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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科52巻10号

1998年09月発行

雑誌目次

カラーアトラス

顔面全体に生じた汗管腫

著者: 深野祐子 ,   小野麻理子 ,   幸田衞 ,   植木宏明

ページ範囲:P.782 - P.783

患者 38歳,女性
初診 1989年12月1日

原著

水痘皮疹部に一致して出現した乾癬—免疫組織学的検討を加えて

著者: 山本菜穂子 ,   狩野葉子 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.785 - P.788

 20歳,男性.約6年前より頭部,四肢に発疹が生じ尋常性乾癬と診断されていた.初診5日前より水痘に罹患し当科受診.約4週間後に一部の小さな水痘皮疹の治癒した部位に一致して乾癬皮疹の出現が認められた.以前より存在していた乾癬皮疹に明らかな増悪は見られなかった.これら両者の乾癬皮疹の免疫組織学的検索を行った.前者では後者に比し表皮内に多数のCD8陽性細胞が認められ,また,真皮乳頭層直上の表皮に一致してHLA-DR, ICAM−1の発現が認められた.水痘帯状疱疹ウイルス感染表皮細胞に対してCD8陽性細胞が誘導され,接着分子の発現やサイトカインの産生が加わり,水痘皮疹部より乾癬皮疹へ進展する一つの契機となった可能性を考えた.

今月の症例

薬剤により皮疹が誘発されたサイトメガロウイルス単核球症の1例

著者: 小鍛治知子 ,   塩原哲夫 ,   清川浩路

ページ範囲:P.789 - P.792

要約 33歳,女性.初診の3週間前より微熱があり,2週間前より感冒様症状が出現.軽快が認められないため,ミノサイクリン(ミノマイシン®)を含む様々な薬剤の内服を開始した.症状はその後も軽快せず,ミノマイシン®のみ内服を継続したところ,内服6目目より全身に強い瘙痒を伴う紅斑が出現.検査所見では末梢血中の異型リンパ球の増加(45.5%)と肝障害を認めた.ウイルス抗体価では初診時にCMVIgMの出現を認め,その後のIgGの上昇,CFの高値より,サイトメガロウイルス単核球症と診断した.EBウイルス単核球症と同様,サイトメガロウイルス単核球症も薬剤により皮疹が誘発される場合が多く,日常の診療で,ウイルス抗体価を経時的に検査しないまま単なる薬疹と診断されているケースがかなりあるのではないかと考えられた.

乾癬性紅皮症に多発した有棘細胞癌の1例

著者: 水野寛 ,   篠田勧 ,   山田悟 ,   山本昇壯

ページ範囲:P.793 - P.796

 45歳,男性.昭和46年尋常性乾癬が発症,翌年紅皮症化した.乾癬性紅皮症としてPUVA療法,エトレチナート内服,メソトレキセート内服,ゲッケルマン療法などの治療を受けていたが皮疹は治療抵抗性であった.平成3年,左膝部に母指頭大の難治性潰瘍,平成7年,左下腿外側に辺縁部堤防状隆起を伴う手掌大の潰瘍,背部,左手背部,右下腿部に大豆大の難治性びらんが出現した.すべて有棘細胞癌であり,左大腿切断術を含む腫瘍摘出術を施行し,シスプラチンおよび5—FUによる化学療法を行った.術後6か月間,再発,転移を認めていない.乾癬の重症型ともみなされる乾癬性紅皮症と皮膚悪性腫瘍との関連について若干の考察を加えた.

