icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科52巻2号

1998年02月発行

雑誌目次

カラーアトラス

灸の瘢痕部に一致してみられた基底細胞癌

著者: 赤坂俊英

ページ範囲:P.102 - P.103

患者 72歳,男性
主訴 背部の黒色斑

原著

成人型アトピー性皮膚炎と白内障・網膜剥離

著者: 加藤直子 ,   松下卓郎 ,   有賀浩子

ページ範囲:P.105 - P.109

 国立札幌病院皮膚科で最近3年間に治療した,白内障あるいは網膜剥離を合併した成人型アトピー性皮膚炎の15症例について,眼症状の詳細と皮膚炎,各種臨床検査,および全身症状等との関連について検討した.15例は16歳から44歳の男性8例,女性7例で,白内障の合併は14例(男7例,女7例)の26眼,網膜剥離の合併は10例(男8例,女2例)の13眼に認められた.白内障の性状は部位が判明している19眼中前嚢下皮質混濁が4眼,後嚢下が3眼,前後嚢下が8眼,散在性が2眼,成熟型が3眼であった.網膜剥離は鋸状縁あるいは毛様体色素上皮などに裂孔を有するものが11眼であった.1例を除いて網膜剥離は白内障を有する眼に発症していた.アトピー性皮膚炎の発症年齢は幼小児期が8例,思春期が4例であった.顔面の皮疹は1例を除いて中等症以上であり,眉毛の脱落を10例に認めた.血清総IgE値は上昇例が多く,特に5例は超高値(10,000 IU/ml以上)を示した.

臨床統計

日常診療の場におけるピアス型イヤリングによる皮膚障害

著者: 清野みき ,   岩崎雅

ページ範囲:P.110 - P.113

 日常診療の場におけるピアス型イヤリングによる皮膚障害の全体像を明らかにする目的で,ピアス部の皮膚障害のため来院した39例について検討した.その結果,原因として金属アレルギーが関与しているものは約1割であり,大部分はブドウ球菌などによる二次感染と考えられた.

連載

Clinical Exercises・59—出題と解答

著者: 原田敬之

ページ範囲:P.113 - P.113

 117 クロモミコーシス(クロモブラストミコーシス)で正しいのはどれか.
  ①病変の組織内では菌糸型をとることより,胞子型であることが多い.

Practical English for Busy Physicians・50

著者:

ページ範囲:P.187 - P.187

イギリスのスラング,“X”のいろいろ,Managed careについて
 どの世界においても業界用語というのがありますが,イギリスの犯罪者や地下組織の世界でも同じことが言えます.Morriss' Dictionary of Word and Phrase Originsによると,彼らは“cockney rhyming slang”と呼ばれるものを話しています.例えば“girl”は“twist and twirl”と言われ,“How's your twist and twirl”はもうお分かりですね.ところでこの研究‘cockney’自体は‘a cock's egg’,黄身なし卵のことであり,つまり少しの価値しかないという意味です.しかし現在のイギリスではむしろ生粋のイギリス人という意味で使われており,下町に先祖3代以上にわたる江戸っ子と同じような使われ方をしています.またCockneyの人たちは“h”を使用しないことが多く,‘hairbrush’は‘airbrush’となり,これはまた下流階級を表していることにもなります.この辞書は大変面白い内容が詰まっており,片手間に開いてみても十分に楽しめます.私も‘Board of Directors’の由来は重役たちが会議で囲んでいたテーブルが“board”から出来ていたためだと知りました.そして一番偉いボスはそれなりの椅子に座っているわけで,つまり‘chairman of the board’となるわけです!

