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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科51巻5号

1997年04月発行

文献概要

特集 最近のトピックス1997 Clinical Dermatology 1997 2 皮膚疾患の病態

新しい角化異常—ロリクリンとVohwinkel症候群

著者: 山本明美1

所属機関: 1旭川医科大学皮膚科学教室

ページ範囲:P.71 - P.75

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 辺縁帯は角化細胞の最終分化に際して形成される細胞膜の裏打ち構造である.これはトランスグルタミナーゼが,表皮角化細胞の発現する数種の蛋白質どうしの間に架橋をつくることにより形成される.この際まずインボルクリンとシスタチンαが最初の枠組となり,後から他の前駆体,エラフィン,ロリクリン,small proline-richprotein(SPRR)等が架橋すると考えられている.主成分のロリクリンはグリシンループと呼ばれる特徴的な構造を多数持ち,両末端にはグルタミンとリジンが豊富なよく保存された領域をもつ分子である.最近Vohwinkel症候群においてロリクリン遺伝子の変異が同定された.本症は常染色体優性遺伝性の,手指・足趾の絞扼を伴う掌蹠角化症と四肢関節部背面の角化性皮疹を臨床的特徴とする極めて稀な疾患である.まず連鎖解析から本症が1番染色体の長腕q21のマーカーと連鎖していることが判明した.ここには表皮分化と関連するロリクリンをはじめ,数種の蛋白の遺伝子がクラスターとして存在する.免疫電顕的観察から本症ではロリクリンが核内で異常な凝集を起こし,辺縁帯に架橋されないことが示唆された.患者ロリクリン遺伝子の塩基配列決定により,コドン230〜231領域に1個のグアニンの挿入が見つかった.これによりフレームシフトが起こり,ロリクリン分子のC末側が完全に誤ったアミノ酸で置き変わり,さらに正常より22残基延長することになる.今回の発見はロリクリンの重要な機能を示唆するものでもある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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