連載

Clinical Exercises・66—出題と解答

著者: 多田讓治

ページ範囲:P.796 - P.796

 131 次の薬剤併用の組み合わせにおいて,適切でないものはどれか.
  ①ciprofloxacin(CPFX)——ketoprofen

Practical English for Busy Physicians・57

著者:

ページ範囲:P.865 - P.865

著者名の記述,idiotsシリーズ,discover & revealについて
 医学雑誌への論文投稿者の皆さんにぜひ読んで頂きたい記事があります.それはJournal of the American Medical Association(JAMA)1998年7月15日号に記載されております.内容は“ghost or honorary author”についてとなっています.今までも幾らかの基準はありましたが,今回はもっと明解に出版の過程を分析しております.ゴーストライターはご存じのように実際に仕事に携わり論文を書き上げたのにもかかわらず,実際にはその名前が記載されることのない人のことであり,普通は若い方が多いようです.それに対し「名誉ある著者」は名前ばかりで直接その仕事をしなかった人のことですね.

症例報告

隆起性皮膚線維肉腫の1例—CD34染色による腫瘍の浸潤範囲の同定

著者: 多田弥生 ,   湧川基史 ,   中村晃一郎 ,   東裕子 ,   上田純嗣 ,   古江増隆 ,   川端康浩 ,   大槻マミ太郎 ,   玉置邦彦

ページ範囲:P.798 - P.800

 44歳,男性の左上腕伸側に生じた隆起性皮膚線維肉腫の1例を報告した.病理組織学的にいわゆるstoriform patternを形成しており,免疫組織学的に腫瘍細胞はCD34抗原陽性であった.腫瘍は一見線維性の被膜に覆われているように見え,HE染色にては腫瘍細胞の浸潤を明らかにできなかったが,CD34染色にてその浸潤範囲を正確に同定することができた.また,臨床的には表面平滑な大きい腫瘤を形成しており,隆起性皮膚線維肉腫の本邦例を検討し,その臨床的特徴について考察した.

市販住宅用洗浄剤による化学熱傷の1例

著者: 秦まき ,   横手隆一

ページ範囲:P.802 - P.804

 63歳,女性の市販住宅用洗浄剤による化学熱傷の1例を報告した.市販住宅用洗浄剤にて左腋窩,上肢,大腿に約20%,2〜3度の化学熱傷を負った.受傷後付着物を洗浄せず,2日間市販外用剤の塗布を行った後,当科を受診した.数日間の洗浄と外科的デブリドメントを施行した後,皮膚欠損用一時的緊急被覆材を使用し,約2か月で90%の上皮化が得られた.原因となった洗浄剤は,次亜塩素酸ナトリウム5%,水酸化ナトリウム1%,界面活性剤を主成分とするアルカリ性の溶液である.このうち水酸化ナトリウムは,腐食性が強く,潰瘍は酸によるものに比べ深くなりやすい.化学熱傷の場合,できるだけ早く洗浄することが,進行を食い止める唯一の方法であり,本症例では,受傷後洗浄せず,2日間経過していたため,深度が進行したと考えられる.

2峰性に皮疹を生じた伝染性単核球症の1例

著者: 山本菜穂子 ,   福田知雄 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.806 - P.809

 19歳,女性.39℃台の発熱を認め近医受診.抗生剤,消炎剤等の内服開始10日後より全身性に皮疹が出現した.頸部リンパ節腫大,咽頭発赤,扁桃の白苔付着を認めた.末梢血に多数の異型リンパ球が出現,肝系酵素は著明な上昇を示した.抗体検査にてEBウイルス初感染を確認.薬剤中止と対症療法にて皮疹消退後,特に誘因なく四肢に皮疹の可燃を認めた.初発疹および再発疹をそれぞれ皮膚生検し,2峰性に生じた皮疹の差異につき,臨床的および組織学的に検討した.皮疹出現時に内服していた薬剤について,皮疹出現より37日目にpatch test,58日目に内服chal—lenge testを試みたが,原囚薬剤の同定には至らなかった.