今月の症例

Fibrous hamartoma of infancyの1例

著者: 東直行 ,   金子勝美 ,   北原東一 ,   服部怜美 ,   大秋美治 ,   青木見佳子 ,   本田光芳

ページ範囲:P.114 - P.117

 1歳男児の左胸部に生じたfibrous hamar—toma of infancyの1例を報告した.Reyeにより初めて報告され,Enzingerにより名称を与えられた本症は,本邦で56例,外国で149例が報告されている.男女比は約2:1で,多くは1歳以下に発症し,上肢,腋窩,背部に多く,国内外の比較で本邦では下肢に多く鼠径・外陰部に少なかった.術前診断は困難なことが多く,放置すると増大し他組織を巻き込む可能性もある.また再発例もあり,全摘出術の施行が必要である.小児の比較的急速に増大する皮下腫瘤では頻度は少ないがfibrous hamartoma of infancyを考慮する必要がある.

症例報告

パッチテストと経口負荷テストが陽性を示したペルーバルサムアレルギー

著者: 大沼すみ ,   神宮きよみ ,   武川るみ ,   川口とし子 ,   北村和子 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.119 - P.121

 79歳,男.17年前から体幹,四肢に瘙痒性皮疹あり.パッチテストにてペルーバルサムが陽性.このため,ペルーバルサムの内服負荷試験を行ったところ,体幹,四肢の紅斑,丘疹の悪化を認めた.ペルーバルサムは種々の化粧品,各種食品のフレーバーの他に,油絵の具にも含まれている.自験例も油絵を描くのが趣味で,週1回は必ず油絵の具に触れていたことが判明した.油絵の具との接触を減らし,クロモグリク酸ナトリウムの内服およびペルーバルサム含有食品の除去により,皮疹の軽快を認めた.全身性ペルーバルサムアレルギーの報告は,本邦ではまだ見られないが,欧米では数例の報告が見られる.我々の日常生活に幅広く関与するペルーバルサムのアレルギーについて若干の考察を加えて報告する.

スパルフロキサシンによる蕁麻疹型薬疹

著者: 玉置昭治 ,   平野寿美 ,   小村十樹子 ,   中村敬

ページ範囲:P.122 - P.124

 スパルフロキサシンの蕁麻疹型薬疹を報告した.患者は49歳,男性.尋常性乾癬で加療中である.風邪症状,および前立腺炎でスパルフロキサシンを処方され,内服1時間45分後に蕁麻疹を発症したが医治を受け軽快した.本剤によるスクラッチテスト陰性のため10分の1錠の内服誘発テストを行い,浮腫と中央に粟粒大の丘疹を伴う紅斑をきたしたため陽性と判断した.淀川キリスト教病院で5年間に経験した蕁麻疹型薬疹の皮膚テスト結果を併せて報告し,皮膚テストの有用性とその限界,および内服誘発テストの必要性を述べた.

小児皮膚筋炎の1例

著者: 涌井玲子 ,   南波正 ,   堀壽成 ,   虫明亨祐 ,   元吉史昭 ,   伊藤雅文

ページ範囲:P.126 - P.128

 6歳,女児.顔面,四肢の露光部に紫紅色の紅斑および丘疹が出現し,約2週間後には筋力低下,筋肉痛を認めたため入院した.ヘリオトロープ疹,ゴットロン徴候,筋原性酵素の上昇,筋生検にて皮膚筋炎に特徴的な所見を認めたため皮膚筋炎と診断し,プレドニゾロン2mg/kg/日の治療を開始した.露光部にほぼ一致した皮疹の存在から,光線過敏を疑って最小紅斑量(MED)を測定したが正常であった.最近10年間の小児皮膚筋炎報告例において,光線過敏の合併頻度は13.6%であり,光線過敏合併例6例中,MEDが正常である報告は自験例のみであった.しかしMEDを測定している症例が少ないため,実際に測定を行えば,光線過敏があってもMED正常例がまだかなり存在すると推測された.

