹は隆起し浸潤性で,病理組織学的にボーエン癌の像を呈した.自験例は明らかな砒素暴露歴はないが,20数年前より約3年間,農薬散布に従事した既往があることから農薬の関与が推察された.

鼠径部にみられた巨大なnevus lipomatosus superficialisの1例

著者: 佐藤史歩 ,   小山田亮 ,   神谷秀喜 ,   北島康雄 ,   米田和史

ページ範囲:P.165 - P.167

 25歳女性の左鼠径部に多発したnevus lipomatosus superficialisの1例を報告した.10年前より左鼠径部に軟性腫瘤が数個出現し,列序性に配列し徐々に増大した.入院時,表面に淡褐色の結節を伴う4個の軟らかい皮下腫瘤が認められた.組織は真皮浅層から皮下に脂肪細胞の増殖を認め,本症と診断した.本症は腰部,臀部が好発部位であり,自験例は比較的まれな部位に多発し,また,組織学的に真皮浅層から皮下にまで母斑が及び,臨床的に皮下腫瘤像を呈していた症例はごくまれであり,珍しい臨床像と考えられた.

大腿に生じた外毛根鞘嚢腫の2例

著者: 今村浩子 ,   和泉達也 ,   木村俊次

ページ範囲:P.168 - P.170

 比較的稀な部位である大腿に発生した10歳男と29歳男の2例の外毛根鞘嚢腫について報告した.また,最近13年間に当科で経験した20例について統計的に観察した.その結果は男6例,女14例で女性に多く,部位別では頭部16例,大腿3例,顔面1例であり,頭部が好発部位であった.また,4例に壁の一部に増殖性変化を認めた.

汎発性皮膚カンジダ症の1例

著者: 服部尚子 ,   菊池かな子 ,   大河内仁志 ,   古江増隆

ページ範囲:P.171 - P.173

 66歳,男.初診1か月前より上肢に皮疹が出現し,急速にほぼ全身に拡大した.近医で,ステロイド剤,抗ヒスタミン剤内服,ステロイドを含む抗炎症剤外用にて治療していたが,増悪傾向にあるため,当科を紹介され受診した.初診時ほぼ全身に小指頭大までの落屑性紅斑,米粒大までの落屑,痂皮を伴う紅色丘疹と膿疱,びらんが混在し,強い瘙痒を伴っていた.落屑,膿疱内容の検鏡にてカンジダ様真菌要素陽性.膿疱の生検で角層内に真菌要素陽性.CHROM agar Candida培地によりCandida albicans Type A, Candida famata, Candida guilliermondiiが同定された.免疫異常を示唆する所見なし.汎発性皮膚カンジダ症の原因,同定菌種の病原性,CHROM agar Candida培地の有用性について若干の考察を加えた.

クラゲ螫症

著者: 谷口章雄 ,   田中信

ページ範囲:P.174 - P.176

 真夏日の続いた2週間に集中して8例のクラゲ螫症(2歳女児,13歳女子,16歳女性,21歳女性,22歳女性,24歳女性,34歳女性,2歳男児)を経験した.病歴と,海水着から露出した部位(特に四肢)の線状に配列した紅色丘疹,線状浮腫性紅斑より診断は容易であった.自然経過を観察した6例が再燃(recurremt reactions)を起こし来院した.抗アレルギー薬とステロイド外用薬により速やかに治癒し,治療後はrecurrent reactionsはなかった.クラゲ螫症はカツオノエボシ,アンドンクラゲ,アカクラゲによることが多く,それらは海水温の高い時に多く発生し,干・満潮の間の潮の流れが滞った時に海面に浮上してくるため,その時間帯はクラゲ螫症に注意が必要である.