神経因性膀胱を合併した帯状疱疹の1例

著者: 小池美佳 ,   石井清英 ,   岩原邦夫 ,   田中徹 ,   近藤元彦

ページ範囲:P.811 - P.813

 59歳,男性.初診の前日より右臀部から陰嚢にかけ疼痛出現.翌日同部に一致して小水疱が出現してきたため当院皮膚科を初診した.アシクロビルの内服投与を行うも,同時期より出現してきた排尿障害が3日後には尿閉となったため皮膚科と泌尿器科兼科にて入院した.膀胱内圧曲線にて低緊張性の神経因性膀胱を認め血清抗水痘・帯状疱疹ウイルス抗体価も128倍と高値を示したことから,帯状疱疹に合併した膀胱障害と診断した.アシクロビルの点滴を追加し,副交感神経刺激薬である臭化ジスチグミン投与などにより約3週間にて症状は改善した.帯状疱疹に伴う運動麻痺は稀ではあるが認められるといわれている1).本邦では帯状疱疹に合併した膀胱障害の報告はほとんどが泌尿器科領域からであるが,皮膚科医が仙髄領域に生じた症例を診察する際は,自験例のような合併症を考慮する必要があり,若干の文献的考察を加え報告した.

セファレキシンとの交叉反応を認めなかったセファクロルによるアナフィラキシー型薬疹の1例

著者: 福永瑞穂 ,   鶴顕太 ,   児玉昌子 ,   原田晋 ,   堀川達弥 ,   市橋正光

ページ範囲:P.815 - P.817

 35歳,男性.以前にも抗生剤内服にてアナフィラキシー発作を生じたことがある.感冒にてセファクロルを服用した際,約30分後より呼吸困難および胸部絞扼感が出現し,全身の掻痒感と発赤も認められた.内服誘発テストの結果,セファクロル1/100錠にて軽度の呼吸困難と胸部絞扼感が生じたため,同剤によるアナフィラキシー型薬疹と診断した.セファレキシンの内服テストは陰性で交叉反応を示さなかった.自験例のようにセファレキシンと交叉反応を示さない症例の存在はセファクロルにおけるI型アレルギー反応の抗原決定基を考える上で興味深く思われた.

塩酸アミトリプチリンが奏効した剥脱性口唇炎の1例

著者: 谷口彰治 ,   幸野健 ,   山本直樹

ページ範囲:P.819 - P.821

 16歳,男性.約半年前より下口唇の落屑,びらんが出現し徐々に増悪,上口唇に拡大した.鱗屑を無理に剥がすと,一時軽快するが,すぐに再燃した.組織学的には不全角化を伴った粘膜上皮の肥厚,粘膜固有層での炎症細胞浸潤を認めた.真菌培養は陰性で,光線過敏性は証明されなかった.剥脱性口唇炎と診断し,白色ワセリン,尿素軟膏,副腎皮質ホルモンなどの外用を行うも効果なく,液体窒素による冷凍療法も効果は一時的であった.抗うつ剤の一種である塩酸アミトリプチリン(50mg/日)の内服を試みたところ4週間後に両口唇の発赤,腫脹は軽快,3か月後には薄い鱗屑の付着を認めるのみであった.自験例の発症要因は明確ではないが,抗うつ剤の一種が奏効し,神経学的および精神医学的要因が関与していた可能性を考えた.

シクロスポリンが奏効した食道病変を伴った尋常性天疱瘡の1例

著者: 時光玲子 ,   五十嵐泰子 ,   山田美奈 ,   石黒直子 ,   川島眞 ,   金井尚子 ,   光永篤

ページ範囲:P.822 - P.824

 55歳,女性.1993年4月発症の口腔内に限局した尋常性天疱瘡で,プロドニゾロン初期量50mg/日で治療を開始し,20mg/日に減量した1997年1月,せんべいを摂食後に突然嘔気が出現した.上部消化管内視鏡検査で剥離性食道炎を,病理組織学的には食道粘膜上皮に棘融解像と,蛍光抗体直接法で上皮細胞間にIgGの沈着を認めた.抗上皮細胞間抗体は80倍.絶食とプレドニゾロンを30mg/日に増量することにより,食道病変は速やかに改善したが,その後も口腔内病変が持続するため3mg/kg/日と比較的少量のシクロスポリンを併用したところ,口腔内病変も急速に軽快した.