Generalized morpheaの1例

著者: 江夏美夏 ,   大西誉光 ,   渡辺晋一 ,   高橋久

ページ範囲:P.129 - P.131

 32歳,女性.抗SSA/Ro抗体陽性でSjögren症候群を示唆する眼症状を伴ったgener—alized morpheaの1例を報告した.腰部に手掌大の硬化局面,大腿,腹部には軽度の硬化を伴う多発する境界不明瞭な紫紅色斑を認めた.両指示,中指の関節痛の訴えの他には,Raynaud症状や嚥下困難など全身症状は認められなかった.抗核抗体,抗SSA/Ro抗体,RA因子陽性.病理組織像ではmorpheaの典型像を示した.眼科的に自覚症状を欠く乾燥性角結膜炎を認めた.

プロスタグランジンE1の中心静脈投与により関節可動域,色素沈着,指尖部潰瘍の改善をみた汎発性強皮症

著者: 湊原一哉 ,   沢田泰之 ,   佐藤貴浩 ,   横関博雄 ,   片山一朗 ,   西岡清

ページ範囲:P.133 - P.136

 49歳,女.1983年,蝶型紅斑出現し全身性エリテマトーデスと診断.1984年,手指硬化が出現し汎発性強皮症と診断.Bamett 3型の皮膚硬化,四肢の大小関節の拘縮および運動制限を認め,肺線維症および食道,小腸の蠕動障害を伴う.皮膚硬化に対し,プレドニゾロン5mg/日に加えプロスタグランジンE1の経中心静脈的投与を開始し,8μg/日より漸次増量,40μg/日を3週,60μg/日を8週,80μg/日を5週,計17週,総量5.5mgを投与した.投与総量約3mg前後に達した頃より徐々に指尖部の潰瘍の縮小化,皮膚色素沈着の改善がみられるようになり,治療終了後には関節可動域,皮膚温にも著明な改善を認めた.

進行性全身性硬化症に対するLipo-PGE1の使用経験—サーモグラフィーによる検討

著者: 大塚俊 ,   梁取明彦 ,   山蔭明生 ,   山崎隻次 ,   藤沢崇行

ページ範囲:P.137 - P.140

 進行性全身性硬化症(以下PSS)21例に対しLipo-PGE1を投与し,サーモグラフィーを用い客観的に手指の温度変化を測定し,また臨床症状についても検討した.対象は28歳から75歳(平均52.5歳),全例女性,病型別ではlimitedtype(以下L型)7例,diffuse type(以下D型)14例であった.温度上昇は全体で76.2%(L型100%,D型64.3%)にみられた.平均上昇温度は病型別に差がなく約2.3℃であった.臨床症状は冷感と疼痛について検討し,冷感は全体で65%(L型85.7%,D型53.8%)が軽快,疼痛はD型のみに訴えがあり,そのうち45.5%が軽快した.臨床症状の軽快群のほうが不変群に比べより上昇温度が高い傾向がみられた.無効例5例はすべてPSSの最重症型であった.実際の軽快例を提示し,若干の考察を加えた.

皮膚限局性結節性アミロイドーシスの1例

著者: 阿部裕明 ,   大西誉光 ,   渡辺晋一 ,   高橋久

ページ範囲:P.142 - P.144

 59歳,男.約30年前に左鼻翼部および右鼻唇溝部の結節に気づき,以降徐々に増大してきた.HE染色で淡好酸性に染色される沈着物質が真皮全層および一部は皮下脂肪織にかけて認められた.この物質はコンゴーレッド染色およびDFS染色にて機色調に染色され,偏光顕微鏡下にて黄緑色の偏光を呈し,過マンガン酸処理に抵抗性であった.また免疫組織化学染色では抗AL(к)抗体のみに陽性を示した.さらに全身検索を行ったが特に異常は見られず,AL(к)型皮膚限局性結節性アミロイドーシスと診断した.本症は本邦では7例目,AL(к)型としては2例目である.過去の本邦報告例について若干の文献的考察を加えた.

