臨床皮膚科52巻10号

1998年09月発行

症例報告

Mucous cyst of the vulvaの1例

著者： 松本博子¹ 安西秀美¹ 井出瑛子¹ 杉浦丹¹

所属機関： ¹清水市立病院皮膚科

ページ範囲：P.843 - P.845

　27歳女性のmucous cyst of the vulvaの1例を報告した．4年前より徐々に増大した腟入口部肛側の母指頭大，表面平滑，弾性軟の有茎性腫瘤で，摘出標本の半割により黄褐色のやや粘稠な泥状物の排出をみた．病理組織は杯細胞を多数混ずる1〜数層の円柱状の細胞を壁にもつ嚢腫で扁平上皮化生の部分も認めたが，移行上皮の部分はなく周囲に腺組織は認めない．杯細胞の内容物はアルシアンブルー，コロイド鉄，ジアスターゼ抵抗性PAS染色に陽性であり，ムチンと考えられた．本症の由来は現在，胎生期の尿生殖洞とする説が主流である．自験例は組織は典型的だが部位および有茎性である点が特徴的である．皮膚科領域での報告はまだ見られない．