2回目の妊娠で再燃しなかった妊娠性疱疹の1例

著者: 高橋慎一 ,   稲本伸子 ,   橋本隆

ページ範囲:P.825 - P.827

 妊娠性疱疹の1例について報告した.症例は25歳女性.妊娠29週より,臍周囲に掻痒を伴う紅斑出現.ほぼ全身に拡大し,水疱を伴うようになった.病理組織所見は,好酸球浸潤を伴う表皮下水疱で,蛍光抗体直接法にて表皮基底膜部のIgG, C3の沈着を認めた.血中IgG抗表皮某底膜部抗体およびHG因子陽性.表皮抽出蛋白およびリコンビナント蛋白を用いた免疫プロット法で,230kD蛋白および180kD類天疱瘡抗原に対する抗体が検出された.ステロイド外用にて皮疹は軽快し,出産後約3か月で皮疹は消失した.臍帯血および出生3日後の児血中の抗表皮基底膜部抗体は陽性,HG因子は陰性で,児には皮疹は認められなかった.出産後,血中抗体価,HG因子とも次第に低下し,約3か月で消失した.第1子出産2年後に妊娠が確認されたが,血中抗表皮基底膜部抗体・HG因子とも陰性.2回目の出産前後では皮疹の再燃は認められなかった.

CD4/8比の低下を伴い血疱を呈した壊疽性膿皮症の1例

著者: 泉裕乃 ,   相澤浩 ,   新村眞人 ,   三原一郎

ページ範囲:P.829 - P.831

 20歳,男性.2週間前より右大腿,左足内側,左耳後部に疼痛を伴う隆起性浸潤性紅斑が出現し,39℃台の高熱とともに右大腿は16×14cmの堤防状に隆起する鮮紅色の潰瘍,左足内側は9×4.5cmの緊満性血疱,左耳後部は1×1cmの小潰瘍となった.血液検査にて白血球の軽度増加とCRPの増加を認め,CD4/8比は0.32と低下していた.内視鏡検査にて上行結腸から横行結腸にかけて多発性潰瘍がみられ,内視鏡所見と大腸生検によりクローン病とも潰瘍性大腸炎ともいえず,分類不能型腸炎と診断した.病理組織所見にて真皮全層に好中球の密な浸潤と真皮深層の血管壁への好中球の浸潤およびフィブリノイド変性を認め,周囲の炎症の波及した二次的な血管炎と考えた.分類不能型腸炎を伴う壊疽性膿皮症と診断し,プレドニン®とサラゾピリン®にて治療し約2か月で上皮化した.

巨大な局所型環状肉芽腫の1例

著者: 荒木幹雄 ,   高橋靖幸 ,   塚本克彦 ,   大竹直人 ,   島田眞路

ページ範囲:P.832 - P.834

 72歳,男性.3年前より,左胸部から左背部にかけて,特異な,巨大な環状紅色隆起局面を認めた.右肩にも同様の局面を認めた.初診時,左胸部から左背部にかけての皮疹の大きさは,11×34cm,右肩の皮疹は4×5cmであり,辺縁の隆起局面の幅は0.5cmから2cmであった.病理組織では,真皮上層から中層にかけて,リンパ球,組織球,多核巨細胞が浸潤し,真皮中層に,膠原線維の変性は不明確ながら,浸潤細胞の柵状配列を認めた.Alcian blue染色にて膠原線維間にムチンの沈着を認めた.巨細胞による弾性線維の貧食像は認めず.アンギオテンシン変換酵素は正常値,ツベルクリン反応は中等度陽性.組織培養にて,細菌,真菌,抗酸菌とも陰性であり,環状肉芽腫と診断した.皮疹は生検およびステロイド外用にて約1か月でほぼ消退した.本症例は,抗核抗体160倍陽性等の免疫血清学的異常,境界型糖尿病,および肝疾患(C型慢性肝炎,肝血管腫,肝硬変,肝細胞癌)を伴った.