仙骨部の胼胝様皮疹の2例

著者: 田口英樹 ,   木花いづみ

ページ範囲:P.145 - P.147

 16歳と15歳の男に認められた仙骨部の胼胝様皮疹2例について報告し,これまでの報告例を含めた14例について若干の考察を加えた.本症は主に10歳台の男性に発症する仙骨部の淡紅色隆起性皮疹で,組織学的には真皮膠原線維の増生を特徴とし,全例に尾仙骨の形態異常を伴う.発症には機械的刺激の関与が考えられているが,自験例では長距離の自転車通学と腹筋運動による圧迫刺激が誘因として疑われた.尾仙骨形態異常の確認には単純X線よりもMRIのほうが鮮明に描出され有用であった.

Fabry病の母娘例における眼病変

著者: 吉井典子 ,   神崎保 ,   中尾正一郎 ,   田中弘充 ,   牧内玲子 ,   佐井嘉之 ,   磯辺英一

ページ範囲:P.148 - P.149

 症例1:36歳,女.症例2:60歳,女(症例1の母親).ともにα—galactosidaseの活性低下を認めている.今回Fabry病の全身精査のために入院した母娘例に共に両眼に角膜混濁を認めた.皮膚科医としては日常目にすることはないが,Fabry病を診断するうえで重要な所見であると考え呈示した.

圧痛を伴った平滑筋母斑の1例

著者: 安部正敏 ,   田村敦志 ,   鈴木裕美子 ,   秋元幸子 ,   石川治 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.152 - P.154

 3歳女児の左下腿に生じた平滑筋母斑の1例を報告した.病理組織学的所見では,真皮下層から皮下脂肪織にかけて,被膜のない不整形の好酸性に染まる腫瘍塊が認められた.腫瘍細胞は索状に走行し,Masson trichrome染色で鮮紅色を呈した.また,腫瘍細胞はデスミン陽性,ビメンチンおよびS−100蛋白は陰性であった.平滑筋母斑は幼児期に好発し,病理組織学的に真皮における平滑筋東の増生を特徴とする母斑性病変である.一般に自覚症状を伴うことは少ないが,自験例では圧痛を伴っていた.本症における圧痛発生機序は明らかでないが,平滑筋由来の腫瘍性病変で疼痛を伴うことの多い血管平滑筋腫では,いくつかの疼痛発生機序が推定されている.それらの報告と,自験例の特殊染色による検討より,我々は自験例の疼痛発生機序について,狭小な血管腔がもたらす腫瘍の虚血状態が疼痛を起こす可能性を推測した.

大陰唇に生じた多発性稗粒腫の1例

著者: 水口聡子 ,   岩原邦夫

ページ範囲:P.157 - P.159

 大陰唇の多発性稗粒腫の1例を経験した.症例は43歳,女性.25歳頃より,特に誘因なく陰唇部に小結節が出現し,徐々に増加した.組織像は,真皮浅層から中層に位置する表皮性嚢腫であり,内腔には多数の軟毛と層状角質物質を含んでいた.嚢腫壁は顆粒層を介して角化し,壁と毛嚢との連続も明瞭にみられた.本例は,臨床的には原発性稗粒腫と思われたが,組織学的にはeruptive vellus hair cyst(EVHC)との鑑別が必要であったため,稗粒腫とEVHCとの関係について検討した.

免疫グロブリン遺伝子の再構成が認められた皮膚リンパ球腫の1例

著者: 伊藤康裕 ,   本間大 ,   伊部昌樹 ,   浅賀浩孝 ,   豊田典明 ,   山本明美 ,   橋本喜夫 ,   飯塚一

ページ範囲:P.161 - P.163

 49歳,男性.1年前から存在する背部の自覚症状のない紅色の扁平隆起性局面2個を主訴に来院した.2個とも全切除した.組織学的に真皮全層に濾胞様構造を伴う異型性のない巣状のリンパ球様細胞浸潤を認めた.免疫組織学的にL−26は巣状の細胞浸潤中心部に,UCHL−1は周辺部に偏在し,B細胞のк鎖,λ鎖はともに陽性であった.皮膚リンパ球腫と診断し,経過観察していたが,9か月後背部に再発し,切除した組織標本から免疫グロブリン遺伝子の再構成を認めた.