連載

Clinical Exercises・47—出題と解答

著者: 多田讓治

ページ範囲:P.148 - P.148

 93 次の皮膚感染症のうち,a.性質の異なるものを1つ選べ.b.また他の4者に共通する性質とは何か.
  ①せつ

Practical English for Busy Physicians・38

著者:

ページ範囲:P.186 - P.186

正しい時制,抗ヒスタミン剤,医療訴訟について
 論文を書くに当たって現在形や過去形をいつ使用するかというのは至って簡単そうですが,そうはいかないようです.最近添削した論文の中に次のような文がありました.“Two cases of allergy to X were reported.”これを読んだ時,はたして筆者はそのようなアレルギーの論文を読んだのか,または単なる時制の間違いなのかと思い悩んでしまいました.明らかに筆者はこの症例について報告を出しているのですから時制を変えて“Two cases of allergy to X are reported.”としました.たとえそれが昔の古い症例でも今現在その報告を行っている訳ですから現在形が必要となります.同じ論文の中で“infiltrated erythematous indurations”というのがありました.induratedは形容詞として使用するのが一般的ですから,その場所が硬くなっているのならば普通はhardかinduratedを使います.そこで私は“infiltrated erythematous plaques”としました.そのほかにも面白いものとして“some patient becomes allergic”というのがあり,これはもしあなたが“patient”を主語にしているのなら“becomes allergic”とできますが,“some patient”と不特定多数を主語にしたのなら“some patients have become allergic”としなければなりません.

治療

帯状疱疹後神経痛の予防におけるPGE1の有用性について

著者: 早川千絵 ,   角田寿之 ,   西内徹 ,   斉藤次郎

ページ範囲:P.179 - P.181

 脊髄領域に発症した帯状疱疹患者18名をアシクロビルを投与した群とアシクロビルとプロスタグランジンE1製剤(PGE1)を併用した群の2群に分け,従来から知られているPGE1の急性期帯状疱疹痛に対する除痛効果を再評価するとともに,これまで報告のない帯状疱疹後神経痛(PHN)発症の予防効果に関しても検討を加えた.その結果,急性期帯状疱疹痛に対してPGE1が奏効することは過去の報告と一致したが,帯状疱疹発症早期よりPGE1を投与してもPHNの発症を抑制し得ないと考えられた.

これすぽんでんす

「上気道感染に併発したアトピー性皮膚炎患者のblistering distal dactylitis」を読んで

著者: 荒田次郎

ページ範囲:P.183 - P.184

 小松弘美,青山浩明先生の「上気道感染に併発したアトピー性皮膚炎患者のblistering distal dactylitis」(臨皮50:809-812,1996)を興味深く拝読致しました.
 Blisterimg distal dactylitisはHays & Mullard1)により“a distinct clinical entity”として記載されたもので,その臨床的特徴は,1)部位が指,拇指の遠位の指球部である,2)皮疹は浅在性の水疱で薄く白濁する内容を入れる,3)時に爪囲に及ぶ,4)1指ときに複数指が侵される.その皮疹は,指尖球部の摩擦性水疱,圧抵熱傷との鑑別を要する2)ものである.ブドウ球菌による指の水疱性膿痂疹を鑑別にあげる文献もあり,菌学的検査を鑑別点とするものもあるが,後述するようにこれは鑑別できないというより,同症であろう.

荒田次郎教授の文章を読んで

著者: 小松弘美

ページ範囲:P.185 - P.185

 先生の御指摘,ご教示大変ありがたく拝見させていただきました.
 皮膚科領域では,今回の荒田教授から御指摘があるように,古くからtourniole vesiculeuse et phlyctène streptococcique des doigtsあるいは自分たちの論文にも引用したpyodermia bullosa manuumの疾患概念は確立されてはいましたが,1975年,小児科医Hays & Mullardは「これとの差違について論じることなく」,手指末端にのみできる独特な感染性水疱性病変にblistering distal dactylitisという名称のもとに独立疾患概念としました.この病変の臨床像は極めて特異的ではありますが,自分たちが今回論文中でも述べたように,従来の「手部膿痂疹と重複する」ことは当然であろうと考えます.1)

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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