症例報告
悪性増殖性外毛根鞘性嚢腫の1例
著者:
浜松徹1
梅村芳樹2
増谷衛2
所属機関:
1東海産業医療団中央病院皮膚科
2藤田保健衛生大学病院皮膚科
ページ範囲:P.369 - P.371
文献購入ページに移動
56歳,男性.平成5年9月頃より右後頭部に小丘疹が出現し,急激に増大してきた.外科で粉瘤として切除,病理報告上,有棘細胞癌を疑われ,10月5日,当科へ紹介された.拡大切除術後の病理組織像で,腫瘍細胞塊の主体をなす細胞は,細胞質が好塩基性に染まる小型のbasaloid cellから成っていた.その他にはそれよりやや大型の細胞質の明るいclear cellを混じていた.Basaloid cellには大小不同や,核の異型性および分裂像が散見され,外毛根鞘性角化様の角化を示す部位がいくつか観察された.Clear cellも異型性が高く,この一部には特異的好酸性細胞質を有するdyskeratotic cellが散見された.さらにclear cellはPAS染色陽性を呈し,ジアスターゼには消化された.以上より本症例をmalignant proliferating trichilemmal cystと診断した.