毛包脂腺系への分化を示したアポクリン型皮膚混合腫瘍の1例

著者: 西村雅恵 ,   北吉光 ,   田中まり ,   大和谷淑子

ページ範囲:P.164 - P.166

 62歳,女性.既往歴,家族歴に特記すべきことなし.2年前に右鼻唇溝部に黒色結節を自覚,放置していたが次第に増大した.平成7年8月当科初診.右鼻唇溝部に直径10×5mmの境界明瞭な黒色小結節があり,全切除した.組織像では真皮上層から脂肪織にかけて周囲と明瞭に境界された細胞集塊があった.辺縁は平滑であり,腫瘍の輪郭は左右対称であった.細胞集塊の中に多数の嚢腫および管腔構造を認め,それらに連続して索状の好酸性の細胞集塊があった.管腔構造の壁は2層の細胞からなっており,一部で断頭分泌を認めた.嚢腫の一部は顆粒層を持ち嚢胞壁に連続して脂腺細胞があった.間質にはムチンの沈着を認めた.以上より毛包,脂腺への分化を示すアポクリン型皮膚混合腫瘍と診断した.

人工真皮を用いて再建した外陰部基底細胞癌の1例

著者: 撫養宗信 ,   滝尻珍重 ,   中村雄幸

ページ範囲:P.168 - P.170

 71歳,女性.左大陰唇に生じた,鶏卵大の,比較的まれな基底細胞癌に対して広範切除した後,人工真皮(テルダーミス®)と分層植皮術を用いて再建した.術後1年を経た現在,再発はなく,外陰部の機能的障害も認めなかった.従来では,皮弁,筋皮弁等による修復を要した外陰部皮膚悪性腫瘍切除後の再建にも,より侵襲の少ない人工真皮での治療は有効であった.

von Recklinghausen病(NF-I)患者の頭部に発生した基底細胞癌を併発した脂腺母斑の1例

著者: 安齋眞一

ページ範囲:P.172 - P.174

 36歳男性のvon Recklinghausen病(NF—I)患者の頭部に発生した基底細胞癌を伴った脂腺母斑の1例を報告した.患者は,多発性神経線維腫とカフェ・オ・レ斑,有毛性褐青色斑を伴う典型的なNF-I患者であった.頭部のやや隆起のある脱毛斑を切除したところ基底細胞癌を伴った脂腺母斑の像であった.我々の検索し得た範囲内では,他にこのような合併の報告はなく,偶発的な合併と思われたものの,今後NF-I患者の頭部脱毛斑において,その原因の一つとして考えなければならないと考えた.

肛囲にPaget現象を呈した肛門管癌の1例

著者: 斎藤京 ,   稲積豊子 ,   清水宏 ,   多島新吾 ,   西川武二

ページ範囲:P.176 - P.178

 65歳,男性.初診の5年前頃より肛囲に瘙痒が出現,3か月前より同部に腫瘤が出現し急速に増大した.初診時,肛囲全周性に鶏卵大の紅斑局面,肛門7時方向に拇指頭大の充実性腫瘤を認めた.HE染色では紅斑部の表皮内,肛門上皮内にPaget細胞,腫瘤部〜肛門管にかけての真皮内,粘膜下に腺癌の所見を認めた.本症例の肛囲Paget病を肛門管癌のPaget現象によるものと考え,gross cystic disease fiuid protein 15を用いた免疫組織学的検討,文献的考察を行った.

菌状息肉症の治療経過中に有棘細胞癌が発症した1例

著者: 佐藤永大 ,   平賀剛 ,   山田朋子 ,   臼井恵太郎 ,   狩野俊幸 ,   清澤智晴 ,   矢尾板英夫

ページ範囲:P.179 - P.181

 53歳,男性.約16年前に全身に紅斑が出現し,皮膚生検で菌状息肉症と診断され,PUVA療法と放射線治療を受けていた.治療後にびらん,潰瘍化し,瘢痕上皮化した.しかし,左膝の瘢痕部が徐々に隆起し,腫瘤が難治性の潰瘍となった.当科入院後,皮膚生検で有棘細胞癌と診断した.菌状息肉症の経過中に有棘細胞癌を合併した報告例は比較的稀であるが,これらの菌状息肉症に対する治療は発癌性が指摘されており,治療期間が長期に及ぶ場合には注意していく必要があると考えた.