平滑筋母斑の1例

著者: 嶋岡正利 ,   永井弥生 ,   田村敦志 ,   石川治 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.836 - P.838

 4歳女児の平滑筋母斑の1例を報告した.生下時より左背部に多毛を伴う淡褐色皮疹が存在し,次第に増大した.病理組織学的に,真皮内に種々の方向に走行する筋線維束の増生を認めた.筋線維束はMasson-trichrome染色で赤染し,免疫組織学的にdesmin陽性,vimentin陰性,S−100蛋白陰性であった.臨床および組織学的所見より平滑筋母斑と診断した.本症例を報告するとともに鑑別診断について文献的考察を加えた.

Sebaceous trichofolliculomaの1例

著者: 木花いづみ

ページ範囲:P.839 - P.841

 77歳男性の頬部に生じたsebaceous tri—chofolliculomaの1例を報告した.常色,ドーム状に隆起した結節で,組織学的には中央に角質嚢腫を認め,嚢腫壁から放射状に伸びた細胞索の先端に脂腺の増殖が著明で,それに混じて毛包への分化も認められた.本症の類縁疾患であるtri—chofolliculoma,sebaceous folliculomaとの関係について若干の考察を加えた.

Mucous cyst of the vulvaの1例

著者: 松本博子 ,   安西秀美 ,   井出瑛子 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.843 - P.845

 27歳女性のmucous cyst of the vulvaの1例を報告した.4年前より徐々に増大した腟入口部肛側の母指頭大,表面平滑,弾性軟の有茎性腫瘤で,摘出標本の半割により黄褐色のやや粘稠な泥状物の排出をみた.病理組織は杯細胞を多数混ずる1〜数層の円柱状の細胞を壁にもつ嚢腫で扁平上皮化生の部分も認めたが,移行上皮の部分はなく周囲に腺組織は認めない.杯細胞の内容物はアルシアンブルー,コロイド鉄,ジアスターゼ抵抗性PAS染色に陽性であり,ムチンと考えられた.本症の由来は現在,胎生期の尿生殖洞とする説が主流である.自験例は組織は典型的だが部位および有茎性である点が特徴的である.皮膚科領域での報告はまだ見られない.

肘部外側に生じた単発型グロムス腫瘍の1例

著者: ,   岩原邦夫 ,   三浦優子

ページ範囲:P.848 - P.850

 36歳男性の,稀な部位である肘部外側に生じたグロムス腫瘍の症例を経験し,電顕的に検討した.その結果,肘部外側のグロムス腫瘍は,一般的にみられる爪下部のものと異なり,細胞質内にdense bodyが非常に少なく,未成熟なグロムス細胞よりなる腫瘍であった.

男児の仙尾部に発生した奇形腫の1例

著者: 杉内利栄子 ,   高橋和宏 ,   相場節也 ,   田上八朗

ページ範囲:P.851 - P.853

 4歳,男児.出生時より右臀部に皮下腫瘤があった.CT, MRIで,腫瘤は嚢腫様構造であり,内容は石灰化部分と嚢胞が混在していたため,奇形腫と診断し全摘した.病理組織学的に成熟型奇形腫で,悪性所見はなかった.仙尾部奇形腫は悪性化も約30〜50%にあり,放置期間が長いほど悪性化率が高くなるといわれる.

アミロイド沈着を伴った遺伝性汎発性色素異常症の1例

著者: 辻淳子 ,   長谷哲男 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.855 - P.857

 遺伝性汎発性色索異常症の1例を報告した.症例は42歳の男性.中咽頭癌のため横浜市立大学医学部付属病院耳鼻咽喉科にて入院加療中.出生時から全身に斑状の色素斑を認めており,初診時顔面,背部,胸腹部,四肢末端を中心に灰褐色色素斑と脱色素斑が混在.父方の祖母に同症あり.病理組織像では基底層にメラニン色素含有細胞の増加と,真皮乳頭層のアミロイド沈着が認められた.臨床,病理組織所見より遺伝性汎発性色素異常症と診断した.