HTLV-I associated bronchopneumonopathyを合併したくすぶり型成人T細胞白血病・リンパ腫の1例

著者: 小菅治彦 ,   石井明子 ,   松村都江 ,   海老原全 ,   小林龍一郎 ,   高橋幸則 ,   北原光夫 ,   菊池新

ページ範囲:P.183 - P.186

 49歳,男性,長崎県出身.初診より約2年前の1994年4月頃より気管支炎を繰り返し他院にて約1年間加療されていたが,その後約1年前より口唇,指趾に難治性の紅斑,潰瘍が出現.抗ATLA抗体256倍陽性.皮膚生検にて表皮および真皮血管周囲に異型リンパ球の浸潤を認めた.手指の皮疹部生検組織および末梢血のサザンプロット法でHTLV-I proviral DNAのmono—clonal integrationを認め,くすぶり型成人T細胞白血病・リンパ腫と診断した.エトポシド,プレドニゾロン少量投与と抗生剤の投与にて皮膚症状,呼吸器症状とも軽快している.臨床経過,気管支鏡下肺生検の結果などから,呼吸器症状はHTLV-I associated bronchopneumonopathy(HAB)と考えられた.

印象記

「国際皮膚リンフォーマ学会」印象記

著者: 戸倉新樹

ページ範囲:P.188 - P.190

 犬の糞があちこちに落ちている.前夜遅く,ベルリン・テーゲル空港に到着し,すぐタクシーで旧東ベルリンにあるホテルに着いた.ホテルまでのタクシーに乗っている間,車窓からは建築中の建物,古い空きビルがあちこちに見え,工事中の道路も多く,旧東ベルリンはまだ荒れていることはある程度気がついていた.しかし,翌朝起き,こうして道路を歩いていると,犬の糞が落泄され,建物は半ば荒廃し,その一画だけが何の脈絡もなくモダンなオフィスとして使われ,旧東独の部分と近代的な部分がまだらに存在することがはっきりした.それにしても,前夜到着後,瀧川雅浩教授と白ワインを飲んだホテル近くの野外レストランの雰囲気も尋常ではなく,誇張して言えば廃虚の中のリラックスムードのレストランと言った感じであった.
 我々がホテルから歩きながら向かっているところはCharité(シャリテ)という病院である.この病院は歴史的にはペスト患者の治療のために建てられたが,その後紆余曲折を経て,現在,事実上フンボルト大学の医学部および附属病院となっている.ところでここ数年来のベルリンにある大学皮膚科の再編は少々複雑である.筆者の理解では,そもそも西ベルリンにベルリン自由大学とその附属病院的存在であるVirchow病院があり,東ベルリンにはフンボルト大学とCharité病院があった.数年前Charité病院の皮膚科の長となったWolfram Sterry教授は,統廃合政策に基づきVirchow病院の皮膚科をCharité病院に吸収させた.よってベルリン自由大学所属でVirchow病院にて診療,研究に携わっていた皮膚科医のかなりの部分は,Charité所属となり自動的にフンボルト大学に移った.Charitéでの皮膚科の病床数は約80で,当然皮膚科医の数も多い.筆者の友人であるtricholo—gistのRalf Pausも,この再編に伴いCharitéに移った.ちなみに彼は我々の教室にCharitéから2人短期留学生を送り込んだため,筆者は彼らからCharitéの話はよく聞き馴染んではいた.しかし周囲の景観のなかでのその建物を実際この眼でみるのは初めてである.敷地内には,Koch, Virchowをはじめ,医学史上著名な研究者の記念碑があり,Charitéの歴史的重要性を誇示していた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?