多発性骨髄腫に合併した全身性アミロイドーシスの1例—水疱形成を伴った例

著者: 龍崎圭一郎 ,   田村敦志 ,   永井弥生 ,   竹内裕子 ,   秋元幸子 ,   石川治 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.858 - P.860

 多発性骨髄腫に合併した全身性アミロイドーシスの1例を報告した.多発性骨髄唾に伴う全身性アミロイドーシスでは,多彩な皮膚および口腔粘膜症状を呈するが,水疱形成は稀であり,本例は貴重な症例であると思われた.また,自験例では心不全や腎不全などの重篤な症状は認めていないが,これらは死因の約1/3を占めることから,経過観察には十分な注意が必要であると思われた.

治療

Posterior thigh flapにて再建した臀部慢性膿皮症の1例

著者: 田川一夫 ,   角田寿之 ,   渡辺敢

ページ範囲:P.862 - P.864

 42歳,男性の臀部慢性膿皮症の1例を経験した.病変部は主に右臀部に限局されていたため,瘻孔の完全切除後の再建にposterior thighflapを用いた.同皮弁は下臀動静脈の分枝を茎とする,axial patternの筋膜皮弁であるため,血行がよく,また術後再建部位がbulkyにならず,採皮部位である下肢の機能障害はみられない.自験例でも,術後機能的にも整容的にも満足する結果が得られた.このように病変が限局された膿皮症では,デブリードマン後の再建に同皮弁を用いることは有効であると思われた.

印象記

「第97回日本皮膚科学会総会・学術大会」印象記

著者: 澤田俊一

ページ範囲:P.866 - P.868

 第97回日本皮膚科学会総会・学術大会は1998年5月29日〜31日に大阪大学医学部皮膚科学教室の吉川邦彦会頭のもとに開催された.会場となったリーガロイヤルホテルは商都大阪のビジネス街の心臓部である中之島の西端に位置し,大阪というエネルギッシュな街にあってなお落ち着きのあるカルチャースポットであった.わが国皮膚科領域における最大のイベントである本学会の規模は年々増大しているが,今回も応募演題数は一般演題382,学術展示126の合計508題に及んでいた.事務局長の板見智助教授にお伺いしたところ,参加登録者数は2,300名とのことで,日本皮膚科学会会員8,567名のほぼ3.5人に1人が参加したことになる.今回の学術大会の最大の特徴は,21世紀に皮膚科の明るい未来を描くために,皮膚科を取り巻く諸情勢を意識すべく取り上げられた企画が多数みられたことにある.また新しい試みとしては,AADで行われているように事前登録制で28テーマの教育コースを設けたこと,SIDのように応募演題より選出してプレナリー講演を行ったことが挙げられる.これらの会場はいずれも盛況であり,皮膚科学会会員の意に叶った企画と思われ,関連諸先生方のご苦労の賜物と拝察された.
 総会に引き続き吉川邦彦教授の「皮膚科の未来」とのテーマによる会頭アドレスで学術大会がスタートした.初日の天候は生憎くのどしゃ降りの雨ではあったが,会頭が述べられたように考えようによっては絶好の学会日和でもあった.21世紀の皮膚科の未来がばら色の夢であるために,①診療面では,境界領域疾患への他科からの進出をくいとめ皮膚科の専門性を大切にしつつ,新たな領域(皮膚外科,心身医学,環境医学,老人医療など)へも視野を広げる必要性を,②教育面では,大講座制取り入れによる教育再編と皮膚科教育単位数の減少にどのように取り組むべきかを,③研究面については,皮膚科の範疇を越え応用可能な研究を心掛けるようにすることを述べられ,その例として教室の山口裕史先生,佐野栄紀先生の研究を紹介された.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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